リコリス・リコイル 平和を守る物語   作:クウト

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第四話

店の外に出るとすでに太陽は沈みかけていた。

依頼内容を簡単に聞くだけのつもりだったが、一時間以上はかかってしまったな。

それにしてもDAは大丈夫か?どうも、偽の取引の時間を掴まされてたみたいだし、あの時の通信もノイズがあっておかしかった。これって、本格的に何かあるだろ?

電波塔での事件から十年が経った今、何が起こってもおかしくないのかもしれない。

 

「さてと。早くしないと暗くなるし、今のうちに沙保里さんを家まで送ろうか」

 

「そうだねぇ。いやぁ、ついつい話し込んじゃった」

 

いや、ほんとに話し込みすぎだからね?

本来なら俺は千束達に合流後、今回の依頼者である篠原沙保里さんの説明を聞いたらすぐにでも行動を開始するつもりだった。

だがあれだ。女三人寄れば姦しいというか、千束と篠原さんが仲良くなりすぎたのか、なっっっかなか話が終わらない。千束だけで二人分以上の煩さはあるだろこれ……あ、ちなみに俺と井ノ上さんは聞き役になっていた。

井ノ上さん、少し疲れた顔をしているのは気のせいだろうか?いや、会計時に少しため息をついていたし、おそらく気のせいじゃないと思う。

まぁそれは今は置いておいて、とにかくこれからどうするかだな。

これからの予定を組み上げようと考え始めた時、千束が俺に声をかけてきた。

 

「それじゃあシュウ、行こうか」

 

「ん?千束は篠原さんの家に泊まるんだろ?荷物は俺が持っていくぞ?」

 

「私の分だけならいいんだけどね。たきなの服の用意とかさせられないでしょ?泊まりって知ったらミズキは文句言うだろうしねー」

 

「それもそうか。じゃあ篠原さんに井ノ上さんと行動するように説明してて。あ、井ノ上さん」

 

千束はオッケーと言い篠原さんの元へと向かう。

俺が声をかけた井ノ上さんは篠原さんに捕まっていたが、千束と入れ替わり近づいてくる。

 

「なんですか?」

 

「これから千束とお泊まりセットを用意してくるからさ。服の場所だけ教えてくれる?なんかキャリーバッグみたいなのに持ってきたりしてる?」

 

「はい。持ち込んだ荷物があります。千束さんも私の荷物は見ているのでわかるかと」

 

なら大丈夫そうだな。

最悪、何かが無くても一晩だけだし問題はないだろう。どうしても必要なものがあれば俺に言ってくれるといい。その時は俺が近くのコンビニにでも走るか、最悪どうしても、本当に仕方ない場合に限ってだが、ミズキさんにでも連絡するとしよう。

……でも見返りに何を要求されるか分からないから、コンビニに売って無いものだったら諦めてね?

 

「了解。じゃあバイクでささっと行ってくるから篠原さんの護衛はよろしくね。もう敵さんは、いつ襲ってきてもおかしくないだろうし」

 

「はい」

 

ストーカーの犯人はこの短期間に写真を見つけだし、脅しまでかけてくる人物だ。これだけ行動が早いとなると、グループの可能性が高いだろう。

沙保里さんはSNSからは写真を消したが、それでもストーカーを止めないとなると、敵の接触も近いと思う。

今回、篠原さんは本当に運が悪い人だと思ってしまうが、俺たちに出会えた事は不幸中の幸いだな。

 

「あと、護衛にあたってだけど、篠原さんは勿論、君自身の命も大事にね。何かあったらすぐに連絡してくれたらいい。急行するから」

 

「分かっています。大丈夫です」

 

あら、そうなの?

……少し不安だがセカンドのリコリスだ。大丈夫と信じて任せるとしよう。

本当なら千束も一緒に行動させたいが、急いで戻ればそれほど時間はかからない。沙保里さんの家も近いようだし、任せるしかなかった。

はぁ、俺と先生は二人の着替えを用意できないし、ミズキさんは絶対に嫌がるだろうし……。

何事もないことだけを願おう。

 

「それじゃあよろしく。千束!いくよ!」

 

「はーい!じゃあ沙保里さんまた後で。じゃあたきな、しばらく任せるから無茶はしないように。命大事にだからね」

 

「はい」

 

「じゃ!行ってきまーす!ほらシュウ行くよ!」

 

「バイクはそっちじゃないぞ」

 

「え?あ、はい……早く案内しなさいよもう」

 

俺と千束は井ノ上さんと篠原さんと別れて歩き出したが、千束が方向を間違えしまうというドジをしていた。そんなちょっと恥ずかしそうな千束と一緒にバイクの元へと戻る。

千束はバイクを見つけると、カバンから鍵を取り出してバイクにつけているサイドバッグからヘルメットを取り出し、被りながら話しかけてくる。

 

「シュウから見て、たきなはどう?」

 

「どうと聞かれても困る。俺はあんまり話してないしなぁ」

 

「えー?こう雰囲気というかさ?なんか無いの?」

 

と言われましても……。

うーむ。

 

「綺麗な黒髪で可愛いとか?」

 

「……はぁん?」

 

「え、なにその目?怖いんだけど?」

 

いきなりゴミを見るような目で見ないでほしい。

仕方ないだろう?俺はまだまともに話していないのだから、外見ぐらいしか判断のしようがない。

 

「変態」

 

「おいこら、それはねぇだろ?お前と違ってまともに話もできてないんだから」

 

「そうだけど、なぁんか腹立つな」

 

「理不尽すぎねぇ?」

 

「ほら!いいから早く出して」

 

「はいはい」

 

何故かいきなり機嫌が悪くなった千束に戸惑ってしまう。なんだこいつ?

俺、なんか悪い事言ったかな?

うーむ。

考えながらバイクに乗り込み、千束がしっかり乗ったことを確認。その時、天啓が舞い降りたのか、俺に電撃が走る。

ははぁん。そう言う事だな。

 

「あぁ、なるほど」

 

「なに?」

 

「お前の髪も綺麗だし可愛いぞ?」

 

これだろ?

やっべぇ。今日の俺天才すぎんか?

自分も褒めてほしいならそう言えよなぁ。

 

「んなっ!?黙って、行け!」

 

「グハッ」

 

結構な力で背中を叩かれた。

えぇ?なんで?違ったの?

千束がなにをそんなに不機嫌なのかが結局分からず、釈然としないまま俺はバイクを走らせるのだった。

 

 

 

リコリコへの帰り道。

道中、喫茶店であれだけ話していた千束が黙ったままな事に戦々恐々としながらも、俺達はリコリコへと無事に戻れた。

 

「ただいま!せんせーい!私のお泊まりセットどこー?」

 

「押入れだ」

 

千束はリコリコへ入った瞬間、大声で先生に話しかけた。それに対してすぐに教えてくれるあたりさすがミカ先生である。

千束は自分の物ぐらいしっかりと管理しなさいよ……。あ、井ノ上さんのもしっかりと準備してあげてね?

 

「ただいま先生」

 

「おかえり。中々、トラブルが大きくなりつつあるようだな」

 

「うん。はぁ、依頼主の運が悪いのか、それを引き込んだ千束の運が良いのかわからなくなる」

 

「どっちもだろう。たきなはどうした?」

 

「どっちもかぁ……。あー、井ノ上さんなら依頼主を護衛中。すぐに戻るつもりだし、短時間なら任せてみようかと思って」

 

どんな護衛をするかによって、井ノ上さんへの今後の対応は変わる。今回は必ず戦闘になるだろうし、俺たちのやり方を知ってほしい。

千束はマシだが、基本的に物騒なのがリコリスだと俺は思っているし、うちはDAとはやり方が違うのだ。篠原さんには悪いが、井ノ上さんにとって、今回はいい勉強をしてもらわないといけない。

この辺はゆっくりと知っていってもらいたかったけど……はぁ、人生うまくいかないものだな。

今にも襲撃があって、篠原さんを巻き込みながら銃撃戦とかしてない事だけを願ってる。さっきも願ったが、本当にお願いしますね?

 

「修哉、千束はどうしたの?いきなりお泊まりセットとか言い出してるけど……はっ!あんた達まさか!修哉!それだけはダメよ!?」

 

コイツら仕事サボってナニするつもりだと言わんばかりの目で睨み、非常に嫌な雰囲気を出すミズキさん。

この人、最近は本当に焦ってない?

とはいえ放っておく訳にもいかず、変な勘違いは修正しなければならない。

 

「あ、ミズキさん、俺達三人は夜のシフト出れない。あと、依頼主の家に!千束達が!泊まるだけだからね?邪推はやめてね?」

 

あえて千束達だけだと強調しておく。

変に邪推されて、新人で慣れていない井ノ上さんに、この人の火花が飛ぶのは避けておきたいのだ。

 

「え!出れないって、ちょっと!それじゃあ私、今日はぶっ続けになるじゃない!」

 

「ごめんね?」

 

「あまり責めてやるな。この間の事件の手がかりが掴めるかもしれないんだから」

 

ほとんど暴走しているミズキさんを見かねて、先生が助けてくれる。本当に頼りになるし助かる。

ミカ先生が助けてくれなければ、さっさと逃げて終わりにするところだった。

だがしかし、仕方ないとはいえ仕事を押し付けるのは悪いし、今度ミズキさんを連れて何かお酒でも買いに行こう。

俺だけだと売ってもらえんし、飲んだことがないからどれも一緒に見えちゃうしな。

 

「うぐっ。そう言われると言い返せない……!DAに連絡して他のリコリスに頼るとか……」

 

「俺はいいけど千束は嫌がるだろうな。リコリスが来ても一応は進展はするだろうけど、結構な死人が出るだろうし」

 

「はぁ……。わかった……!わかったわよ!行ってきなさい」

 

諦めモードのミズキさん。

悪い事をしてしまったとは思うが今回は折れてくれて助かる。ありがたい限りだ。

 

「お?シュウ、ミズキの説得終わった?おっつかれぃ。それじゃあ行こっか!」

 

「千束……!あんたもシュウを見習って、一言詫びでも入れなさい!」

 

「ごめん!あとは任せたー!ほらほら、急いで急いで!」

 

ミズキさんに本当にかるぅく謝りながら、俺の背中をグイグイおしてくる千束。

千束、お前……。

なんかもう、俺の気遣いとか全部台無しにしたな?

そんな二人の様子を見ながら俺と先生はため息をついたのだった。

 

 

 

少し時間がかかってしまい、辺りはすっかり暗くなってしまった。俺はできるだけ急ぎながら住宅街をバイクで走る。

 

「機嫌なおったの?」

 

「んー?別に最初から怒ったりはしてないよ。ちょっと腹がたっただけだし」

 

「それは怒ってるじゃん」

 

「怒ってたらもっと酷いことしてあげるけど?そうだなぁ、一日中シュウの奢りで連れ回してあげるね」

 

「普段とあんまり変わらんな」

 

「そう言うなよー」

 

クスクス笑いながら楽しそうな千束さん。

よく分からんが怒らせてしまったのは事実だし、今度何か埋め合わせはしておこう。

 

「たきな、ちゃんと護衛やってるかなぁ」

 

「一応セカンドだから大丈夫だろ。優秀なんだろ?」

 

一日一緒に行動をしていたのだから分かるだろう?立居振る舞いとかで。井ノ上さんはそれなりに実践経験を積んでると思うし、日々研鑽を忘れないような雰囲気があったな。

 

「そーそー!去年京都からこっちに転属したみたいだよ。優秀だよねぇ」

 

「ほー。すごいじゃん」

 

京都もそれなりに大変だろうが、東京よりはマシだろうしな。こっちはテロ行為が多すぎる。

いい機会だと思い、俺は気になっていた事を千束に、聞いてみる。井ノ上さんの怪我がずっと気になっていたのだ。

 

「顔はどうしたの?怪我してたみたいだけど」

 

「あーあれね。この前の事件で仲間を危険に晒したからって、フキにやられたんだって。あんにゃろ……思い出すだけで、この……!殴らなくてもいいのにね!!」

 

「まぁ、一応フキの気持ちはわかるが……」

 

「じゃあ殴るのは?」

 

「それは確かに。殴るのはどうかと思うよ」

 

「だよねぇ!?……まぁもう文句は言っておいたから、話題変えようか。あと今日した事はねぇ」

 

保育園の手伝い。

日本語学校の手伝い。

組長さんにコーヒーの配達。

特にコーヒーの受け渡しでは、思わせぶりに話したら面白かったようだ。それはちょっと見たかったが、銃を抜こうとしたと聞いた時はやっぱり手が出るの早いのねと納得。真面目そうだが脳筋っぽいのね。

 

「今日一日楽しそうだね」

 

「うん!楽しかったよ。だからこのまま無事に今日を乗り切りたいんだぁ。沙保里さんと夜通しお話しして過ごしたいし」

 

「あまり夜更かしは良くないぞ?いざというとき身体が遅れる」

 

「大丈夫大丈夫。いざという時は守ってくれるでしょ?」

 

「そりゃまぁ、守るけどね?でも基本として、体調は自分で管理してね?」

 

「まっかせなさーい。その辺はしっかりしてるよ!」

 

しっかり……?

一人の時まともな物食わんのに?この間、千束の部屋に入った時、テーブルの上に大量のお菓子が広がってたのは引いたぞ。晩御飯それで、そのままソファで寝たとか聞いたら、さらにドン引きだったわ。

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