今日は予定が多すぎて買いに行けませんが、明日行ってきます。
朝、俺は目覚ましが鳴る前に自然と目が覚めた。
少し夢を見ていたような気がするが、内容を覚えていない。なんだったかなぁ。
俺は千束を起こさないように、そっとベッドから抜け出し、千束が寝ている間に着替えを始める。
「はがっ!!」
「!?」
「あはは〜。バカシュウ……」
誰がバカだ!というかビックリしたぞ。
こいつ、どっかしら異常あるんじゃない?
今日はしっかりと健康診断してもらえよな。
着替えが終わり、コーヒーを用意する。朝ごはんも食べたいところだが、健康診断のため我慢。
にしても今日はスッキリと寝れたな。
千束が泊まる時は大体ソファで寝るし、ベッドよりも疲れが取れる気がしないのだ。だが今回は健康診断があるからという事で、千束に押し切られる形でベッドで休んだのだ。
「雨かぁ。雨の中向かうのは面倒だなぁ」
「んん〜。おはよ〜」
「起きたか。DAに行くから早く用意しろよ」
「えぇ……。雨降ってるんでしょう?やっぱり別の日にしよーよー」
「千束はひどいな。井ノ上さんは雨の中待ちぼうけか……それは悪いし、じゃあ俺だけは井ノ上さんを連れてDAに行くよ」
「その言い方はずるい!」
「ならさっさと着替えろ。千束の準備が終わり次第出るぞ」
「はーい」
寝室から出てテレビをつけ天気予報を見る。
うーん。帰りも雨が降ってるかもなぁ。
DAに行くのも気が重いのに、雨でさらに気が重くなっていく。千束が言うように別の日にできたらどれだけいいか。
だが、俺の健康診断は別日にはできないしなぁ。
雨の日にバイクに乗るのも面倒で、電話でタクシーを呼び、しばらくニュースを見ながらボーッとしていると着替えが終わったようでリコリスの制服姿の千束が寝室から出てきた。
「お待たせ〜」
「タクシー呼んだからしばらく待ってて」
「りょーかい。あ、コーヒー飲みたいですね」
「もう淹れてるから、自分で用意してくれ」
「おっけー。あ、朝ごはんは?」
「食べたらダメに決まってるだろ?」
「えぇ〜。真面目だなぁ」
コーヒーを淹れる千束。
一応飲んだ事は申告しておけよとだけ伝えて、二人無言でタクシーが来るまで無言で過ごす。
ソファに並んで座り、何も考えない静かな時間。
しばらくするとスマホが鳴り、タクシーが到着した連絡が来た。
「さ、行こっか」
千束に続いてタクシーに乗り込み、駅まで向かう。
駅に着くと井ノ上さんが待っていた。
「おっはよー!たきな。待たせちゃった?」
「おはようございます。時間通りですから、問題ありません」
「おはよう。それじゃあ行こうか」
三人でDAに向かう電車へと乗り込む。
その際、電車に乗る前に千束が食べ物やジュースを買おうとしたが、井ノ上さんと一緒に無理矢理引っ張って電車へと向かう。
DAまで行くのに何度も乗り換えをしていると、車窓からの風景も変わってきた。
「ほんと、山奥まで来るんだよなぁ」
「もっとこう、都会の地下とかに作れないもんかね?」
「無理だろうな。っておい、飴食おうとするな」
「えぇ〜。だってお腹すいたしぃ」
俺は飴を舐めようとしていた千束から飴を取り上げた。取り上げたものの俺も食えんのだが……。
「井ノ上さんあげるよ」
ポイっと飴を井ノ上さんの方へ投げる。
いきなり物を投げるな。というか私にこんなの渡されてもいらない。という目で見られるが、気にしないことにする。
東京からずっと黙ってメモに何か書いてるだけだし、そろそろ会話を楽しもうよ。
たまに入ってきてくれるが、基本的に俺と千束しか話してないからさ。なんというか少し気まずいのだ。
「そういえばさ。たきなは楠木さんになんて言うの?あ、飴ちょーだい」
「今考えています。……飴はダメです。糖分の摂取は血糖、中性脂肪、肝機能、他の数値に影響を与えます。千束さんは、これから健康診断がある事を自覚してください」
「あ、はい。ごめんなさい」
「やーい。怒られてやんの」
「近衛さんも人に物を投げないでください。あなた一番年上なんですから」
「反省します。すみませんでした」
「ぷぷっ!やーい。怒られてやんの」
「お二人とも、反省してください」
「「ごめんなさい」」
二人して怒られてしまった。
いやぁ、井ノ上さんは本当にしっかりしているというかなんというか。もちっと余裕を持ってもいいと思うよ?千束までとは言わんからさ。
「それにしても、雨降りってのは嫌だなぁ」
「たまにはいいけど、今日じゃなくってもねぇ」
「移動はほぼ乗り物ですから、それほど気が重くないのでは?」
お、おお!?
乗ってきてくれた!?
これを逃すかわけにはいかない!しっかりと返していかねば。
「面倒ではあるけどさ。せっかくの遠出だから景色がいい風景とか見たかったなぁって思ってな」
「なるほど」
「……」
「……」
あ、終わりですか。
「シュウさんや、何やってんの?」
「……次で降りるしな。うん、準備しようか」
「誤魔化したなぁこいつ」
井ノ上さんとの会話のキャッチボール難しいんだけど!?なるほど。で終わられると……え?あ、それだけ?ってなったわ!!
こっちがパスしたボールは受け止めてくれたが、そのあと地面にポイっと捨てられた気分だよ!?
まぁ次で降りるからいいんだけどぉ!もうちょい仲良くしたいです!はい!!
電車から降りて駅を出ると一台の車が停まっていた。DAからの迎えだ。
女性職員の方に迎えられ、車に乗り込みまだ少し長い時間をかけてやっとDAに辿り着いた。
千束はセキュリティの監視カメラに舌を出して挑発している。こいつ、間抜けヅラを晒しているだけだと気がついているのだろうか?
「なに?」
「いやなにも?」
「絶対何か考えてたやつじゃん!!」
「千束さん、うるさいですよ」
「えぇ〜だってたきなぁ、シュウがぁ」
「ほら、そろそろ着くからしっかりする」
「帰ったら何か作ってよ?」
「はいはい。俺も腹減ったしな」
DAでの食事は美味しい。
だからここで食うのもアリなのだが、高確率でトラブルになる危険地帯だからな。ゆっくりもできないだろうし帰りに何か食べようと思っていたのだが……。まさかの俺が作る事になるの?
千束が我慢できなくなり、途中でどこかの店に入るのを願おう。ボドゲ会にも参加したいし、俺がリコリコで厨房に入る事になると、追加の料理を頼まれることになるからなぁ。ゲームする時間が少なくなるのはごめんだ。
騒いでいるうちにDA本部にたどり着いた。
「はぁ……」
「気持ちはわかるけど相変わらず嫌いだねぇ」
入り口で立ち止まった俺に千束が声をかけてくる。俺、この空間って嫌いなんだよなぁ。
こっち見てひそひそひそひそ内緒話しやがるし。
リコリスでも大人でもない、異物の俺を遠巻きにしてくる奴が多すぎる。この場所にいるリコリスは千束、フキぐらいしかまともなのがいない。
あ、井ノ上さんも勿論、まともの方に入るからね?
「ほらほら、立ち止まってても終わらないから行くよ!千束さんが背中を押してあげッ!……フンッ!……ふんぬらばぁ〜!!!」
背中を押してくる千束。
俺は岩のように動かない。
それはもう踏ん張っている。
「ちょいちょい!!いや、おっも!力、強!動けアホ!」
「……」
「何やってるんですか……。近衛さん行きますよ」
「……おう」
「はぁ!?たきなの言う事なら聞くのか貴様ぁ!」
セキュリティを通り抜け、受付へと俺たちは向かう。その際、カバンの中に入れてきた上着を出して着る。深く被れるフードがついている物だ。
身長や体格で男なのはバレるが、これで煩わしい視線は気にならなくなる。雰囲気が暗いわ!と千束に文句を言われるが無視。
そして受付へとたどり着いた。
「お待ちしておりました」
「近衛修哉、錦木千束、井ノ上たきなです」
「はい。確認が取れました。近衛さんと錦木さんは健康診断と体力測定ですので、隣の医療棟へ。近衛さんは特殊な診察もあるようなので指定された場所に向かってください」
受付の人に端末を渡された。
いつも通りだが、これに従えって事だ。
「井ノ上さんは」
「楠木司令にお会いしたいのですが」
「司令は現在会議中です。その後も近衛さんと面談が入っておりますので、二時間以上お待ちいただくと思います。ですが今日は時間が取れるかどうか……。もちろん確認はしますが」
「えぇ!?シュウ、楠木さんと会うの!?」
「近衛さん……」
「わかってる。俺が会う時に呼ぶから、連絡にはすぐに出れるようにしてて」
「はい!」
楠木さんに会える事が確実になり、井ノ上さんは嬉しそうだ。まぁ、よかったよかった。
そこで嫌な噂話をする奴らの声が聞こえてくる。
井ノ上さんの事をひそひそと。味方殺しだの、組んだ奴を病院送りにするだの、司令を無視するだの……。
「……じゃあ、私、訓練所に行ってます。近衛さん、連絡待ってます」
「あ、ちょっ!たきなぁ!」
そう言って走り去る井ノ上さん。
まぁ、キツいわなぁ。
井ノ上さんはここに思い入れが強かったのだろう。だからこそ、自身の扱いに納得もいかず、やっとの思いで戻ってみれば、自分の嫌な噂を耳にする。それは堪え難いものがあるだろう。
ほんと、一部を除いてここの奴らは嫌いだわ。
「はぁ……」
「落ち着けよぉ?」
千束に背中を叩かれる。
その時だ。
「何あの人、男?」
「あれじゃない?戦闘機械ってやつ」
「あぁ、聞いたことある。殺すためなら手段を選ばない機械だって。でも今はリコリスの飼い犬じゃないの?」
うるさい奴らだなぁ。
てか、まだそんな噂あるのね。
サードの子達だし、まだ新人じゃないのか?未だに言い続けてる奴がいるんだよなぁ。
「なんだぁ?あいつらぁ……!」
「落ち着け。行くぞ」
「えぇ?さ!す!が!の!!千束さんも!シュウとたきなを馬鹿にされると許せませんよぉ??」
「キレるな」
「えぇ……はぁ……。ん?」
「どうした?」
千束が誰かに目を向けた。
だが、その相手は俺たちから走り去って行った。
なんか、見たことある奴だな。
「あれ、シュウが助けた子だよ」
「あぁ、あの時の?……あの人も気の毒だな」
「……まぁいいや!行こう行こう!」
背中を押してくる千束。
この切り替えには助けられる。だが、俺も少しストレスを溜めたせいかわざと足取りを重くして、千束の負担を増やす遊びをしつつ、医療棟へ向かうのだった。
「だから重いわぁ!」
「いったぁ!」
スパァン!
とケツをしばかれた。
俺は千束と別の部屋に行くため、別行動をすることになる。健康診断用の服に着替え、部屋に入ると五人の医者と、楠木さんとその助手に迎えられた。
「遅かったな」
楠木さんが一番に声をかけてきてくれる。
他の医者達は俺が入ってくると同時に色々な機械を触って準備を始めだしていた。
もうちょい時間がかかりそうだし、楠木さんと少し話しておこうか。
「あれ?会議って聞いてましたけど」
「この後すぐに向かう」
「そっすか。あ!そういえば!」
「なんだ?」
「バイク!ありがとうございました!」
電話でお礼は言ってあるが、どうせDAに行くのなら直接言おうと思っていたのだ。楠木さんのおかげで移動も楽だし、新しいバイクのおかげで依頼もやりやすい。
「気にするな。そのことなら既に礼をもらっている。……わかっているとは思うが、故障したらすぐに連絡しなさい。アレをそこらのバイク屋に持っていかないように」
「収納とかいろいろありますもんねぇ。了解です。その時はお願いします」
「用意もできたようだ。健康診断が終わり次第体力測定へ向かうように、そのあとは私の執務室に来なさい」
「はい。ではまた後で」
そうして楠木さんは部屋から出て行った。
井ノ上さんはすぐに合流してくれるだろうし、無断でそのまま連れて行こう。前もって言っても断られて終わるだろうしな。直接行けば止めるのは助手さんぐらいのものだし。
「近衛さん。こちらにどうぞ」
人が入れる大きなポッドの中へと入れられる。
口にマスクをつけられたり、いろいろな器具を身体に取り付けられる。
はぁ、この圧迫感嫌いなんだけどなぁ。
しばらくすると眠くなり意識が遠くなっていく。
寝て起きれば終わるのは楽でありがたい。
俺はさっさと意識を手放して、寝ることにしたのだった。起きれば全てが終わっているしな。
小説、予約しててよかったよ。
しばらく読むのに集中したくなった場合、更新少し止まるかもしれません。
申し訳ない。