ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない 作:松平 蒼太郎
あらすじ
→四凶に監禁されていた男は、渾沌という少女と対面していた。一見、人懐っこい彼女だが、その内に秘めるドス黒さは檮杌や窮奇に勝るとも劣らないモノで…?
「お兄さんっ!会いたかったよー!ギュー!」
そう言っていきなり抱きついてきたのは、ガキンチョもとい、どこか犬っぽい少女だった。感触が柔らかい。
「えへへっ♪お兄さんだぁ…スリスリ…♪」
いきなり頬擦りしてきた。やめてくれ、頭ん中真っピンクな今の俺に、その術は効くし、なんなら効きすぎる。すでにアソコがヤバい状態。
「いや、あのさ…とりあえず離れてくれると嬉しいんだが?あと、色々説明してもらいたいことあるし。」
務めて冷静に声をかける。子ども相手に欲情するのは流石にまずい。というか、俺はロリコンじゃねぇ。
「え、何?どうしたの?あ、僕の自己紹介?そういえばまだだったね!僕は渾沌(こんとん)!よろしくね!」
「なるほど、渾沌か。よろしく。てなわけで、ここから抜け出す手伝いをしてくれないか?」
「ふふっ…やーだよ♪ やっとお兄さんに会えたんだもん…絶対離さないもん♪」
即答で断られた。解せぬ。しかもめっちゃいい笑顔。なんでなん?
「ね、ね!お兄さんは僕に会えて嬉しい?」
近い近い!顔が近い!お口とお口がブッチューしちゃいそうだよ!いや、美少女に迫られて嬉しくないことはないけど!
「いや、今はそれどころじゃなくてさ…ちょっと緊急事態っていうか…」
「…?なんで?今のどこが緊急事態?変なお兄さん。」
俺がしどろもどろになっていると、彼女は不思議そうに首を傾けた。可愛い。
「あ、そっか!わかった!お兄さん今、窮ちゃん(※窮奇)と杌ちゃん(※ 檮杌)の毒受けてるんだっけ?」
お、意外と察しがいいな。そうそう、今俺は、あの極悪女どもに猛毒をぶち込まれて…
「ふーん、そっかぁ…じゃあ僕からの愛も受け取ってくれるよね?ンー♡」
なんでや。今の、どう考えても、キスする流れじゃなかったろ。口と顔が熱いです。
「お兄さん、好き…大好き…!ずっと僕のそばにいてほしいなぁ、なんて…えへへ♪」
ヤバい(ヤバい)。ハイライトがいつの間にかオフになっていらっしゃる…
下手に発言しようものなら、俺の身があまりにも危うい。俺の本能がバカみたいに、目の前の獣に対して警鐘を鳴らしてる。ここは慎重に言葉を選ばねば…!
「え、えっと…俺らって、初対面だよな…?なんでそんな好感度高いの…?」
「え……何言ってるの、お兄さん?僕らが会った日のこと、忘れちゃった?」
えっ?初対面じゃ、ない…?これはまずい、早急に思い出さねば…!
「そう、なんだ…あんまりよく覚えてないんだ…アイツらのせいだ。アイツらが僕のお兄さんをたぶらかしたから…!」
ちょちょちょ⁉︎ なになに⁉︎ アイツらって誰のこと⁉︎ マジでちゃんと説明してくれなきゃ分からんぞ!どゆこと⁉︎
「ごめん、お兄さん。もっと構ってほしかったけど…大切な用事を思い出したから、行くね。」
そう言って、その場から立ち去ろうとする渾沌。ステイステイ!
「いや、ちょっと待ってくれ!アイツらって誰のこと⁉︎ あと大切な用事って何⁉︎」
俺が慌てて引き止めると、彼女は目のハイライトをオフにした状態で、こちらを振り向く。
「え?決まってるよ、四神を倒しにいくんだよ。」
いや、こっちが「え?」なんだけど。なんで四神?アイツらが?
「アイツら、お兄さんを自分たちの屋敷に閉じ込めた悪い奴らなんでしょ?だからやっつけに行くんだ…お兄さんのためにも。」
いや、それに関しては否定のしようもないくらい事実だけど…でも、流石にこの子をこのまま行かせるのはまずいよな…
「まぁ、待て。たしかに俺は閉じ込められた経験はあるが、アイツらも根っからの悪人じゃない。だからここは穏便に……ッ!」
それ以上は言葉を続けることができず、息をのんだ。彼女から放たれる負のオーラがさらに強くなったからだ。
「…なんで?お兄さん、アイツらに酷い目に遭わされてきたじゃん。なんでそんな奴らのこと庇うの?」
彼女の放つ負のオーラにたじろぎながらも、俺は答える。
「い、いや…アイツらも、なんつーか、俺に対する愛がいきすぎて、ちょっと暴走しがちなだけで、本当は悪い連中じゃないから…」
「…嘘だよ。僕は信じない。アイツらのお兄さんに対する愛なんて嘘っぱちだよ。アイツらは自分たちにとって都合のいいお人形が欲しいだけなんだ…!」
…どうやら聞く耳を持ってはくれないようだ。なんていうか、こう、神様ってみんな人の話聞かないタイプばっかなの?
「お兄さん、待っててね。アイツらのこと、さっさと倒して戻ってくるから。」
そう言って踵を返す渾沌だが、何かを思い出したらしく、再び俺の方を向いた。
「あ、そうだ。お兄さんは僕らのこと、あんまりよく覚えてないんだよね?」
……たしかによくは覚えていない。さっき会った窮奇も俺に対しては初対面じゃないみたいな素振りを見せていたが…
「それじゃあ、教えてあげる。僕ら四凶はね…お兄さんに救われたんだ。」
救われた?いや、そんなこと、全く身に覚えが…
「お兄さんは天界との戦いで傷ついた僕らを癒してくれた。それだけじゃなくって、僕らが天に反逆したことも許そうとしてくれた。その時に『お前らのことも愛してる』って、言ってくれたよね?だから僕らもお兄さんの愛に応えるよ。」
言われてみれば……そういえば、四神以外にも誰かを助けたような、そうでなかったような……ッ⁉︎
「おいいはんのあひ、おいひい…(訳:お兄さんの味、おいしい…)」
いつから近づいたのか、首を甘噛みされてる…いや、甘噛みってか、普通にちぎれそう…首、痛い…
俺は彼女に抗うように身をよじらせるが、彼女はそのまま俺の首を噛み続けた。正直痛すぎて、逆に気持ちよくなってきた…気がする。
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「ふぅ…ご馳走様。他の人間の悪意も美味しいけど、やっぱりお兄さんの味には敵わないや。」
一通り、俺の首を噛み終えた渾沌がそうこぼす。いや、俺の味って、どんな味だよ…
「お兄さんさ…早く僕らのご主人様になってよ。そしたら、お兄さんも悪意まみれになって、すっっっっっごく、良い味になると思うんだ。」
シレッととんでもないことをおっしゃる、この娘は。とゆーか、悪意まみれってお前…
「いや、あのさ…俺に流し込んだ毒って、もしかして…」
背中に冷たい汗が流れる。俺の嫌な予感センサーが、彼女の言葉にビンビンに反応している。これはもしかしなくても…
「そ。僕らの流した毒はそういうもの。お兄さんは僕らのために、悪意を作り続けるんだ。僕ら以外の、目に映る全てのものがお兄さんの敵。四凶の力をもってして、全てを滅ぼすまで戦い続ける。それが僕らの理想のお兄さん…ご主人様だよ。」
…やっぱりか。さっきから腹の底に溜まってるドス黒い感情は、そういうことか。
「お前ら…なんで、そんなこと…」
「え?だってお兄さんに僕ら以外の存在なんて必要ないよね?」
それがさも当たり前かのように、あっけらかんと言う彼女に、俺はたしかに恐怖を覚えた。
「心配しないで、お兄さん。その毒は精神的なモノだから、僕らのことを完全に受け入れれば、すぐ痛くなくなるよ。」
俺がビビったのを見越してか、彼女はそう言った。それに対して俺は何も返せない。
「ね、お兄さん…僕、お兄さんのこと大好きだからさ、お兄さんにも僕のこと好きになって欲しいんだ…」
彼女が俺の耳元で囁く…まるで、わがままな恋人に言って聞かせるように。
「これ以上辛い思い、したくないでしょ?気持ちが整ったらでいいよ。いつかお兄さんが心の底から、僕のこと好きだって言ってほしいな。」
……これがいわゆるヤンデレ、というやつだろうか?創作で目にする機会はあったが、実際に目の当たりにすると、恐怖しか覚えない。
「それじゃ、お兄さん…僕行くよ。お兄さんを苦しめたあの雌犬どもをぶち殺しに…」
…マジで四神と戦争する気らしい。これは止めないとまずいやつ、だけど…
「アイツら、楽には殺さない…!殺す前に、お兄さんの前で泣いて詫びさせてやる…!」
彼女の発するオーラと毒による影響で、俺は全く動けなかった。どうにかしてコイツを止めなきゃいけないのに…
「じゃあお兄さん、またあとで。僕、お兄さんのために頑張ってくるから!行ってきます!」
俺は最後まで声を発することはなく、走り去る彼女をただ見送ることしかできなかった。
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渾沌side
お兄さん、すごく怖がってたな…
きっと、四神の奴らに閉じ込められたトラウマが蘇ったんだと思う。やっぱりアイツら許せない…!
「おいおい…一人で勝手に祭りに行こうとすんなって。アタシも混ぜろよ。」
「杌ちゃん…もう準備はできたの?」
「たりめぇだろ?こちとら戦いたくてウズウズしてたんだ…あとは開戦の狼煙が上がるのを待つだけってこった。へへっ♪」
相変わらず、杌ちゃんは戦闘狂だ。でも今の僕も、杌ちゃんのことは言えないかも。
「おいおい…ずいぶん凶悪なツラしてんなぁ?そんなに四神の連中が憎いか?」
……憎いに決まってる。お兄さんが現在進行形で苦しんでるのも、一向に僕のモノにならないのも、全部アイツらが悪いんだから…!
「そう、だね…全員八つ裂きにして、二度と輪廻の輪に入らないように、魂ごと胃袋に収めたいかも。」
「ははっ!そうこなくっちゃなぁ!お互い、頑張ろうぜ?新しいご主人様のために、な?」
杌ちゃんはそう言いながら、その場から離れた。
言われなくても、僕はお兄さんのために全てを喰らう。喰らって喰らって、喰らいまくって、お兄さんの心に深い闇をもたらすんだ…!
「大丈夫だよ、お兄さん。僕たち…ううん、僕だけはお兄さんの味方だから。」
僕は一人そう呟き、戦場に向かって駆け出した。
不定期だけど、これからボチボチ投稿していく予定