アニメ一話の間にどんな日常があったのか。
短いですが幾つか書いてみました。
正直読み飛ばしてもアニメ二話の方へ影響はあまりないです。
・銃取引事件の日のリコリコ営業時の出来事
・千束のバイクを壊してしまったお詫び
・ある日の晩御飯
・ストーカー事件後に落ち込む修哉
の四本です。
楠木さんから深夜の仕事を押し付けられ、早朝からの銃取引事件の後でもリコリコは開店する。
寝不足な上、疲れた身体を覚醒させるため、戻ってからコーヒーとサンドイッチで回復。もはや無理矢理身体を動かしているような状態だが、お客さん達への笑顔は忘れない。
今はピークタイムだし、本来なら厨房に入っている俺も配膳ついでにたまに出て接客中である。
「あ、修哉くん。いつものコーヒーお願い〜ってあれ?修哉くん顔どうしたの?可愛い絆創膏つけてるけど」
常連の女性が俺の顔にある絆創膏に気づいたようだ。
今朝の現場でガラスで切ってしまった傷を、その場で千束に応急処置をしてもらったが、リコリコでもう一度絆創膏を貼り直したのだ。
その際、千束に何かのキャラ物の絆創膏に貼り替えられた。そのせいか、少し目立ってしまったようだ。
「これですか?実は昨日、部屋の整理してたらぶつけちゃって、ちょっとだけ切ったんですよ。絆創膏は千束がくれたやつです」
「えぇ!?切ったって大丈夫!?治る!?せっかく綺麗な顔してるんだから気をつけないと!跡なんて付いたら最悪よ?」
本当のことを言うわけにもいかず誤魔化す。
嘘をついたのが悪く思えるぐらいアタフタと心配してくれる姿には罪悪感が湧いてくる。というか綺麗とは?
「き、綺麗?ま、まぁ大丈夫ですよ。昔から回復力は高いんで、ご飯食べてしっかり寝れば治ります」
「そうなの?若さっていいわねぇ。あ、あとどら焼きバーガーもお願い」
「ご心配いただきありがとうございます。コーヒーとどら焼きバーガーですね。コーヒーはすぐにお持ちしますね」
「よろしくね〜」
一礼してから厨房へと戻る。
その時、カウンターにいる先生にコーヒーを一つ淹れてもらう。あとは千束が持って行ってくれるだろうし、俺はどら焼きバーガーを作り始める。
どら焼きにたっぷりの生クリームにブルーベリーソース、アクセントにりんごを少し散りばめてサンド。皿に乗せて三色団子も一本添える。
「バーガーできた?」
「おう。……なぁ千束。俺の顔って綺麗なのか?」
「え?どうしたの急に」
「いや、さっき言われてな」
「……ふーん。ちょっとこっち向いて?」
「ん?おい、そのペンはなんだやめろ」
千束がエプロンのポケットに入れていたペンを取り出した。片手で俺の顔を固定してペンを徐々に近づけてくるが、それを掴んで止める。
「大丈夫大丈夫。顔に書いたりしないから」
「そのペンの先に、俺の顔以外どこがあるってんだよ」
「絆創膏だよ。本当に大丈夫だって」
これ以上、顔の前でペン先を向けられながら力強く攻防するのも危ないため、俺が先に折れた。
それでいいのだと言いつつ千束は絆創膏にサラサラと何かを書く。
本当に顔には書いていないようだ。
よかった。千束のペンは油性だし、顔に何か書かれていたら対抗して、千束のおでこに肉とか書くところだった。
「これでよっし!」
「何書いたの?」
「秘密〜。あ、営業終わるまで鏡見たりしないでね?」
「はいはい。とりあえずこれ持って行ってくれ」
「はーい!」
おっ待たせしましたー!
なんて元気な声を聞きながら他の作業を進める。
料理を作り、足りなくなった材料を補充。その他の仕込みなども進めながら、たまにホールへと出る。ただホールに出た時は、常連の皆さんに何かニヤニヤとされる。
先生は微笑ましそうだし、ミズキさんは何かイライラしているな。なんだ?
だがそんな事も徐々に慣れてしまって、厨房にいる時間の方が長いために気にする事も無くなり数時間。今日の営業が終わり閉店作業中に俺はふと鏡を見てしまった。
あ、そういえば昼に千束がなにかを書いてたな。
「なんだこれ」
絆創膏を剥がして読んでみる。
小さく書いてあるが普通に読めるな。
『千束専用』
「何書いてんだあいつ。……ん。傷はもう大丈夫そうだな」
なんとなく俺はそれに線を引いて消し新たに言葉を書いておく。
「千束」
「んー?あ、もう絆創膏いらないの?」
「返すよ」
「あだっ!いきなり何するだコラ」
千束のおでこに絆創膏を貼り付けた。
「あれ、なんか書いてる?……まだ未定だってなんだよぉ!」
「専用になったつもりはないよ。ほら、さっさとテーブル拭いていけ」
「あ、ちょっ!」
「……何やら青春の波動を感じる」
千束に絡まれかけるが、ミズキさんが何かよくわからないものを受信し始めたので俺は厨房へ逃げたのだった。
また別の日。
お昼のピークタイムが終わり、おやつついでに入ってきたお客さんも減った頃。
俺は帰り支度を終わらせて先生に挨拶をする。
「お疲れ様でした。先に上がります」
「おつかれ。楽しんでくるといい」
そんな先生の言葉を聞くが少し気が重い。
今日のリコリコの仕事は、早く上がらせてもらうのだ。それは何故か。
「よっし!映画館にレッツゴー!」
「おや?千束ちゃん、今日はもう終わりなのかい?」
「はい!今日はシュウを連れて映画を見に行くんです!いっぱい奢ってもらうんで、昨日からずっと楽しみだったんですぅ」
「お、いいねぇ。修哉くん!これは男の魅せどころだよ!」
「そうだぞぉ!いいところ見せてけぇ?」
常連さんの言葉に悪ノリする千束。
くっそ。バイク壊したお詫びとはいえ、すっごく行きたくない!
だいたいだな。わざとではないし現場の真下にまでバイクに乗ってくる奴が悪いと思うのは俺だけだろうか?俺だけだろうな。大人しくしよう。
「手加減してほしいんですけどね」
「うーん。楽しませてくれたらいいよ?」
「そうかい。それじゃあ、できる限りはしますかね」
「わぷっ!」
千束にヘルメットを被せる。
行ってきますと先生達とお客さんに言って店を出る。千束がまだ何か騒いでいるが、俺が先に出てバイクの用意をしなければいけない。
店の裏に停めてあるバイクに乗り、店の前まで持ってくると、何故か顔が赤い千束がいた。
「どうした?顔赤いけど、なんかあったか?」
「……な、なんでもないっす」
「そうか?まぁ早く乗れ」
「失礼しますっす」
「……いや、絶対おかしいだろ」
「うへぇ!?そんなことないっす!」
これは一体どうした?と困惑していると店の窓が開き、常連のおっさんとおばさんが顔を出してきた。何やらイタズラが成功したような、悪い顔の気がするのは気のせいだろうか?
「あらあらまぁまぁ、初々しいわぁ」
「修哉くん!事故とかすんじゃねぇぞ!千束ちゃんを守ってやんな」
「はい。ちゃんと安全運転で行きますんで大丈夫ですよ」
「「大事にされてるねぇ」」
「う、うるさいなぁ!ほら、早く出す!」
「お、おう。じゃあまた!」
常連さんに頭を下げてからバイクを走らせる。
千束は何故かしばらく黙ったままだったが、ポツポツと話をしてくれるようになった。映画まで時間があるからクレープを食べたいだの、映画館ではキャラメルのポップコーンを分けようだの、水族館にも行きたいだのと増えていく。
今日は意外と長くなりそうだな。
「あ、あとシュウの料理が食べたい」
「はいよ。何がいいか考えておけよ」
「トマト系のパスタ」
「うーん。帰りは買い物してかないとな」
「じゃあ服とかはまた今度にするよ」
「荷物になるからな。そうしてくれ」
とりあえずはクレープ屋だな。
多分映画館の外にあったと思うし、映画館に向かうとしよう。
ちなみに千束チョイスの映画は面白かった。
ある日の夜。
明日は新人がリコリコへと入ってくる予定。
だが千束はそんな事は忘れているのか、いつも通りに過ごしている。
「シュウ〜。今日のご飯なぁにぃ?」
銃取引の日にバイクが大破した千束は、この数日間俺の家に入り浸っていた。
今もテレビを見ながらソファでだらけている。
だが徐々に晩御飯のいい匂いがしてきたからだろうか?お腹を鳴らした千束が話しかけてきた。
「肉」
「肉はわかってるんだよなぁ……。そうじゃなくてメニュー!料理名!」
「鳥の唐揚げ、サラダ、味噌汁、漬け物」
「いいねぇ。あ、お腹が減るような、いい音がしてきたね!」
「揚げ始めたからな」
「味見させて!」
「揚げ始めたばっかだからまだほぼ生だよ。それより先に、風呂掃除でもしてきてくれ」
「えぇ!?私お客様なんですけどぉ!」
ソファで寝転びながら言う千束に目掛けて、国民的なカップ麺を放り投げる。
危なげなくキャッチしたのを見ながら、俺は魔法の言葉を言ってみる。
「働かざるもの「行ってきます!」よろしい」
もう十年以上の付き合いなだけあり、俺の事をよくわかっているようだ。あまりにだらけ過ぎて晩御飯抜きも何回かあるからな。それに、千束が風呂掃除を終わらせて戻ってきたら、いい感じに二度揚げも終わっているだろう。
「……うまそうだな」
今ならまだ千束も戻っていない。
……いける!
「いただきます」
カリッサクッとした食感。
ジュワッとあふれる肉汁。
あぁ、今日も最高にうまい。
「何食べてるんですかねぇ?」
いきなり後ろから抱きつかれた。
「!?びっっっくりしたぁ!!揚げ物してる時に忍び寄るなバカ!」
おま、お前!
俺って気配とかには敏感だけど、家とかのリラックスできる場所ではスイッチオフ状態なんだからもっと気を遣ってほしいんだけど!?!?
特に今なんて千束がいる分、一人の時よりさらに気が抜けているんだから!!まったく接近に気がつかなかったわ!!
「それで?お味はどうなのかバカにも教えて欲しいんですけど?お風呂掃除頑張って終わらせてきたんですけど?」
「……ご苦労。あーん」
「あ、それでいいよ。あーん」
「食べかけだぞ?」
「わかってないなぁ。これは味見だよ?もう一個食べたら本番の量が減っちゃうでしょうが」
「本番て……まぁ、いつもの事か」
何かを炒めたりとかではない、唐揚げなどの個数がある物はいつも一個を分け合っている。
俺の食べかけだが今更だなと思いながら千束に味見してもらう。
「んー!!おいひぃい!」
「感想は食ってからにしてね?」
「んぐんぐ」
まぁその満面の笑みを見たら美味しいのはわかるんだが。今日も喜んでもらえてよかったよ。
「あれ?唐揚げ奇数じゃない?」
「あげるよ」
「いぃやったぁ〜!」
そこまで喜んでくれるならもう何も言えねぇわ。
その後、ご飯を食べて千束が皿洗いをしている間に風呂に入る。リラックスタイムというか二人で映画を見て、俺は見ながら寝落ち。
次の日の朝。
映画を最後まで見たであろう千束が、どんなふうに俺のベッドに行ったのか知らないが、起こしに行くと下着姿で起きてきたのは驚いた。
頼むからもう少しこう、異性がいる空間だって事を考えてほしい。顔真っ赤だったから分かってはいるのだろうが甘すぎるわな。
井ノ上さんがやってきた日の夜。
篠原さんのストーカーもとい、銃取引関係者を片付けて、バイクを大破させられた。
歩いてリコリコへと戻ったが、俺の気落ちした姿を見た先生とミズキさんが駆け寄ってくる。
「無事だったか。千束とたきなはどうした?」
「どうしたのよ修哉。あんたがそれほど落ち込むなんて、まさか……」
「やられた」
「なに?まさか」
「バイクが、大破ですよ。もう無理です」
俺は絶望した本当に落ち込んだ声が出た。
あぁ、あの遠くまで共に駆けた相棒はもういないんだ。ごめんよ。俺が焦ったばかりに、新手を考えなかったばかりに君を死なせてしまった。
「……あぁ。そういえば排気音なかったわね」
「とりあえず茶でも飲むか?」
大人達は冷たかった。
ミズキさんは呆れた顔で片付けを再開。
先生は俺にお茶と余ったどら焼きをくれた。
せっかく出してくれた物だし俺はモソモソとどら焼きをいただき、お茶で喉を潤す。
少し癒された俺は、なんて現金なやつなんだろう。すまない相棒。
さらに落ち込んだ俺を、大人達はもはや居ないものとして扱っている空気。……もうちょい気にしてくれてもいいんじゃないですかねぇ?いいですよ。しばらく落ち込んどくので。
「あいぼぉ」
「あ、やっぱり落ち込んでる。言った通りでしょ?」
「大切にしていたなら仕方ないかと」
二人が帰ってきたようだ。
なに?もうそんなに時間経ってたの?
俺、ここまで歩いて帰ったけどそれなりに距離あったよ?まぁショックのあまり足取りが重過ぎたのはあるかもしれないが……。
「おかえり。早速だけどこれ、なんとかしてもらえない?人の方の相棒さん」
「人の方ってなんだぁ!?」
「うるっさ!ほらあんたもそろそろシャキッとしなさい!新人のたきなと挨拶した?してないならほらちゃんとする!」
ミズキさんにバシンと背中を叩かれる。
でもミズキさんの言う通りだ。今回は依頼で話す暇もあんまりなかったし、今ちゃんと挨拶はしなければ。挨拶大事。
パシンと頬を叩いて気分を変える。
「初めまして。近衛修哉です。喫茶リコリコでは主に厨房担当。戦闘に関しては〜さっき見てたからわかるか。よろしく井ノ上さん。近衛でも修哉でも常識の範囲で好きなように呼んでくれ」
「本日配属になりました井ノ上たきなです。千束さんと近衛さんから学べと司令からの命令です。転属は本意ではありませんが、東京で一番の協力者から学べる事ができ光栄です。この現場で自分を高めて、本部への復帰を果たしたいと思っています」
「おぉう……。そこまでしっかりと挨拶されるとはな。まぁなんでも聞いてくれ。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
「目が死んでなければいい挨拶だったんだけどねぇ……。シュウさんは千束ポイント減点です!」
「なんだそのポイント」
「さぁ?今考えた」
「使えるポイントになったら知らせてくれ」
「オッケー」
その後は千束がリコリコの中を案内しだし、俺はストレスが限界突破したミズキさんに連れられそのまま家に送り届けられた。
「あんた、明日もそれだったら承知しないわよ?ちゃんと寝て明日から切り替えなさい!」
「うっす。お休みなさい」
「あ、外見だけでもタイプの人間におやすみなさいって言われる幸せ。録音するからもう一度言ってくれってあ、ちょっと!待ちなさい!」
俺は逃げるように部屋に戻った。
その日の夢では、仕事を終えた相棒が次の相棒を探せと言い颯爽と去っていくのを見た。
なんか、バイクが喋りだすのはちょっと違うと思いました。
アニメ二話の話が終われば、またこんな感じのを書いてみようと思います。