リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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アニメ二話編が終わるまでの間に起こっていた出来事です。
読まなくても本編にあまり影響はありません。
さらっと出てくる可能性はありますけど、そのうち本編でも出ると思うので問題ないです。
というわけで
・修哉がマカロンを作る話
・ミカがバイクを用意する話
・ウォールナットと逃げている車内の話
この三本です。


ちょっとした日常2

これはクルミからの依頼があった前日の話。

俺は店の閉店準備を終え、仕込みも終えて帰宅したところだ。そして今日はいつもと違い、多くの荷物も持っている。

 

「よいしょっと!ふぅ〜、やっと帰ってこれたぁ」

 

今日は明日の仕込みついでに、店でご飯も食べている。そのおかげで時間も少し余っているし、俺は気分転換のお菓子作りを開始する事にした。

もともと今日の夜はリコリコで出す新作を考えみたり、いくつかお菓子を作ってみる予定だったのだが、少し事情が変わっている。

 

「お客さん多すぎ!いや、嬉しいんだけどね!?でもホールにまで出ると流石にしんどい……!」

 

そう、今日はお客さんが多かったのだ。

原因は井ノ上さんが入ってきた時に撮った写真だ。あれがリコリコのSNSに載り、それを見た常連さんやお客さんが多かったのだ。そりゃ可愛いから仕方ないね!でも女性客の人に何度か俺も呼ばれたあたりで千束の機嫌も悪くなっていたり……。

 

「表に出さないだけいいんだけどさ。休憩中とか地味に八つ当たりしてくるのが辛かった」

 

俺が厨房から出る事で売り上げが上がるなら頑張るが、それでもフォローはしてほしい。先生に対してすごく思ってますからね?千束の機嫌直すの手伝ってほしい。

とまぁ、そんな理由だが気分転換でお菓子を作る事にしたのだ。

新作用にと多めに買い込んだが、思ったより疲れている今日はいい案が思い浮かばないだろうし、常連さんに配る用に作るとしよう。

 

「何作るかなぁ。レシピノートはっと」

 

お菓子用のレシピノートを開く。

これも結構書いたよなぁ。今回は常連さんに少し出すだけにする為、あまり大きいのはなぁ。スコーンとかは無しで行こう。クッキー?それともマドレーヌ。フィナンシェ、カヌレ……はやめよう。

 

「お?マカロンか」

 

ただ食紅がないかも……。

カラフルにってのは無理だが、今回は気にしないでおこう。

それじゃあ早速開始といこう。

キッチンに材料や器具を並べていく。

お!赤の食紅ならあるじゃん。

粉類を振るったり、メレンゲを作ったりしているとスマホが鳴り出した。

 

「ん?ミズキさんか?どうしたんだろ?」

 

スピーカーに変えながら電話に出る。

今は手を止めたくないのだ。片手間に電話していると思われたくはないが、仕方ない。

 

「もしもし?」

 

『あ、もしもし。明日のことなんだけど、今いい?』

 

「いいよ。何かあった?」

 

『ちょっと相談したい事があって……あんた、なんか声が遠くない?』

 

ミズキさんに気づかれてしまった。

まぁ流石に移動したり、作業をしたりしながら話していればおかしくも思うか。

 

「あ、ごめん。今お菓子作ってるからスピーカーで話してるだよね」

 

『はー。あんたもマメよねぇ。なに?新作?』

 

「そのつもりだったんだけどね。ちょっといいのが思い浮かばなかったから気分転換にマカロン作ってるよ。チョコとフランボワーズ」

 

『今からでも千束を捨てて、私のところに来ない?』

 

何いうとるんだこの人……。

あんたか千束を選ぶなら千束に決まってるだろうが……ていうか本気の声を出さないでほしい。

背筋がゾクっとするから。

 

「……」

 

『無視はひどいと思うんですけどぉ!?』 

 

「いやぁ、ちょっと何言ってるかわからないっす」

 

『わかれ!!』

 

「あっはっは。それで、要件はなんだったの?」

 

『あぁ、明日の朝に迎えに行った時でいいわ』

 

「そう?じゃあそれでいいけど」

 

何かしらの依頼でもあったのかな?

この人はたまにこうやって連絡してくるが、大体全部決まった後だろうから、気にするだけ無駄だな。

 

『程々にして早く寝なさいよ』

 

「はいよ。あと一時間ちょいしたら寝るよ」

 

『一時間って…早く寝る事!いいわね!?』

 

プツンと切られてしまった。

まぁうん。追加とかは無しにしておこう。

色々と雑談をしながら進めていたからもう終盤だしな。そろそろいい時間だし、冷ましている間に風呂でも入って、その後に仕上げて寝るとしよう。今日も一日頑張りましたっと。

 

 

 

〜ミカサイド〜

 

ミズキがウォールナットというハッカーの護衛依頼を受ける事にしたようだ。それは問題ない。

先ほどまで、私はミズキとウォールナットを交えて作戦を練っていた。

大まかな作戦は決まった。

リスクは大きいが、ウォールナットを極秘裏にリコリコで保護をする。報酬も良い上に、ウォールナットの協力も得られるというのは、大きいリスクを負う価値がある。

 

「とはいえ、だ」

 

その際、問題になるのは修哉だ。普段なら問題にもならない修哉だが、今はあいつのバイクが壊れてしまい移動手段がない。

今回、武装集団が幾つか確認されている。

そのため、修哉は千束達とは別に動かしたいのだが……。

 

「さて、どうするか」

 

しばらく考えるが……。

やはり、急ぎで用意するならこの手段が一番手っ取り早いか。

修哉の消費した武器の補充は、DAに申請している。……届くのはもう少し後の予定だったが、急ぎで用意してもらおう。

早速、私は楠木に連絡をする事にした。

 

『ミカですか。どうかしましたか?』

 

「すまないなこんな時間に。少し急ぎで頼みがあってな」

 

『ミカが私に頼みとは珍しいですね。聞くだけなら聞きましょう』

 

「修哉の事だ」

 

『修哉、ですか。アレに何か、ありましたか?』

 

ふむ。

昔からそうだが、楠木は修哉に対しては食いつきがいい。

 

「あいつの装備だが、急ぎで補充したい。それとできればでいいが、バイクも用意できないか?」

 

『……そういえば、先日壊していましたね。リコリコから提出された写真と一緒に確認しました』

 

「あぁ。修哉にとって、これからも必要なものだろう?こちらではほぼ出勤で使うぐらいだが、そっちで使う時に移動手段がないと困るだろう?」

 

『……わかりました。こちらの技術部が作った試作品があるはずです。それもそちらへ送りましょう』

 

「すまんな」

 

『いえ。それより、急ぎとの事ですが……何か依頼でも?』

 

思った通り、修哉の事になると用意をしてくれるようだ。だが、ここからだ。ウォールナットを保護するのは極秘だ。依頼主の要望で、例えDAであっても、話すことはない。

 

「いや、随分と落ち込んでいてな。それにいつ次の緊急任務が入るかも分からんだろう?」

 

『……装備の準備は終わっていると報告が来ています。この後バイクと一緒にそちらへ届けさせましょう。到着は夜中になるのでリコリコの裏へ停めても?』

 

「あぁ、よろしく頼む。着いた時にでも連絡をくれれば鍵を開ける。ついでにコーヒーの一杯でも淹れてやるさ」

 

『ふふ、それは羨ましい。では、すぐにでも動きます』

 

楠木が電話を切る。

ふぅ……。なんとか誤魔化せたかな?

アレは、修哉の事になると判断力が鈍るのが助かる。ここまで甘くするなら本人に叔母である事を言えばいいとは思うのだが……。

……こればっかりは楠木に任せるしかないか。

私も無関係ではない。だからこそ何かあれば手助けは喜んでする事を改めて誓おう。

さて、何はともあれ問題は解決だ。これで修哉も作戦に組み込める。明日は無事に乗りきれる事だろう。

 

〜ミカサイドアウト〜

 

 

 

〜千束サイド〜

 

ちぇー。スーパーカー乗りたかったなぁ〜。

シュウに無理矢理車に詰め込まれた後、私はたきなとウォールナットさんと一緒に羽田に向かっていた。

颯爽と現れたウォールナットさんが着ぐるみ姿で運転しており、車内には演歌が流れているのもまたシュール。なんだこの空間は。

 

「スーパーカー……」

 

「まだ言ってるんですか?」

 

「いやだってぇ。あんなのに乗れるとか、滅多にないよ?」

 

先生が用意していたであろうあのスーパーカー。

あぁ、乗りたかった。シュウ、買ってくれないかなぁ?意外と車に興味ないからなぁ.…無理だろうなぁ。

……ん?というか、よくよく考えるとあんなのを用意出来るお金、ウチにある?……無さそう。じゃああのスーパーカーは違うのかぁ。残念。

 

『はじめまして、私がウォールナットだ。今回の護衛、よろしく頼む。あぁ、このキャリーバッグはボクの全てが入っているから絶対に守ってくれ』

 

「あ、はい。私は千束ですぅ。夢は金持ちみたいにスーパーカーを乗り回す事ですぅ」

 

「はぁ、こんなのですみません。私は井ノ上たきなといいます」

 

「こ、こんなのって!?……あぁ、まだツッコミ入れる気力もないや。……ウォールナットさん、なんかイメージと違いますね」

 

『底意地の悪い痩せた眼鏡小僧とでも思っていたかい?映画の見過ぎだよ』

 

さっきの電車の中でたきなと話したような想像図じゃなかったみたいだ。少し期待はずれだと思ってしまう。テンションが下がる私を放置して、たきなはウォールナットさんに今の姿、着ぐるみについて指摘していた。

 

「だとしても着ぐるみはないと思いますが」

 

『そうかい?こっちの業界のトレンドだよ』

 

「「え!?」」

 

返ってきた言葉に私達は驚きの声をあげる。

 

「うっそマジでぇ!?逆に気になってくるわ!」

 

「驚きました。事実は小説よりも奇なりってやつですか……」

 

『冗談だよ』

 

「「……」」

 

あ、どうしよ。ちょっとしばきたい。

私達の不穏な雰囲気に気づいた訳ではないと思うが、ウォールナットさんは話を続ける。

 

『ハッカーは顔を隠した方が長生きできるというだけさ。身体も隠したのは体型の特定もされないようにってだけの用心。一応、今回は危機的状況だからね』

 

「ちなみにそれは犬の着ぐるみ?」

 

「いや、千束さん。クマですよ」

 

『リスだ』

 

あ、どうしよ。面白い人だこれ。

千束さん、ちょっとワクワクしてきたぞ。

 

『ボクの着ぐるみに対して色々と言っているが、JKの殺し屋である君達の方も異常だと思うよ。リコリス』

 

この人、結構話してくれるなぁ。

楽しくなってきたせいで会話が弾んでしまう。

 

「そうですか?一応合理的な理由はあります」

 

『ほぅ?どう合理的なんだ?』

 

「この日本で女子高生が銃を持っている殺し屋だと考える人はいませんから」

 

「そうそう。オマケに見た目でナメてくれて油断もしてくれる。うん、とってもいいよね」

 

『なるほど。都会の迷彩服というわけか。それにしても、君達と話していると、世界一安全な国といっても問題が多いんだなと実感するよ。そういえば、彼もリコリスなのか?』

 

ん?シュウの事かな?

なんて言おうかなぁ。

私が悩んでいると、ウォールナットさんの質問にたきなまで食いついてしまった。

 

「それ、私も聞きたいです。結局、協力者って事しか知りませんから」

 

「うーん。まずリコリスじゃないよ。私も詳しい事は聞いてないんだけどねぇ」

 

『おや?仲間じゃないのかい?一応リコリスの制服の男用みたいなの着ているが……あまり似合ってないよな?』

 

「あ、それぜっったいに!本人に言ったらダメですよ?気にしすぎて使い物にならなくなっちゃいますから。と、話が逸れた。別にその辺は聞かなくても、十年以上一緒にやってますから。今更ってのもありますし、それ以上に信頼してますし問題ないですよ」

 

『そうか。ボクのように裏切られないようにな』

 

「それはないです。絶対に」

 

「言いきりますね」

 

「うん。ないよ」

 

っと、シュウの話だったよね。

本人がいない所でするのは悪いが、たきなには知っててほしいし話しておこう。

とは言っても、先ほども言ったがそれほど詳しくはない。

シュウは楠木さんがDAに連れてきたという事。

私と一緒に戦闘訓練をしていた事。

それから任務もペアで行うようになった事。

電波塔事件も一緒にいた事。

それから十年ずっと一緒にいる事。

 

「この程度かなぁ。まぁ本人はバイクで後ろにいるし、詳しく聞きたいならまた今度話そ、たきな」

 

「そうですね。その時はお菓子でも作ってもらいましょう」

 

「お!いいねぇ!……って、あれ?高速乗らないんですか?」

 

『どうした?』

 

「いや、私が聞きたいんですけど」

 

ウォールナットさんがハンドルから手を離す。

車が自動的に動いているようだ。

 

『車を乗っ取られたか。ちょっとまて』

 

ウォールナットさんは少し黙ってしまう。

って、いやいや!

 

「ちょっとちょっと!待ってる暇なんてないですって!ルーター何処よ!?」

 

『ボクの車じゃないから知らん。それにしてもロボ太のやつ、腕を上げたな』

 

「落ち着いて言ってる場合ですか!?」

 

どんどん加速していく車は、このまま海に落ちるつもりらしい。いやいや!こんな最後は嫌ですよ!?

 

『あ、そういえば君達の好きな食べ物はなんだい?』

 

今聞く事かなぁそれ!?

って、ウォールナットさんがルームミラーを指さした。んん?なんだあれ。ドローン?

 

「……今はたこ焼きが食べたいですかねぇ」

 

私はたきなにジェスチャーでドローンを狙うように指示を出す。たきなは一瞬、困惑していたが状況をなんとなく察したようだ。

車内の会話を聞かれていたら、逃げられるかもしれないしね。

 

「……まだマカロンが残っているのでそれです」

 

「まだあったのね!?」

 

「最後の一個です。あげませんよ」

 

この間もジェスチャーで会話。

私が車の窓ガラスを割って、たきなが後ろのドローンを撃ち落とす。決定ね。

たきなが頷いたのを合図にウォールナットさんがカウントを始める。

 

『ははは。JKらしい会話だな。さぁ、制御を取り戻そう。三、二、一』

 

私は銃で窓ガラスを割る。

何発か撃ち込み、ヒビが入った窓ガラスにたきなが体当たりをして上半身を外に出した。

 

「やっちゃえたきなぁ!」

 

ダンダンと音が二回響く。

一発目は擦り、二発目でドローンを貫通したのを確認。私はたきなを車内に引き込み、安全を確保する。

制御を取り戻した車は急ブレーキをかけながらドリフトを行い、止まろうと踏ん張る。

ひぃぃ!!止まってぇええ!!

ガコン!

徐々にスピードを落とし、陸からタイヤが落ちて車体が斜めになるが、なんとか止まってくれた。

 

「う、動かないでねぇ。シュウ!はやくきてぇ」

 

私の祈りが通じたのか、シュウはすぐに駆けつけてくれた。あー。よかった。

これでなんとか全員無事に出られるよ。

 

「無事か?」

 

「そっちから助けれる?」

 

「動くなよ?……ふんがぁ!!おっっも!」

 

シュウがまさかの車体を持ち上げるという奇行をしたが、全員笑って無事なのを今は喜ぼう。

 

〜千束サイドアウト〜




明日からはアニメ三話編に入ります。
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