ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない   作:松平 蒼太郎

10 / 37
男をめぐる戦い前夜


四毒強襲〜背信の窮奇編〜

四神side

 

男が連れ去られた後、四神プラス二神は中央の部屋に集まっていた。四凶の襲撃により、怪我を負って床に伏せている白虎を囲んで。

 

「なんということだ…!主がそのような下賎な輩に連れ去られるとは…!一刻も早く取り戻さねば!」

 

まず青龍がいきり立つ。無論、この場にいる全員が同じ気持ちだ。しかし…

 

「落ち着いて、青龍ちゃん。わたしたちは天帝陛下から任命された四神。勅命もなしに独断で動いたら、ご主人様に迷惑がかかるわ。わたしたちが処罰されるだけならともかく」

 

年長者の玄武が青龍をたしなめる。彼女の言うとおり、彼女ら四神は天帝直々に四方の守護を任されていた。

 

何の大義名分も無く、戦いに赴けば、主人ともども処罰の対象になりかねない。

 

「分かっている!分かってはいるが…しかし!」

 

尚も納得できないように食い下がる青龍。そんな彼女の様子を見て涙目の白虎が口を開いた。

 

「ごめん…あたしが負けなければこんなことには…」

 

白虎の怪我は数時間もすれば完治するものであった。しかし、愛する主人が自分の身代わりに連れ去られてしまったせいで、精神の方がボロボロであった。

 

「や、まぁしょうがないでしょ。まさか相手方が西門を一点突破してきたんだし。あたしらと同格の相手四人まとめて相手にしたら、そりゃそうなるよ」

 

朱雀が慰めるように白虎に言った。続いて麒麟も口を開いた。

 

「わたしも…もっと早くに奴らの襲撃を察知していれば、お兄さんが連れ去られることもなかった。白虎だけの責任じゃない。わたしも悪いんだ…」

 

自らの失態を口にし、落ち込む麒麟。彼女は彼女で、四神を束ねるリーダーとしての責任を感じているようだった。

 

「あー、はいはい!反省会はそこまで!お兄さんを助けるための方策をサクッと考えるよ!」

 

手をパンパンと叩き、場をまとめるべく黄龍が口を開いた。彼女の言うとおり、まずは自分達の愛する主人を取り戻すのが最優先事項であった。

 

「まずは麒麟、アンタが陛下から勅命をもらいに行って。この中で一番足が速いし、宮廷まで往復しても一時間もかからないでしょ。全速力で行ってきて!」

 

「え、でもなんて上奏すれば…」

 

「そんなの決まってんじゃん。悪神が人間に危害を加えてるからって一言言えば、あの人ならきっと勅命の一つや二つ、ポイしてくれるって!」

 

なんて事ないように黄龍は言う。そして矢継ぎ早に四神に指示を出した。

 

「白虎はまだ傷が完治してないから、一旦お留守番。玄武は白虎の付き添い。ちゃんと様子を見てあげて。行けると判断したら、二人であたしたちの後を追いかけて」

 

「わ、わかった…!」「了解よ」

 

「で、青龍と朱雀はあたしと一緒に、連中んとこに殴り込みに行くよ!律儀に勅命をもらってからじゃ間に合わないから、とりあえず同時進行ってことで!オーケー⁉︎」

 

「了解!」「オッケー!」

 

全員に指示を出し終えた黄龍は高らかに宣言した。

 

「お兄さんは何があってもあたしらのモノだから…!絶対に取り戻すよ!」

 

大切な人を取り戻すための乙女の戦いが今始まるーー

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

どれくらい経っただろうか。少しの間、意識を失っていたみたいだ。

 

檮杌に流し込まれた毒はまだ健在のようで、未だに俺の身体の中で暴れ回ってるらしい。流し込まれた直後よりはマシにはなっているが、それでも体がしんどいし、熱い。

 

にしても檮杌の奴、いいモン持ってたな…不良で仮初のサラシ巻いて、目を見張る双丘を晒すなんて、揉みほぐしたく……って、いかん!しっかりアイツの毒に侵されとる!ヤバい!これはアカンやろ!

 

頭を回せば回すほど檮杌のことを考えるようになる。いや、だってあいつ、不良だけど結構美人だし、尻もデカかったし…やっぱあれも揉みほぐしたい……って結局エロいことしか考えられねえ!どうすりゃいいんだよ!

 

「あらあら、可哀想に…うふふっ♪ 早速、檮杌ちゃんに毒を流し込まれたのね」

 

顔を上げるとそこにメガネをかけた知的風の女性がいた。コイツはたしか、あの四凶とかいうやつの一人の…

 

「お初にお目にかかります。わたくしは窮奇。背信を司る、四凶の一人ですわ。以後、お見知りおきを。主様」

 

やっぱりか。ていうか、その主様ってのはなんだ。俺はコイツらの主人になった覚えはないが。なんかデジャブな光景だな。

 

「あら、主様。何かお気に障ったかしら?」

 

俺の顔を見て察したのか、窮奇は俺に尋ねてきた。気に障ったっていうか、認識の相違があるっていうか…

 

「俺、お前らの主じゃないんだけど…そこんとこは分かってもらえる?」

 

「うふふ…何をおっしゃいますの?貴方はわたくしたちの主様ですわ。これはもう決定事項ですの。観念してくださいませ」

 

最初から話し合う余地はないらしい。まぁ問答無用で人のこと誘拐したり、毒ぶち込んだりしてくる奴らだから、当然っちゃあ当然か。

 

にしても…くそっ、身体もあまりうまく動かせない。なんていうか、倦怠感が半端じゃない。相変わらず意識もボーッとしてるし…

 

「あらぁ…動くと余計毒の回りが早くなりますわよ?それより、檮杌ちゃんからはどこまで聞きました?」

 

檮杌から…?えっと、どこまで聞いたっけな…そうそう、たしか天界と地上との戦争の時にどうとか…

 

「えっと、たしか天地大戦の時に出会ったみたいなことしか聞いてないけど…」

 

「ふーん…檮杌ちゃんったら、説明が雑なんだから。少しだけ補足させていただきますわね」

 

そう前置きして窮奇は話し出した。

 

「わたくしたち四凶は元々、四神と同じ天界の神。そんなわたくしたちが四神と敵対する理由は、天界と地上との戦争で、わたくしたちが天界を裏切って地上側についたから」

 

まぁそうだろうな。そこまでは檮杌から聞いた。聞きたいのはその先だ。

 

「不思議ですわよね。なぜわたくしたちが地上の人間の味方をしたのか…それは地上の人間が飢饉で苦しんでいる時に、天界の神々は何もしなかったからですわ」

 

あー、そういえば…あの年はたしか全国的に飢饉で作物がろくに取れなかった年だったような…というかそもそも、戦争の原因となる火種もそこにあったような気がする。

 

「人間たちは祈れど祈れど、何もしてくれない神々に腹を立て、武器をとって立ち上がった。当然、四神も同罪ですわ。むしろ人間の守護のため地上に派遣されていた分、彼女らの方が罪は重いかもしれませんわね」

 

好き勝手言ってくれるな、コイツ。アイツらがどんな思いで戦場に立っていたか、知りもしないくせに。

 

「つまりお前らはあれか?愚かで弱い人間どもを憐れんで手を貸してやったってか?」

 

「そうですわね。無知蒙昧であまりに非力な人間たちが可哀想過ぎて助けになってあげましたわ」

 

この野郎…とんでもない悪女だな。完全に人間を下に見てやがる。いや、それだけならいいんだが、人間を自分達の目的に利用してる分、余計にタチが悪い。

 

「それにしても…うふふっ♪ …あぁ、いえ。これは失礼しました。つい思い出し笑いを…ふふっ♪」

 

なんだコイツ…無駄に上品なのがお嬢様っぽいけど、それが逆に煽り度高めなのが腹立つ。

 

「何笑ってんだよ。そんなに俺の顔がおかしかったか?」

 

「いえいえ、主様のお顔はとてもカッコよくていらっしゃいます。そうではなくて、人間の中に潜む悪意というのは、とっても美味だと思っただけですわ。しかも戦争が長引けば長引くほど、悪意は増殖していきますし」

 

やっぱりか…こんなことだろうと思った。嫌な予感ってのは大概当たるもんで、つくづく嫌になる。

 

でもそうか。四凶の目的は悪意を喰らうことにあったのか。それなら人間側を手助けした理由にもなる。

 

元々、神と人間との間には文字通り、天と地ほどの戦力差がある。だが、それを悪神であるコイツらが多少なりとも埋めればどうなるか?

 

本来ならもっと早くに終わるはずだった戦争を余計に長引かせることになる。

 

実際に神と対峙している人間代表の俺だからこそ分かるが、神が本気を出せば人間なんぞ木っ端微塵である。だが、悪神が手を貸していたとなれば、中途半端に人間側は力をつける。それが戦争を長引かせる要因となったはずだ。

 

しかも手を貸した理由が悪意を増殖させて喰らうためとは…とんだ外道だな。マジで恐れ入るぜ。そんな身勝手な理由で青龍たちが傷ついたのかと思うと、はらわたが煮えくり返って仕方ない。

 

「お前…そんな勝手な理由で戦争を…」

 

「あははっ!そう!そのとおりですわ!わたくしたちにとって、戦争が続くのはとっても都合が良かったんですの!人間の中から絶えず生まれてくる悪意…戦争が続けば、ずっとご馳走が食べられるというわけですわ。毎日がご馳走だなんて、最高だと思いません?」

 

「悪役特有の御高説をどーも。俺ら人間からしたら迷惑極まりないけどな」

 

「ふふっ…主様にとってはどうでもいいことかもしれませんけど、わたくしたちにとってはとても重要なことですのよ?わたくしたちは多かれ少なかれ、人間の悪意を喰らって生きていますから」

 

本当に迷惑極まりない。とんでもないもの食糧にしてんな。これが悪神の集団、四凶ってやつか…

 

「一度覚えてしまった禁断の味は、忘れられませんし…わたくし、もっとそれを味わいたいんですの」

 

「それで結局、俺をどうするつもりだ?あいにく、俺は食っても多分不味いぞ」

 

「いえいえ、ご謙遜なさらず。主様からもとても深い闇の匂いがしますわ。それもわたくし好みの」

 

おいおい…俺自身も獲物の一人だったってわけか。てっきり俺を担ぎ上げてまた戦争でも起こそうとしてるだけなのかと思ってたわ。というか俺、そんな深い闇設定あったっけな…

 

「そこでお願いがございます。主様、これから正式にわたくしたちの主様になってください」

 

言うが否や、窮奇の唇が俺の唇に当たった…いや、当てられた。またかよ。でもちょっと気持ちよかったのは内緒な。

 

…などと呑気なことを思ったのも束の間、全身に強烈な痛みが襲った。これは…ヤベェ。

 

「うふふっ♪主様のお味、堪能させていただきましたわ♪ ねぇ、どう?痛い?苦しい?あぁ、可哀想な主様…ほら、早くわたくしの愛を受け入れて?」

 

人が苦しんでるってのに、無茶苦茶煽ってきやがる。どんだけ性格悪いんだよ。ふつうに檮杌が可愛く見えてきた。いや、アイツも大概性格悪いけどさ。人の不幸面見て喜んでるし。

 

「いや、あのさ…悪意を糧にするんなら、俺じゃなくてよくね?腹にイチモツ抱えた人間くらい、その辺にゴロゴロいるだろ。なんで俺なんかにこだわるんだよ?」

 

「それは…」「おーい!窮奇ばっかりお兄さんと話してズルいぞー!そろそろ僕の番ー!」

 

「あら、渾沌ちゃんったらせっかちなんだから。もう少しお話ししていたかったけれど、わたくしはそろそろ行きますわね。わたくしたちが主様を愛する理由は、渾沌ちゃんから聞いてください」

 

おいおい…見るからに子どものやつに重要な部分の説明任そうってか?最後まで解説してくれよ。性格クソでも一応話は通じるんだから。

 

「しかし、理由はどうあれ、これだけはしっかり覚えておいてください。主様、わたくしは貴方のことを愛しています。早く四神のことなんて忘れて、わたくしたちのモノになってくださいね?それではごきげんよう。愛しの主様♪」

 

最後に愛の言葉を残して窮奇は去っていった。

 

おいおい…勘弁してくれよ。四神だけでお腹いっぱいだってのに、四凶まで…モテ期到来ってか。やかましいわ。

 

それにしても窮奇のやつ、胸もケツもまぁまぁデカくて、しかもモデルみたいなスレンダーな体型だったし、全体的に男の理想を詰め込んだような感じだったな。しかもメガネキャラって、なんか知的な秘書みたいな感じで良き。そばに置いて色々揉みほぐしてぇ…って、あああああああああ!毒の作用がああああああ!

 

 

ーーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

窮奇side

 

ふふっ♪ 主様ったら、あんなに苦しそうな顔をして…それでいてわたくしのことを考えていてくれるんだから、最高よね♪

 

「ちょっと窮奇…いつまでボヤボヤしてるの?四神はもう動き出してるわよ。わたしたちもそろそろ…」

 

「饕餮ちゃん。そう焦らないの。こちらも兵を集めてるところだから。といってももう十分集まってはいるけどね」

 

「だったら…!」

 

「でもまだダメ。主様を完全に堕とさない限り、わたくしたちに勝利はあり得ないわ」

 

そう、この戦いの勝敗は全て主様を堕とせるか否かにかかっている。なぜなら主様は特別な人間だから。

 

「…何か考えがあるのはわかった。でも奴らはもうこちらに向かってる。あまり猶予がないのだけは覚えておいて」

 

饕餮ちゃんはそれだけ言ってわたくしの元を離れていった。まぁあの子が一番この時を待ち望んでいたのだし、焦るのも無理はないけれど。

 

悲願の成就まであと少し…もうすぐ主様とわたくしたちだけのための、悪意に満ちた世界が完成するわ。

 

「主様が堕ちるのも時間の問題だし…その時が楽しみね。うふふっ♪」

 

さぁ、わたくしの思い描いた反理想郷(ディストピア)の完成はすぐそこよ。




評価・コメントあればドシドシ書いていってください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。