ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない   作:松平 蒼太郎

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第四話。排除型ヤンデレお姉さん爆誕。


北門攻略〜北方の玄武編〜

「あら、気がついた?おはよう」

 

目覚まし時に聞いた第一声が美人なお姉さんのそれ。というか、玄武だった。なぜここに…

 

「ずいぶんぐっすりだったわね。丸一日眠ってたわよ。やっぱり白虎ちゃんに肉片になるまで齧られちゃったからかしら?」

 

あぁ、そうか…俺、南門から西門に強制的に転移させられて、それから白虎と遭遇してそれで…

 

「白虎ちゃん、幸せそうにご主人様に噛みつきながら寝てたわよ。流石にずっと噛みつかれたままというのもアレでしょ?だからお持ち帰りしちゃった♪」

 

な、なるほど…一応、玄武は俺の命の恩人というわけだ。あのまま齧られてたら、いくら不死といえど、一生肉片のままだっただろう。ここは素直に礼を言っておこう。

 

「あ、あぁ、悪い。助けてくれてありがとな」

 

「ふふ、どういたしまして。ご主人様の危機に駆けつけるのは従者として当然だから気にしないで」

 

それなら青龍・朱雀にボコされている時にも助けに来てくれないだろうか…自然災害クラスの攻撃を生身で受けてしまったんですが。

 

しかし、前から思っていたんだが、玄武は四神の中で一番年長者感があって、こちらの話もよく聞いてくれる(気がする)。

 

出会った瞬間、即ボコってくる三人と違って交渉の余地があるかもしれない。

 

「なぁ、玄武?そろそろ頭上げたいんだけど…このままじゃ起き上がれねぇ」

 

そう。現在の俺は、玄武に膝枕されている状態である。起き上がろうにも、何かしらの圧力が働いてて、頭どころか指一本全く動かせない。

 

「ダメよ。まだ完全に回復したわけじゃないんだから、安静にしてて」

 

「あ、いや…もう大丈夫。身体ピンピンしてるし、へーきへーき」

 

「ダーメ♪ いいからお姉さんの膝で大人しくしてなさい。ね?」

 

…意外と強情だな。やっぱ俺を逃す気はないってことか。だったら…

 

「あのさ、玄武に聞きたいことがあるんだけど…」

 

「なあに?わたしに答えられることなら何でも答えてあげるわよ」

 

きた…!交渉開始!

 

「玄武ってさ、俺のこと好き?」

 

「もちろんよ。世界で一番、ご主人様を愛してるわよ」

 

「そっか…ありがとう。俺も玄武のこと、好きだよ」

 

「あらあら…!うふふ♪ どうしたの、ご主人様?そんなこと言っても何も出ないわよ?」

 

よし…こっからが正念場だ…!いくぞ…!

 

「じゃあさ、俺をそこの北門から逃がしてくんない?そしたら、もっと玄武のこと好きになると思うんだけどなー」

 

「ダーメ♡ わたしのそばを離れる関係のお願いは一切許しません♡ もう、寝起きで頭が回ってないのかしら?仕方のないご主人様♡ うふふ♪」

 

即落ち二コマ。え、食い気味に否定されたんだけど。交渉の余地ねえじゃん。なんで?話の分かるお姉さんだと思ってたのに…

 

「え、ダメ?これ以上好きになるって言っても?」

 

「もちろん。いくら愛されても、ご主人様がそばにいてくれないんじゃあ、意味ないじゃない」

 

アカン。全然ブレない。さすが大地の安定を司る神獣。ちょっとやそっとじゃ、全く動じねえぞ…

 

「また脱走を企ててみんなからボコボコにされたのね。困ったご主人様だこと」

 

口元に手を当てながら笑う姿は、淑女のそれ。だけど、俺を絶対に逃さないオーラ(圧)をひしひしと感じる。怖いンゴ…

 

え、どうしよう…他の三人はまだ逃げ出せる希望を持てたんだけど、玄武相手にそんなものは持てない。というか、持たせてくれない。

 

「こーら…また余計なこと考えてるでしょ?今は目の前のわたしのことだけを考えて、ね?」

 

圧が一段と強まった気がした。体全体が接着剤で地面にくっつけられたみたいだ。これが玄武の力か…!

 

「ほーら…目、逸らしちゃ嫌。ちゃんと顔、こっちに向けて?」

 

言われて、玄武から目が離せなくなる。整いすぎた顔は直視するのも憚られるほどだ。

 

これが人間の美女だったら、文句なしのシチュエーションだっただろう。告白して一気にプロポーズまでもっていく自信あるわ。十中八九、フラれるけどな。

 

「こうして間近で見ると、ご主人様って可愛い顔してる。童顔だしね…ふふふ」

 

いや、可愛い顔っていうなら、四神の四人全員がそうだろう。どいつもこいつも可愛くて綺麗とか、容姿だけなら間違いなく天下を取れる。

 

「えっと…そりゃどーも。けど、俺からしたら、お前ら四神の方が可愛くて綺麗な顔してるけどな」

 

性格はともかく、容姿に関しては非の打ち所がない。マジで人間じゃないことが悔やまれる。

 

「…!へぇ、普段からわたしたちのこと、そんなふうに思ってくれてたのね。ありがとう、ご主人様」

 

そんなに嬉しそうな顔されると心揺らぐだろ、バカ。男は女の笑顔に弱いって、相場が決まってるんだぞ。マジで自重してください、お願いします。

 

「ねぇ、ご主人様…悪い事は言わないわ。脱走なんてやめてここで一生暮らしましょう?そうしたら、ご主人様が望むあーんなことやこーんなことをしてあげてもいいわよ?」

 

真正面から誘惑してくるとはな…この俺も舐められたもんだぜ。

 

「いや、悪いけど俺、夢があるから。自由と(人間の)女を手に入れるっていう夢が」

 

ふっ、カッコよく決まった………ことを速攻後悔した。なぜなら、これまでにないレベルで玄武の圧が強まったから。

 

「あら?あらあら?ご主人様ったら、まっっっっっっっっっったく、面白くない冗談が言えるのね?ふふふふふ…」

 

やっべー、地雷踏んじゃったよ。むしろ踏み抜いたまである。マジやべー。

 

ここで玄武が人から神獣へとその姿を変える。

 

手足はそのまま四肢となり、泳ぎに適した水かきと鋭い爪が生じ、頭と顎は亀特有のそれに変化した。

 

そして玄武が『最硬の守護神』であると言われるが所以である甲羅が背中と腹部に形成され、更にお尻の部分からは、玄武のもう一つの特徴である蛇が生えてきた。蛇は俺を威嚇するように上体を起こしてシャーと鳴いている。

 

蛇と亀を合体させた姿こそ、玄武完全体であった。

 

膝枕は自動的に解除され、俺は強制的に地面に仰向けに寝転がされる形になった。巨大な亀の頭と尻尾から生えている蛇が、俺を真上から睨んでいた。

 

「残念だけど、ご主人様の浮気性を見逃すほど、わたしは甘くないの。覚悟して…ね?」

 

次の瞬間、俺の身体にとてつもない衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

 

玄武side

 

わたしは人型に戻り、地面に埋まってしまったご主人様を引っ張り上げた。やったのはわたしなんだけれど。

 

「もう…この人は口を開けばいつも調子のいいことばかり言う…」

 

ご主人様は浮気性だ。わたしたち四神がこんなに愛情を注いでいるというのに、いつも外に出て他の女を作ろうとする。

 

今回はあまりにおいたが過ぎたから、思わず本気を出しちゃったけど…まぁ大丈夫よね。ご主人様は不死身だもの。これくらいじゃ死なない。

 

「あら、またおねんねの時間?寝てばっかりね、ご主人様は」

 

引っ張り上げたご主人様をもう一度自分の膝の上に寝かせ、ヨシヨシした。

 

浮気性なんだけれど、嫌いにはなれないのよね。むしろ逃げようとすればするほど、逃がしたくなくなる。

 

「わたしもみんなと同じで、この人に依存しちゃってるのかしらね…」

 

ご主人様の頭を撫でながら、ひとりごちる。でも仕方ないわよね。好きになっちゃったんだから。

 

この人との縁は数十年前の天地大戦に遡る。地上の人間が敵にまわり、動揺して力を上手く発揮できないところで総攻撃をくらい、四人とも瀕死まで追い込まれた。

 

…いいえ。動揺して力が発揮できなかったなんて、ただの言い訳ね。あの時の人間たちは間違いなく強かった。神を殺すための道具を作り、使いこなし、わたしたちを窮地に追いやった。

 

わたしたちも驕り高ぶっていた。人間が神に敵うはずないって。だけどその結果があのザマ。わたしたちは慢心で追い詰められた。自業自得。

 

そしてわたしは人間に恐れを抱いた。人間の底力と純粋に向けられる殺意…それらに臆してしまった。

 

だけど…その恐れを払拭してくれたのがご主人様。神としてあるまじき発言を、わたしは彼の前でしてしまった。

 

『ごめんなさい…助けてもらって言うことじゃないかもしれないけど、わたしは人間が怖い。怖くて怖くてたまらないの…』

 

青龍・朱雀・白虎の三人には決して言えなかった本音。三人が深い眠りに落ち、彼と二人きりになった時にわたしが発した言葉だ。

 

ご主人様はわたしたちに対して優し過ぎたから。当時はその優しささえも怖くて、思わず彼を拒絶するようなことを言ってしまった。その優しさの裏には棘か毒が含まれているんじゃないかって、疑心暗鬼になってた。

 

そんな最低なわたしをご主人様は怒るでもなく、あっけらかんと言ってくれた。

 

『あ、そうなんですね。まぁ人間ってどいつもこいつも何考えてるか分かんねーとこありますからね。けど、いいんじゃないですか?怖がることは悪いことじゃないですし、むしろ怖いことなんてあって当たり前です。貴女のような美しい女性なら尚更。あ、今の口説いてるんじゃないんで。事実を言ったまでなんで』

(※当時は玄武に対してだけ敬語)

 

この時から彼はわたしの光になった。

 

否定するでもなく、無理に励ますでもなく、その時のわたしをそのまま受け止めてくれた。わたしにはこの人が必要だって、この時にはっきり思ったの。

 

その思いは日に日に増していくばかりで…とうとうわたしたちは戦争終結後に彼を天界へと連れて行き、自分たちの主人と仰いだ。

 

そもそも戦争が終わったのも、ご主人様が天界と地上の仲介役を果たしてくれたおかげだしね。もっとも、本人は自分のおかげじゃないって謙遜していたけれど。照れなくていいのに。

 

今でも人間は怖い。何を考えているか分からないから。だけどご主人様はオープンな性格で、裏表というものがまるで感じられない。素直で子どもみたいな性格だから、ずっとそばで見守ってあげたいって思うの。

 

「ねぇ、ご主人様…?素直なのはいいことだけど、あまり浮気宣言を連発されるとわたし、地上の女全て地中に埋めてしまうかもしれないわよ…?」

 

ご主人様のためなら、人間なんか滅ぼしてもいい。ご主人様に仇なす者は神であろうと人であろうと、容赦はしない。

 

「あまりわたしに本気を出させないでちょうだいね…?うふふ…」

 

ご主人様を守るためなら、どんなことだってやってみせるわ。どんなことだって、ね?




愛が重い(物理)
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