ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない 作:松平 蒼太郎
鯀side
…やられた。というか、警備があまりにザルすぎた。まさか陛下にまんまと逃げられるなんて…
共工「おいおい…どうすんだよ。陛下、逃げちまったじゃねぇか。こんなことバレたら大ごとだぜ?」
「うるさい、分かってる…あたしたちだけでどうにか探す。もちろん、協力してくれるんでしょうね?」
ジロリと嫌味ったらしく睨んでやるが、彼女は意に介した様子もなく、言った。
共工「するに決まってんだろ。いくら、あたしらの仲が良くないとはいえ、共通目標の陛下がいなくちゃ話にならねぇからな。」
驩兜「そうね…三苗ちゃんは黄龍探しに躍起になってるし、わたしたちだけで探すしかなさそうね。力を合わせて、頑張りましょ?」
驩兜があたしたちの会話に割って入ってきた。この女も腹にイチモツ抱えてるくせに、何が「力を合わせて」だ。つまらない戯れ事をほざきやがる。
共工「つってもよー、陛下がどこに行くか、分かんのかよ?」
なんだ、そんなことも分からないのか。この頭空っぽ女は…陛下の行く先なんて四つしかない。
「決まってるでしょ?陛下は必ず四神の誰かを頼る…下界に降りるにせよ、彼女らの守る下界への門を通らねばならないのだから。」
問題は彼がどの方角から下界に降りようとするかだ。ここは天界の中心部、どこから行っても距離は変わらない。こうなったら…
驩兜「わたしたち四罪全員がそれぞれ四門に先回りして、陛下の身柄を確保するしかないわね。」
共工「へぇ…いいじゃん、それ。確保したら、ソイツが陛下とその場でイチャイチャできるってことで。」
「…上等。彼が誰のところに行ったにせよ、恨みっこなしだから。早速くじを引こうか。」
そう言って、わたしはくじを用意する。この場にいない三苗は…うん、余り物のくじでも渡しておこう。
「それじゃ、二人ともこのくじを引いて?言っておくけど、後で交換とかは無しだから。」
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あれ?なんか思ったより簡単に抜け出せちまった。警備とかちゃんと仕事してんのかよ…天帝、脱走しちゃったぞ。
さて、宮廷を抜け出せたはいいが、これからどうしよう。下界に降りたい…じゃなくて、四神のところに向かいたいんだが、いかんせん、足がない。
ここから徒歩だと何日かかるか分からんし、それまでに四罪に見つかって、連れ戻されてしまう可能性が高い。何とかして、瞬足の馬にでも乗りたいな…
??「お兄さん、お兄さん…四神のところに向かうんでしょ?だったら、わたしの足を使って。」
ん?誰が俺に声を……って、うおっ⁉︎ 何だ、このちっこい幼女⁉︎ いや、コイツは…!
「麒麟!お前、無事だったのか!ってか、どうした、その姿!スゲェちっちゃくなってんじゃん!」
そう、そこにいたのはたしかに麒麟だった。なぜか幼女化しているが。
麒麟「うん…とりあえずその、もう少し遠くに行こ?ここじゃ、誰かに見つかっちゃうかもしれないし…」
そう言うや否や、麒麟は本来の姿…獣神体へとその姿を変える。ん?それでもいつもよりちっこいな…
麒麟「その…いつもよりは小さいけど大丈夫。お兄さんを乗せても、余裕で走れるから…」
おし、きた。頼りになる足、ゲットぉ!
と、いうわけで、今から四神のところへ向かうわけだが…まずはどこに行くべきか。
麒麟「お兄さん…わたしにしっかり掴まって?振り落とされないように…」
…え?あ、そういやコイツ、かなりの瞬足だったな。天界の端から端まで二、三日ぐらいで走れるって……うおああああーっ⁉︎
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し、死ぬかと思った……やっぱ速すぎだろ、コイツ。天界最速ってのは、伊達じゃなかったんだな。てか、喉から胃液が…うぉぇっ。
麒麟「…大丈夫?お兄さん…もしかして酔った?」
「へ、平気…それより、ここは?」
麒麟「ここは東門…青龍が守護する方角だよ。」
あぁ、なるほど…あのデケェ鳥居が東門の役割を果たしてるわけか。
早速、あいつに会いに……いや、その前に麒麟に聞かなきゃいけないことが。
「なぁ…今の状況を端的に説明してくんね?俺は四罪とかいう奴らに天帝にされるし、四神の連中とその他大勢もそれを平然と受け入れてるし。あと、前の天帝と黄龍はどこ行ったのかとか。」
思わず捲し立ててしまったが、許してくれ。一応緊急事態だし、何より俺の目的が達成される可能性をこの目で確かめたい。
麒麟「えっと…一度にそんなたくさん聞かれても困る…でも、一言で説明するなら…」
麒麟はなぜかそこで言葉を区切り、続ける。
麒麟「今、天界は四罪という悪神連中に乗っ取られてる…全員、彼女らが行なった儀式に洗脳された。お兄さんとわたし以外は。」
「あー、やっぱりそんな感じか…でもどうやって洗脳から抜け出せた?俺は多分、意図的に洗脳対象から外されたんだろうけどさ。」
麒麟「えっと、わたしはその…黄龍を探しに天界の外にまで行ってたから、たまたま…前陛下と黄龍は、わたしが戻ってきた頃には行方不明になってたから、分かんない。」
なるほど、麒麟も詳しいことは知らないと。てことは、つまり…
「お前は幼女化して身を隠しつつ、宮廷周辺の様子を窺ってたってところか。」
麒麟「うん、そんな感じ…そしたら、お兄さんがいきなり宮廷から飛び出してきたから、ビックリした。でも、無事でよかった…」
涙目で心底安心したという様子を見せる麒麟。ううむ、こんな小さい子を泣かせるなんて、俺ってやっぱクズだな。
「わり、心配かけたな……とりあえず、青龍のとこに行ってくるから、ここで少し待っててもらえるか?追っ手がきたら、知らせてもらえると助かる。」
麒麟「うん、行ってらっしゃい…気をつけてね?」
麒麟に見送られながら、東門に向かう俺。さーて、薮から出るのは蛇か龍か……いや、龍に決まってるか。この方角にいるの、青龍だし。
次回から洗脳済みの四神を訪ねる旅に入ります。主人公はきっとタダでは済まない