リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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やっとアニメ五話の話が終わります。
お待たせしてしまいましたね。
楽しんでくれると嬉しいです。


第二十六話

「ジン!!」

 

「!?」

 

屋上へと登りきった俺の目の前には、屋上の扉から飛び出てきたジンがいた。

俺はすぐさま接近しようとする。

 

「え?はぁ!?ちょいちょい待って!!」

 

俺の登場に一瞬驚いたジンだったが、俺が接近する前に俺目掛けてあるものを投げてきた。時間にして数秒だが、確認できたそれは手榴弾だ。

まだ屋上に登りきったばかりで体勢を整えたばかりの俺は、思わぬ攻撃に焦ってしまう。

普通は銃撃つとかだろ!?いきなり手榴弾とか殺意高すぎませんか!?

 

「こっっんにゃろ!!」

 

ジンの方へと飛びかかろうとしていたが、急遽力を入れる方を変えてジンから距離をとる。屋上から落ちるギリギリの場所でやる事じゃないよね!

リコリスのカバンで防御をしつつ、衝撃を受け流しつつなんとか着地。視界いっぱいに広がっている防弾性のカバンをすぐに退けるが、ジンの姿はなかった。

 

「速いな!!」

 

それにしても本当に話さない奴なんだな。

驚きはしてたが声には出てなかった。声帯に問題があるとかか?まぁそんなことは今はいいか。

 

「さて、厄介だな」

 

これからジンを追いかけるわけだが、俺はクリアリングをしながら進まなくてはいけない。いくら感覚が鋭くて、相手の気配が分かるとは言っても罠までも察知できるわけではないのだ。

まぁ、引っかかってもギリギリで避けれる自信はあるが……。これから合流してくるたきなにはできないだろう。

 

「こんな事なら専用の戦闘服を用意するべきだったか?アレなら装備で蜘蛛男さんみたいに行動も一応できるし」

 

映画のように縦横無尽とは行かないがな。

カバンを背負い直し、ジンを追いかけようとするが見知った気配が近づいてきた。すぐにドパン!と勢いよく扉が開き、たきなが追いついてきた。

 

「ジンは!?」

 

「すぐに追うぞ」

 

「はい!」

 

たきなと合流し、俺が先行しつつ屋上を走っていく。広い施設の屋上は、大きな室外機などがあるせいで意外と隠れる場所が多い。注意しながら進んでいこう。

 

 

 

進行速度が遅くなっている事を自覚しつつ、たきなと一緒に屋上を進んでいく。東京駅のほうに進んでいるようだが、駅のホームには護衛対象の松下さんがいる。

まぁ千束がちゃんと見ててくれるだろうから安心だな。

 

『十五メートル先の室外機の裏にいるぞ』

 

クルミからの通信だ。

ミズキさんがジンにつけた発信機を追ってもらっているのだが、これは……。

 

「ちょっ!修哉さん!!」

 

「気付かれたな」

 

たきなの声を無視して室外機の後ろに回るが、そこにはジンのコートだけが残されていた。迷いなく追ってくる俺たちに対して警戒したのだろう。そして唯一接触したミズキさんが怪しいと睨んだのだろうか?

 

「居ない!?クルミ!」

 

「千束!今どこだ!」

 

たきなはクルミに連絡を取っている。

その間に俺は千束へと通信を繋げる。だが、千束から帰ってきた言葉は、俺が欲しいものではなかった。

 

『ごめん!!松下さん見失って探してる!!』

 

「は?どういう……いや、お前電車に乗って逃げる手筈だったろ?」

 

『少し目を離したら居なくなっちゃってて!車椅子も一緒にだから、そんなに遠くに行ってないと思うんだけど!!』

 

これは、少し不味いな。

俺は室外機の上に登り、ジンが移動しそうな場所を探る。どこだ?俺ならどこに行く?

……いや、これは何かおかしくないか?

 

「修哉さん!」

 

「!なんだ?」

 

「クルミにはジンを見失った事を知らせました。私たちも早く移動しないと、ジンが松下さんを見つけたら最悪です!」

 

「そうだな……」

 

だがどこだ?

俺たちはジンの場所がわからない。

だがジンの行動は、どこか迷いがないような気がするのだが……。

 

『千束が松下を見つけたぞ!すぐに誘導を開始する!』

 

クルミからの通信だった。

その言葉に弾かれたように走り出すたきな。

 

「っ!たきな!先行しすぎるな!」

 

「もう時間がありません!」

 

こ、こいつ!

だれかぁ!この子にリードでもつけてやってください!!

クルミに誘導された場所は現在工事中の区画。

作業用の足場が組まれているせいで、ただ屋上を移動するよりも楽に移動できてしまう。

 

「あれは!!」

 

「待てたきな!」

 

たきなの視線の先にはジンがいた。

そのジンは銃を構え、下の方に向けて狙いを定めている。まずい!

 

「千束!!」

 

通信をする暇もなく叫ぶ。

聞こえるとは思わないが、思わずそうしてしまった。たきなも俺の声を合図にしたかのように千束の名前を叫び走りながら、標的であるジンを撃とうとしている。

 

「って!あのバカ!」

 

俺は地面も踏み抜けるんではないか?と思えるぐらいの踏み込みでたきなの下へと走る。

たきなは走りながらも銃を撃ち、ジンへと迫っているが、あれでは体当たりしてもおかしくない。こんな所でもみ合いにでもなれば、どちらも一緒に落下してもおかしくないのだ。

 

「千束ぉ!!逃げてぇ!!」

 

「ッ!?」

 

「たきなぁああ!!」

 

って!本当に体当たりをするバカがいるか!?

 

「おい……ついた!!!」

 

たきなとジンがお互いに巻き込まれて落下していくのに、なんとか追いつくことができた。

俺はたきなの制服の背中を掴み、自分の腕の中へと収める。この時すでに落下地点は確認済みであり、うまく着地さえできれば多少の怪我で済むだろう。……見えない位置にある資材で串刺しとかにならなければだが。

ガシャンと大きな音を何度も鳴らし、一部を壊しながらの落下は想像以上に辛いものとなった。

 

「グッ!!ガッッ!!」

 

高いところからの落下。

俺だけでなく、たきなも合わせての衝撃は、俺が一瞬意識を失いかける程度には酷い。

 

「修哉さん!!」

 

「走れバカ!」

 

たきなの声のおかげで無理矢理意識を覚醒させることに成功させる。自分で走れと言いながらもたきなを抱え上げてジンから距離を取るために走り出す。

 

「ひゃわ!」

 

変なところを持ったかもしれん……。

緊急時のため変な声を出すたきなを無視してしまったが、後で殴られたりしないよね?

 

「自分で走れますから!修哉さんは退いてください!」

 

「はは。この状況でお前を置いていけると思うなよ?」

 

「ですが!わたしを庇って落下したのですよ!?それに血も!」

 

少し頭を切っているのだろう。

頭にヌメリとした感覚があったし、あーなんか切ったなぁとは思っていたが……やっぱりか。

大丈夫大丈夫。頭の出血って派手に見えるだけだから。

 

「唾でもつけてたら治る」

 

「んなわけないでしょう!?」

 

「はっはっは!いつもよりテンションが高いなぁたきなは」

 

「人のこと言えませんからね!?あぁもう!!!千束!松下さんを避難させてください!!」

 

「おっと、そうだった。千束ぉ!今の間にミズキさんとでも合流して逃げろよ!」

 

「修哉さんは早く身を隠せる場所に行ってください!応急処置しますから!!」

 

「いや、無理でしょ?」

 

そう言った瞬間、背後から銃弾が飛んでくる。

人一人抱えているとは言っても結構な速さで走っていると思うのだが、それでも追いついてくるあたりジンの身体能力は高いようだ。

俺の中でジンに対する脅威度が益々上がってくるな。

 

「このままだと追いつかれるな。何処かしらに隠れて迎え撃って」

 

カチンと静かに音が鳴った。罠だ。

俺はたきなを放り投げて、カバンのギミックである防弾仕様のエアバッグのような物を膨らませる。その瞬間爆発の衝撃に吹き飛ばされた。

 

「修哉さん!!」

 

一瞬で、電源を抜いたかのように俺の意識はなくなった。

 

 

 

「修哉さん!修哉さん!!アグッ!!」

 

ハッと意識を取り戻す。

大声と共に何かの液体が飛んできたような。

朦朧とする意識。なんとか目の焦点を合わせて現状を把握する。

たきなの足に傷ができていた。

瞬間、頭に血が上った。

 

「え?修哉さっっ!!」

 

たきなをコンテナの向こうへと引き摺り込み、たきなが拾ってくれたであろう俺のカバンから銃を素早く取り出す。

察知できる感覚を広げ、上の階から迫ってくる人物を察知。足に力をためて鉄骨の柱を蹴りながら飛び上がる。

 

「ッなに!?!?」

 

「声出るじゃん」

 

サイレント・ジンの声を聞くことができた。

ジンからすれば、目の前にいきなり俺が現れたようにしか見えないだろう。構えていた銃を蹴り上げて弾き飛ばし、ジンに馬乗りになる。

拳を振り下ろし相手を怯ませて、銃をジンに向けて構える。

 

「シュウ!何やってんの!!!」

 

千束の声だと認識した瞬間だった。

俺の視界が横へとぶれる。続いて側頭部に衝撃と痛みを感じ、また意識が遠くなる。

 

「おわぁああ!!!あ、あれぇ!?まさか当たるとはって!?私実弾入れてないよね!?なんで血だらけ!?」

 

「……こっっの!実弾なら死んでるわ!!!」

 

こ、このバカ!俺を撃ってどうする!!

だが騒がしい声が俺の意識をなんとか繋げてくれた。いまだに俺の下から抜け出そうとするジンの襟首を掴み、引き寄せながらジンの額に頭を打ち付ける。

 

「ッッ!!フンッッ!!!」

 

「ガッ!」

 

「うわあぁあ!!なにやってんのぉぉ!!シュウ頭怪我してるのにバカでしょぉ!!!ちょっ!あ!たきなぁ!救急車ぁはダメか!って応急処置しないとぉ!!」

 

あークラクラする。

今の頭突きである程度は冷静になれた。だがしかし高所からの落下、頭部からの出血、たきなを抱えて全力ダッシュは流石の俺でもハイになってしまっていたな。

気を失っているジンの上から立ち上がり、ふらつく足に気合を入れる。

 

「だ、だからそんなに張り切らなくていいって!ほら、治療するから!」

 

「たきなが撃たれてる。そっちを優先してやってくれ」

 

「なにぃ!?了解!」

 

「あ、随分と軽い感じで行くのね」

 

「死にそうにないシュウよりも、たきなの方が優先じゃい!」

 

「それは確かに」

 

バカな事を話せるだけの余裕はあるらしい。

とはいえこの場所で騒ぎすぎたし早く退散しなければならないのだ。千束が下の階層に置いてきたたきなに声をかけているのを見ながら考える。

偶然とはいえだ。俺、あいつが止めてくれなければジンを殺していたな。

それに気がついた途端、一気に体に疲労感がたまるのを自覚した。……もう少しで千束を悲しませるところだったな。それにコイツ、先生の元同僚らしいし……。

 

「はぁ……疲れた」

 

『殺したのか?』

 

「ん?」

 

振り向いた先には松下さんがいた。

ここまで一人できたのか?いや、奥の方にミズキさんがへたり込んでいる。走り込みでもしなさい。

 

『殺していないのか?なら早く殺してくれ。そいつは私の家族の命を奪った男だ。殺してくれ!』

 

「ま、松下さん?いきなりそんな事を言われても」

 

『本来なら私の家族が殺された二十年前に殺しておくべきだった。今でも殺したいとは思うが、残念ながら私ではできない。頼む、君達の手で殺してくれ』

 

「いや、松下さん。コイツはきちんと捕らえて然るべきところに」

 

『修哉くん。君はなんのために育てられたのだと思っている?君を育てた人はよく言っていたはずだ。護国の為にと』

 

……は?

 

『それに君もだ。君はアランチルドレンだろう?なんのために命をもらったのか、その意味をよく考えて見るんだ』

 

「松下さん。私達はね、人の命は奪いたくないんだ』

 

『は?』

 

いや、待て。

待ってくれ。

こいつ、誰なんだ?何者なんだ?

 

「私はリコリスだけど、誰かを助ける仕事をしたい。これをくれた人みたいにね」

 

千束は松下さんにわかってもらいたいという一心で優しく語りかけている。だが、俺はそれどころではなかった。

 

「え?ちょっ!シュウ!」

 

「お前は誰だ」

 

『……おぉ』

 

「ちょ!誰に銃向けてるのかわかってる!?力つっよ!ミズキ!手伝って!」

 

「その言葉は!その言葉だけは誰かに広めたりなんてしていない!それに、俺を育てた爺さんを知ってやがるな?お前、一体何者だ?」

 

『それだよ』

 

「は?」

 

『あぁ、その目だ。その暗闇のような目。あの映像からでも身が竦むかのような冷徹な目。それを見れただけでも収穫だった。君は【鴉】になることができる』

 

「何を……!?おい!…おい!松下さん!?」

 

松下さんの車椅子についている様々な機械がオフになった。千束が俺を押しのけて松下さんに声をかける。だが、俺たちに時間はなくこの場から退散するほかに選択肢はなかった。

 

 

 

その後、俺たちはクリーナーを呼びジンや松下さんを運び出して工事現場から退散した。

俺はバイクを取りに行く為、一旦別行動になったのだがどうやら先生の指示でジンを逃したらしい。また会う事もあれば額が割れるぐらいには強い頭突きをした事を謝るとしよう。

 

「ただいま」

 

「おかえりー。どうだった?」

 

「問題なし、傷口もほとんど塞がってたよ」

 

「本当に頑丈ですね。回復力も異常です」

 

DA管轄の病院に行って治療をしてもらい、やっとのことでリコリコに帰って来れた。

というか君たちさ。

 

「何してんの?」

 

「千束の心臓の音を聞いています」

 

「音がしないのもわかったでしょう?そろそろどいてくれぇ」

 

「いい枕ですよ」

 

「枕ちゃうわ!!」

 

仲良く漫才をしている二人を放っておく事にして、俺は何か食べるものを探しだす。流石に腹が減って倒れそうだ。

 

「あ、冷蔵庫にガパオライス入ってるよ〜」

 

なんでガパオライス?

まぁありがたく食べさせてもらうことにしよう。

ガパオライスをレンジで温めている間に先生を探す。

 

「居ないのか?千束〜先生は何処行ったんだ?」

 

「先生?……あれ?そういえば何処だろ?知らなーい」

 

「そうか」

 

色々と聞きたいことがあったのだが……。

まぁ今は食欲を優先しよう。

温め終わったガパオライスを取り出してカウンターで食べ始める準備をする。

 

「いただきます」

 

「はいよ〜。ありがたく感謝しながら食べてね」

 

「はいはい。ありがたいありがたい」

 

「あ、修哉さん。スープでも飲みますか?用意しますね」

 

「ありがとうたきな」

 

「……ん?なんか扱いの差があるような」

 

気のせいだ。

色々とあった一日だったがこれ以上何かが起こることはないだろう。これ以上何かあっても見ないふりして逃げるとしよう。

 

「扱いに差がある気がするんですけどぉ!!」

 

見ないフリ。聞こえないフリ。

今の俺には騒がしい千束は見えません。




いつもの流れだとちょっとしたお話を入れますが、最近少し忙しいのでどうしようかと迷っています。
本編を進めるか、五話で書かなかった部分の所を書くか。
うーん。迷う。


あと、何日もかけて書いたから変な所があったらすみません。
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