ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない   作:松平 蒼太郎

6 / 37
短いけど許して


中央攻略〜中央の麒麟編2〜

めちゃくちゃ息が荒い。過呼吸で死ぬんじゃないかってほどだ。

 

まさか貧弱な人間代表の俺が、天下の聖獣様たる麒麟に必死こいて挑むことになるなんてな。

 

本来なら全く勝負にならないはずなんだが…俺はこの身に宿した四神の力で、なんとか彼女と渡り合っていた。

 

「お兄さん…!いい加減諦めてよ!わたし、お兄さんを傷つけたくない!」

 

彼女自身の戦意が今ひとつ上がってないというのも、俺がどうにか戦えてる理由のひとつ。ガチで本気を出されたら、秒殺だろうな。

 

だけど…今はその隙をつかせてもらう。躊躇っていたら、その瞬間にやられてしまうからな。

 

「悪い…俺は昔っから諦めがクソ悪くてな!」

 

麒麟の蹴りをすんでのところで躱す。屋敷の床が抉れる。あんなもの食らったらひとたまりもない。

 

麒麟の攻撃を躱せているのは、白虎の身体能力を借りパクしているからだ。アイツの動体視力・運動能力は人間のそれを遥かに上回る。現在進行形で、めちゃくちゃ役に立ってる。

 

だがその分体力の消耗が激しく、すでに俺は肩で息をしていた。このままだと、麒麟の攻撃をくらうのも時間の問題だろう。

 

「だったら…これはどうっ⁉︎」

 

二本のツノから雷が繰り出された。雷なんぞ躱せるものではない。なら、俺がこの場で取れる手段は一つ。

 

「おっ…らああ!」

 

俺の手からも雷鳴が轟く。青龍が扱う雷の属性の力をそのままぶっ放し、麒麟の放った雷と相殺すr……って、あだだっ!手!手焦げる!ヤバい!

 

雷を雷で相殺しようとしたら、手から物凄い衝撃が走り、全身を駆け巡った。これはアカン。カッコつけて雷を雷で殴ろうとするんじゃなかった。やってからガチ後悔した。

 

仕方ない…今度はアレを試してみるか。

 

腰を落とし、両腕をダラっとさせる。全身の力を抜き、背中にだけ意識を集中させる…

 

「…ッ、これは…!」

 

麒麟が目に見えて驚く。なんせいきなり俺の全身が炎に包まれたんだからな。

 

俺の背中には炎の翼ーーすなわち、朱雀完全体の翼が生えていた。実際には借りてるだけなんだけどな。

 

翼を羽撃かせると、一瞬で麒麟の身体が炎に包まれた。これで一気に…

 

「…無駄。その程度じゃわたしは倒せない」

 

麒麟が激しく身体を震わせると、炎は何事も無かったように消し飛んだ。マジかよ、あれだけの炎を一瞬で…⁉︎

 

「分かったでしょ?わたしとお兄さんの力の差は埋められない。たとえ四神の力を借りたとしても同じこと」

 

「それはどうだろう、なっ!」

 

突然、麒麟の脚が地面にめり込む。玄武の重力操作だ。彼女の脚は少しずつ地面に埋まっていく。このまま動きを封じれば…!

 

「甘い。こんなものでわたしは止められない」

 

なんとあろうことか、麒麟は重力に逆らい、片脚をゆっくり上げてそれをそのまま地面に落とす。

 

すると物凄い揺れと共に重力操作が途切れ、逆に俺がバランスを崩して転んでしまう。

 

転んだ隙に麒麟に一瞬で接近され、俺はその脚で蹴飛ばされてしまう。

 

「があっ!ぐっ…!」

 

たったひと蹴りで、俺は屋敷の壁を何枚も突き破りながら転がされた。あまりの衝撃に、身体がバラバラになってしまったのかと錯覚したくらいだ。

 

床に転がっている俺を一瞥しながら、麒麟は言う。

 

「もういいでしょ?わたしもこれ以上お兄さんを傷つけたくないから…降参して。お願い」

 

俺に降伏勧告を突きつけるその声は、どこか憂いを帯びていた。俺を止めるためとはいえ、攻撃するのは嫌なんだろうな。それでも…

 

「わり…俺、まだ戦えるんだわ。俺が諦めない限り、勝負は決まらねえ」

 

らしくないことを言ってる俺。黒歴史確定だな、こりゃ。

 

身体も心もすでに限界だった。とっとと飯食って風呂入ってあったかい布団で寝てえわ。

 

だけど…今だけはバタンキューするわけにはいかなかった。ここで負けたら、これまでの苦労が全てが水の泡。

 

もしまた捕まったら、束縛も監禁も今よりキツいものとなって、一生屋敷から出るチャンスはなくなるだろう。それだけは避けたい。俺と五神、お互いのためにも。

 

卑怯な手を使うことにはなるが…やむを得まい。

 

「麒麟…こい。今度こそ引導を渡してやるよ」

 

俺は挑発的な言葉を放つ。負けてる側のセリフじゃないのはおいといて、こんな安っぽい挑発に乗ってくれるかどうか…

 

「わかった。なら、この一撃で最後にする!」

 

麒麟のツノが光り出したと同時に俺は走り出した。自らの手に火・水・風・雷の四つの属性を同時に宿して。

 

「おっ…らああああああああ!」

 

麒麟の雷撃が放たれる前に、俺は四属性を宿した拳を麒麟のツノにぶつけた。

 

とんでもない衝撃が俺と麒麟を中心に起こり、屋敷は崩壊した。

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

 

「はぁっ、はぁっ…ど、どうにかなったか…?」

 

崩壊した屋敷の中心で俺は呟いた。

 

屋敷の壁も屋根も跡形もなく吹き飛び、床は地面ごと抉り取られていた。修繕にどんだけ費用と時間がかかるんだろうな、これ。

 

俺は既に勝利を確信していた。なぜなら、麒麟が粒子状になって消えていくのをこの目で見たからだ。

 

死んだわけではなく、一時的に霊体としての身体が保てなくなっただけだろう。

 

麒麟の弱点があんな分かりやすいところにあって助かったぜ。まぁ分かってても、なかなか触れられなかったわけだが。

 

…あの時の悲しそうな麒麟の顔は見なかったことにする。こうするしかなかったんだよ、俺には…

 

「あーらら…お屋敷、門以外全部吹き飛んじゃったね。建て直すのにまた時間かかっちゃうなー」

 

あっけらかんとした、どこか陽気さをはらんだ声が聞こえた。嘘だろ、まさかこの場面で出てくんのかよ…!

 

「ふふふっ…何驚いてるの?麒麟ちゃんが攻略されたら次に出てくるのは、あたしって相場が決まってるでしょ?」

 

俺の目の前に現れたのは、四神のもう一人の長と言われている五神最後の砦ーー黄龍。

 

「選手こうたーい♪ 今度はあたしが相手してあげるね、おにーさん♪」

 

ーー金色の龍が俺の敵となって立ち塞がる。




黄龍編は次回ということで。キリがよかったので、一旦区切りました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。