見終わった後、終わってしまった喪失感でしばらく動けなかったです。
まだ見ていない人も多いでしょうからね。あまり感想言えないのが辛い。
最近毎日ずっとしている事ですが、リコリコを見ながらなんとか生きていこうと思います。
あの水族館の日から一ヶ月が経った。
俺にとっては、激動の一ヶ月だったと言ってもいいだろう。まだ生々しく戦闘の跡が残る地下鉄のホームに向かい、何か手がかりが残っていないかとクリーナーと一緒になって探してみたり、ラジアータを使って街頭カメラに映る怪しそうな人物を探してみたりと……。いや、わざわざDAにまで行く羽目になるとは思っていなかった。
やっと落ち着きリコリコの営業にもちゃんと入れるようになり、今やっているニュースを見ながらようやく解放されたのだなと実感する。
「いまだにこのニュースよく見るよなぁ」
カウンターの中に立ち、ニュースを見ながらコーヒーを飲んでいるとクルミが声をかけてきた。
おい、寝転んで物を食うな。
「DAの依頼で修哉も関わってるんだろ?実際どうなんだ?」
「んー。詳しい事は言えないけど復旧はまだまだ先だろうなぁ。結構ひどい現場だったし……てかクルミ、座敷で寝転びながら煎餅を食うな。掃除させるぞ?」
寝転びながら煎餅を食べるクルミと話す。
いや、知りたがりなのは知ってるからそんな目で見るな。話題を変える為に思わず掃除させると言ってしまった。いや、させるけど。
「たきなぁ〜!洗濯物畳むついでに掃除もよろしくぅ!」
「絶対嫌です。自分でしてください」
こいつ……。
洗濯物を取り込み、上から降りてきたたきなに対して仕事を押し付けるクルミ。お前……そんななりでも、一応俺らよりも年上なんだろう?自分でやりなさい。
「たきなを使うなアホリス。あと、座布団へたるだろ?折り畳んでクッションの代わりにするな自分の枕使え」
「修哉!」
「なに?」
「ボクが自分で動くと思うのか?取ってこい」
プツンと音がした気がする。
こ、このクソニートもどきリス!!!
「ふん!」
「ぶえぁっ!?」
手元にあった布巾をくるみの顔に向けて投げた。
濡れている布巾だった為、バチンッと大きな音が鳴り悶絶しているクルミ。いや、すまんかった。
「何やってるんですか」
「クルミが悪いって事でここは一つ……」
「ダメです。修哉さんも反省してください」
流石にふざけすぎてたきなに怒られてしまった。
……いや、それにしても暇だな。一応営業時間なのだが、お客さんが来る気配が一向に無い。
そんな事があるわけないのに看板がOpenになってるか確認したり、ボーッとコーヒーでも飲もうかと思っていると、たきなが小さな声で話しかけて来た。
「暇そうですね」
「まぁ〜この通り誰もいないからなぁ」
「ならクルミを連れて、買い出しにでも行って来てください」
「え?なんで?千束が外にいるし、千束に連絡しようよ」
「こっちに」
たきなに腕を引かれて店の奥へと連れて行かれた。なんだなんだ?なんか珍しいな。
「クルミの押し入れ見ましたか?」
「いや、見てないけど?」
相手はクルミだとはいえ、一応女性である。千束相手ならともかく、俺が普通に入るなんて事はしない。そんで?何か問題でもあるの?
「食べかすがすごいです。パソコンは守られているのですが、椅子とかが結構汚れているので今の間に掃除がしたいなと。千束ももうすぐ帰ってくるので、修哉さん抜きでもしばらくは保ちますから」
「あーうん。わかった」
なんというか、一気に掃除をしたいという強い意志が伝わって来た。断れないなこれ。
俺は更衣室に向かって着替えを始める。流石に和服でバイクには乗れない。着替え終わり更衣室から出てきた後、たきなから買い物メモをもらいクルミを脇に抱えあげた。
「なんだ?」
「買い物行くぞ」
「……ん?まさかボクを連れて行くつもりか?修哉お前……頭大丈夫か?買い出しよりも病院に行くといい。ボクがいい病院を調べてやるから」
こ、こいつぅ!!
落ち着け俺!そう、クールに行こう。たきなのように切り替えをしてクルミに話しかける。さっきの発言は水に流してやるからありがたく思え。
「たまには外に出て陽の光でも浴びろ。カビ生えるぞ」
「生えるわけないだろ?一人で行け」
「はぁ、自分の部屋掃除するか、買い物に行っている間にたきなに掃除してもらうか選べよ」
「…………」
「長いわ!……なぁクルミ、下履いてるよな?」
「…………」
「たきなさぁん!!ちょっと助けてぇ!」
俺は早めのギブアップを宣言。
たきなにクルミの服装のチェックをしてもらい、買い物に行っても問題ないと判断をもらう。
この時にはクルミも諦めたのか、大人しくヘルメットをかぶっていた。俺はクルミを持ち上げてバイクに乗せる。
「さてと、出るぞ」
「はいはい。まったく、なぜボクが買い出しなんて事を……」
「まぁ一人では出歩けないだろ?こんなタイミングにこそ少しは外に出ておけよ。しっかり捕まっておけよ?振り落としたとか洒落にならないからな」
「わかっているよ」
たきなからのメモを見たが、それほど多くの物はなかった。たきなのやつ、本当にクルミに外へ行ってほしかっただけなんだな。
クルミは買い物中にお菓子をほしがったりもしたが、千束よりマシでスムーズに買い物を終えた。だがまだ戻るのは早いだろうという事で、スーパーで買ったジュースを飲みながら公園で一休み。
「そういえば、依頼の話は聞いたか?」
「あぁ、護衛依頼だな。もちろん把握しているよ」
「そうか。最後に東京を巡りたいなんて、珍しい人もいるもんだな」
「はっ!一般的に言えば、うちのメンツなんて珍しいのしかいないだろう?あんがい、依頼人の方が普通なんじゃないのか?」
「そうかぁ?まぁ長く生きている分、見えてるものも違うって事で納得するよ」
筋萎縮性側索硬化症という難病も患っていて、歳も結構な依頼人。それに今はアメリカに住んでいるのに、態々東京に来たいと思うものなのだろうか?まだ生まれ故郷とかならわかるのだが、そうでもなさそうなのがなぁ……。
「それなりに敵も多いみたいだし、襲撃はあるだろうな」
「ボクがちゃんと、周辺の監視をしててやるから安心しろ。襲撃者が来るまでは、楽しんで観光すればいいさ」
「あ、俺は別行動」
「ん?そんな話は聞いてないが……何かあったのか?」
「いや、少しな。DAの人に会うだけだし、すぐに合流するから大丈夫だよ」
北押上駅の件で少しだけ話があるだけである。
そのぐらいの用事なら電話で済ましてくれるとありがたいとも思ってしまうが、駅内も少し見ておきたいしちょうど良かったとでも思っておこうかな。
「さてと!帰るか!」
「やっとか?はぁ、こんなに外に出たのはいつぶりだろうな。ボクは疲れたし、帰ったら何か甘いものでも作ってくれ」
「えぇ〜……」
「ほら、早く行くぞ」
「はいよ」
帰りも安全運転でリコリコへと戻ってこれた。
なんというか、クルミとのこんな時間もたまには良いのかもしれないな。
「あ、帰ってきた。二人ともおかえり〜」
「ただいま」
「聞いてくれ千束。修哉のやつが私とデートしたいと言うから仕方なく買い物デートをしてきてな」
「なにぃ!?」
「お前またか!!」
クルミのやつなんて事を言ってやがる!
ていうか千束!どうせお前もたきなからの聞いてるだろ!?その証拠にたきながキッチンの方から呆れた顔をしながら出てきた。
「千束。わたしが掃除をしたいから二人には出てもらったって言ってますよね?怒りますよ?」
「あぁんたきなぁ〜ん。これはちゃうね〜ん」
「ちゃうねんじゃないです」
「「おぉ、綺麗なちゃうねん」」
たきなの関西弁。
非常に珍しく俺とクルミが思わずつぶやいてしまった言葉に、たきなが睨んでくる。その視線から逃げるべく、俺は少しおかしなテンションでクルミに話しかけた。
「ヘイ!クルミ!なに食べたい?」
「あ、あ〜!団子だな〜!」
「オッケー!じゃあ厨房にレッツゴー!ちゃんとお手手洗うんだぜぃ!」
「任せろ!ごっしごししちゃうぜ!」
「はっはー!そのいきだクルミィ!」
う、うん?
厨房へと入り、たきなが見えなくなると困惑した表情でこちらを見るクルミ。やめろその目、俺もなにがなにやら……なんだこのテンション。
「なにあれ?」
「こっちが聞きたいですよ」
ホールの方からの声は聞こえないことにしつつ、クルミと千束達の団子を準備する俺だった。その後もお客さんが増えるということはなく、実にゆっくりとした一日となったのだった。
時間は流れ閉店後。
片付けも終わって俺はクルミと一緒に、二階席の方でゲーム中なのだが……お前どこに座ってんのさ。なぜかクルミは俺の胡座の上に座っている。
こいつは小さいから胡座の上にスポンと収まりがいいな。
そして一階のホールでは、無駄に気合を入れた千束が大きな声で話し出した。
だがしかし、たまにではあるがこんな時こそ空回りしてしまうのが千束である。気合がある千束とは違い、集まったみんなは聞く気はあれど自由にリラックスしていた。
「今回の依頼内容を説明しよう!とっても楽しいお仕事ですよぉ〜!」
「クルミ……それ、座りにくくない?」
「そうでもないぞ?意外と安定感がある」
「ちょい!」
「今回はミズキさんが説明しないんですか?」
「それがねぇ、やたらアレが張り切ってんのよ」
「あぁ、それで」
「ちょいちょい!」
「なぁ、クルミ。俺としては邪魔なんだが……画面よく見えないし」
「ちょいちょいちょい!ちょい!ちょいって!」
「我慢しろ」
「えぇ〜……あ、死んだ」
「だあああ!!私語が多い!!君たちみんな、先生を見習いなさい!ねぇ先生!?」
「ん?何か言ったか?」
「え!?聞いて!?」
たしかに騒がしかったな。
俺たち全員を注意するために、千束が下で騒ぎながら怒っている。まぁなぜか上機嫌のまま依頼内容を説明しようとしてたもんな。ただな千束、お前以外全員目を通してるから知ってるぞ?
「後そこのリス!!そこ!私の席だから!今すぐ退く事!」
「俺の胡座はいつからそんな席になったのだろうか?」
「今はボク専用だ」
「ダメに決まってんじゃ〜ん!」
ドタバタと二階まで駆け上がり、クルミを引き剥がす千束。お、ゲーム画面見やすいな、ナイス千束。
「クルミ!!あとゲームもしない!てかシュウさん?どうしてあなたは簡単に受け入れちゃってるのかな?」
「ん?問題あったか?」
「問題だらけだよね!?てかなに?最近本当に思うけど仲良すぎだからね!?いい事だけど。いい事だけど!!」
「あんたにとって、そこは大事なところなのね」
シュウはこっち!と千束に手を引かれてカウンターの席へと連れて行かれる。そして先生の隣に無理矢理座らされた。
「修哉も大変だな」
「そう思うなら、千束のブレーキを踏んであげてほしいです」
「ははは。楽しそうだからいいじゃないか」
「まぁ、楽しくないわけではないけど」
「ブツブツ文句言わない!ほら、再開するよ」
そして千束の説明が再開されるのだった。
あの、あえて言葉にはしてないけど……みんな知ってるからね?君だけだからね?まだ内容確認してなかったの。
さて、この話もどう締めるか考えを煮詰めないとね。
大体の流れは決まってるけど。