リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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今回は主人公である近衛修哉の過去編です。
残酷な描写が出てきます。
最新話!よかったな!

追記!
今回少しオリジナル設定を入れてしまいました。
後々響かなければいいなと。


第十三話

夢を見ている。

今朝とは違い、とてもハッキリとしているのがわかる。これは俺の過去だ。

何も考えず、ただ命令に従う機械にされた過去の夢だ。

ああ、嫌になるなぁ本当に……DAにきたら毎回これだからな。逃れる事はできないし、仕方なく何度目か分からない夢をおとなしく見よう。

俺が物心つく頃、両親が亡くなったらしい。

何があったとかそんな事は、もう今となっては興味がない。

 

『お前はワシが引き取る』

 

俺を引き取ったのは知らない爺さんだった。

元々、治安維持組織に所属していたとか聞いた気がする。俺の両親もそこに居たのだろうか?

ただ、この爺さんに引き取られてから、俺の地獄が始まったのだ。

 

『護国の為、人柱となれ』

 

それが爺さんの口癖だった。

俺の人生全てを国に捧げろと。

爺さんは幼い俺への容赦のない訓練を行う。

まず最初に、殺しに対しての忌避感をなくさせるところから始まった。子供だった俺は訓練の意味がよく分からず、今になってそうだったのだろうと思う程度だが。

まず虫を殺した。

次に拘束され抵抗ができない動物を殺した。

 

『今日からは体術訓練も行う』

 

俺に何かの殺しをさせ続けて月日が経ち、俺の身体が成長してきた頃だ。

爺さんは俺を殴り、投げ飛ばし、何度も何度も気絶するまで追い込み続けた。気絶すれば水をかけて意識を覚醒させる。

その繰り返しだった。

 

『死にたくなければ、生き抜いてみせろ』

 

山の中に置き去りにされた。

凶暴な猛獣から逃げ、よく分からないものを口にして生きる。この訓練のおかげで、俺は自身の直感が育てられたのだと思う。

この訓練が終わると、爺さんは必ず俺を医者の元へと連れて行った。でもあれは、おそらく医者ではなく治安維持組織の研究者とかだと思う。

そいつらには、よくわからない毒々しい色をした薬を使われた。副作用で何度も死にかけた。

だがそのお陰で、変なものを食べても平気になった。毒に対しての耐性ができたのだろうか?

 

『護国の為、人柱となれ』

 

死にたくない。生きていたい。

この感情がいつの間にか変わってしまう。

死ねない。強くなって、殺さねば。

護国の為に。人々の為に。殺さねば。

毎日、毎日。何かを殺し、殴られて、山に放り捨てられて、薬物の投与。その日常に慣れ、しばらくたった頃。

爺さんが、俺と同年代ぐらいの男の子を連れてきた。

 

『戦え』

 

爺さんがナイフを俺たちの前に落とす。

爺さんの一言を聞いた瞬間にナイフを拾い、困惑する子供の首を切り裂いた。

後に聞いたが、俺と同じように身寄りがない子供で、落ちこぼれたリリベルだったらしいが、当時の俺は殺さなければ殺されると思い殺した。

初めての殺人に、迷いは一切なかった。

 

『次へ移行する』

 

この日から人も殺し始めた。

落ちこぼれたリリベルが次々に運ばれてくる。

犯罪を犯した大人も運ばれてきた。こっちは男も女も関係がなかった。

等しく全員殺した。

できるだけ早く速く、時間もかけず迅速に。

急所を狙い一瞬で殺す。

俺の身体はまだ小さい子供だ。相手が抵抗する前に行動しなければ殺されてしまう。

 

『今日からはこれも使え』

 

爺さんは俺に銃を渡してきた。

射撃訓練も始まった。

体術、ナイフ、銃。全てを十全に扱えるように。

殺しに対しての忌避感を抱かないように。

護国の為、人柱となれ。

そして数年が経ち七歳の頃、爺さんを殺した。

 

『悪を殺せ。護国の為に。……以上をもって、お前の……いや、烏の完成とする。友よ、ワシは、やり、遂げた』

 

これが最後の言葉だった。

何も感じなかった。

この人は俺をこんな戦闘機械にしたが、一応は育ての親なのかもしれない。だが、悲しいとも思わない。怒りが湧いてくるわけでもない。

ただ、こんなものか、と。

一応、食わせてくれた恩もあるが、死体を放置すると臭う為、死体の処理を行なっていく。

全てが終わった頃、いつの間にか日が沈みそうな時間だった。護国護国と言っていたが、俺は明日から何をしたらいいのだろうか?

そう思って夕日を眺めている時、二台の車が敷地内に入ってきた。

そこから降りてきたのは武装して顔がわからない人間が五人。そして褐色肌の男と、赤い短髪の女だった。

 

『あの子が、そうか?』

 

『はいミカ。間違いありません』

 

男と女に敵意はなかった。

だから殺さなかったし、この時はなぜかそんな気力が湧かなかった。俺がボーッと二人を眺めていると、男の方が紙を渡してきた。

 

『読めるか?』

 

『……?』

 

『おそらくわかっていません。あの方は勉学の時間を削ってまで育てたと言っていましたから』

 

男がため息をついた。

アレは手紙だった。結局あの手紙は読んでいない。何を書いてあったのか、今となってはわからない。

男の方はミカ、女の方は楠木と名乗った。

俺は今からDirect Attackという場所の本部に移動するらしい。そこで俺に勉強をさせて、仕事をさせる。それが爺さんがこの人達に伝えた事らしい。この二人について移動してきたDAにはリコリスと呼ばれる少女達が大勢いた。

 

『楠木、後は任せる。私には他にもやることが多いからな』

 

『はい。……今日から私がお前の世話をする楠木だ。お前の名前は?』

 

『名前……?』

 

『ない、のか?』

 

『お前?貴様?クソ野郎?色々、ある。でも、爺さんは最後に烏って』

 

楠木と言った人は頭を抱えた。

今思えば楠木さんは無意識だったのだろうか?こんな姿、この時しか見たことがなかったと思う。

 

『……近衛、修哉と名乗れ。近衛が苗字、修哉が名だ。いいか?修哉』

 

『修哉。わかった』

 

この日からいろいろなことを教わった。

社会から隔絶された場所で育った俺は、外の世界のことを何も知らなかった。ちゃんとした言葉、文字、礼儀作法に今までやったことない事ばかりだったが……知識を得るのは楽しかったと思う。

ただ戦闘訓練では不満が溜まっていく。

相手となるリコリスを何度も殺しかけるたびに止められた。今まで殺していたのに、殺すことが出来ず難しいうえに面倒だ。そう思いつつ過ごしていたな。

 

『なんだよ、あいつ』

 

『喋りもしないし、機械みたい』

 

『あぁ、たしかに。戦闘機械だよね』

 

俺が避けられるのに時間はかからなかった。

ひそひそと、ひそひそと。どこに行くにも視線が付き纏い、次第にストレスが溜まっていった。

そんな風に過ごし、一年が過ぎようとした頃。

俺の前にミカ先生が現れたのだ。

 

『少し休め』

 

『護国の為、休む暇などありません』

 

『はぁ……。ガキの言葉じゃないな』

 

『司令。新しい任務を』

 

ミカ先生は俺にある動画を見せた。

俺と同じぐらいの歳だろうか?ファーストのリコリスか。この歳でファーストとはすごいなと思ったのを覚えている。動画の中でファーストの女の子が、多数のリコリスが相手でも素早く撃ち倒す姿は、俺でも苦戦するかもしれないと素直に思った。だが、彼女は倒れる。

胸を押さえて苦しそうだった。

 

『どうした?』

 

『病気だった。名前は錦木千束。先天性心疾患だったが、今はある手術を受けて入院中だ。彼女の護衛をしてほしい』

 

『それが次の任務か?殺しではなく?』

 

『……あぁ、そうだ。きっと、修哉にもいい影響を与えてくれる。きっとな』

 

この時、ミカ先生が言った事はわからなかった。

だが、この子が無事に退院できるようになれば大きな戦力になると思い、任務を全うした。

そして病室で千束と出会ったんだ。

 

『あなたはだれ?』

 

『近衛修哉。お前の護衛だ』

 

『護衛?……シュウくんって呼んでもいい?』

 

『好きにしてくれ』

 

『うん!じゃあシュウくんお話ししよう!そうだねぇ。うーん、好きな食べ物はなーに?』

 

千束は凄かった。

ずっと無愛想だった俺の懐にドンドン踏み込んでいき、俺も色々な事を答えた。仲良くなるというか、俺とよく話をする人となるのに時間はかからなかった。

楠木さんはよくわからなかったが、ミカ先生は俺を連れた千束の話をどこか嬉しそうに聞いていたのを覚えている。

そうして俺が八歳、千束が七歳になった頃、千束は戦闘訓練にも復帰するようになった。

順調にリハビリを終えて、しばらく経ったある日に電波塔事件が起こった。

この大事件を俺と千束は先生達や、他のリコリスの活躍もあり解決。この日から千束は最強のリコリスと呼ばれるようになり、俺は前からの陰口である戦闘機械が、本格的な通り名になってしまった。一応作戦中は烏って呼ばれてたのにね。

悪口の方が勝ってしまった。残念である。

 

『シュウくんは機械じゃないのにねぇ?ほら、触ったら温かいし』

 

両手で俺の頬を包むのは千束だ。

どこかで俺の陰口を聞いたのだろうか?

四六時中一緒には居るけども、トイレや更衣室などの、俺が入れない場所では千束は基本的には一人かフキに頼んで二人になる。

どっかしらで聞いててもおかしくはなかった。

 

『……俺は、機械じゃない。でも大人には烏とも呼ばれるぞ?』

 

『ちーがーいーまーすー!だってシュウくんは人間だもん』

 

『そっか』

 

この時、少し心が暖かいような気がした。

変な感覚だとあの時は思ったが、千束が俺を、ただ命令を受ける烏でも機械でもない、人間にしていったのだろうと思う。今の俺があるのは千束のおかげだと、今だから思える。

 

『ねぇ、シュウくん。先生がね?一緒にお店をやらないかって言ってくれてるんだよね』

 

『気持ち悪いぞ』

 

『え?えぇ!?き、気持ち悪い!?』

 

『間違えた』

 

『も、もう!!女の子に気持ち悪いとか酷いからね!?』

 

半泣きになる千束。

言葉選びが下手だった。

いつものようにはっきりと言うでもなく、千束が俺に遠慮している感じが気持ち悪いと思っただけなのだ。

 

『それで、なんだ?』

 

『えっとね。シュウくんはさ。私と一緒に、お店してくれる?』

 

『……俺はお前の護衛だからな。お前が俺をいらないと言うまでは、護衛としてそばにいる』

 

『ほんとぉ!?やったぁー!先生に言ってくるね!……あ!シュウくんも一緒に先生のところに行こう!ほら、はーやーくー!』

 

ははっ。

この場面を見るたび、俺は恥ずかしかったんだなと思う。千束だけが、なんの裏もなく、俺を必要としてくれるとわかったからこそ素直に行くと言えなかったんだなぁ。

この時が、初めて心から嬉しいと感じた瞬間だった。

それからすぐに千束は俺と先生を引き連れてDA本部を出た。

 

『ここが、今日から私達が住む場所だ』

 

『おぉおおお!!』

 

『千束、興奮しすぎだ』

 

『えぇ!?だってだって!これから新しい生活の始まりだよ!!楽しみに決まってるよ!』

 

喫茶リコリコ。

俺たちがこれからやっていくお店。

先生が店の扉を開け入って行くのに、少しドキドキとしながら俺たちは続く。

 

『おかえり。千束、修哉』

 

『あ!それってアレだよね!?』

 

『あぁ』

 

『やっぱり!ほらほら、シュウくんも一緒に言おうよ』

 

『わ、わかった』

 

『よし!あ!先生もう一回!やり直すね!』

 

千束は俺の手を引っ張り店を出て、もう一度お店に入りなおした。

 

『先生、ただいま!』

 

『た、ただいま』

 

『あ、シュウくん照れてるぅ』

 

『て、照れてない!』

 

『ははは!あぁ、おかえり千束、修哉』

 

これが俺たちの喫茶リコリコでの始まり。

最初は失敗だらけだし、お客さんも全然居なかった。今では考えられないが、先生のコーヒーなんて飲めたもんじゃなかったな。

 

『また、練習してるね』

 

『そうだな。……行くか?』

 

『うん!せんせー!私ミルクと砂糖いっぱいのが欲しいぃ!』

 

『俺はミルクだけのがいい』

 

『えぇ〜。シュウくんもまだ苦いの無理なくせにぃ!』

 

『今日こそは飲めるからいいんだ』

 

そう言って飲んだコーヒーはバカほど苦かった。

三人で一緒に色々な失敗や成功を楽しみつつ、頑張ってお店をよくしていくと、お客さんも少しずつだが増えていった。

常連さんが出来たり、犬のリキと過ごしたり、いつの間にかミズキさんが居たり、たまにDAの仕事をしたり。本当に千束のお陰で楽しいことばかりだな。最近では新しい仲間である井ノ上さんとクルミまでいる。ドンドン楽しくなる毎日が本当にありがたくて……。

この夢を見るたび、いつの間にか爺さんの教えなんて忘れている自分に気づく。護国なんかよりももっと良いものを護らせてくれるあいつには、本当に感謝しかない。

千束はすごいよ。

お前の周りは多くの笑顔に溢れている。

やはり千束は人助けの天才だなと実感するよ。

 

 

 

目が覚める。

生暖かい感じが気持ち悪い。

医療ポッドの中は大量の液体で埋め尽くされており、器具を取り付けられて拘束されている俺。

はぁ、この液体臭いんだよなぁ。

体力測定の前にシャワーだけ浴びさせてもらおう。

しばらく待っていると、ポッド内の液体が抜かれて外に出ることができた。

 

「近衛さん。お疲れ様でした」

 

「よっと。どうでしたか?」

 

「今回も問題はありませんよ。ですが、いや!これもう本当に毎回言っていますけど!もっとこまめに診断を受けてもらいたいものです。あなたの身体は過去のせいで調整が必要なんですから、あまり無理をするとすぐにガタが来ますよ?」

 

「ははは。無理って、俺基準での無理でしょう?まだまだ大丈夫ですよ」

 

「あなたは毎回そう言って聞きもしない。まぁ実際、問題は出ていないから強く言えませんね。シャワーはどうします?」

 

「もちろん行きます!」

 

「いつものように着替え等は用意しています。このまま行ってもらっても構いませんよ。終わり次第体力測定に向かってください」

 

「はい。ではお疲れ様でした」

 

心配してくれる医者には悪いが、時がくれば無理をせざるを得ない。日本の、いや東京の何処かには銃が千丁も存在しているだろう。

それがいつか必ず利用される。その時、俺は自身の大切なものを守るために何をするだろうか?

あぁ、過去の夢を見たせいで嫌な事を考えてしまうな。シャワーを浴びてスッキリとするのがいいな。




まだ小説を読めていません。
手元にはあります。
ネタバレに気をつけつつ過ごしています。
小説でわかる設定等があれば矛盾点が出るかもしれません。
間違ってるやん!と言いたい事も出るかもしれません。
ですが俺が小説を読んでから指摘してくれるとありがたい。
読み終わったら絶対に読み終わったって言うから。
お願いします。
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