リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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今回からアニメ三話へ突入です。
このアニメ三話の中で、主人公の過去も挟みながら進みます。


第十一話

ウォールナット改めクルミがリコリコへ来てからしばらく経ったある日。

すっかりと顔の怪我が完治した井ノ上さんも一緒に、みんなで本日の営業を乗り切った。先程まで各自閉店作業を進めていたが、それもほぼ終わっているだろう。

そんな中、俺は厨房でちょっとしたおつまみを作っている。

いや、おつまみと言っても酒のアテではない。

これからリコリコで行われるボードゲーム大会でつまめるものを作っているだけだ。

 

「閉店!ボドゲ会スタート!!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

千束と常連さん達の賑やかな声が聞こえてくる。

楽しそうで何よりです。俺もこれを終わらせたらすぐに向かおう。

クッキーや、余っていたナッツを炒って塩を少しかけたものを一緒に小皿に盛る。

テーブルの上はボードゲームが広がるからな。いくつか小皿に用意して、各自近いところに置いてもらえれば食べやすいだろうという配慮だ。

 

「おい修哉。もうみんな集まってるぞ?お前も早く来い」

 

「……」

 

「どうした?変な顔して」

 

そんな作業中の俺に、話しかけてきたのはクルミだ。小柄なクルミは、背伸びをして作業をしている俺の手元を覗き込む。そのため距離が非常に近いのだが。

……なんていうか、おまえさぁ。

 

「俺、一応お前に酷いことをしたと思っているんだが?怖くないの?」

 

「はっ!リコリコの味方であるボクは、修哉の敵にはならないんだろ?だったら何を怖がる必要がある?」

 

これである。

ここ数日ずっと!ていうかあの日の次の日からずっと!!ちょっと異様なぐらい懐かれていて不気味ですらある。

 

「はぁ、とりあえずこれ、持っていくの手伝ってくれるか?」

 

「ボクがか?落としても知らんぞ?」

 

「落とさないようにしてくれ。お菓子はともかく皿割ったら片付けが面倒だ」

 

俺はクルミに皿を二枚渡す。

少し危ない場面はあったが、なんとか無事に座敷でゲームをする大人達へとおつまみを届けられた。

 

「おぉ!?シュウくんのお菓子だぁ!」

 

「お!塩気があるナッツもあるのがいいねぇ!修哉くん、お酒はないのかい?」

 

「ミズキさんのならありますけど。終わったら仕事に戻るんでしょ?」

 

「修哉の言うとおりだ。やめとけやめとけ。ほらほらそっち詰めてくれ。よっし、それじゃあ順番決めるぞー」

 

俺とクルミが言った事に、おっさんメンバーが残念がりつつ、ボドゲを始める準備をしていく。

なんというか、いい大人なんだからと思ってしまうと同時に、遊ぶ時はしっかりと遊ぶ精神は見習いたい。

 

「たきなぁ〜。一緒にやらない?」

 

「お!ついに参加してくれるのか?レジ閉めとかあるんなら手伝うけど?」

 

「私はいいです。レジ閉めも終わりました。ズレもありません」

 

千束と俺が井ノ上さんを誘うがクールに断られてしまった。というか、レジ閉め早いなぁ。

 

「さっすが。先生にやらせたらもっと時間かかってたぞ」

 

「修哉、私に飛び火させるな」

 

「ごめんなさーい」

 

「いっしし。怒られてやーんのー」

 

「うるさい千束」

 

先生に注意されてしまった。反省。

少しテンションが上がってしまったようだ。

明日はDAに行くという気分が滅入るクソイベントがあるし、今のうちに楽しんでおきたいのだ。

 

「あ、ちょっ!たきなさぁん!一緒にゲームやろ〜よ〜」

 

千束が、更衣室へと向かう井ノ上さんを追いかけていく。

あいつ、今日はしつこいな。そろそろ参加してほしいという気持ちが強くなりつつあるのかな?

 

「あ、修哉くん。悪いんだけど、お茶もらえるかな」

 

「あら?持ってくるの忘れてましたね。すぐに持ってきます」

 

更衣室が閉まった音は聞いているので、厨房の方へ行く扉は遠慮なく開けれる。

安心しつつ、俺は厨房へと続く扉を開けると、井ノ上さんにフラれた千束が先生に捕まっていた。

なにやらミカ先生からは、軽いお説教の雰囲気がでている気がする。何やらかしたこいつ。

 

「健康診断と体力測定は済ませたのか?」

 

「え、あー……まだです」

 

「うっそ。千束お前、前の休みに行く予定だったじゃんか」

 

「あー……あの時はちょっと、予定を入れちゃったというかなんというか。山奥まで行くのダルかったしぃ」

 

俺と先生に顔を見られないようにそらす千束。

こいつ、どうせ映画見てたとか買い物に行ったとかそんなんだろ?呆れてものも言えない。

とりあえずお茶の準備しよ。

 

「あっほでーこいつ」

 

「なにおぉう!」

 

「聞きなさい千束!明日は最終日だぞ?ライセンスの更新に必要な事だ。仕事を続けたいなら行ってこい」

 

「うぇぇ……」

 

「ならやめとくか?」

 

「うぐぅぅ。やめちゃったら絶対に面倒になるやつじゃぁん」

 

「わかっているじゃないか」

 

千束が先生に甘えているのを聞きながらお茶の準備をしていく。面倒だし、俺たちが使っている電気ポットを取り出してカウンターに置く。あとは急須とお茶っ葉。湯呑みもいくつか置いてホールの方から配れるようにしたら準備完了。

俺は怒られている千束の横を通りすぎようとするが、千束に捕まってしまう。

面倒だからスッと、通り過ぎるつもりだったのにこいつ……!

 

「ねぇシュウ。なんとかならない?」

 

「なんともならんよね」

 

「うぇぇ……。じゃあ先生からうまく言っといてよぉ」

 

「ダメだ。行ってきなさい」

 

「ちぇ〜。シュウと先生から言ってくれたら、楠木さんも聞いてくれるじゃんかぁ」

 

「千束、お前なぁ……。前から言ってるけど、俺らを都合よく使いすぎぃっ!?うぇぇ!?!?」

 

俺は言葉を詰まらせた。

なぜかって?肌色成分たっぷりの井ノ上さんが着替え途中なのに更衣室の扉を開けたからだ。

 

「司令と会うんですか!」

 

「うぉお!!バカ服ぅ!!」

 

「……あ、死んだな俺」

 

千束が勢いよく扉を閉める。

俺は過去一番かもしれないぐらい状況判断ができていた。それはもう、いつもよりも空間を把握し、周りが見えていたとも。

目の前に広がった井ノ上さんの下着姿も、目線を一瞬で逸らしたミカ先生も、扉を速攻で閉めてこっちに飛びかかる千束も……。

唯一俺は千束に呆れていたせいで動きが遅れてしまったのだ。

 

「なぁに見てんだ貴様ぁ!先生は見てないとしても、おま、こぉんの!のぞき魔がぁ!!」

 

「イダダダダダダ!!千切れちゃう!腕ちぎれちゃう!」

 

「こっの!バカ!シュウ!!が!!」

 

「アァアアア!!」

 

「こっち来なさい!阿部さぁん!こいつのぞき魔です!現行犯逮捕ぉ!!」

 

おま!阿部さんに言うのは無し!

それに不可抗力でしょうが!!

いや、見てしまったのは悪いから!ちゃんと謝るから離せぇ!!

千束は俺の腕の関節をキメながらつねり上げ、阿部さんの前へと連行していく。

 

「お?なんだぁ?のぞきはいけないぞ?おじさんが逮捕しちゃうよ修哉くん」

 

「逮捕!逮捕ー!」

 

「ふっ。のぞきとはお前も男だなぁ修哉」

 

笑いながらのってくる阿部さんだったが、俺はそんな状況ではない。笑えるもんかぁ!!こちとら関節死にかけ痛い痛い!!

千束も騒ぐと同時に力を入れるな!!

おいこらクルミ!笑ってんじゃねぇ!!

俺はなんとか場を落ち着かせるために必死に弁明をする。そうじゃないと本気で折れちゃう!

 

「いや!のぞいてない!出てきたの!!ごめんなさい!」

 

「いやぁ、青春だわ。今度マンガのネタにでもしよっと」

 

「……ちなみにシュウ。感想は?」

 

「可愛いと思う」

 

「死ねオラァ!!!」

 

「オゴッ!」

 

「ふぅ。私とした事が、死ねなんて乱暴な言葉を使っちまったぜ。反省反省っと」

 

嘘はつけなかったんや。

それを聞いた千束は、俺の腕を離したと同時に拳を俺の顎へと振り抜いた。

これも罰。あわよくば記憶が消えてくれるといいと思いながら、俺の目の前が真っ暗になっていくのだった。最後に聞こえた千束のふざけた声が少し頭にきた。

 

 

 

……ん。

イッテテテ。

 

「何秒?」

 

「十秒ないよ。相変わらず丈夫だなぁ」

 

意識が覚醒する。

十秒ほど気絶したようだ。

瞬時に状況把握。

危険性無し。記憶の混濁無し。

行動に問題無し。……丈夫だなぁ俺。

気絶してしまった俺を、常連さん達が心配してくるが大丈夫だと言って安心させる。そして千束と井ノ上さんと場所を変えて店の奥へと引っ込んだ。

 

「まず、謝りたい。不快な思いをさせてすまなかった」

 

土下座である。

 

「……い、いえ、私も焦って、何も考えず開けてしまいましたから。近衛さんは悪くありません」

 

「いーや!これはシュウが悪いね!」

 

こ、こいつぅ!!

いや、ここで言い返してしまうとさらに調子づかせてしまう。大人しく土下座を続けよう。

 

「え?どうして千束さんが決めるのですか?見せてしまったのは私ですけど?」

 

「はぁん!?たきな、わかっちゃいない。わかってないよ!女の子の下着を見るとか大罪なんですよね!はい!シュウが悪い以上!!」

 

「なんか、すごい怒ってますよね?見られたの私なのに」

 

「怒りもするわぁい!こちとら大事なたきなさんの下着見られてるんだぞぉ?どう落とし前つけるつもりだ?シュウさんよぉ?」

 

お前楽しくなってきてるだろ?

絶対にニヤニヤしてるだろ?

い、今すぐ起き上がって締め落としたい!

 

「私が考えるにそうだなぁ。シュウさん、あんたから楠木さんに、千束はぁ〜もう優秀すぎるのでぇ〜ライセンス更新とかそっちでやってあげてくださぁい!って可愛く言ってこいや」

 

なんだその言葉遣いは。

千束、お前楽しくなってきて仕方ないだろ?

 

「ダメに決まってますよ。だいたい!ライセンス更新は千束さんの問題です!私をいいように使わないように!」

 

「すみましぇん」

 

「お前も土下座しとくか?」

 

「はい」

 

二人で井ノ上さんの説教を受けた。

淡々とした声で始まるお説教。千束さんはいい加減なところが多過ぎるとか、近衛さんは千束さんに甘すぎるとか、私もDAに連れて行って楠木司令に会わせろとか。……ん?

 

「会いたいの?」

 

「会いたいです。お願いします。私も連れて行ってください」

 

井ノ上さんも俺らと一緒に土下座し始めてしまった。なんだこれ?三人が向き合って土下座する不思議な空間は……。

 

「はぁ、千束。明日はみんなでDAに行こうか。俺も色々とチェックしてもらわないといけないし」

 

「そうなの?まぁ仕方ないか。私もいつまでも逃げられないしね……一緒にいこっか。たきな」

 

「ありがとうございます」

 

ということで明日は三人でお出かけが決まった。

それなら今日はもう帰るか。

明日は健康診断もあるし、さっさと帰って寝ないとな。DA遠いし。

 

「それじゃあ今日は帰ろうか」

 

「はぁ、ボドゲ会参加したかったけど仕方ないかなぁ」

 

「明日もボドゲ会はあるんだから、早く戻ってきたらいいさ。明日始発で行くから、井ノ上さんも駅に集合ね」

 

「はい。では私はこれで」

 

「お疲れー。あ、千束、今日ウチに泊まってけ」

 

「え!?マジ!?いいのぉ!?」

 

「おう」

 

「いぃやったぁー!!」

 

ウチに泊まれる事になり、ご機嫌な千束。

いや、だってお前遅刻する確率高いし……それに夜中にお菓子食べたりされるとよくないし。

監視だって事を気づいてほしい。

 

「そうと決まればさっさと帰ろー!晩御飯は何がいいかなぁ?なんでもいい?」

 

「明日に響かなければなんでも」

 

「えー?例えば?」

 

「暴飲暴食。あとニンニク祭りとかふざけたやつ」

 

「は?流石にニンニク祭りは無いわ」

 

「なら安心だな」

 

俺たち三人は、明日の健康診断を言い訳に帰宅する事になった。

ボドゲ会の方は先生とクルミに任せて、俺と千束は今日の晩御飯を決めながらバイクに跨った。

家に千束の分の材料がないからなぁ。帰りにスーパーも寄らないと。

 

「あ!じゃあじゃあハンバーグ食べたい!」

 

「え?面倒」

 

「は?無理だよ?断れないからね?」

 

「お?なんだやるか?」

 

「あぁん?なんだぁ?私に食わせるハンバーグはないってかぁ?」

 

「はぁ、サラダもいっぱい食えよ」

 

「あったりまえじゃん!サラダは作ってあげるよ」

 

「なら任せる」

 

「お任せあれ〜料理長さん」

 

千束がちゃんと掴まったのを確認して、俺はバイクをスーパーの方へ走らせる。

ハンバーグねぇ。合い挽き肉は買わないとないなぁ。あとは千束が買い物カゴに入れようとするであろうお菓子には注意しよう。

……ん?というか今気がついたが……。

ミズキさんどこ?あれ?一応今日いたよね?え?

いつの間にか消えたあの人はどこで何をしているのだろうか?

……まぁ、割とどうでもいいか。

 

「あれ?でもニンニク臭を纏った私がDAのみんなに嫌われてライセンスやるから帰れって言われるのはアリでは?」

 

「無しだよ!!!」




最新話の予告最高かよ。
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