リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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第十八話

千束が大声で叫ぶのを聞き、注意をしようとした時、リコリコの扉が開きたきなが帰ってきた。

 

「あ、おかえりたきな。ごめんね、結構重かったでしょ?」

 

「くやじぃいいいい!!!」

 

「いえ、問題ないです。ありがとうございます」

 

「すぐに冷たいお茶を用意するよ」

 

「お願いします」

 

俺は一旦千束を放置して、たきなを出迎え荷物を受け取る。今回は複数の店を回ってもらったから、荷物が多いのだ。

本来なら俺が行くつもりだったのだが、今日は厨房もできるミズキさんが、事務関係の仕事をしなくてはいけなかった。その為、先生だけにホールを任せるのも大変な為、厨房担当だがホールもできる俺が残る事になったのだ。

 

「こいづぅうううう!!!」

 

「ムキになりすぎだろ……」

 

「だってクルミぃ!この人の名前がムカつくんだもん!」

 

「……一体なにを騒いでいるのですか?近所迷惑ですよ?」

 

「っ!たきなぁ!」

 

厨房にまわっても大きな声が聞こえてくる。

……後日、ご近所さんには特別割引券でも作って配ろう。無料にはできないのが心苦しいが……。

ていうか千束さん?お前さん、騒ぎすぎてたきなが帰って来てたのに気がついてなかったな?

 

「声のボリュームを下げた方がいいですよ。外まで聴こえてますから」

 

「そんな事は今はいいよ!これ!これやって!」

 

「え?」

 

「いや、よくないわ。落ち着け阿呆」

 

「阿呆とはなんだ!シュウでもたきなでもいいから仇とってください!」

 

「俺苦手なんだ、そのゲーム。嫌いだと言ってもいい」

 

「ははっ。お前は空間把握が得意なはずなのに、机に足ぶつけまくってたもんな」

 

くすくすとクルミが笑ってくる。

このゲームは俺も一度やった事があるのだ。だが、ゲーム内の空間と現実の空間が曖昧になってしまい、机にぶつかり、転けて座敷から転げ落ちた。もうこのゲーム一生しない。

 

「ほらほら、これ着けて。これも持って」

 

「え?んぅ?り、リアルですね……なにこれ」

 

可愛い。

千束にヘッドセットを着けられて困惑するたきなは可愛かった。

あぁ、なんだろう?この、最近はたきなが癒しになりつつある感じ。千束には絶対に言えんな。

俺はカウンターに座り、茶を飲みつつたきなに癒されていると、ゲーム内でたきな対FUKIの勝負が始まった。

 

「あれ?たきなうまくね?」

 

「すごいな」

 

「いいよぉ!そこ!そこ!!」

 

たきなは急に始まったゲームに一瞬戸惑ったが、そこは流石リコリス。一瞬で切り替えて反撃を開始。

って!

 

「机!どけろどけろ!」

 

「うわぁああヤバイヤバイヤバイ!!」

 

「はは。シュウよりはマシだけど、たきなも結構動くな」

 

「言ってる場合じゃないよ!ぶつかるぅ!」

 

人のことは言えないが、少しオーバー気味な動きのたきな。横に移動したり、しゃがんだりするものだから周囲にある机や座布団が邪魔になってしまう。それを千束とクルミがなんとかギリギリに動かして、たきながゲームに集中できるよ……う、に。

 

「うぉおおああ!?!?」

 

「……さて、もう一杯お茶でも淹れるか」

 

いけないものが見えてしまった。

……いや、なんでトランクス……。というか男物だし、なんか、足の付け根が見えたよう……な?

あ、千束。俺からの位置だと、お前の下着も見えてるから隠せよ?

俺は面倒に感じ言葉にしないが、なにかしらの危機を察知したので厨房へと退避したのだった。

あ、ゲームは勝ったらしい。やっぱり射撃系うまいよな?おそらくだがフキに勝つなんて、たきなすごい。

 

 

 

その後、俺は避難した厨房でゆっくりと茶を飲んでいると千束がやってきた。どうやらゲームは終わったらしい。

 

「シュウさんや」

 

「なにかな?婆さん」

 

「誰がババアか。……見たな?」

 

「ババアとは言っとらん。昔話の婆さん風に声をかけられたらって、いいや……あー。トランクス、だったな」

 

「後でお仕置き。……なんでトランクスだったと思う?」

 

「知らんよ。あれだ、今の時代、色々な人が多い。本人がなにを選ぼうとその人の自由だ。気にしなくていいさ」

 

「……よし!」

 

「あ、おい千束!」

 

俺の答えが気に入らなかったのか、千束は更衣室へと走っていく。おそらくたきながいるのだろうか?

止めようとしたが止めれるわけもなく、俺は店の奥の居間へと避難所を移動しておく。巻き込まないでほしいのだ。

 

「どしたんだ?千束のやつ」

 

「……いや、ちょっと、な」

 

「なんだよ。ボクにも教えろよ」

 

俺が寛ごうとした居間にクルミがやって来た。

ゲームの片付けも終わって一休みに来たクルミは、俺の対面に座りながら話を続ける。

 

「千束のやつ、たきなのパンツがどうとか言っていたが?」

 

「……ふぅ。いや、まぁ、なんというかな」

 

「ん?もしかして、お前も見たのか?変態か?」

 

「偶然見えちゃったんだよ。後で謝る。……いや、なんというか、トランクスだったんだよ」

 

「いいんじゃないか?たきなの自由だろ?」

 

「勿論わかっている。けどな?それで千束が納得すると思うか?」

 

「あぁ、なるほど」

 

俺はただ見えてしまった罪悪感に襲われているのだが、千束は少し違うと思う。たきなは可愛いのだから、もっとオシャレしてほしい!とかそんなことだと思う。だがな?下着なんてのはたきなの自由でいい!以上解散!俺帰りたい!

 

「シュウ!たきなのトランクス先生の指示だって!!」

 

帰らせてよ!!

って……ん?はぁ!?!?

え?ん?……はぁぁああ!!!!????

 

「ちょっと千束!!」

 

「はぁ!?!?え?じゃあさっきのトランクスって!え?な、なに考え、て!……あぁ、好みを言ったなあの人……」

 

「修哉さんも見たんですか!?」

 

一瞬メチャクチャ焦ったが、あの人の好みを思い出して頭を抱えた。いや、まぁ、ね?なんで知ってるかというとね。うん。色々あったのさ。

過去にたった一回だけ開催したある年のイベント【新年無礼講!大酒呑み大会!】ミズキさんが主催したクソイベントで、珍しく酔った先生が自分の好みを話していたのを思い出したのだ。

ちなみにこの好みは自分が履くのは勿論、別の意味も多分に含まれる。

 

「すみません!見えてしまいました!!!」

 

それはともかく、土下座である。

現実逃避気味に考え事をしてみたが、身体は勝手に正座して土下座をしていた。

 

「つ、次、見たら三発ぐらい撃ち込みます」

 

「あい……」

 

「それは今はどうでもいい!」

 

「ど、どうでも……」

 

「たきな!トランクスの事!詳しく!話して!」

 

「は、はい!」

 

千束の剣幕にタジタジのたきな。

どうやら千束が聞いたとおり、ミカ先生が言ったことらしい。いくら目を逸らしても、過去は変わらないのだ。

 

『店の服は支給するから、下着は持参してくれ』

 

とは、先生の言葉である。

これを聞いたたきなはまさかの返しをしたらしい。指定の下着を聞いたのだ。いや、なんかもう、履いてたらなんでもいいんじゃない?

もう俺ついていけない。

 

「どんな下着がいいかわからなかったので、店長に指定はあるか聞いたところ、指定の下着がないとの事だったので」

 

「だったので?」

 

「店長の好みを聞きました」

 

「「「なんでやねん!?」」」

 

「!?」

 

俺、千束、クルミで大驚きだよ!?

おもクソ関西出てきたわ!!

 

「でもこれ、履いてみると結構快適で」

 

「あ、わかるわかる。俺も任務の都合上、ボクサーにしたけど、締め付けに慣れるまでしばらくかかったし。トランクス開放的だよなぁ」

 

「シュウ!セクハラ!」

 

「すみません!!!」

 

何故かたきなが普通にトランクスの感想を言い出したから、俺も思わず乗ってしまった。

うん。セクハラでした。

 

「修哉はボクサー派か」

 

「ん?いやぁ、どうなんだろ?普段はボクサーだけど、後は寝るだけとかならトランクスを履く時もある」

 

「ふーん」

 

「え?あれ?俺なんで答えたの?」

 

「いや、ボクに聞かれても知らないよ。普通に答えたんだから」

 

「……ふー。ちょっと黙ってる事にするね、俺」

 

怒涛の展開だったせいで、少しおかしくなっている気がする。ちょっと頭を冷やそう。

ちゃぶ台を囲みつつ話を続ける女三人組を放置して、俺はその場で寝転んだ。……あー。眠くなってきたな。思えば今日は疲れる一日だったかもしれない。

朝は普通に営業。昼からは少しの間店を閉めて訓練。夕方に吉松さんが来店し、先生と呑みに出かけてしまった。ミズキさんは事務仕事でお疲れ気味だった為、たまには早く帰らせようと思い閉店作業は全て一人。それからトランクス事件。

……疲れた。

 

「ねぇ、シュウ?話聞いてた?」

 

「え?なに?」

 

「もー!だから明日、お昼から買い物行くからね?」

 

「は?」

 

「たきなの下着を買いに行くから!荷物持ち!」

 

あぁ、なるほど?

千束が連れ歩くわけね?たまにはいいか。

 

「了解」

 

「よし決まり!じゃあ今日はもう帰るね!」

 

「んー。お疲れ様。俺は先生が帰ってきたら帰るから、最悪泊まりになるかもしれないから俺の家には来るなよ?」

 

「はーい。じゃ!また明日!あ!たきな、明日は私服ね?」

 

千束は帰ってしまった。

嵐が過ぎ去り、取り残されるのは俺たち三人。

 

「……私服ですか」

 

「指定はないぞ?」

 

「うぐっ!」

 

たきなは指定を聞くだろなと思ったので先回り。

ていうか指定の私服ってなんだよ。それはもう私服という名の制服。……ん?頭こんがらがってきた。

俺が頭を抱えていると、クルミが助け舟を出してくれた。

 

「たきなは普段はどんな服を着てるんだ?」

 

「どんな……?」

 

「リコリスの制服以外に持ってるやつだよ。まさか裸族って訳じゃないんだろ?」

 

「ら!?……部屋着はあります」

 

逆にいうとそれしかないのね。

じゃあこうしよう。

 

「過度な露出とかがなければ、部屋着でいいよ。後は当日に千束に任せればなんとかなる。下着ついでに服も買えばいいさ」

 

「わかりました」

 

「よし。じゃあ解散!俺さんはもう疲れた!少し寝ます!」

 

「はい。お疲れ様でした」

 

「じゃあボクは風呂にでも行こうかな。覗くなよ?」

 

「今は覗きよりも寝る方がいい」

 

「そーかい。あ、あとなんか食べたいから作ってくれよ」

 

「……はぁ、俺も腹減ったや。なんか作っとくよ」

 

「よろしくな〜」

 

クルミが風呂に入っている間に簡単に何かを作る事にした。うーん、そうだなぁ……パスタでいいや。簡単にトマトベースのパスタを作り、先に食べて、クルミの皿以外をさっと洗う。

そして俺は先生が帰ってくるまで寝ることにした。一時間後ぐらいだろうか?先生が帰ってきたようだ。机の上を見るに、クルミはパスタを食べ終わっているようだ。クルミさん、皿は水につけててほしい。

 

「すまない。遅くなってしまった」

 

「寝てたから問題ないですよっと。それじゃあ俺もこの辺で帰るね。あと、明日俺と千束とたきなで少し遊びに行ってくるよ」

 

「あぁ、おやすみ。明日はこっちは気にせずに楽しんでくるといい」

 

「おやすみ。先生も結構呑んだみたいだし、あまり無理せずね?クルミー!あと頼むね!」

 

皿洗いも頼むね!?

 

「はいはい。気をつけてな」

 

本当に洗ってくれるのだろうか?少しだけ気になりながらも、先生に見送られて俺は外に出る。

店の裏に停めてあるバイクの方に行くと、何故か吉松さんがいた。

 

「こんばんは。修哉くん」

 

「こんばんは、吉松さん。今日は先生がお世話になりました。もしかして、俺を待ってましたか?もしかして先生と何かありましたか?」

 

近くに車が停めてある。

おそらく吉松さんが送ってくれたのだろう。運転手の人もいるようで、飲酒運転でない事は少し安心した。

 

「いやなに、君にこれを渡したくてね」

 

「……電話番号?」

 

「あぁ、近いうちに少し時間をもらえないかな?二人で話したい事があるんだ。勿論、君の都合に合わせるよ」

 

何の用なのだろうか?

でも、先生の知り合いなら別にいいかな。こちらに都合を合わせるというあたり、本気で俺と話をしたいのだろうし。

なんか夕方に娘がどうとか言ってたしそれかな?

 

「はぁ……わかりました。また予定を確認して、空いてる日を連絡します」

 

「ありがとう。楽しみに待ってるよ。要件はそれだけなんだ」

 

「わかりました。俺も楽しみにしてます。吉松さんみたいにスーツをかっこよく着こなす人は、いいお店に連れて行ってくれそうだし」

 

「ははは。うん、とびきり良いところを紹介しようかな。では、引き止めて悪かったね。それじゃあおやすみ」

 

「はい。お休みなさい。またのご来店もお待ちしてます」

 

「ははっ。うん、君のお菓子は美味しいからね。是非また寄らせてもらうよ」

 

そう言って吉松さんが去っていくのを見送る。

うーむ。おそらくだが、夕方に言っていた娘さんの事を話したい吉松パッパと、お話しする約束をしてしまった。冗談で言ったいいお店にも連れて行ってくれるそう。……先生にバレたら注意されそうだな。

まぁ決まったものは変えられない。

明日も忙しくなりそうだし、今日はさっさと帰るとしよう。バイクに跨り、家へと向かう。

何事もなく家にたどり着き一休み。

明日は昼からとはいえ、今日はもう遅い。さっさと風呂に入ってしまい、寝る準備を終える。

 

「さて、寝ますかね」

 

その時だった。

玄関が騒がしい。ガチャガチャガチャン!と焦りながら鍵を開けて、勢いよく扉を開いた音。ドタドタと何者かが入ってくる。

 

「違うってシュウ!!!そうじゃないのぉ!!」

 

「何時だと思ってんの?お前……」

 

「違うんだよ!さっきはつい流しちゃったけどさ!」

 

入ってきたのは千束だ。

こいつ、何をしに来たんだ?というか、近所迷惑ですよ?今日はちょっとテンション上がりすぎだわ。

 

「たきなのパンツ!!トランクスが衝撃的すぎて流しちゃったけどシュウ見てるじゃん!」

 

「勘弁してくれ……え?それ言うためだけに来たの?何時だと思ってんのさ……」

 

「トランクスだから良かったものの、違ったら大問題だよ!?そりゃもうアレよ?慈悲深い私でも堪忍袋の緒がプッチンだよ!?」

 

「もうプッチンしてるじゃねぇか……」

 

俺がたきなのパンツを見た。だから制裁を加えるそれだけのために来たらしい。

 

「たきなには謝ったろ?」

 

「私には!?」

 

「え?なんで?」

 

なんでじゃない!と騒ぎだそうとする千束。

こいつ、部屋着になってるあたり、本当に思い至ってすぐに来やがったんだなぁ。

 

「へ?わっ!?」

 

俺はだんだんとイライラしてきた。

千束を担ぎ上げ、寝室へと運びベッドへと放り投げる。

 

「え?え?ちょ、シュウさん?」

 

「千束。そろそろ、本気でうるさいよ?今日はちょっと騒ぎすぎです」

 

「あ、はい。すみませんでした」

 

「そこで寝ろ。おやすみ」

 

「あ」

 

「ん?どうした?」

 

俺が部屋から出ようとしたが、千束が手を伸ばしてきた。なんだ?

 

「ソファで寝るの?」

 

「まぁ、床で寝たくは無いからな」

 

「一緒とかどうです?」

 

「ベッドでか?」

 

「あ、はい」

 

……いや、それでもいいのだが、何故そんなに不自然な態度なのだろうか?普段はもうちょい普通だと思うんだが?気になる。

 

「なんか変じゃないか?どうした?」

 

「あー、その。怒ってる?」

 

「なんで?別に怒ってないけど?」

 

「本当!?あー、よかったよかった。いやぁ、流石にこんな時間に押しかけてきたのはマズかったなぁと、千束さんも反省した所だった訳ですよ」

 

「あぁ、大丈夫。それはまた今度にでも罰を与えるから」

 

「えっ!?」

 

「ほら、寝るんだろ?横あけろ」

 

俺は千束の隣へと入り込む。

さっき少しだけ寝たが、すぐに寝れそうなぐらいには疲れている様だ。もう瞼が重い。

 

「いや、ちょいちょい。罰って何?普通に嫌なんですけどぉ?」

 

「おやすみ」

 

「起きて」

 

千束が揺さぶってくるが、俺の眠気の方が勝つようだ。騒ぐ千束の声も遠くなっていき、すぐに意識は深い眠りへと落ちていくのだった。

 

「え!?ほんとに寝るじゃん!ちょ!シュウ?罰ってなにぃ〜!?」




次回予告のたきなの顔……よかったね。
ミズキさんとクルミもいい感じに予告?してくれるし。
次も楽しみだ。
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