ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない   作:松平 蒼太郎

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第二話、朱雀編開幕。


南門攻略〜南方の朱雀編〜

東門攻略(失敗)から数日、俺は南門の攻略の準備を進めていた。

 

準備といっても大したことはしていない。まずは体調の全回復。脱走は身体が資本だからな。身体が万全の状態じゃないと、脱走率はゼロにすらならないだろう。

 

回復方法は至って単純。飯食ってクソして寝る。ただそれだけ。

 

青龍の自然災害クラスの攻撃によって消耗した身体も、普通に規則正しい生活を送っていれば、元通りになる。

 

飯は毎日、四神が使役する式神と呼ばれる存在が運んでくれる。屋敷の使用人ポジで、実質俺の世話係だな。部屋の掃除とか洗濯とかしてくれるし。

 

といっても、式神に自我はないに等しいので、俺が自室で脱走の計画を練っていても咎めたりすることはしない。あくまで命令されたことをこなすだけの存在である。最初は物足りなかったが、今はそれがありがたい。

 

話を戻すと、俺は普段通りの生活を大人しく送るだけで体力が回復するという寸法である。便利だな、不老不死の身体。

 

そしてもう一つは、南門を守る朱雀の不在時間の確認。四神というと四六時中、各方角の門を守っているイメージがあるが、それは違う。

 

前回の青龍みたいに、天帝陛下にお呼ばれしたりして、不在となる時間があるのだ。

 

ただあの時は、俺が青龍の帰宅時間をきちんと把握していなかったことが敗因。謁見に出かけたって情報を、屋敷の使用人(式神)からその日のうちに又聞きしただけだったからな。

 

でも今回はそんな前回の反省を生かし、朱雀が門を離れる時間を入念に調べた。

 

その結果、あいつには『おやつタイム』なる門の不在時間があることが判明した。

 

『おやつタイム』とは、自分の持ち場である南門を離れ、四神専用の休憩スペースでおやつを食べる時間のことである。

 

ちなみに俺もその休憩スペースの居場所を探ってはみたのだが、未だに特定できずにいる。どうも人間である俺が干渉できない場所にあるらしい。非常に残念なことだ。

 

それはともかく、不在時間さえ分かればあとはこっちのもの。その隙をついて逃げ出すのみ。

 

『おやつタイム』の間隔は日によって異なるが、大体30分程度。俺の住んでる部屋から南門までは10分程度だから、余裕で間に合う計算になる。

 

「部屋から門に出るまで10分もかかるの⁉︎」なんてことを考えてはいけない。この屋敷は桁違いに広いし、そもそも神様を人間の尺度で測ること自体が間違いなのだ。

 

まぁこんなくだらないことを考えている間にも、俺は南門まで全力疾走中なんだけどな。

 

以前に間違って飲んだ蓬莱の薬によって不老不死になったことが、ここで活きてくる。

 

なぜなら今の俺には体力の限界というものがないに等しいからだ。全力疾走したくらいでは、息切れも起こさない。外部からの攻撃は別だけどな。

 

そんなこんなで、ようやっと南門に到着。これでこの屋敷での監禁生活からおさらばできる…はずだった。

 

「よーっす、ご主人。こんなとこまで全力疾走するなんて、そんなに朱雀ちゃんに会いたかったのかなー?」

 

why?え、なんで?なぜこの時間に朱雀が南門に…⁉︎ あ、ありえねぇ…!式神さんが俺に偽の情報を渡したとでもいうのか…⁉︎ いや、そんなことあるはずが…!

 

「ふふっ…どーしたの、そんなビックリして?あたしがここにいることがそんなに不思議?」

 

不思議に決まってんだろ。だってこの時間は『おやつタイム』のはず…

 

「残念ながら、あたしの『おやつタイム』はすでに終了しちゃってまーす!ご主人がこの時間には南門に突撃してくるだろうからって、青龍がね」

 

青龍ぅぅぅぅぅぅ!テメェェェェェェェェェ!何余計なこと吹き込んでくれてんだ!俺の華麗なる脱走計画(笑)が台無しじゃねえか!

 

くっそ〜…未だにファーストキスを奪われたことが尾を引いてるってのに、これ以上俺の心を掻き乱そうとは実にけしからん。あの立派なおっぱいも含めて、色々けしからんぞ!

 

「あはっ♪ その様子だと万事休すみたいだね。大人しく部屋に戻ったら?あ、せっかく来たんなら、あたしとここで楽しいことする?」

 

「あ、結構です。もう間に合ってるんで」

 

なんだこいつ…誘うような真似してきやがって。いっそのこと、一回抱いて無力化してから脱走するか?いや、抱いたくらいでこいつをどうにかできるなら、とっくの昔に脱走なんて成功してる。何か他の手を…

 

「も〜、そんなつれねーこと言うなし。あたし、これでもご主人のこと心の底から愛してんだよ?」

 

「俺の言うこと何でも聞いてくれるんなら、その告白は喜んで受け入れるが」

 

「無理ゲー乙。どーせここから出して〜、とか、ここから脱出する手伝いしろ〜、とか言うんでしょ?その手には引っ掛からねーから」

 

だろうな。まぁこんな見えすいた手に引っかかるほどバカじゃないよな。見た目は四神の中で一番バカっぽいけど。

 

「あ、その顔…なんか失礼なこと考えてるでしょ?ムカついたから、いっぺんあっつあつの火炎ブレスで黒焦げになっとこうか」

 

圧 倒 的 理 不 尽。そんなことで一々黒焦げにされてたらたまんねーわ。

 

だが、無情なるかな。朱雀は人型から本来の姿への変身を開始していた。

 

全身が炎に包まれたかと思うと、その炎の中から、猛禽類特有の鉤状の鋭い嘴と爪、そして巨大な真紅の翼が現れた。

 

朱雀完全体ーー俺の前に顕現したのは、烈火の神鳥であった。彼女が翼をはためかせるごとに、周りに炎が撒き散らされる。不死身でなかったら、俺の身体は一瞬で灰と化していただろう。

 

しかし、青龍といい、朱雀といい、なぜこんな不死身であることしか取り柄がない男に対してわざわざ完全体になるのか。オーバーキルにも程がある。ちょっとは自重しろ。もしかしなくても焼け死ぬわ。

 

「や、あの、朱雀さん…?まずは落ち着いて話をしよう。とりあえず冷静になってくれ。な?」

 

「は?どーせ逃げることしか考えてないんでしょ、このスカポンたん。罰としてあたしの愛、全身で受け止めてよねー」

 

朱雀がそう言うや否や、俺の視界は真っ赤に染まった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

 

「あ、起きた?おっはー。ぐっすりだったじゃん。そんなにあたしの布団の寝心地よかった?」

 

目を覚ますと布団の上ーー正確には朱雀の寝床にいた。つまり、ここは南門にある朱雀の寝ぐらということだ。

 

隣を見ると、朱雀は俺の横で寝ていた。どうやら、彼女に添い寝されていたようだ。

 

いつもは髪を一本に縛っている朱雀だが、今は髪を下ろしている。ちょっと色っぽく見えてドキッとしたのは内緒な。

 

そんなことよりせっかく全回復した身体が痛い。というか、まだ熱い気がする。熱が引いた気がしない。どうしてくれんだ、これ。

 

「あ、あぁ…まぁそこそこ寝心地よかったかな?とりあえず俺、自分の部屋に戻っていい?」

 

「えー?せっかく来たんだし、今日はこのまま泊まっていきなよぉ。あたしとご主人の仲じゃん?ね?」

 

可愛い。いや、違う。そうじゃなくて、逃がす気全然ないじゃん。腕をがっちりホールドされて逃げられない。

 

「ねー、ご主人…青龍となんかいいことした?最近、青龍が乙女の顔になってきてんだけど」

 

それは……多分、おそらく、あれが彼女にとっても初キスだったんだろう。俺も真面目で堅物な青龍があんな大胆なことするなんて思いも寄らなかった。

 

「ふふっ。分かりやすいね、ご主人は。ねぇ、どこまで進んだの?あたしに教えてよー」

 

腕をホールドする力がだんだん強くなる。これは答えを間違ったら、あの世行き確定ですわ。まぁ、死なないんだけどな。

 

「えっと…とりあえずキスまではした。それ以上は進んでない」

 

隠し立てしてもしょうがないので、正直に白状した。もし、朱雀が俺のことを本気で好きなら、青龍に対して嫉妬くらいするはずである。

 

青龍と争って、俺が逃げ出せるくらいの隙を見せてくれたら…なんて打算はちょっとくらいしかない。

 

「ふーん…青龍ってば協定があんのに、一人だけしれっと抜け駆けしちゃってさ…油断ならないなー、ホント」

 

熱い。朱雀の身体から熱が放出されている。嫉妬の炎(物理)ってやつか?丸焼きになっちまう。何か手を打たねば。

 

「あ〜…じゃあ俺とする?キス…」

 

あちっ、あぢぢ!ちょ、余計熱くなったんだけど⁉︎ どういうことですか、これぇ⁉︎

 

「へっ、あっ、あはは…なんだ、分かってんじゃん、ご主人!このこの〜!」

 

なんだよ、照れてんのか⁉︎ それだけでこんだけの熱量を⁉︎ 頼むから頭を冷やしてくれ!ホント、熱いから!

 

「ふふふっ…ご主人からせがまれたなら仕方ないなー!じゃ、お言葉に甘えて…ンッ♡」

 

…めちゃんこ舌を入れられて呼吸ができん。青龍は優しく唇を重ねてくる程度だったのに、朱雀の野郎、思っきし舌ねじ込んできやがった。遠慮なさすぎだろ、おい。

 

「はぁっ、はぁっ…す、朱雀、お前なぁ…!」

 

「うふふ♡ な〜に?足りないならもっとする?ん?」

 

な、なんだこの熱っぽい視線は…俺、思わず蛇に睨まれた蛙みたいになっちまったぞ。

 

「あははっ♪ ね、ご主人…あたしとの仲、もっと深めよっか♡」

 

……貞操こそ守られたものの、俺は気絶するまで朱雀に舌を入れられることになったのだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

 

朱雀side

 

「おーい、ご主人?………あー、ダメかー。気絶しちゃったっぽいなー」

 

夢中でご主人とキスごっこをしているうちに、ご主人は気絶したようだ。まだまだ夜は長いってのに…

 

「もー…こんなんで気絶してたら、本番ヤる時に身体保たないよ?」

 

耳元で普通の声量で喋ってるというのに、ご主人が起きる気配はない。かなり深い眠りに落ちたらしかった。

 

「ま、いいけどね…ご主人の可愛い寝顔、間近で見られるし♪」

 

ほっぺをツンツンとつついてみる。ちょっと鬱陶しそうに顔を背けた。可愛い。

 

「ね、ご主人…あたし、ご主人のこと好きだよ?軽いノリっぽく見せて、ガチだからね?」

 

そう、あたしはご主人のことを誰よりも愛している。大戦の時に助けてもらったからってだけじゃない。あの時、ご主人にかけてもらった言葉は今でも鮮明に覚えている。脳内再生、超余裕なレベルで。

 

『あー、その、何?難しい話はよくわかんねえけど、人間全員がお前らを敵視してるってわけじゃない。少なくとも俺はお前らのことが好きだ。だから元気出せって。な?』

 

ご主人がそういう意味で言ったんじゃないのは、頭では分かってたけど…そんなことどうでもいい。

 

守ってたはずの人間に敵視されて戦う羽目になったのは辛かった。あの時はほとんど絶望していた。

 

だけどそれでも、ご主人のその言葉があったから、あたしは復活した。神として人間を守ることに希望が持てた。だから…

 

「ご主人…あたしのこと、面と向かって好きって言ってくれたよね?だったら、ちゃんと責任取ってもらわないと」

 

無論、あたしだけじゃなく、他の四神に向けても言った言葉なのは分かってる。だけどとりあえず、あたしだけに言ったということにしておく。じゃないと、嫉妬の炎でご主人を焼き枕にしそうだし。

 

「ご主人…いつかはあたしだけを見てもらうからね?ふふふ♪」

 

寝ているご主人の唇に、あたしはもう一度優しく自分の唇を重ねたのだった…




熱い女(物理)
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