原神×呪術廻戦   作:影元冬華

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「あぁ、これでようやく!あの憎き小僧を殺すことが──」

「駄目だなぁ、こんなつまらない物を作っちゃってさ」

「な、ぁっ・・・!」

 

 

 黒い結晶に眠るように丸く収まる獣を見て、感嘆に震えていた声はいつの間にか後ろに現れた何者かによって打ち消される。

 男の胴体を貫いていたのは流動する水によって構成された剣。ずるり、と引き抜かれた瞬間、男の体から勢いよく血が流れ出る。

 

 あっけなく死んだ男に大した興味もなく、目の前に並ぶ黒い結晶を眺めたハイライトの無い青い瞳には、獣を呼び出す道具など一欠片の価値も写さない。

 

 

「獣域ハウンド・・・ずいぶん懐かしいのが出てきたと思ったけど、弱いからなぁ」

 

 

 構成した水の剣を解き、バシャリと形を失った水が床に流れる血と混ざる。

 呪詛師を殺した青い瞳の男、ロシアの呪詛師であるタルタリヤは何事もなかったかのようにその場を立ち去る。

 

 

「日本の特級呪術師、と戦えれば一番なんだけどな」

 

 

 つまらなさそうに呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく空に消えた。

 

 

▼▼▼

 

「──監視してた呪詛師が一人、何者かに殺されていると本家から報告があった。一応聞きたいけど、もしかしてこの写真の結晶が、その獣域ハウンドって奴だったりする?」

「・・・えぇ、そのまさかです。こんなに早く見つかるとは、少々拍子抜けでしたね」

 

 

 呪術高専東京校、その一室で秘密裏に会談していた眞は五条から見せられた写真に映った黒い結晶を見て、その目を細めた。

 おおよそ30ほど並んだ結晶にはすべて、丸く収まった獣域ハウンドが存在しており、一部は大型の獣域ハウンドであった。幸運なのは黄金王獣と見られる大きさの存在が確認されていないことだろうか。

 

 

「結晶はこれで全部、関連施設も無いみたいだから本当にこれだけ。あと、殺された呪詛師は大分前に加茂も陥れようと躍起になってた馬鹿だよ」

「こんなところでもう一度関わることになるとは・・・つくづく悪縁には恵まれているようで」

「眞が前に請け負った奴でしょ?上に招集掛けられた件だし」

「その通りです。加茂の次は五条でも殺そうとしたのでしょうね。獣域ハウンドは【次元】を抜けますから、貴方の無限も貫通します」

「・・・なるほど。厄介な物を作ったようだな、こいつ」

 

 

 眞の言葉に若干の驚きを見せた五条。しかし、元凶たる呪詛師は死亡し、獣域ハウンドももう作られることはないと分かったため、安堵の声を零した。

 

 

「問題は、この呪詛師を殺した奴。今までに日本で確認されたことのない残穢だった。しかもごく少量。相当呪力の扱いがうまい奴だ」

 

 

 変に薄まった血溜まりの写真が一枚、眞に差し出される。よく見れば、その血溜まりに残穢が残っているのが見える。恐らく血と混ざっている液体に呪力が込められていたのか、薄くなった血の部分に残穢が多くある気がした。

 

 

「水、でしょうか。それを媒体に呪力で固めて一刺し、相手に気取られないようにすれば証拠の隠滅も容易かと」

「面倒なのが入り込んでる。けど今はまだ手を出せない。気をつけて、としてしか言えないのが心苦しいくらいだ」

「・・・そうですね、覚えておきましょう。それと、獣域ハウンドは」

「僕の方で全部処分済み、サンプルとして欲しがった連中も居たけど黙らせておいた。情報源の君たちもぼかしておいたから、まず手を出されないと思う」

「で、あれば問題ないです。面倒を掛けました」

「いーや、今回は元凶が殺されたからあっさり終わったけど、もし殺されてなければもっと大事になってたよ。寧ろ声を掛けて貰って助かった」

 

 

 五条と眞は立ち上がり、グラウンドで相対している一年生二人と空と蛍を見る。呪術高専の交流会を控えている今、訓練も兼ねて勝負をさせているのだ。

 

 

「あの二人、一体どこで見つけてきたのか聞きたいけどきっと教えてくれないんでしょ?」

「私が見つけた、と言うよりもあの双子が私を見つけた、と言った方が正確ですよ。出会ったのは偶然ですし、あそこまでのポテンシャルがあるのは知りませんでした」

 

 

 空が伏黒の玉犬を相手にしつつ、釘崎への牽制として呪力の籠もった斬撃を飛ばし、蛍はその隙間を縫うように疾駆する。伏黒も釘崎も息の合った双子のコンビネーションを崩すのに苦戦しており、防戦一方に成りつつある。

 年下の子供相手に一方的な試合となっている事実に、五条は思わず舌を巻く。実力はあると聞いていたが、予想以上の結果になっている今、笑っていた。

 

 

「前に来たときにはとんでもない呪力量だって聞いたけど、いざ目の前にすればそれ以上に不可解な点が多すぎるね」

「あの双子は天与呪縛によって余り離れることができず、片方が死ねばもう片方も死にます」

「それは・・・!」

「双子は双子であることを強要され、対価に命を犠牲にしている。その上で成り立つ物は、見ての通りですよ」

 

 

 五条の六眼に映る双子は雁字搦めの呪いと術式でごちゃごちゃになっている。詳細が見えにくい上に、何かに邪魔をされているのか、あるいは絡まっている物が多すぎるだけなのか判断がつかなかった。

 だが、今の眞の言葉からしてあの双子に絡まっているのは天与呪縛による「縛り」と「恩恵」、そして調伏している呪いの影であると確信した。

 

 

「五条の坊、私たちは貴方が為そうとしていることに期待していますよ」

「・・・そうだね。なら、尚のこと頑張らないといけないじゃないか」

 

 

 縛られた子供が、もっと縛られないように。未来を見れるように。 眞は扉に手を掛け、部屋の外へと出る。未だ窓から外を見る五条の背中に一言、自分が得た情報を与えた。

 

 

「近いうちに、日本に『夜蘭(イェラン)』という情報屋が来るでしょう。術師としての腕も、潜入と潜伏の腕も常人ではない事を保証します」

「へぇ、外の術師か。分かった、ありがとう」

 

 

 扉が閉まり、部屋に残ったのは五条だけとなった。五条の視線の先では、一年生の二人が双子に翻弄されて蹴り飛ばされていた。

 

 

「さーて、悠仁も交流会までにもっと強くしないとね」

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