原神×呪術廻戦   作:影元冬華

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6話までの話をまとめて本にします。


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 一級呪術師である七海はかつて任務で同期と共に死にかけた時がある。2級とされていた呪霊は産土神信仰によって1級、或いは特級というレベルまで上昇しており、等級に合わない2人は死にかけた。

 同期である灰原は重傷、己も動くので精一杯。援軍も望めず、待ち受けるのは死であると覚悟した。

 

 だが、気紛れにやってきた「ソレ」は視界を覆うほどの紫電と共に現れ、その場に見合わぬ声で堕ちた神を見て笑っていた。

 

 

「面白い事をしている人間がいると思えば、死にかけているとは。変な自殺志願者ではあるまいて。…小童、少し下がっておれ」

 

 

 巫女服のような衣装に桃色の髪、しかしその体から感じられる気配は確実に呪霊。それも、言葉を解する上に術式も行使したことから1級か特級。幸運なのはこちらに対して敵意がないことだけだろう。

 手負いの2級呪術師2人に推定特級が2体。七海は途切れそうになる意識を繋ぎ止めながらも、目の前の呪霊が何をしようとしているのかを必死に考えた。

 

 

「懐かしい気配がしたと思ったのに、居たのは検討外れの堕ちた神とは。妾も運が悪いらしい…」

「縺ェ繧薙□縺雁燕縺ッ」

 

 

 巫女服の呪霊の影が怪しく蠢く。その影は人の型ではなく狐の形を取っている。一瞬、七海の視界に九本の狐尾を持つ巫女服の呪霊を幻視したが、瞬きをすれば尾は消えていた。代わりに視界を遮ったのは先程よりも強力な紫電。

 嘲笑いながら巫女服の呪霊は産土神呪霊を蹂躙していた。両者の実力は明らか、巫女服の呪霊が圧倒的に強いというのが明確だった。

 

 

「他愛無い。多少は梃子摺ると思っておったのだが…これではあの時の旅人の方が強いであろうな」

「縺ェ繧薙□縺雁燕縺ッ」

「五月蝿いぞ有象無象が。疾く去ね」

 

 その手に持った大幣(おおぬさ)のような物を一祓いすれば、再び紫電が堕ちた神を灼く。今度こそ、動きを止めた産土神は僅かな断末魔を上げながら消えていった。

 さて、と言って残った巫女服の呪霊は七海と灰原を見る。クスクスと先ほどとは違う笑い方でこちらを見ている呪霊は興味深げに七海を見ていた。

 

 

「久方ぶりに表へと出てきたが、まさか小童がコレを祓う役目を言い渡されているとは。随分落ちたのか、それとも気紛れで投げ出されたか」

「…っ」

「そう構えるでない。妾は危害を加えるつもりは毛頭ない…だからといって助ける意味もないがのぉ」

 

 ああでも、と呪霊がわざとらしく思い出したかのように言う。七海は重傷の灰原をつれて一刻も早くここを離れなければならない。少しの時間も惜しい状況だった。

 目の前の特級が何を言うのか、何をするのか。油断できない七海は痛む傷に耐えながら、クスクスと笑う呪霊を睨む。

 

 

「───お主の目を借りれば、知り合いが案外見つかりやすいかもしれぬな。一つ、契約をしようではないか。小童」

「…なんですか」

「妾はお主の視界を時々借りる。代わりに、命を脅かされた時には力を貸そう」

「視界を、借りる…?」

「そのままの意味じゃ。お主が見ている景色を妾も見るだけ。それ以外は何もしない。力を貸す事は…先程のを見れば分かるであろう?」

 

 

 要は自分を見逃せ、とも言っている。七海は自身と周りへのリスクを鑑みて…その契約を受け入れた。

 呪霊は満足げに微笑み、そして一瞬強く吹いた風に目を瞑り、次に開いた時には跡形もなく消えていた。

 

 何事もなかった(狐に摘まれた)かのように静まり返ったその場には、重傷の灰原と自分だけが残されていた。

 

 

▼▼▼

 

 ふと、かつての任務での出来事を思い出した七海は、自身の前にいるツギハギの特級呪霊が突然灼かれた事に納得した。

 領域展開に巻き込まれ、命が脅かされた。そこでかつての契約が有効になり、ツギハギ呪霊をあの時と同じ紫電で灼いたのだと気がついた。

 

 カツン、とツギハギと自分しか居ないはずの領域に第三者の靴音が響く。桃色の長い髪に白の巫女服、手に持った大幣はかつて見た時と全く同じである。

 

 

「…なんじゃ、大きい気配を手当たり次第に探ったのにハズレとは。つくづく運がないものよ」

「…ねえ、君は誰?いつ領域に入ったの?」

「小童との契約もあるが故に出てきたはいいのじゃが、こうも見当違いな輩では割に合わん。まあ良い…」

 

 

 いつかの如く特級同士の睨み合いが続く。クスクスと笑う巫女服の呪霊は何故かこの領域の判定に入っていないらしい。姿は見えるのに存在しない判定とは、益々訳がわからない。

 

 

「入ってる?いや、でも居ないんだよね。幻覚じゃないし、術式でも式神でもない…あはっ!面白いことしてくれるじゃん!」

「はぁ…小童2人かと思えば、片方は童とも呼べぬ赤子とは」

 

 

 バチリバチリと紫電が掠める。その度に自分の周りで呪力が弾かれ、あらぬ方向に飛んでいると言う事は紫電が守ってくれていることを示している。

 

 

「ふむ、面倒ではあるが今よりはマシになるであろうな…」

「何をするつもりなのかな!ねえ!」

 

 

 ツギハギは変なスイッチが入っているのか、やけにテンションが高い。先ほどよりも弾ける紫電が多いと言う事は、それほど攻撃が過激になっている証明。七海は一歩でも動けば死ぬと理解した。

 

 

「──領域展開、稲荷伏鳴狐」

 

 

 その一言で、真っ黒な空間に神社が現れる。桜が舞い、巨大な狐の形をした樹と屋城に囲まれた空間は神聖さを感じさせる。

 舞っている桜の花弁は地面に落ちるたびに電気を放ち、そしてそれが満開に咲いている桜の木はとてつもない塊を意味する。広がった空間はお互いに干渉し、せめぎ合うが徐々に神社が押していく。

 

 その差に驚いたのは七海だけでなくツギハギの呪霊もだった。

 

 

「うーわ。やっぱり古いのは強いね…うん、これは無理」

「去ね、人の澱みから生まれた赤子よ」

 

 

 強風と共に一斉に桜が舞う。次の瞬間、視界を焼き尽くす紫電がツギハギに全て迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナナミン!」

「…無事ですよ。多少、手傷は負っていますがね」

 

 

 領域から解放された七海は心底ほっとした様子で壁にもたれ掛かった。突発的にとは言え、特級同士の争いに巻き込まれたのだ。その心境は穏やかではない事この上ない。

 ツギハギが攻撃されたと同時に解放された七海は、ため息を吐く。あの時と同じように、影も形も見えなくなった巫女服の呪霊は何なのか。それを考えるのはもう少し後回しにしようと思った。




やえみーはいいぞ(居ない)
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