自分は見ました。
色々と考えながら見ていると、涙が出てきました。
リコリコも来週で……って考えると俺は来週からなにを楽しみにすればいいのか。
続きが気になるが、来ないでほしいとも思ってしまう複雑な一週間の幕開けですね。
スマホの置き方がすごい変な男は、あげた除菌シートでスマホを拭きながら去っていった。
その後、俺は自販機でジュースを買ってトイレ近くの休憩場所で時間を潰す。たまに声をかけられるが適当にあしらいつつ、千束とたきなを待っているのだ。
っと、電話だ。
「もしもし?終わった?」
『終わった〜!おやつタイムにするから外で待ち合わせようか!』
「はいよ。とりあえずすぐに出るよ」
『はーい。また後で』
電話を切って移動を開始。
一応、さっきの男がいないかだけ確認しながら移動。見える範囲には居なさそうだし、変な感覚もないから、この場からは離れていると思うのだが……。アレに暴れられると少し厄介な気もするし少し安心した。
「お!きたきたぁ。シュ〜ウ〜!こっちこっち!」
「すみません修哉さん。お待たせしました」
「こっちこそ待たせたかな。持つよ」
千束とたきなと合流して荷物を受け取る。
とりあえず移動しておやつを食べに行くらしいが、途中どこかのロッカーにでも荷物は預けておこうか。どうせ他にも行く場所は増えるだろうし。
「とりあえずパンケーキ食べたいかなぁ」
「パンケーキですか?」
「そう!リコリコの店員たるもの!いろいろなカフェの調査も義務であるのだぁ!」
「たきな、義務じゃないから気にするなよ?ただ千束が食べたいだけだ」
「はい、わかりました。でも確かに、他のお店を見ることも大事かもしれませんね」
「そうだなぁ。あ、そういえば有名なチェーン店なんだけどさ。その店の系列の和喫茶が、都内にも一件だけあるんだよな。今度行ってみるか?」
「リコリコも和菓子を扱ってますからね。いいと思います」
「あー!千束さんを仲間外れにするなんて酷いぞ!?それにシュウ!たきなとのデートとかさせるわけないでしょ!?事務所通せ事務所!」
「DA?」
「違うわい!」
「楠木司令に通されても困るといいますか」
「たきなも違う!そうじゃないからね!?リコリコを!私を通せって意味だよ」
「どうして千束を通す必要が?」
「え?そりゃ私がリコリコのホールのリーダーだからだよ」
「え?そうでしたっけ?」
「あぁん。たきなぁ、もっとノってきてよぉ」
「はいはい。行くぞ」
賑やかだなぁ。
俺は道中にでも、ロッカーに荷物を預けて移動しようと思っていたが、千束が良さそうな店を見つけた方が早くその店に入る事に。その際千束が今日はいい天気だし外で食べたいと言い出し、外のテラス席で食事をする事になった。
「なに食べるかなぁ。てか普通に腹減ったし、パスタとかピザとか……うーん」
「えー?パンケーキ食べないの?」
「あー。ちょいくれ」
「じゃあシュウのも一口ちょうだいね」
千束と一緒に外食をするときは、いつもこんな感じでシェアをする。食べ物のシェアは嫌がる人も居るらしいのだが、一緒にいる時間が長すぎるせいで気にもならない。というか、美味しいものは美味しいなと共有したいまである。
「ちょっとトイレ」
「え?また?」
「うん。ジュース飲み過ぎた。あ、ナポリタンにするから頼んどいて」
「はいはーい」
「たきなも、遠慮せずなんでも頼めよ」
「はい。ありがとうございます……でも、なにがなにやら」
あー。確かにパンケーキの名前とか長いもんな。
これなんか……えっと、フランボワーズアンドギリシャヨーグルトリコッタ……長すぎん?読むのも嫌になってくるわ。
たきなには決められないなら、千束に任せておけばなんとかなるぞと笑顔だけ返しておく。
とにかくトイレトイレと。
ん?また電話だ。スマホを見てみると楠木さん。
嫌な予感がするぞ……。
「もしもし?」
『修哉、今どこだ?』
「今はカフェにいますけど……え?仕事とかいいませんよね?」
『北押上駅付近で怪しい動きがある。お前にも現場に出てほしいのだが?』
「嫌です!今日は制服着てません!」
『はぁ、我儘を言わないで欲しいものだな。もう十八だぞ?』
「まだまだ遊びたい子供ですね」
『はぁ、すぐに武装を用意できないのならもういい。足手纏いだ』
プツンと電話を切られてしまった。
うーむ。珍しくギリギリの電話だったな。楠木さんからの任務ってラジアータのおかげもあり、結構余裕がある状態で現場に向かえるのだが……。
それにしても北押上駅って……。
「近いよなぁ」
俺も行くべきか?
いやぁ、でもアレだけ諦めがいいのなら、そこまで必要でもないのだろうか?まぁ実際、怪しい奴らなんてそこらにもいるんだし、普通にリコリスが担当して終わるだろう。
俺が動く必要はないと。
「あ、遅かったね。おっきい方?」
「千束……普通に引きます」
「電話だよ。普通、食事中に聞く事じゃねぇからな?」
用を足し、席に戻るとナポリタンが配膳されていた。この店、注文してから来るまで早くない?
……なんだろう。少し負けた気分である。
「あ、美味そう」
「おいしかったよ。ね?たきな」
「はい。優しい味でした」
「あ、二人とも食べたのね」
席に座って俺も食べ始める。
こ、この短時間に作り終えてこの美味さ。
結構穴場な喫茶店では?この店と、この店を選んだ千束には拍手を送りたい。
俺がナポリタンに舌鼓をうっていると、少し離れた席に座る外国人の方の困っている声が聞こえてきた。
「なんか困ってそうだね」
「そんな感じだな。まぁ、俺は言葉わからんけど」
「じゃあちょっと行ってくるね。あ、私のパンケーキ一口なら食べてていいよ」
「あいよー」
早速千束は人助けをしに行った。
いやぁ、さすがだなぁ。
千束を眺めながらナポリタンを食べていると、たきなが話しかけてきた。
「修哉さんは今まで、語学の授業は受けなかったんですか?」
「ん?あぁ、俺は七歳まで、まともな教育を受けてなくてな。DAに拾われてからちゃんとした日本語を中心に、礼儀や常識とかを教わってたんだが、色々あってリコリコに行ったからその時点で終了だったんだわ」
「つまり、他の言葉を覚える時間はなかったと?」
「そう。まぁ、勉強は楽しいけど面倒ってのもあった。それに別の国の言葉が必要なら千束がいるし、居なくても別のリコリスを連れて行ってたし問題ない問題ない」
「最強のリコリスを通訳代わりにするって……修哉さんしかしないと思います」
「ははっ!何かあればたきなもよろしくね〜」
うーん。それにしてもいい天気だ。
なんというか……。
「平和だなぁ」
これから何か危険な事が起こるかもしれないのだが、それを一切感じない様な陽気である。
「ですね」
「なぁたきな。それうまい?」
「はい、一口食べます?」
「あーん」
「え?」
「あーんとかしてもらえると思うなお馬鹿!」
「痛い!」
戻ってきた千束にしばかれた。
いや、確かに俺のテンションも上がっていたから調子に乗ったが、それでも叩く事は無いと思う。結局あーんはしてもらえなかったが、たきなからもパンケーキを一口もらい、楽しい食事を終えた。
「次はいいところへ行きます」
「いいところ?」
「あー、いつもの所ね。年パス、家に忘れてきてるんだけど……」
会計を終わらせて次の場所に移動を開始。
というか、絶対に水族館なんだよなぁ。
最近行ってなかったし、千束もたきなに自分の好きな場所を教えたいのだろう。
水族館に行くとわかれば、俺も少しテンションが上がってきたな。クラゲの水槽が好きでずっと見ていられるからなぁ。一度飼うのも考えたが、たまに見るからこそ良いのだろう。
やってきたのは水族館。
千束は年パスを持っているため問題はないが、俺とたきなはチケットを買う必要があるので窓口へと向かう。
「学生二人で」
俺は受付のお姉さんに話しかけて、たきなの分も合わせてチケットを買おうとしたのだが、相手は不思議そうな顔をして話しかけてきた。
「あれ?修哉くんじゃない?年パス持っているでしょう?」
「……あぁ、いやぁ、忘れちゃって」
もう何回も来ているからか、顔を覚えられているのだ。てか、名前を言った覚えはないのだが?
あと馴れ馴れしくされるのはちょっと……。
「ふーん。なら今日は特別に私の方で処理しとくわね。だから今度一緒に食事でも」
「二枚分の代金です!お願いします!」
「た、たきな?」
「あら?今日は別の子?なになに?遊んでるわねぇ」
こ、こいつぅ!!
なんだ?誰こいつ!!てかなに!?ちょっ!他のスタッフさぁん!?この人、客の名前知ってる上にめちゃくちゃ挑発してくるんだけどぉ!?問題じゃないかなぁ!?
「なーにしてるの?」
「千束、いいところに。加勢してください」
「お?元カノさんも一緒?」
「はぁ?元カノだぁ?というか、スタッフとしてその接客はどうなのかね?ん?」
あ、だめだこれ。
千束まで迫力のある笑顔で加勢し始めた。
俺は素早く別のスタッフの方にチケットの発行をしてもらう。今度は男性のスタッフだったが、この人も俺の顔を知っているおかげで年パスで入った事にしてくれるらしい。ありがたい。
ともかく!俺は二人をあの問題の人から離さなければいけない。すみません、その人の指導お願いしますね。
「ほら千束にたきな!ステイ!早く中に行くよ」
「おぉう!?ちょいちょい、急に担ぐなってぇ」
「おわっ!?シュ、修哉さん!?待ってください!まだ話が!」
「その辺は別のスタッフの人に任せてるから、お前らはこっちです」
問答無用で担ぎ上げて、水族館の中に入っていく。はぁ、ただチケットを発行するだけなのにこれとは……先が思いやられるなぁ。お前らも、犬じゃないんだから威嚇をするな阿呆。
まぁ、あとは中で綺麗な場所を見るだけだし、大丈夫だと思っておこう。
入場口をすぎてしまうと、千束もたきなも切り替えが早い。もうすっかりと元の機嫌に戻ってくれた。
「千束、年パスなんて持ってるんですね」
「んー?だって、ここ綺麗でしょ?私もシュウも好きだからねぇ。たきなも良ければ、年パスの購入を検討してくださぁい」
「はぁ、楽しければ考えます」
「なら大丈夫だね!私達がしっかりとガイドをしてあげよう!」
あ、俺もなのね。
そんなわけで色々と見ていこう。色々と見ているとタツノオトシゴで少し話が盛り上がった。
「これ、魚らしいですよ」
「マジ?魚だったのかこいつ」
「食えるぞ、それ」
「「え!?」」
「何処だったかなぁ。どっか忘れたけど別の国では、唐揚げにして食えるらしい」
「ま、マジかぁ。全然食欲湧かないフォルムだなこいつ」
「シュ、修哉さん、猟奇的ですね。たぶん、水族館で食べれる食べれないを考えている人って少ないと思いますよ?初めてのわたしでも思いませんでした」
「なんか、ごめん」
お次はチンアナゴコーナー。
ここに来れば千束はいつもチンアナゴの真似をする。今日も両手を上げてゆらゆらと……。たきなが呆れてるぞ?
それにしてもたきなさん?君、ここに来るまでもずっと思っていたが、スマホでめちゃくちゃ調べて楽しそうじゃない?今、たきなの検索履歴を見れば、今まで見てきた魚の名前がズラリと並んでいる事だろう。
「あれ、なにしてるんですか?」
そんな楽しんでいるたきなでも、千束の奇行は気になるらしい。あれねぇ、視線集めるものねぇ。
「チンアナゴだってよ。放っておいていい」
「は?私の渾身のチンアナゴを見て、その反応はなに?」
「目立ってますよ?私達はリコリスなんですから目立つ行動はするべきではないと思いますが」
「ふふん。制服を着ていない時は、リコリスじゃありませ〜ん!」
千束はくるくる回りながら離れていった。
それを呆れつつもたきなは俺に聞いてくる。
「いいんですか?あれ」
「いいんじゃない?たきなも今はリコリスである事を忘れて、井ノ上たきなとして楽しめばいいさ」
「はぁ……。ちなみにこれって食べれます?」
チンアナゴを指差しながら聞いてくるたきな。
い、いやぁ、そいつはどうなんだろうか?
「……骨だらけじゃないかな?」
「という事は、食べられないと?」
「骨まで食えるほどよく揚げたら……イケるかも?」
「なるほど」
「……タツノオトシゴもだけど、まかないとかで出したりしないからな?」
「なに言ってるんですか、わかってますよ」
それならいいが。
でもたぶん、出したら出したで興味ありげに食いそうである。そんなたきなを連れて次の水槽へと向かうのだった。