リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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番外編?です。
今回は一つ一つが長くなってしまったので
・クルミのちょっとした復讐
・たきなと一緒に秘密の味見会
の二本です。
本編にはあまり関係ありません。



……アレだな。サブタイトル的なのでネタバレだな。


ちょっとした日常3

クルミが来てからというもの、俺は少し落ち着かない日々を過ごしている。

理由はこれだ。

 

『おい修哉。もう今日の営業は終わっただろう?一緒にゲームするぞ』

 

『え?持ってないけど?』

 

『なにぃ?今時の子供はゲームをしないのか?少し待ってろ』

 

しばらくすると、クルミはどこからか携帯用ゲーム機を持ってやって来た。俺は断る気もなかったので、二人並んでリコリコのカウンターに座ってゲームを始める。

今まであまりやってこなかったからか、俺は何度もゲームオーバーをしてしまう。だが、これがなんとも面白い。

 

『もう一回!』

 

『いいぞ。そうだな、この装備なんか使いやすいんじゃないか?』

 

『なるほど』

 

くっそ!こいつ強くないか!?

なんだこの鳥みたいなドラゴン。でっかい嘴で叩かれると大ダメージを食らうんだが?

 

『このモンスターは先生なんて呼ばれてるんだ。このゲームの基本は全てこいつから教われるぞ』

 

『なるほど』

 

先生か。

俺もミカ先生からは色々教わった。

それと同じだな。俺はこのドラゴンから教われる全てを吸収して見せる。

 

『お!足を引きずってるぞ!もうすぐ倒せるな』

 

『なるほど』

 

『ねぇ、たきな。アレなに?』

 

『さぁ?何かすごい熱中してますけど』

 

『だよねぇ。さっきからシュウがなるほどしか言ってないし……あんだけのめり込むの、初めて見たかもしれん』

 

『そうなんですか。でも楽しそうですよ』

 

『だねぇ』

 

後ろからボソボソ何かが聞こえてくるが、気にしている暇はない。こちとら回復アイテムは全て消費したのだ。もうここで決着をつけねばならぬ!

 

『お?お!?よっしゃぁ!!!』

 

『はは。やっと倒せたな』

 

『クルミ、先生から学んだ事を活かすために、すぐに次のクエストに行こう』

 

そんな感じで、最近の俺はクルミとゲームをしたりとよく遊んでいる。この間はレースゲームで俺の体の動きが面白いと千束が大笑い。パーティーゲームでは千束とたきなも入れて楽しんだ。

そしてしばらくそんな毎日を過ごしていたある日の事だった。

 

『よし、今日はこれだ』

 

『なにこれ?随分とレトロなゲームだな』

 

『最近、昔のゲームがダウンロードできるようになっていてな。コレなんて有名だけど、ボクもやった事ないからちょうどいいだろ?』

 

そして地獄が始まった。

いわゆる何回もリトライしながらクリアするゲームだったみたいで、俺たち二人は夜のリコリコでそれはもう熱心に夜を過ごした。

 

『ばっか!おい!たいまつ取るな!貸してみろ』

 

『あ、ちょっ!クルミ!鎧が!』

 

『『あぁああ!!』』

 

お互いご近所に配慮をして、すっごい小声で叫んだりしていた。時には座布団を顔に押さえつけて叫んだりもした。その日は何時からプレイしているだろうか?ゲームに熱中しすぎた俺達は度重なるゲームオーバーの疲労感のせいで、気を失うように眠りに落ちた。

そして現在。

 

「おっきろぉぉおお!!バカシュウゥウウウ!!!!」

 

「うぉおおお!!!」

 

「あだっ……!」

 

大声で起こされた。

クルミが変な体勢で寝ているが、なにしてるんだこいつ。ていうかリコリコだよな?

……俺が千束に起こされるとは、想像しなかったなぁ。あ、仕込みしないと。朝ごはんも食べたいし……いや、眠い。考えがまとまらない。

 

「ほらぁ!クルミもおーきーてぇー!」

 

「おぉうぉおおきぃるぅぉうおう!」

 

いや、そんなに揺らしてやるなよ。クルミの首がぐわんぐわん揺れているんだが、首痛めてもしらねぇぞ?

 

「夜通し、ゲームをやっていたみたいだな」

 

カウンターの方から声が聞こえた。

ミカ先生だ。

 

「えっと、うん。そう」

 

「これからは程々にしなさい。とりあえずコーヒーでも飲め。濃いめにしてあるから、スッキリするぞ?」

 

「いただきます」

 

「あぁ。ほら、千束。クルミを離してあげろ」

 

カウンターに座り、コーヒーを一口飲む。

濃いめと言っただけあって、寝ぼけた頭がスッキリとする。えっと、そうだよ。昨日の夜、リコリコでクルミとレトロゲームをやる事になって、それが難しくて必死になってやって……寝たのか?

 

「朝帰りでもなく泊まってるとは、どういう了見だ?あぁん?」

 

「……すまな、いや、謝る必要あるか?」

 

「はぁあ!?昨日の千束さんはですねぇ!ずっとシュウの家でまってたんですけどぉ!?今日のご飯はなにかなぁ?とか思っても、いつまでも帰ってこないし、カップ麺食うたわボケェ!」

 

「うるさいうるさい。てか、なに勝手に泊まってるんです?とか言いたいけど置いておこう。もうちっと、まともなものを食べなさい」

 

「自分で作る気がなかったから、作ってもらうの待ってたんですぅ!」

 

わがまま娘だなぁ。

コーヒーと千束で頭もスッキリして来たし、朝ごはんでも作ろうかと思っていると、ミカ先生がパンを用意してくれた。ありがてぇ。

俺のパンを取ろうと、クルミを解放した千束が隣に座ってくる。おい、これは俺のだからあげないぞ。触るな。

 

「ていうか!クルミもなんでシュウのお腹を枕にしてるのさ!そこは私専用なのに!」

 

「なら名前でも書いとけばいいだろ?」

 

「それだ!」

 

「それだじゃない」

 

千束の手を掴んで、ペンを取りにいけないように拘束。マジックでデカデカと名前を書かれるとかやめてほしい。いつかの絆創膏に書かれたものとは全然違ってくるんだから。

 

「なになにぃ?そんなにガッシリと私の手を掴んで。ははぁん?さては離れたくなもがっ!」

 

「パン食べたかったんだろ?ほら、いっぱい食え?」

 

うるさい千束の口に、パンを押し込んでやる。

 

「もがもがもがもが」

 

「飲み込んでから話せ?あ、クルミ、先に風呂使うか?」

 

「そーする」

 

そう言ってクルミは風呂場に移動を開始する。

座敷の方から行くみたいだな。自分の着替えとかもあるだろうし、回っていくよりも近いか。

 

「あ、そうだ千束」

 

「ふぁに?」

 

「君に言い忘れていたんだが、修哉はボクの事を自分の全てをかけて守ってくれるらしいぞ?」

 

「ん?クルミさん?」

 

「さて、困ったな。修哉はボクと千束。どっちのもの……なのかな?」

 

「おい!」

 

なに言ってんだこいつ!?

 

「んん!?はぁ!?!?」

 

「ボクがここに来た日に言ってくれたから……あれだね。一目惚れというやつかな?まさかこんな事になるなんて思いもしなかったよ」

 

はぁ!?

いや、そういう意味じゃない!!

仲間として守るって意味だぞ!?

ていうかそんな事言ったらお前!!

 

「はぁあぉああ!?!?」

 

「だから千束には悪いけど、修哉はボクが貰うとしようか。じゃあまた後でなボクだけの修哉」

 

「おいバカ!爆弾投げて放置するな!!」

 

「ちょいちょいちょい!!!どど、どういう事だぁ!?え?はぁああ!?」

 

やっぱり!千束大パニックじゃねぇか!!

千束に引っ張られてカウンターから無理矢理立たされる。そしてそのまま座敷に引っ張られて押し倒された。

 

「ぐぇっ!」

 

「ど、え?な、なにそれ!?私聞いてない!え?はぁ!?」

 

「落ち着けばか!」

 

「落ち着けるかぁ!!」

 

「仲間として守るって「嘘だぁ!!」全く聞く気ねぇな?」

 

「え?えぇ!?どういう事ぉ!?だって!だってシュウくんは私のでぇ!!えぇ!?わ、私、盗られるの!?」

 

これはもう手がつけられないな。

てかシュウくんって、久々に聞いた気がするな。

なんだ?幼児退行でもしたか?なんにせよお手上げです。落ち着くまで待つとしよう。それか先生が助けてくれるまで好きにさせよう。

 

「あー、勝手にしてくれぇ」

 

「なんでクルミなのさぁ!!……待てよ!?たきなは!?たきなも可愛いじゃん!!たきなもシュウくんを取る可能性が……いや、たきなとなら分けてもいいかも……。いやいや!なんにせよ!シュウくんは私のなのぉ!!」

 

「はいはい」

 

しばらくすると千束は落ち着いてきたが、それからも二十分は、しがみつかれていた。流石にこれだけ時間がかかれば、クルミも風呂から上がってきてたようで、俺と千束を見て一言。

 

「お?まだやってたのか」

 

「あげません!!」

 

「ぐぇっ!」

 

クルミに気がついた千束が俺を抱きしめるが、力が強過ぎで苦しい。そんな俺たちをクルミはニヤニヤと笑いながら話を続ける。

ク、クルミ!お前!なんとなく察してたけど、これってあの日の仕返しだろ!?銃突きつけたのを根に持ってやがったな!?……ここ数日、距離が近かったのはこれのためか!!

 

「ははっ。恋人としては要らないよ。護衛としては頼もしいけどな」

 

「……要らないの?」

 

「いらんいらん。千束の好きにしな」

 

「……よかったぁ……」

 

クルミが言ったことを信じたからか、脱力して俺の胸に顔を埋める千束。……え?肩震えてない?

え?泣いてるの!?

 

「え?泣いてる?」

 

「マジか……!」

 

「……泣いてないですぅ……」

 

「正直すまなかった。ボクがやり過ぎたよ」

 

「だ、だからぁ!泣いてなぁぁぁ……うぇぇ」

 

また落ち着くのに時間がかかりそうだな。

俺、昨日は夜通しゲームをしたせいで風呂入ってないんだけど……まぁ仕方ないか。

しばらく千束の頭を撫でながら過ごしていると、扉が開いてたきなが出勤してくる。

そして俺たちを見て一言。

 

「なんですかこれ?」

 

俺が聞きたいよ。

 

 

 

千束大パニック事件から数日が経った。

アレから時間が経っているのだが、千束は少しクルミを警戒し続けているようだ。人に懐いた小動物のように俺の周囲について回ることが多い。

そして何故か。

 

「修哉さん。この鍋はどこに置きますか?」

 

「あぁ、それね。台の上に置いといて。後で使うから」

 

「わかりました」

 

たきなも増えた。

え?なんで?いや、お仕事のことを聞いてくるあたり、ただついてくる千束とは違うのだが、それにしても君たち二人で俺を囲み過ぎじゃない?

そして今はお客さんも少なくなって来たので、たきなに仕込みを教えようとしていたのだが。

 

「さぁ!たきなぁ!今日は三人で一緒にあんこを作りましょー!」

 

「はい」

 

「いや、厨房に三人も要らないよ」

 

「え?なんで?」

 

いや、なんでってお前。

ホールどうするんだ?いくらお客さんが少なくなったとはいえ、こっちばかり人割いてもバランス悪すぎるだろ?

 

「ホールはどうするんですか?」

 

いいぞたきな!

もっと言ってやってくれ!

 

「そこは大丈夫!ミズキが居るし、クルミも入れる。あ、できた料理は私がカウンターに持っていくから、シュウはホールに行ったらダメで〜す」

 

「え?隔離?」

 

「いや、それじゃあダメですよ。千束もホールに行ってください」

 

「えぇ!?なんでぇ?私も一緒に居たいのにぃ」

 

お前なぁ。

そんなにわがまま言ってたら、そのうち先生に怒られるぞ?ていうか、先生じゃなくても、もう説教担当が来てるか。

 

「アンタ、なぁに舐めたこと言ってるの?」

 

「ゲェッ!?ミズキ!」

 

「料理を覚えるたきなならともかく!アンタはこっち!サボるな!」

 

「いやだぁ……!私もこっちがいぃ!助けてシュウ、たきなぁ……」

 

「ケッ!最近甘えようとしすぎだっての!うらやま……憎たらしい!」

 

「なにぃ?ミズキ羨ましいの?」

 

「うるっせぇ!営業中にいちゃつくな!」

 

「あいたぁ!」

 

なんだこれ。

ミズキさんに襟首掴まれて引きずられて行く千束。なんかアレだな。勝手にどこかに行った子犬を、親が元の場所に持って行く感じのやつだ。

なんか見えなくなったあたりで叩かれてるっぽいな。アホだなぁ。

 

「さぁ、あんこの仕込みを教えてください」

 

「君も結構ドライよね」

 

「アレは千束が悪いですから」

 

そっすか。そっすね。

とりあえず仕込みを開始。

今日はたきなにあんこ、つぶあんの仕込みを教えつつ、俺も夏の新メニューを開発。

俺の作業もしつつ、たきなに小豆の処理を教えている。するとたきなは、しばらくは目を離していいタイミングで、俺の方に興味を持ったのか覗いてきた。

 

「修哉さんはなにを作ってるんですか?」

 

「葛切り。量を作ろうと思ったら手間がかかるから、一日何食かの限定にしようかと思ってな」

 

「へぇ……。わっ!一気に透明になりました!」

 

固まってきた葛は、お湯につけると一気に透明に変わる。この変わり方は何度見ても面白い。

たきなも初めて見たのか、少し驚いてくれた。

 

「すごいよなぁこれ。何回も見てるけど毎回感動する。食べる?」

 

「いいんですか?」

 

「ちょっとしかないから静かにね。白蜜か黒蜜どっちで食べる?」

 

「な、悩みますね」

 

少し頭を抱えて悩んだたきなを見て笑いつつ、葛を氷水で冷やして型から外す。

試作のため量は少ないが、それを切って小皿に乗せる。用意した小皿は二つ。

 

「二人で黒蜜と白蜜を分けようか。それなら両方食べられるし、意見も聞ける」

 

「それがいいですね!」

 

俺たち二人は静かに葛切りを食べる。

白蜜の方はあっさりとした甘さ。

黒蜜の方は濃厚な甘さ。

うん。うまいな。葛は体を温める効果もあるらしい。夏だからこそ、冷えた体にちょうどいいのかもしれないな。

 

「初めて食べましたけど、美味しいです!」

 

「初めて?京都では食べなかったの?」

 

「はい。外で何かを買って食べたりするのはリコリコに来てからというか、千束と会ってからですね」

 

「ほーん。京都は美味しいところいっぱいあったろうに……少し後悔してたりする?」

 

「そうですね。向こうにいた時は気にしませんでしたけど、リコリコに来た今は少しは食べておけばよかったと思います」

 

ふーん。

ここに来てすぐの頃にはなかった考えだろうな。

千束との出会いは、たきなにとって良い影響をもたらしたみたいだ。ほんと、ただの馬鹿じゃないんだよなぁ。千束のこんなところは素直に尊敬するよ。

 

「なら、今度三人で行ってみるか」

 

「え?良いんでしょうか?」

 

「楠木さんに許可取ればいけるだろ。たまに千束を連れて県外に行くことはあるしな」

 

「……いいですね。美味しいお店の案内はできませんが」

 

「いいんじゃない?三人で良さそうな場所探すのも楽しいだろ?」

 

「はい。楽しみです」

 

笑顔になるたきなを見た瞬間、俺の背筋に氷を入れられたような感覚が走った。殺気!!

勢いよく後ろに振り向くと、カウンターの方から顔だけを覗かせた千束がいた。……な、生首が浮いてるようで、すごくホラーですね……!

 

「な、なんだ?」

 

「うわっ!ち、千束、ビックリしました」

 

「……仲、良さそうね?」

 

お、おぉう。

お前、そんな低い声出るのね。

 

「お、おう。アレだ!今度三人で京都旅行でもして甘味処を巡ろうかって話をしてたんだよ」

 

「へー……」

 

「千束は行きますか?」

 

「……行きますよ?当たり前じゃないですか」

 

「ほ、ほら、千束!今日のおやつはたきなの作ったつぶあんで何か作ろうか?」

 

「……冷やして白玉と一緒に食べる」

 

か、完全に拗ねてる!!

えぇ?どうしてまた、そんなに拗ねるかなぁ。

俺って、割とお前を優先してる方だと思うんだけど……?

 

「その小皿なに?」

 

「あ、これはぁ……ねぇ?」

 

「秘密です」

 

葛切りはもう食べちゃったし、残りはない。

それに静かに食べようねって事で、秘密の味見だと察しているたきなは正直に秘密と返してしまった。

味見した跡があるのに秘密もなにもないよね。

それが分かっている千束は一気に爆発した。

 

「えぇぇぇ!?なっんで、もう!たきなもなの!?これはアレだ!シュウが悪いよね!」

 

「えぇ?そうなるの?」

 

「なる!だからおやつには、たきなのつぶあんと君達二人で味見した何かも要求します!」

 

はいはい。

たきなと一緒に千束を宥めつつ、店員みんなの分の葛切りも作る事にする。作ってみた感じ、結構良い出来だったし味見してもらうのも悪くない。

そう思いながらもう一度、作業に取り掛かるのだった。




明日からアニメ四話に突入します。
個人的に好きな回なので楽しんで書きます。
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