ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない 作:松平 蒼太郎
部屋を出た驩兜と入れ替わりに入ってきたのは、やたら前髪が長い女…いや、少女というべきか。君、ちゃんと前見えてる?
三苗「…なに?急にジメジメした暗い女が出てきてビックリした?」
「い、いやいや!全然そんなこと思ってないぞ!ただ、前髪見えにくくないのかなーって…」
あっ、やべ。思ったこと正直に言っちゃった。流石にデリカシーなかったか。
三苗「陛下って、嘘がつけない性格なんだね。そういうところは悪くないかも…うちの仲間はみんな腹黒の嘘つきだから…」
仲間?あぁ、四罪のことか…まぁ、言われてみればたしかに、みんな腹の中にイチモツ抱えてそうな感じではあったが。
三苗「…って、そんなことはどうでもよくて。陛下はわたしたちの反逆ごっこに付き合ってくれるの?」
「…まぁな。お前らのやってることはアレだが、俺にも目的があるんで。せいぜい利用させてもらうぞ?」
そう言ってニヒルに笑ってみせる俺。すると、彼女は笑いを堪えながら、俺から顔を背ける。
おい…キメ顔を笑われると、結構傷つくんだぞ。俺も今初めて知ったが。おかしい、暑くないのに目から汗が…
三苗「くっ、ふふふ…w 陛下って本当愉快な人だねw 今の顔、ちょっと面白かったよ?w」
あんまり傷口に塩を塗りたくるなよ…俺が泣くぞ?
男の痩せ我慢で涙を堪えていると、彼女は尚も笑いながら謝ってきた。
三苗「ご、ごめんw 悪気はなかったのw あ、わたしは三苗。よろしくね?w」
「あ、あぁ…よろしく。それでちょっと頼み事があるんだけどさ…」
すると三苗は急に真顔になり、俺に告げた。
三苗「…陛下。貴方は天界を統べる長なんだから、部下にお願いなんてしちゃダメ。するなら命令一択。ほら、もう一回。」
あ、そうか、そうだよな。仮にも上に立つ者が下からものを頼み込んじゃいけないよな。ううむ、天帝って難しい。
「あ、じゃあ命令に戻すけど…四神を従来通り、天界の各方面の守りに向かわせろ。奴ら、例の屋敷に自身を封印してるみたいだから。」
誰かに命令なんてしたことないから、めっちゃ緊張してる。手汗かいてるし。握手とかしたら、終わるな。
三苗「ご命令、承りました…すぐにそのように手配致します。今しばらくお待ちを。」
そう言って、部屋を退出する三苗…と、思ったら、すぐ戻ってきた。
三苗「手配、終わったよ…これで陛下の望みも叶った?」
「あ、あぁ、ありがとう…なんか、めっちゃ仕事早いな。流石だよ。」
ご褒美代わりに軽く頭を撫でる…だ、大丈夫だよな?セクハラ認定されたりしないよな?
三苗「ん…/// 別にこれくらい大したことないし/// 陛下は陛下らしく、何でもわたしに命令すればいいから///」
お、おぉ…今までの四罪と違って、年相応の可愛さがあっていいではないか。いや、神様だから、年相応かどうかはわからんが。でも、こういうのでいいんだよ、こういうので。
三苗「あ、それで陛下に言わなきゃいけないことがあるんだけど…いい、かな?」
「おぅ、どんとこい。今さら蛇が出ようが、龍が出ようが全然驚かない。」
龍といえば、黄龍の奴はどこで油売ってんのかな…やっぱりアイツのことは未だに気がかりなんだよなぁ…
三苗「その、黄龍のことなんだけど…彼女はもう、この世にはいない。ついさっき、彼女の遺体を陛下の暮らしていた屋敷で発見したから…」
「……は?なんだ、それ…マジで言ってんの?」
自分でも声色が変わったのがわかる。三苗、お前…
三苗「本当だよ…首をくくっていたから、多分自殺したんだと思う…遺書もなかったから、どうしてそんな行為に及んだのかは、わからないけど……陛下?」
黄龍が、死んだ…そっかそっかぁ…
「くっ、うぅ…くっ、ふっ…」
三苗「へ、陛下?その、泣かないで?辛いのは分かるけど、これから陛下はこの天界を統べていかなきゃいけないから…落ち込んでいる暇、は…?」
三苗がようやく気付く…俺が必死に笑いをこらえていることに。
「ぐっ、ふw ぶはっw はは、ははは…!」
三苗「え?え?なんで笑ってるの?陛下の大切な配下が亡くなったんだよ…?」
「いや、だってw あいつが死ぬわけないじゃんw しかも首括って自殺ってw あいつが一番やらなそうなことじゃねえかw つーか、首括った程度で死ぬタマじゃねえだろw」
ダメだ、腹がキツいw 嘘つくなら、もう少し分かりにくい嘘ついてくれねえかなぁ?w すぐバレる嘘ならつかない方がましって、俺のじっちゃんも言ってたw
三苗「ほ、ホントだもん…!ホントにこの目で見たんだから…!」
「へぇ、そうなんだ?でも、それってなんか出来過ぎてないか?俺が天帝に即位したのはついさっきの話。それまで行方不明だった黄龍がいきなり屋敷に戻ってきて自殺?なんだ、それ。なんのために行方くらまして、わざわざ戻ってきて死ぬんだよ。不自然のオンパレードだし、ツッコミどころが多すぎるわ。それに…」
そこで俺は言葉を区切って、続ける。
「黄龍が俺に一言もなく死ぬわけないだろ?アイツ、俺と知り合う前から俺の本名知ってやがった…そんな天界最強のストーカーが俺を残して死ぬなんてありえない。多分、今も俺のこと、どっかで見てやがるぞ。だから、三苗が見たって死体は、多分奴自身が偽装して作ったモンだ。心配すんな。」
うん、自分で言ってて怖くなってきた。一番普通に見える奴が一番ヤバいんだから、世の中物騒だよな…
あ、やべぇ。なんかマジで怖くなってきたぞ。いつ俺の前に現れるんだ、アイツ。もう一生どっかでほっつき歩いててくれないかな…
「と、いうわけで、本日二個目の命令。今すぐ黄龍の捜索隊を編成し、何が何でも奴を見つけろ。そして、俺の前に引っ張り出せ。以上!」
ひっじょ~に不本意な顔をした三苗が、渋々といった感じで、俺の命令を受諾する。
三苗「…承りました。すぐに捜索隊を編成し、彼女を探させます…」
そう言って三苗は再び部屋を退出した……さて、俺は俺でやることがあるんで、そこの開いてる窓から逃げるとしますか。
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三苗side
おかしい…真実を告げたはずなのに、あの男は全然動揺しない。それどころか、嘘だと断じて馬鹿笑いした。ここで落ち込んだ彼をわたしが慰めて癒す予定だったのに…!
「ふざけるな…!黄龍、お前さえいなければ、あの男をわたしの思い通りにできるはずだったのに…!必ず見つけ出して、制裁を加えてやる…!」
許せない…!あの女、よくもわたしに恥をかかせてくれたな…!そうと決まれば…!
「おい、そこの!軍の幹部に会議場に集まるよう、今すぐ伝えろ!今すぐに、だ!」
慌てて走っていくわたしの側近(仮)。そうだ、今の四罪は天界軍をすべて掌握している。これらを総動員すれば、黄龍ごとき一守護獣を捕まえるなんてわけない。場合によっては、四神を使うこともやぶさかではない。
初っ端からわたしの『新帝独占計画』はつまずいてしまったが…黄龍さえ捕らえれば、こちらのものだ。奴を捕らえたら、適当な罪をでっち上げ、必ず死罪にする。
罪状は天帝陛下への反逆罪と不敬罪とかでいいだろう。即位式に参加しなかった前科もあることだし。
そして、彼女の味方となりうる四神は全員、各方角の守護の任に就いており、この動きを止めることはできない。いや、そもそも止めるという意志すら起きないだろう。なぜなら、彼女らもわたしたちに洗脳されているんだから。
「他の四罪に陛下は渡さない…彼の寵愛を受けるのは、わたし一人でいい…!」
四罪を仲間だなんて思ったことは一度もない。『村角鉄之助』という人間を祭り上げるために、一時的に手を組んだだけ。ここからは正々堂々と出し抜かせてもらう。今から奴らの悔しがる顔が楽しみだ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。次からは、洗脳された四神編になると思いますので、気長にお待ちください。