一週間ずっと楽しみだったが、時間が近づくにつれてお腹痛くなってくる。
そんな気がする。
目覚ましが鳴る前に起床。
頑張った私!よく起きた!!
昨日は色々と変なテンションになってしまい、暴走気味だったのは認めましょう。
そのせいでシュウを怒らせてしまい、罰を受けることになってしまった。私はその罰の回避のための一歩として、早起きのミッションを完了させる事がなんとかできた。
「よっし!やりますか!」
改めて時間を確認。
……九時?……ははぁん?シュウさん、家の時計壊れてますねぇ?まったく、ダメだなぁ。
「スマホ〜スマ〜ホ〜」
時刻は九時……。
ふぅ、なるほど?これはぁ……。
「寝坊、ですなぁ……やっばいぃいぃ!!」
衝撃の事実を受け止めながら小声で叫ぶ。
シュウが起きない様に、ベッドから素早く抜け出しキッチンへと駆け込む。
昨日のシュウは、すぐに寝てしまうほどには疲れていた。という事はシュウが起きるまではまだ余裕があると思う。
うん、経験上大丈夫なはず。
「えっとえっと!まずご飯を炊いて、おっとと、ゆっくりぃゆっくりぃ」
あまりバタバタとしすぎると起こしてしまう。
時間に余裕がないため、急がなければいけないが焦ってしまうとミッション失敗。待つのはお説教だ。
「いよっし!お米セット完了!次はぁ……もう目玉焼きとベーコンでいっか、千束ちゃんの朝ごはんがあれば誰でもご機嫌でしょう」
でもなんか、面倒になってきたな。
ご飯が炊きあがるのを待つ間に、コーヒーを用意してみたり、シュウの家に置いている映画を物色しながら今度映画観賞会でもしようかと考えみたり、シュウの寝顔を激写してみたりとしているうちにご飯が炊き上がる。早炊きって素敵。
「まぁ、おにぎりにはしてやるかぁ」
冷蔵庫の中を確認してみるが、梅干しなどの具材にできそうなものがなく、塩オンリーでいくことに。
「あっちち!」
おにぎりを用意した後、おかずである目玉焼きとベーコンを焼いていく。出来上がったら自分の分をさっと食べて、使用した食器などは全て洗い終わり完了。時刻は九時五十分。完璧である。
「自分の手際の良さが怖いよねぇ。あとはしれっとシュウにアピールしつつ、罰から目を逸らさせているうちに家に帰れば完璧。ちょろいもんですわ」
いやぁ、完璧すぎる手腕には千束さん本人もびっくりだよね。そして運命の時間がやってくる。
寝室の扉が開き、シュウが出てきた。
あらぁ、寝癖すごいね。……おっと、ミッションスタートですね!
「あ、起きた?おはよう」
「おはよう。……朝ごはん作ってくれたのか?」
食いついた!!
おいおい、私さんよぉ?焦っちゃあいけねぇ。
そう!ここはちょっとだけ恥ずかしそうに声を作るのがポイント!女優だわ。今、私名女優になってるわ。
「う、うん。シュウはぐっすり寝てたからね。たまには私が作るのもアリだなぁって」
「ありがとう。食べてもいい?」
「どーぞどーぞ」
ふぅ、何度も言うが完璧です。
とくに『う、うん』ここ!ここです!いい感じです!そしてここからさらに仕上げ!
私はキッチンの戸棚を物色してインスタント味噌汁を取り出す。ポットのお湯でお味噌汁を作り、さりげなくシュウに渡す。
「コレもどーぞ。インスタントだけど」
「お、嬉しい」
「それは良かったぁ。それじゃあ私は一度家に帰るね。用意しないとダメだし」
なんの疑いもなくお味噌汁を受け取るシュウ。
私はこの時点で緩みそうになる顔を隠すのに必死である。私は帰宅する事を伝えてシュウから顔を逸らす。……イェーイ!計画通り!!
おっと、ガッツポーズはまだ早い。今は絶対に悪い顔をしてると思うが、顔を合わせないように気をつけておく。
「おう。また後でな」
「駅集合だからね?遅れないように」
「はいよ〜」
すこーし危なかったが、最後まで気を緩めず玄関を出ることができた。フーッと一息つく。
「ま、私にかかればこんなもんですよ」
シュウの事だ。
そのうち思い出す気はするが、その時にはもう時間が経ちすぎているはず。私の勝ちです。
だが遊びに行った次の日。
私主導で廃棄していたたきなのトランクスをなんとなく履いてみて、トランクスのやつ、意外と良いなと少しテンションが上がっているところをミズキに見られた時の事。
「店の中で騒ぎすぎだぁ!!」
「ひぃ〜ん!ごめんなさ〜い!!」
私が悪いのだろうか?
とも思ってしまうが、騒ぎすぎたのは事実。
最初は少しの注意だったのだが、我慢の限界が来たシュウに私とミズキとクルミは怒られていた。
「ミズキさんはしばらく店では禁酒!」
「んなっ!?それは勘弁して!私から酒をとったら美貌しか残らないのに!!」
「それも残ってるか怪しいけどな」
「なにぃ!?この!生意気なリスが!」
ちょいちょい!おばか!
シュウさんまだ怒られていらっしゃるんだから!
「クルミは……」
「え?」
「一週間ネット一時間」
「な、なにぃ!?ぼ、ボクからネットを取り上げるとかなんで!」
「だから一週間にして一日一時間はやってるだろ?何か嫌か?ん?」
「あぐぅ……」
あぁ!にっこり悪魔スマイルをしていらっしゃる!ダメだからね?クルミはもう黙ってる方がいいからね?
「そして千束」
「はい!」
「お前には罰もあったな?」
「え!?あ、えっとぉ……」
「ん?」
「はい!その通りです!!」
「一週間まかない係!」
「喜んでさせていただきます!!」
「ちょっと甘くないです?」
たきな!?
え?急な裏切り!?たきな最近そんなところ多いよ!?え?うそ、皿洗いも追加?うわぁーん!あんまりだよぉ!!
今日は千束と修哉さんと一緒に、私の下着を買いに出た。経緯としては店の指定の下着と思われたトランクスが、千束判断ではダメだったらしい。だから買いに出たわけだが……本当に二人は不思議な人だと思う。今まではいなかったタイプだ。
……トランクス、楽でよかったんだけどなぁ。
そして今は下着を買い終わり、千束のお楽しみとしてカフェにおやつを食べにきた。
リコリコの店員として勉強になるだろうとは思うのだが……。
「名前がカロリーの塊ですね」
「え〜?まぁそうだけど。でも美味しいものほどカロリーは高いのである。大丈夫大丈夫!私達は普段から動いているし、カロリーの消費なんてすぐだよ」
「修哉さん、遅いですね」
「おっきいんじゃない?」
おっき……!?
こ、この人はなぜ平然にこんな事を言えるのだろう?少し切り替えるのに苦労してしまうが私はリコリス。それもセカンド。
これまで積み重ねた訓練のおかげで、気持ちを切り替える事はできる。この人相手には頑張ればがつく事があるが……。
「お待たせしました〜」
そして運ばれてきたパンケーキはあまり見た事がない程に派手であった。こ、これは本当にカロリー爆弾だ。糖質の塊である。
「これを見ると、寮の食事は考えられているんだなと実感します」
「あの料理長、元宮内庁の総料理長だったらしいよ?でもスイーツを作ってくれない点は減点対象ですね」
「私、あのかりんとう好きですけど」
「まぁ美味しいのは美味しいけどね。シュウなんて食べる機会があれば持ち帰りするし」
持ち帰るのか……。
なんていうか……たまに思うが修哉さんって、まともに見えて突拍子のない事をするな。作る料理は美味しいし、仕事も千束よりもまともなアドバイスをくれるし、見習うところはたくさんあるがたまに発揮する人間離れした所はまだ慣れない部分がある。
「ほらほら!たきなも早く食べな?」
「はい。ですが糖質の塊すぎて、手が出しづらいのですが……」
「たきな!」
「あうっ!」
頭突きをされてしまった。
痛くはないが、衝撃で怯んでしまう。
「人間一生で食べられる回数は決まってるんだよ?」
「はぁ」
「つまり!すべての食事は美味しく楽しく幸せであれぇ!」
「お待たせしましたぁ〜ナポリタンです」
「おぉ!!これも美味しそぉ〜!ほらほら、せっかくだしたきなも一口!」
「修哉さんのですけど、いいんですか?」
「いいの!シュウの物は私の物、私の物は私の物って事だよ」
たまに恐ろしい思考をしているよなぁこの人。
少し引いてしまうが、ナポリタンが美味しそうなのは事実。一口味見をさせてもらうとしたら、わたしのフォークに口をつけていない今だけだろう。
「それじゃあせっかくですし。……今日は走らないといけませんね」
「お?いいねぇ!一緒に走る?」
「いえ、千束と走ると寄り道ばかりしそうですし」
「えぇ?そうかなぁ?」
そんな話をしていると修哉さんがトイレから戻ってきた。少し時間がかかっていたので、何かあったのだろうか?と思っていたら……。
「あ、遅かったね。おっきい方?」
千束がとんでもない事を言い出した。
思わず思考が停止したが、すぐに切り替える事で千束を注意することにする。
「千束……普通に引きます」
「電話だよ。普通、食事中に聞く事じゃねぇからな?」
修哉さんの言う通りですね。
食事中に聞くべき事じゃありせん。
そのあとは修哉さんにナポリタンのお礼にパンケーキを一口お返ししたり、千束が注文のやり方に困っている人を助けに行ったりとした。
それにしても修哉さん。最強のリコリスを通訳がわりに使っていたなんて、なに考えているんでしょうか?そのうち、私もさせられるのだろうなと少し思ってしまうおやつタイムだった。
そして次は水族館へときた。
初めてきたが、とても綺麗な所でいつの間にか夢中になって魚について調べていた。受付では少し困った人もいたが、今は楽しめている。
「これ、魚らしいですよ」
タツノオトシゴ。
興味深い姿だが、この姿になった合理的理由はあるのだろうか?すごく気になる。
「マジ?魚だったのかこいつ」
「食えるぞ、それ」
「「え!?」」
「何処だったかなぁ。どっか忘れたけど別の国では、唐揚げにして食えるらしい」
「ま、マジかぁ。全然食欲湧かないフォルムだなこいつ」
こ、この人……。
水族館でそんな事を考える人がいるとは思わなかった。料理人はいつもこんな事を考えているのか?と、何故かこう複雑な気持ちになってしまう。
この人達、どっちもだけどたまに突拍子もなくとんでもない事を言う為、少し疲れる。いや、それ含めて結果的には楽しいと思えているのだからいいのだろうか?
それからも水族館を周り、千束がアランチルドレンである事や、千束と修哉さんの過去の話も聞く事ができた。お土産も大きなペンギンを買ってもらったりと、今までに経験した事がない事ばかりであっという間に時間が過ぎた一日だったな。
「楽しかったな」
家に帰ってから自然と呟いた言葉。
うん、楽しかった。
修哉さんに買ってもらったペンギンはどこに置こうか?帰りの間抱いていたが、すごく抱き心地がいい。ソファに置いて置く?棚の上は〜……結構大きいから無理か。
「今日はとりあえず、ベッドでいいか」
なんとなくだったが、ペンギンを抱きながら寝ると安眠できた気がする。
翌日、すっきりとした目覚めでいつもよりも早くリコリコへと向かうことにする。店長に言われ店の奥で少しやる事があり引っ込んでいたのだが、店内の方が騒がしい。
「なんだろう?」
どうせ千束が騒いでいるだけなのだが、気になってキッチンの方から様子を見る為に出る。
そして、その……。
今回だけは許しますけど!!次は!本当に実弾撃ちますからね!?修哉さん!!
それにしても次回予告ずるくない?
俺泣いちゃったよ?
いや、本当に。
とにかく最終回。楽しんで観ような!