原神×呪術廻戦   作:影元冬華

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1年生じゃなくて2年生と絡んだわ


5.

 雷電眞は1級呪術師である。双子の妹ながら特級呪霊である「雷電影」を術式で拘束、使役している。

 

 表向きには、そう説明している。だが実際には影を術式で拘束などしておらず、術式も行使していない。眞が持つ術式は呪霊を拘束して使役するものとされているが、本来は全く違う。

 眞は1級で留まる為にそう言っているだけであり、本来の実力は特級に部類される呪術師であった。しかし、女であると言うただ一点だけで軽視され、その扱いは呪術高専に所属している呪術師と比べ、明らかに手間や面倒のかかる立場にあった。

 

 つまりは、上層部の体のいい当たり場所になっていた。

 

 

『此度の件、加茂に不貞を成す輩が仕組んだ後始末と聞いたが、実際にはお前の呪霊が暴走しただけではないのか?』

「いいえ。私の術式は今も効力を発揮して縛り付けています。北海道で起きた一連の巨大呪霊と大量発生は報告通りです」

『特級呪霊を祓った、とあるが、残穢がとても少ないなどありえん。逃げられた、の間違いじゃないのかね?』

「そうであれば今頃、函館は呪霊で大騒ぎでしょう。騒ぎが起きていない以上、討伐はされたと判断しております」

 

 

 あくまでも特級呪霊と核となっていた巨大な呪霊は祓った、そう宣言し眞は粗を探す上層部に対して無感情で対応していた。特級呪霊だったアルベドは双子が契約したことで「野良の」特級呪霊としては祓われたことになっている。巨大な呪霊は言わずもがな、影の手で残さず全て祓いきっている。

 恐らく上層部が放置していたのは、少々騒ぎになっている両面宿儺の器を「処理」するための場所として確保しておきたかったからだろう。それを偶々、先に見つけた珊瑚宮経由で眞へと伝わり、そして縁あるテイワットの仲間を見つけることができた。

 

 上層部としては面白くないことはこの上ないだろう。体のいい処理場所も、特に権力のない一介の呪術師が特級と巨大呪霊を祓ったことも。

 

 

 

『…まあいい。今回の聴取はこのくらいにしておこう』

「そうですか。では」

『報告にあった双子か…ふん、呪術師の双子など、落ちこぼれのゴミでしかないのにな』

 

 

「──ゴミ、ですか」

 

 

 

 ジリッ、と空間が一瞬灼ける。肌を刺す痛みと共に視界には紫電がチリチリと走り、それを放っている本人は静かに怒りを露にする。

 

 

 

「『…もし、あの双子に手を出すというのならば…その時は、珊瑚宮と神里も敵に回すと心得ておけ。容赦も慈悲もなく消し去ります』」

『…!』

 

 

 眞でありながら、そうじゃない存在による警告。普段なら鼻で笑って放置するが、この時だけは全員が死を覚悟した。触れてはならない「何か」がそこにいる、そう思わせるには十分だった。

 最早ここに居る意味はないと足早に立ち去る眞を止める上層部は、誰一人としていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…影、流石に私でも驚きましたよ」

『ごめんなさい、姉さま。ですが、あの二人に手を出されるのは余りにも不快でしたので、抑えきれませんでした』

「怒ってはいません。私も同じですから、ね?」

 

 

「眞さん、終わった?」

「えぇ。…蛍は?」

「えっと、パンダの人?に埋まってます」

「パンダ…あぁ、夜蛾さんの。でしたら、もう少し待ちましょうか」

 

 

 

 うっとおしい連中の場所からようやく解放された眞は、困惑気味の空を見てほほ笑んだ。呪術高専の東京校まで呼ばれ、眞が聴取されている間にその高専の生徒と話をしていたのだろう。東京には五条悟がいる為、まだ比較的人格者がいる印象が強く、信頼できる。個人的に関わりのある夜蛾学長の下でもあるため、双子にはある程度自由にさせていた。

 

 その生徒の中に呪骸であるパンダがいるのだが、恐らく蛍はそのモフモフに引っかかっているのだろう。空は空で少々息切れをしていたところを見るに、恐らく誰かと軽く手合わせでもしていたのかもしれない。

 

 

「あなた達をいずれここに編入させようと綾人さんと相談もしていたのですが、ここの人と話をしてみてどう思いました?」

「…とてもいい人たち、でした。多分、呪術師として関わりがあるならここに来た方がいいんですよね?」

「えぇ。少なくとも、補助監督の補佐を受けれますから、動きやすさはだいぶ変わってきますよ」

「俺の…いや、俺たちの術式は2人じゃなければ(・・・・・・・・)発揮されない。だから、一緒にいれるならどこでもいいかな、とは思ってます」

 

 

 眞は空の言葉に思案する。確かに、この双子は「双子であること」を縛りに強力な術式として成立している。恐らく、双子星だった時の運命が強いが故に術式も特殊なものへと変化し、縛りが発生している。

 今はフリーの呪術師である眞の下だからいいが、もしこれがあの上層部の手の及ぶ範囲に落ちれば、すぐにでも分かたれて2人は「処分」されることとなるだろう。

 

 だからこそ、眞は、珊瑚宮は、神里は待っている。五条悟がすべてを取り払うことを。

 

 

「今はそれでいいでしょう。ですが、いずれは誰かと共に居なければすぐに消えてしまう小さな光でもあるのです。…私は、雷電眞として関りがあったのはほんの僅かな時でしたが、貴方たちを好ましく思っています。無論、影はもっと好ましいと思っているでしょうね」

「それだけじゃない。今俺たちと一緒にいる先生や万葉、裟羅たちも一緒に旅をしたことがあるんだ。だから、もう一度一緒に旅もしたいって思ってる。前は蛍と会うためだったけど、今度は蛍も一緒にみんなで」

「えぇ。だから今は、待ちましょう。変革というのは、本当に目の前に来るまで分からないものですから」

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 その動きはあまりにも洗練されており、しかし歪だと感じた。動き方は知っているのに体は追いつかない、鋭さの先を定める力が体にはまだ備わっていない。そう思わせる、ちぐはぐでありながら完成しつつある太刀筋に高専の2年生たちは戦慄していた。

 

 つい先日、1年生が話していた人物が高専を訪れた。上層部による呼び出しが理由だというが、その待ち時間の間に2人の見習いを見てほしいと夜蛾から言われたのが事の発端であった。

 双子のうち、女の子の方である蛍は早々にパンダを見て興奮しており、先ほどから抱きついて離れない。男の子の方である空は見たことのない場所であるが故に、あちこちを見て興味深げに見ていた。しかし、近接戦を主体にする真希は気づいていた。この2人の体の動かし方は、何度も戦いを抜けてきた歴戦のものであるということを。

 

 年を聞けばまだ14歳だという二人は、年齢の割にはやけに落ち着いて大人びている感じがした。だが、伏黒が言っていたほどの圧力感や呪力はこれと言って感じられない。伏黒の勘違いだったのか、と思う2年生たちだったが、それは真希が空に摸擬戦を挑んだことで一変した。

 

 

 

 武器として選んだのは槍。演習用と言うことで先は潰してあるが、それでも身長と同じほどの長さの獲物を軽々と振るう少年は、今まで勝負してきた誰よりも動きが滑らかだった。

 天与呪縛による身体能力の強化を受けている真希の攻撃をいなす技術は最早1級呪術師と遜色のないレベルで研ぎ澄まされている。本当に足りないのは力強さのみ。これはきっと成長することで解決するものだが、もしそれがなければ負けていたのは真希の方だったかもしれない。

 

 その事実に2年生たちは伏黒の言っていた言葉に嘘はなかったと、身をもって知ったのだ。

 

 

 

 

「…あれで14歳だぁ?嘘こけって言いたいけどな」

「しゃけ」

「んー、蛍ちゃんもさ、空君と同じくらい動けるの?」

「ううん、私はお兄ちゃんほど身長も力もないから手数と呪力を籠めた攻撃を主体にしてもうちょっと早く動く感じかな。お兄ちゃんは一撃を、私は一回の動きをって感じ」

「これで14歳かぁ…将来が怖いね」

「なぁ、うちの後輩が呪力量もすごいって言ってたが…ちょっと見せてくれないか?」

「んー…お兄ちゃーん!一瞬だけ先生呼んで!」

「え、うん。分かった」

 

 

 パンダに埋まったままの蛍が空に鍾離を少しだけ呼び出すように促す。空は合図として右手を上げ、そして次の瞬間2年生たちは言葉を失った。

 

 

「──先生、ちょっとだけ力を出して」

『承知した』

 

 

 

 ほんの一瞬聞こえた誰かの声。その次の瞬間、今までに感じたことのない圧が押し寄せ、霧散する。たったそれだけで、理解した。それはかつて乙骨と出会ったときと同じか、それ以上の気配を。

 

 

 

「えっと、今ので多分分かったかな?」

「…おいおい、もう特級を名乗っていいんじゃないか?お前たち」

「それはまだ早いって眞さんが、ね」

 

 

 

 そうしているうちに、どうやら話が終わったらしい眞を見つけた空が走って寄っていく。蛍は埋まったまま毛並みを楽しんでいるが、それもあと少しだろう。

 

 

 

「ま、あと2年でこっちに来るならみっちりしごいてやるからな」

「ん、その時はよろしくお願いします」

「こんぶ、ツナマヨ」

 

 

 

 そうして、3人は高専を立ち去って行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 そう遠くないうちに、もう一度顔を合わせることとなるのだが。




雷電将軍、キレる───★
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