リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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第十六話

失意から復活し前に進み出したたきなが、キルハウスへと向かうのを見送り、俺も移動を開始する。楠木さんの事だから上で見てるだろうしな。

先程までいたリコリス達も観戦席に行ったせいで人気がなくなった通路を歩き、目的地へと到着。中に入ると楠木さんと助手さんがいた。

 

「来たか」

 

「どんな感じです?」

 

「千束が時間稼ぎをしている所だ。今たきなも入ったからな。そろそろ終わるだろう」

 

「あはは。言い方気をつけたほうがいいですよ?それじゃ千束とたきなが勝つのが分かってるみたいです」

 

「たきな?」

 

「あぁ、少し三人で友情を深めたって感じですかね?それより楠木さんは司令なんですから誰かを特別扱いするような言葉はダメですよ。リコリスが聞いたら不貞腐れますし」

 

ていうか普通、名前に反応します?

もっと別のところに反応してほしかった。

って、あぁ……乙女サクラは少し、千束を舐めすぎたな。挑発されて隠れていた通路から出てきてしまった。

そのまま千束へとペイント弾を撃っているが全部避けられてって!きたぁたきな!やったれ!

良いのが入ったあああ!!!

 

「あっはっは!!いいのが入りましたね!」

 

「ご機嫌だな」

 

「いやぁ、流石に気持ち良すぎですよ。うん、多少はスッキリしました」

 

たきながフキに良いパンチをお見舞いしたのを笑っていると、楠木さん突っ込まれてしまった。

でもしょうがなくない?ここに来てからというもの、知らないリコリス含めて俺らは言われっぱなしだったのだから。

 

「アレが錦木千束ですか」

 

「ん?助手さんは初めて見る感じですか?」

 

「映像程度でしか見た事がないだろうな」

 

「人間とは思えない動きです。どう言う魔術ですか?」

 

「ぶはっ!!ま、魔術って!」

 

笑ってしまった。

それは俺という烏を手懐けたからだろうか?

密かに魔女なんて言われてるのを聞いた事があるし。というか助手さんはそんなに睨まないでほしい。だって魔術とか言うんだもん。びっくりして笑ってしまったんだから。

 

「卓越した洞察力で相手の射線と射撃タイミングを見抜く天才だ」

 

「アレは確かに凄いですからねぇ。俺でも当てられません」

 

「烏が、ですか?」

 

「あ、そっちは知ってるんだ」

 

「修哉が銃のみという条件で戦えば、おそらく千束が勝つだろう」

 

そりゃそうだ。

だって当てられないし、そんな中で接近して猛攻をかけてくる千束への対処はいつまでも続けられない。負ける事はなくとも千日手。銃だけという縛りの中では、勝つ事は無理だ。

 

「だが、それはコイツが異常だからだ。修哉以外が相手なら、知覚できる範囲での攻撃はまず当たらない。この距離でもな」

 

そう言って楠木さんは助手さんの顔の前に、手で作ったピストルを向ける。うん、絶対に避けるよね。

 

「修哉も含めて我々が誇る特級の戦力だ。……だが」

 

「「だが??」」

 

あら奇遇。

声が重なってしまった。

いや、わざとでは無いですよ?揶揄うとかしませんから、そんなに見ないで。

 

「それ以外はただのクソガキだ」

 

「あー!そこに俺も含めましたね!?」

 

「事実だ」

 

こんっの!

俺も問題児なのは認めるが、千束と全くの同類にされるのは何か違う気がするのだが!?

って、いつの間にか終わったな。

乙女サクラもフキもペイントまみれになっている。さてと、そろそろ俺も戻りますか。

 

『おい!修哉ぁ!』

 

「え?なになに?なんなの?フキさんキレてない?」

 

キルハウス内の音を拾うマイクがフキの大声をひろったようだ。そのせいで、設置されているスピーカーからフキの大声が響いた。

 

『今すぐ降りてこい!次はお前だコラァ!』

 

えぇ?

もう帰りたいんですけどぉ?

 

「ご指名のようだが?」

 

そう言って楠木さんは俺に大きなマイクを渡してきた。もうマイクというかトランシーバーか?デカすぎんだろ。もうちょいなんとかならんかったのか?

 

「あーあー。帰りたいんですけど」

 

『はぁ!?逃すわけねぇだろうが!だいたい!お前がこっちで戦闘訓練をしなくなったせいで、お前のことを舐める奴も出てきてんだろうが!コイツみたいに!』

 

『え?えぇ!?私っすか?』

 

『いい加減にコイツらにわからせろ!いつまでもグチグチと言ってる奴ら見ると、こっちもストレス溜まってくんだよ!』

 

「理不尽すぎやんか?」

 

『いいから、さっさとこぉい!!』

 

怒りでなのか、単に引けなくなり恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながら怒鳴るフキ。

それを見て大笑いしてる千束。

大体察しているが関わる気はあまり無いたきな。

何が何やらわかっていない乙女サクラ。

カオスだなぁ。

とは言ってもいつまでも行かなければ怒鳴り続けられそうだ。無視すれば夜道に気をつけろ案件だろう。フキの要望通り行くとしますか。

 

「わかった。すぐに行くよ」

 

『ダッシュッ!!』

 

『あっはっはっはっ!ダァハッハッハッハ!ッッゲホッ!ゲホゲホ!む、むせたぁ……!』

 

『笑いすぎだ千束ぉ!!』

 

『はぁ、なんなんですかこれ』

 

『いや、私が聞きたいっすよ』

 

いや、そうもなるて。

これ以上フキを怒鳴らせるのも可哀想なので、俺はなるべく急いでキルハウス内へと向かうのだった。

 

 

 

そしてキルハウスへと降りて来たのだが……。

ふむ。これは……?

気配が全くないあたり、ここに入り込んでしまったら死ぬまで出られなぁい。みたいな展開?死なないけどさ。

とにかく、もう始まっているという事だ。

 

「おーい」

 

返事は返ってこない。

楠木さんも無言だし……。

うーむ。どうしようか?

 

「とりあえずやりますか」

 

装備は持って来ているのだが、フキの要望では俺が舐められないくらいに、圧倒的に勝たなければいけないらしい。これ、どうせ千束とたきなも居るよね?四対一とか卑怯じゃない?しかもファースト二人だろ?手加減してほしいなぁ。

俺が今回使う武器。

とりあえずゴムナイフとグローブだけで行こうか。銃を使いたいところだが、フキの要望を叶えるには、不利な状況で戦った方が他の人もわかりやすいかもしれんし。

 

「ふぅー。ッッ!」

 

知覚できる範囲を広げ、感覚を研ぎ澄ませる。

すると、よく知っている気配が一つ、最近知った子の気配が一つ、ザワザワと嫌な気配が二つ現れる。この嫌な方はフキとサクラだ。

あとはよく知っている気配は千束だな。静かに息を潜めているのはたきなか。

お互いバディで俺を追い詰めようとしてるな。

ジリジリと距離を詰めようとしているようで、目の前の曲がり角にフキ達がいる。俺が近づくと出会い頭に奇襲できるようにしてるわけか。

……これ、楠木さんもモニターして指示出してない?俺の場所最初からわかってるよねあいつら。

 

「まぁ、付き合ってやる事もないか。さっさと終わらせよう」

 

ガシャァアアン!

 

「はぁ!?これ壊せるんすか!?」

 

俺は自分の真横の壁を殴り飛ばす。

キルハウスの壁は鉄板だが、ステージを変えられるように作られており、それほど分厚くは無いため無理矢理壊す事もできなくはない。やれるの俺ぐらいだろうけど。

 

「やっぱりそうくるよね!?」

 

千束の声が響く。

鉄板を破る。

弾け飛んだネジを掴む。

 

「やっぱり修哉さん化け物ですよね!?」

 

それは酷くないか?

さらにもう一枚破る。

 

「くっそ!おい離れるぞサクラぁ!」

 

「は、はぁ!?なんなんすかアレ!!なんか映画であんなの見ましたよ!?」

 

ガシャアアン!!

 

「ばぁ!」

 

「ひぃっ!」

 

フキは行動が速かった。

こちらへ銃を構えようとするが、顔に目掛けてネジを投げると避けようと動いて行動が遅れる。

その隙に、俺の奇行に怖がっているサクラを捕捉。

まず一人。

 

「ワンダウン」

 

「あづっ!」

 

「チッ!!」

 

ゴムナイフでサクラの首をなぞる。

フキがペイント弾を撃ってくるが、伏せて躱す。

そのまま目の前にいるサクラの襟首を掴み、フキの元へと投げる。

 

「っ!くっそ!」

 

フキの視界が遮られた瞬間に俺はその場から離れる。このまま欲をかくと千束に挟まれるからな。破って来た通路に戻り、一時息を潜めて千束の気配から遠ざかる。

 

「やられるの早いから!」

 

「しょうがねぇだろ!?アレの出鱈目加減は私らしか知らないんだからな!!」

 

「言い合いをしてる場合じゃないです!今襲撃されると後手にまわってしまいます!」

 

たきなさん当たりだよ。

俺は遮蔽物として置いてある土嚢を、力任せに裂いておく。三人が言い合いをしている場所へと回り込み、扉を蹴り飛ばす。

 

「よいしょ!」

 

蹴り破った扉から土嚢を三人目掛けて思いきり投げると、中身が散らばって視界が悪くなるだろう。アイツらがいくらゴーグルをしていても目を瞑ったり、細めたりとして怯んでいるうちに、俺は砂嵐の中を走り接近。

俺も視界が悪い中を進むことになるが、空間を把握、気配を察知して、目を瞑りながら走る。

そして、壁を蹴り飛び上がり、千束とフキを飛び越えてたきなの後ろへと着地。焦ったたきなは俺の方へと銃を向けようとするが、ナイフで銃を叩き落とす。

 

「くっ!?」

 

「ごめんね」

 

「え?あ!」

 

すでにこの時には、たきなの首にゴムナイフを押し当てており、もう倒しましたよとアピール。

もちろん、うちの大事な看板娘の首に痕なんてつけなくないし、怪我させないように慎重に当てている。

 

「ちょっと絞まるよ」

 

「あぐっ!」

 

「くっ!にげんな!」

 

たきなの首をホールドしながら移動を開始。たきなは千束とフキへの盾とする事で、自身にペイントが当たらないようにしておく。

俺は軽々と死体扱いのたきなを持ち上げて走り去り、途中の障害物もなぎ倒して通路を塞いでおく。

 

「私の負けですね」

 

「今度近接戦でも相手しようか?」

 

「……お手柔らかにお願いします」

 

「了解。じゃあここで離すね。盾お疲れ」

 

「次は絶対に勝ち……たいですね」

 

「はは。そこは勝ちますって言おうや」

 

勢いを無くしたたきなに笑いつつも行動を再開。

ここからだよなぁ。一応、幼なじみというか、腐れ縁というかあの二人は結構いい連携をしてくる。気をつけなければ。

 

「ソォイっ!」

 

「そりゃ!」

 

「ふぎゃ!」

 

少し気を抜いた瞬間に、目の前の扉が吹っ飛びかけ、思わず押し返してしまった。勢いよく飛び出そうとした千束が、扉と一緒に沈んだ。

 

「ちょっ!タイムタイム!これは流石にひどいよ!!」

 

「す、すまん。普通に焦った」

 

「まだ死んでねぇんだから離れろバカ!」

 

「おっと!」

 

「ッッ!?今の避けるのかよ!」

 

フキが立ち上がる千束を援護するために、こちらに撃ってくる。それを俺は避けながら距離を詰めようとする。千束には悪いが立ち上がる前にフキは潰す。

ナイフを投げてフキの銃を弾き、バランスを崩しているところに一気に接近。

千束が完全に起き上がる。

俺はフキの頭を両手で包みタッチ。

これが実戦なら首の骨は折れたと判断してフキは戦闘不能扱い。悪いとは思うが、フキの両肩に手を置いて一気に跳ね上がりフキの後ろに着地。また死体扱いの盾とする。

千束が銃を構えるが、弾き飛ばしたフキの銃を手に取り俺も千束へと構える。

フキを挟んでお互いの額に銃を突きつけている状態。これは、はぁ……。もう終わりでいいよね?

 

「……」

 

「……あー!負け負け!俺の負け!盾用意しても無駄なら勝てないよ!」

 

「ふーん。だよねぇ。あ、フキ喋ってもいいよ」

 

「……はぁ、化け物の戦闘に巻き込まれて無事で済むはずがねぇだろクソ」

 

「こらフキ!お・クソ!」

 

「ウルセェ千束ぉ!」

 

はぁ。

良いところまで行ったと思ったんだがなぁ。こんなに近い場所で千束に銃を構えられるともう殆ど詰みだ。実戦なら死にはしないが俺が負傷して、千束は無傷で弾を避ける。うーん。最近たきながいるおかげで厨房にいる時間が長いし、鈍ったかなぁ?少し訓練の時間を増やさないとな。

 

 

 

キルハウスから出るとリコリス達から距離を取られる。あれ?怖がられてる?

 

「鈍っているな」

 

「あ、楠木さん。わかります?」

 

楠木さんに声をかけられた。

この人、戦闘をするわけじゃないのに、こんなところは目ざといんだからなぁ。隠し事はしにくいな。

 

「本来のお前なら、あの一瞬でフキをうまく使ってやり過ごすことぐらいはできていただろう?鈍ったのと、千束相手だと弱くなるのは問題だな」

 

「あはは……。精進します」

 

「帰りの車は手配している。今日はもう休め」

 

「シュウ〜!帰りの車来てるよぉ!置いて帰っちゃうぞぉ〜!」

 

「はいはい。では、楠木さん。今日はお世話になりました。ではまた」

 

今日は散々わがままを聞いてもらった楠木さんに頭を下げて千束の方へと走り出す。たきなも合流して、DAを出ると雨は止んでいた。

そして、行きと同じようにDAの車で駅まで送ってもらい、駅のホームで電車を待っていると、たきなが話しかけてきた。

 

「修哉さん。帰りは日没の景色が見れるんじゃないですか?」

 

「そうだなぁ。でも疲れたしなぁゆっくり見てる間に寝ないようにしないと。……寝たら起こしてねたきな」

 

「一回で起きないと置いていきますよ」

 

「え?えぇ??い、いつのまにか名前で呼びあってる!?え?え?なんでぇ!?」

 

「置いてくぞぉ」

 

「あぁん。シュウ〜待ってくださいよぉ!」

 

たきなと話していると電車がやってきた。

そして名前を呼び合っている俺たちを見てさわぐ千束。

俺とたきなは千束を引っ張りながら帰りの電車に乗り込む事に……。

どうしてこう、席に座るまで苦労するの。?はぁ、リコリコに帰ったら夜ご飯の時間だなぁ。

電車内の席に座りしばらくすると、千束が話し始めた。

 

「たきなさぁ。私を狙って撃ったでしょ?」

 

「避けるのわかってましたから」

 

「シュウもさぁ。最後手を抜いたよね?」

 

「……お前と本気の戦闘になってたら時間かかりすぎるからな。ささっと帰ってボドゲ大会行きたかったしなぁ。もう終わってるだろうけど。ていうか手抜きはお前もだろ?なんだよあの登場の仕方。思わずふざけちゃったわ」

 

「アレ痛かったんですけどぉ!……はぁ、まぁいいや。ボドゲ大会行きたかったよねぇ流石に二戦もしたら、時間かかりすぎちゃったよ」

 

俺の言葉を聞いたたきなは驚く。

なんだこいつら?とでも言いたげな表情で、俺と千束を見た。

 

「え?なんですかそれ。アレで手抜きとか、どれだけ非常識な人達なんですか?千束と修哉さんは」

 

「非常識とはなんだ非常識とは!……でもアレだね」

 

「だなぁ」

 

「「色々あったけどスカッとしたな!」」

 

「……えぇ、そうですね。スカッとしました」

 

なんて三人で、電車のボックス席の中で笑い合う。

その時だった。千束のスマホが通知音を鳴らす。

 

「お?見てみ?」

 

「どれどれ」

 

「なんです?」

 

送られて来たのは写真とメッセージ。

どうやらボドゲ大会は延長戦に突入したらしい。

楽しげな大人達とコロンビアなクルミが写っていた。

 

「……もちろん参加だよねぇ?」

 

「当たり前だろ?たきなは?」

 

「そうですね。わたしも行きます」

 

「じゃあ三人で参加って事で写真を撮ろう!あ、たきなこのポーズね。そうそう手を前に出してガッツポーズみたいにして、あ、シュウもね。撮るよ〜……よしオッケー!」

 

三人でガッツポーズを取った写真になってしまった。というかこれってあれだよな?何かの乗り物で来そうなポーズだよな。

 

「……おい、これって」

 

「普通、ピースとかじゃないんですか?」

 

「いいのいいの!うーん。駅に着いたらタクシー使うから、じゃあメッセージはこれだなぁ。タクで行くぜ!」

 

「ちゃんとした写真撮ろうか」

 

俺が思っていた通りのことをする千束。

なんだか分かってないが、あまりよろしくない事は察しているたきな。

俺はこの後、ちゃんとした写真を撮り直して、三人で行くぜと送り直すのだった。




なんか、あっという間に時間が過ぎていく。
メインストーリー?だけでももう十六話って……。
はやいなぁ時間。

追記!

申し訳ない!誤字訂正で指摘いただき読み直してみました。
自分の中では最後DAから出た後、車に乗ってその後電車に乗っていたつもりが、車に乗って終わっている事に気がつきました。うわぁ、電車に乗った描写書き忘れてるって自分にドン引きしました。
ですのでDAの車に駅まで送ってもらい、電車に乗って、最寄駅からタクシーで帰るという描写を付け足しました。
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