リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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お久しぶりです。
転職活動が終わり次も決まったので、少し気持ちに余裕ができてやっと書くことができました。
お待たせして申し訳ないです。
とりあえず今回ですが
・しおり作り
・修哉を振り回す?二人
この二本で行きます。
楽しんでもらえれば嬉しいです。


ちょっとした日常5

明日の松下さん護衛のための作戦会議が終わり帰宅。このまま適当にご飯を食べて風呂に入ってゆっくり体を休めたいところではあるのだが、そうもいかない理由ができてしまった。

 

「よっし!!しおり作りの始まりじゃい!」

 

「自分の家でやってほしい」

 

「えー?だって一人で作るのは寂しいじゃん。たきなにはフラれたし」

 

「だからってなぁ。っておい、何漁ってるんだよ。そこには何も入れてなかったと思うけど」

 

普段使っていない部屋に入っていく千束。俺はボヤきながらもついて行くのだが、千束は部屋の中にあるクローゼットの中を漁りだした。

 

「この辺に色鉛筆とかペンとか色々あった気がするんだけどぉ〜っと?発見!」

 

え?俺の家、そんなのあったの?

クローゼットを漁っている千束を見ながらそう思う。そのまま千束を眺めていると紙からペンに色々出てくる出てくる……え?あんまりクローゼットは開けてなかったけどさ?それでも俺の知らない物が、そんなにいっぱいあったの?

 

「ちょっと多かったかな?まぁいいや!さてさて、なんでタイトルにしようかな」

 

「いやいやいやいや!!待て待て!」

 

「なんだよぅ」

 

「お前、うちのクローゼットを玩具箱にしてるな?他には何がある?」

 

「あ!ちょ!ちょいちょい!見ちゃダメだって!」

 

千束の後ろからクローゼットの中を覗き込む。

ガラクタのようなおもちゃや、誰が作るのかもわからないプラモデルの箱。他にも今取り出した紙やペンなどなど……。

俺が知らないうちにこんな事に……。

 

「……」

 

「あぁ……その〜……」

 

「まぁ、自分で片付けだけはしとけよ」

 

「え?……置いてていいの!?」

 

「捨てろとかは言わないよ。散らかしてたら勝手に片付けるけど」

 

とりあえず千束は放っておいてリビングへと入る。テレビをつけてドスンとソファに深く座る。

あー。疲れた。

 

「どいたどいたぁ!ほぉれ!」

 

ごちゃごちゃっと机の上が一瞬で散らかってしまった。こんなにペンいらないだろ?

 

「あ、そういえば白って二百色あるらしいよ?」

 

「誰情報だよ……。白は白だろ?」

 

「私もそう思う」

 

え?こんなに話広がらないことある?

たきな以来だよこんなの。

 

「それで?タイトル決めたの?」

 

「うーん。シンプルに東京観光?」

 

「大でもつければ?」

 

「おぉ!?大観光!?いいねもらい!……次は何処に行くかだなぁ〜」

 

ペンを片手に表紙の案を書き込んでいる千束。

俺はそれを見ながら適当にテレビのチャンネルを変えていくと、七夕祭りの特集がやっていた。

 

「七夕祭りは?」

 

「あ!そっかぁ。今やってるね!それじゃあ浅草あたりを行くとして、移動は車だと渋滞にあうよね?」

 

「あー……。水上バスでも使ってみるか?」

 

「今日のシュウさん冴えてて私は嬉しい。案を出さなくてもポンポン出てくるし」

 

「自分でも考えろよ?俺は飯でも作ってくるとしようかね」

 

「えぇ〜!もうちょい付き合ってよぉ〜!」

 

「いいか千束?俺は明日途中合流だろ?それなのに祭りの事を話すとかな?そんなの楽しみになってくるし、あ、結局は祭りに行けないじゃん?ってなるからいーやーでーすー!!!」

 

「お、おぉう。なんかごめんちゃい」

 

とにかく千束は放っておいて、俺は何かご飯を作る事に。祭りかー、なんていう千束。まぁたきなも楽しめるように予定を組んであげてくれ。

一時間程でぱぱっと作ったご飯。

出来上がったご飯を食べるときには大体の場所は決定したようだ。

 

「今日は焼き魚かぁ。いいねぇ」

 

「骨は自分で取れよ?」

 

「そこまで子供ちゃうわい!」

 

ご飯を食べながら観光内容を聞いていく。

観光地はなかなかいい所をピックアップしているのではないだろうか?そして驚きなのが千束の知識だ。浅草の話から始まったのだが中店通りの事や浅草寺の歴史など、この短時間の間にある程度調べていたようだ。

 

「お前、頭いいよな」

 

「天才美少女千束ちゃんですから」

 

「普段はバカなのにな」

 

「なんだとぉ!!」

 

「チンアナゴとか」

 

「いいでしょチンアナゴ!!」

 

なんてふざけてながらも楽しみつつ、食事を進める。この時の俺は、あんな事になるなんて少しも思ってはいなかった。

しおりの細部にまで凝りたい千束は五冊以上もしおりを作った上に、それに付き合わされる俺がやっとの思いでベッドに入り込めるのも深夜の二時になるなんて……。

この時は少しも考えていなかったのだ。

眠気で薄れゆく意識の中で俺は思う。

あれ?依頼主の松下さんって、病気のせいでしおりが持てないんじゃないか?と……。

 

 

 

松下の護衛……。

いや、何がしたいのかがわからない何者かの企みが一旦終わってしばらくした後。

この何日もの間に、俺は先生と二人きりで話すタイミングをずっと見計らってきた。

俺は何者なのか?

俺を育てた爺さんは何をしたかったのか?

烏……いや、カラスとは何か?

松下は俺に色々なものを残して消えていってしまった。それを、俺自身の事を聞きたかったのだ。

だが、先生は答えてはくれなかった。

 

『すこし、時間をくれないか?』

 

今は仕込みで忙しいだろう?と。

いつもと同じ表情だった。だけど長年の関係のせいだろうか?どこか苦しそうな雰囲気なのがわかってしまい、それ以上聞くことはできなかった。

 

「はぁ……」

 

「あんた、またため息ついてるわよ」

 

「あー。ごめんなさい」

 

「厨房ではいいけど、ホールの方でやらないようにしなさいよ?」

 

「はーい」

 

ミズキさんに注意されてしまった。

確かに今はリコリコの営業中。これ以上暗い雰囲気を出していてはダメだろう。

美味しい料理も作れなくなってしまう。

頬を叩いて気合いを入れる。

 

「よっし!」

 

空元気なのはわかってはいる。

だがしかし急に完全復活とはいかず、癒されようと来てくれるお客さんのためにできるだけホールには出ないようにしつつも、今日の営業を何とか乗りきった。

もう十日はこんな感じか?さすがに不味いと反省をしながら片付けを進めて行く。

はぁ、常連さんにはバレてるよなぁ。来る人みんなにお土産をもらってしまった。少しでも早く元に戻さないと……。いよっし!もう一踏ん張りだし、気合を入れて掃除をしてしまおう!

 

「修哉」

 

「ん?どしたの先生」

 

「急だが用事ができてな。明日は休みにするからゆっくり休んでくれ」

 

「あ、あぁうん。わかった」

 

というわけで休みになってしまった。

力が抜けてしまう。気合を入れたばかりだったというのにな。

 

「あ!シュ〜ウ!」

 

「次は千束か。なんだ?」

 

「そうだ!京都へ行こう!!」

 

「は?」

 

「って事で明日行くよ!」

 

「……はぁ!?」

 

京都行きが決まった瞬間だった。

こうなったら事態はどんどん進んでいく。店の片付けは千束主導の元たきなと連携しつつ素早く進められ、そのまま俺の家へと直行。

千束は俺の退路を塞ぐため荷物を用意させ、自分の家へと連れて帰ったのだ。今日は久々に千束の家に泊まる事になった。

 

「あ、明日朝イチで行くからね。今日早く寝ること」

 

そう言ってさっさとベッドに入れられる。

そして今、俺は新幹線の中にいます。

 

「……なんで!?」

 

「お祭りだよお祭り!祇園祭があるってたきなが教えてくれたのよ」

 

「今日は宵山のはずですから。この間、私達だけが七夕祭りを楽しんでしまいましたし」

 

「ほう」

 

「それに言ってたじゃないですか。一緒にお祭りに行こうって」

 

そういえばそんな約束もしたな。

ん?でもそれって?

 

「なんで千束いるの?俺はたきなと二人でって言ったじゃん。な?たきな?」

 

「ええ、着いてきちゃいましたね」

 

「な!?え?えぇ!?二人してそんな事する!?」

 

「冗談だ」

 

「冗談です」

 

「だ、だよね!……あ〜せったぁ……」

 

「何を焦ってるんだよ」

 

「なんでもないですぅ」

 

それにしてもたきなの案内付きで祇園祭観光か。

これはすごく楽しみになってきたな。

 

「なぁ、たきな。祇園祭ってどんな事するんだ?」

 

「え?知りません」

 

「「……ん?なんて?」」

 

知りませんって言った?

いやいやいやいや、そんな事ある?だってたきなは京都から来たでしょ?大きなお祭りなんて悪い事を企む奴らも増えるんだからさ?

だから少しぐらい……いや、たきななら知らなくても不思議がない気がしてきたぞ。

 

「わたし、向こうでは支部にいるか任務で外に出るだけでしたし」

 

「あ、あー。そうか……」

 

「大丈夫です。なんか地図とか貰えるらしいですから」

 

「……えっとぉ、たきな?ちなみに地図がもらえる場所は?」

 

「知りません」

 

「「だめだこりゃ」」

 

「ダメってなんですか!!」

 

呆れた俺たちにたきなは怒ってしまう。

いや、でもよぉ。リコリスとして街の色々なことは知っておかないとさぁ。京都は裏道とかも多そうな勝手なイメージあるし、地理を知り街のことを知るのは尚更必要じゃない?

そんな話をしていると京都駅へと着いた。

お祭りがやっている場所まではたきなが案内をしてくれる。でもそこからどんな出店があって、どんな楽しみ方があるのかは知らないらしい。

でも大丈夫。俺たちにはコイツがいる。

 

「いよっしゃ!!!日帰り京都旅行楽しむぞぉ!!!」

 

「大丈夫そうですね」

 

「千束だからな」

 

さて、ではここは俺が奢ってやろう。

DAからお小遣い程度ではあるが、依頼の報酬が入っているのだ。出店を楽しめば使い切る程度のものだが楽しめるのなら受けた甲斐もあるな。

 

「たこ焼き、お好み焼き、リンゴ飴〜。イッカ焼っき、カッステッラ、チョコバッナナ〜!」

 

「ん!?いや、どうしてそうなった!?」

 

先程奢ろうと思った意思が揺らいでしまう。

それほど時間がかからずに千束の両手には沢山の食べ物が集まっているのだ。それに持ち前の明るさと人懐っこさのせいで、可愛いだなんだと言われオマケまで貰って……。

いやぁ、最終的に何処まで多くなるんだろうか?

この状況を見たたきなは心配そうに話しかけてきた。

 

「あの、わたし達三人でそんなに食べれます?」

 

「残るなら俺が食うから大丈夫。たきなも好きなの食べるといいさ」

 

「そうします。千束、わたしにもカステラください」

 

「お!たきなも食べるぅ?食え食え!」

 

もはや祇園祭ならではのものを楽しむということは無くなってしまった。これではただの食べ物巡りだし、お祭りの品は東京でも食えるぞ?

まぁそんな事を言えば大ブーイングが来るだろうから言わないけどさ。

 

「ほら、一度買い物はストップして片付けていくぞ。流石に持ち物が多すぎて、人に迷惑をかけてしまうかもだし」

 

「ふぉふぁね」

 

「フランクフルト食べながら返事しないでください。それに、串を加えたまま歩くのもダメです!」

 

たきなの言う通りだぞ?怪我する前にやめとけ。

結局は東京に帰る時間まで出店を回っただけだった。泊まりで大阪観光もしたいと我儘を言う千束をたきなと一緒に引きずりながら新幹線に乗って東京へと戻る。

 

「楽しかったね」

 

「そだな」

 

「今日は全然観光しなかったし、次はたきなの案内で色々と巡りたいね」

 

「別にわたしは京都に詳しいわけではないですよ?千束と違って、遊びに出かけたりしてたわけではないですし」

 

「言い方ぁ!!」

 

東京に着きリコリコへのお土産を抱えて帰宅中だが、千束とたきなはまだまだ元気そうである。俺も疲れた訳ではないが、女の子のパワフルさを見た気がしないでもない。

 

「あー。二人とも」

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

「ありがとな。少し元気出た」

 

今日は俺の気晴らしになればと考えてくれていたのだろうと思い、お礼を言うことにしたのだ。

だがそれを聞いた二人はニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

 

「えー?何のことぉ?どう思うたきなぁ?」

 

「さぁ?わたし達がお祭りに行きたかっただけなんですけどね?変な修哉さんですね」

 

「おいバカやめろ恥ずかしいだろ?」

 

二人のあんまりな対応に、俺は思わず早口になってしまった。それを見て二人は大きな声で笑い出す。

はぁ、仲が良くてよろしいってことにしよう。

後日。

この日の夜は久しぶりによく寝れたなと思う俺だった。




振り回す、と言いましたがただ元気づけてくれただけです。
サブタイトルというか、どんな事かを前書きに書いちゃうとネタバレになるなと思い、振り回す?なんて書きました。
次回からはアニメ六話に突入します。
真島さんも本格的に出てきますし、いい感じに動いてくれるといいなぁ。

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