ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない 作:松平 蒼太郎
青龍視点
…厄介な女だと思った。何度叩き伏せても立ち上がり、襲いかかってくる。
檮「まだ、まだぁっ…!」
そうして咆哮を上げ、わたしに突撃してくる彼女を、霊力で強化した拳で返り討ちにする。
自分で言うのもなんだが、応龍となったわたしの防御力は底抜けに高く、それこそ青龍だった時の比ではない。
たとえ、獣神体として全力を出してきた檮杌でも、わたしの拳を噛み砕くことはできない。だというのに…
檮「くっ、そ…!テメェに、ようやく見つけたアタシらの主人を、奪われてたまるか…!」
…単純に諦めが悪い、というわけでもなさそうだ。というか、これは…
檮「人間どもの悪意を食い尽くしてなぁ、今度こそアタシが『主』を守るんだ…!」
…そうだ。きっと彼女はわたしの裏返しだ。反転した存在というべきか。
あの戦争で傷ついた主を守るために、わたしは彼を監禁した。同じ理由で、二度と彼を傷つけさせないように、一生そばで守ると誓った。
一方、檮杌は人間を扇動して、戦争の引き金を引いた。悪意を喰らう凶獣として。
そして彼女は彼女なりに、主と見定めた人間を守ろうとしたんだろう。
人間の中にある悪意を戦争という形で発現させ、その全てを喰らう…わたしの憶測でしかないが、きっとそうだ。
わたしだって一度は人間を憎みもした。守るべき者たちから逆に命を狙われるなんて、思いもしなかった。
わたしも一歩間違えていれば、今目の前にいる狂獣のように、際限もなく暴れ回っていたのかもしれない。
けれど、そうならなかったのは他でもない主のおかげだ。
主の優しさがあったから、彼の温もりに触れたから、わたしは一線を超えずに済んだのだ。
その恩に報いるために…そして何より、人々を守る守護獣としての役割を果たさねばならない。
応「檮杌…お前はわたしだ。だけど、わたしはお前じゃない。」
檮「あぁ⁉︎ 何わけわかんねぇことをゴチャゴチャと…!」
応「だからこそ、お前を滅ぼす…二度と同じ過ちを繰り返さないために!」
わたしはわたしが全力を出せる形態へとその姿を変える。
わたしの身体は蛇のような長い胴体に変化し、みるみるうちに皮膚は硬い鱗に覆われた。
胴体からは鋭い爪をもった手足が、頭からは長い角が、口辺からは長髭がそれぞれ生えてきた。
そして、青みがかった鱗に、更に白い線が加えられ、応龍としての本来の姿が露わになる。
檮「てん、めぇ…!」
応「いい加減、終わりにしよう…この不毛な争いを続けても、誰も救われない。」
わたしは一際大きな咆哮をあげ、悪神を滅ぼすための龍の息吹(ドラゴンブレス)を放つ。
檮「ぐっ、が…!んの、ヤロ…!」
…驚いた。まさかわたしの必殺技をその身で受け止めるとは。けれど、長くは保たない。これで終わり。
檮「ぐっ、ご…!あ、アタシは、主を…!」
最期に何か言おうとした檮杌だったが、光の渦に包み込まれ、その言葉は轟音と共に消え去ったーーー
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黄龍視点
ハァ…流石の黄龍さんでも、この数の魔獣を相手にするのは骨が折れたなー。ま、漏れなく全員討ち果たしたんだけどね⭐︎
と、思っていたら、向こうの方で大きな爆発が。あの光は…青龍、いや、応龍かな?
麒「黄龍…!大丈夫⁉︎ お兄さんは…⁉︎」
黄「お、麒麟ちゃん、ハロハロ〜。ここにいる奴らなら全員やっつけちゃったよ⭐︎」
そんなことを考えていたら、天界軍を率いた麒麟ちゃんがやって来たので、余裕のウインクを飛ばしてみせる。
といっても、実は霊力を使いすぎて、少し休みたいんだが。
麒「…嘘はつかなくていいよ。ホントは休みたいんでしょ?足、少し震えてるし。」
ありゃ、やっぱり麒麟ちゃんには隠し事はできないか〜。まぁ、いつも屋敷では同じ部屋に住んでるし、当たり前っちゃ当たり前か。
黄「たはは…バレちゃっては仕方ない。悪いけど少し休ませてもらっていい?」
そんな情けないあたしの言葉を全く否定することなく、麒麟ちゃんは答える。
麒「いいよ…黄龍はたくさん頑張ったから。あとはわたしに任せて。必ずお兄さんは連れて帰るから。」
そう言い残し、彼女は軍を率いて敵陣地の奥へ向かう。
黄「あたしもさっさと体力回復して、一緒にお兄さん探さないとなー…」
無防備にも、その場で大の字になって寝転ぶ。まぁ、敵は全部潰したし、大丈夫でしょ。
黄「お兄さん、無事だといいなー。もし、無事じゃなかったら…」
全部破壊しても、気が済まないかも。
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朱雀視点
身体が、熱い。燃えるように、熱い。
あたしは、ほとんど初めての感覚に若干の恐怖と大きな高揚を感じていた。
さっきまで喉を毒矢で貫かれて死にかけてたのが嘘みたい。
実のところ、あたしが朱雀から『鳳凰』になったことはほとんどない。
特に深い理由はないが…強いて言うなら、怖かったのかもしれない。自分で自分を制御できないことが。
その点、青龍は四霊としての自分の力を完璧に使いこなしていた。
基本的に冷静沈着なアイツが、更に冷静になり、敵を叩きのめしていたことを思い出す。もはやゾーンとか、そういう領域に入っていたのだろう。
けど、あたしは青龍とは違う。頭に血がのぼりやすいあたしは、青龍のようにはなれない。
冷静さを欠いて、守るべき人間を殺そうとしたことは、一度や二度ではない。あたしには、守護獣としての資格があるのかすら、疑わしかった。
けれど…そんなあたしを、ご主人は受け入れてくれた。こんなあたしを怖がらずにいてくれた。
熱っぽい性格だとは思っていたけど、まさか人間の男の人に恋をするとは思わなかった。こんな感覚は生まれて初めてだった。
彼に声をかけられるたびに、心が高鳴った。
彼に触れるたびに、身体が熱を帯びた。
彼に南門の攻略を挑まれるたびに、胸がときめいた。
もっとあたしを見てほしい、もっとあたしを知ってほしい、もっとあたしを抱きしめてほしい。
何よりもっと、あたしの勇姿をその目に焼き付けてほしい。ご主人のためならあたし、どれだけだって頑張れるよ?
窮「く…!そんな、バカなっ…!」
ついさっきまで、余裕の笑みを一切崩さなかった窮奇に初めて焦りが見えた。でも、今さら焦っても遅い。だってーーー
鳳「…触れると火傷するよ?」
朱雀の時の比ではない熱があたしの身体から発せられ、周囲を包む。
このあまりの熱に、流石の窮奇も参っているようだった。そんな消耗している彼女に、容赦なく槍を突き出す。
鳳「…外した。なら、もう一発…!」
あたしの槍をすんでのところで躱す窮奇。もう一度、神速の突きを繰り出そうとしたところで、彼女が次の一手を打つ。
窮「もう次の策を練るだなんて悠長なことを言ってる暇はなさそうですわねっ…!」
窮奇は人型から異形へとその姿を変える。
全身から針のような体毛が生じ、その体躯はまるで牛のようであった。
正真正銘の化け物へと姿を変えた窮奇は、猛犬のような獰猛な鳴き声をあげ、あたしに宣言した。
「わたくしの完全体を見たのは貴女で二人目…生きて帰れると思わないことですわね?」
そう言うや否や、彼女の全身の針が嵐のように射出され、あたしに襲いかかった。
内面の描写が意外と難しい件
【戦況まとめ】
①応龍vs檮杌
②鳳凰vs窮奇
③黄龍vsその他大勢の悪神・魔獣
④麒麟(天界軍を率いて、現地到着)
⑤玄武・白虎(屋敷から出撃中)
⑥渾沌・饕餮(敵陣のどこかに潜伏中)