ヤンデレな神々に愛され過ぎて自由が手に入らない 作:松平 蒼太郎
麒麟との戦いで満身創痍の俺、満を持して登場した黄龍……素人が見ても戦力差は歴然であった。
だが、よくよく考えてみればおかしいことではない。麒麟と並んで四神の長を務めている黄龍が、麒麟が破れたことで出張ってくるのはむしろ自然な流れと言えるだろう。俺にとっては絶望でしかないが。
つまり、四門を攻略するためには黄龍との戦いは避けられないというわけだ。
「も〜、そんなに見つめられるといくらあたしでも恥ずかしいぞ〜?えへへ♪」
大変、大変可愛らしいのであるが、見た目に騙されてはいけない。なんと言ってもあの四神の長、しかも青龍と同じ龍でも彼女の方が格上である。俺みたいな小粒な人間など、彼女ならデコピン程度で飛ばせてしまうだろう。
「なぁ…俺と麒麟のやり取り、見てたんだろ?だったら大人しく俺に攻略されてくんね?」
無駄だと分かりつつも、そう言わずにはいられない。俺とてコイツと真正面から戦うのは本意ではないからだ。俺の命が危ないという意味で。
「うーん、それは無理な相談かなー?っていうか、攻略なら既に完了してるじゃん」
は?何のこと言ってるんだ?……と思ってる間に彼女が急接近してきた。
「だってさ…既にあたしもお兄さんのこと、好きなんだもん」
ド直球の告白。それも金髪碧眼の美少女から。人外であると分かっていてもドキドキしないわけがない。
黄龍はさらに続ける。
「地上の人間から敵視されて傷ついた四神たちを助けてくれたじゃん?みんなから流れてくる感情でそれがよく分かったよ」
そう。麒麟と同様、黄龍も四神とは精神的な面でリンクしている。その時の流れ込んできた四神の感情に影響されたんだろう。
だから俺に好意的な感情を持つのはなんら不自然なことではないのだが…麒麟同様、俺としては非常にやりづらい。好感度カンストしてる相手に交渉って無駄なんですね(諦め)。
「お兄さんはあたしの大事な仲間を助けてくれた。そしてあたしのこともちゃんと見てくれた上で接してくれた。だから好きになったんだよ?」
いつのまにか俺を抱きしめて耳元で囁く黄龍。思わずクラッときた。いかん、俺としたことが…!(見た目だけとはいえ)年下の女の子に囁かれて靡きそうになるとは…黄龍、恐るべし。
「ね…あたしのこと、好き放題していいからさ、一緒にいよ?お兄さんになら何されてもいいからさ…」
ハニートラップだと頭では分かっていた。だが、気づけば俺は黄龍の身体を抱きしめていた。
「ふふっ♪ 自分の欲望に忠実なお兄さん…嫌いじゃないよ?」
黄龍の唇が俺の唇に重ねられそうになる…
ーーこの時を待っていた。黄龍が人間体のまま無防備に俺に近づいてくる、この時を。
玄武の力で彼女の動きを止め、朱雀の炎で丸焼きにする。どうか大人しく、このまま天に召されてくれ…!
「…やっぱりね。お兄さん、意外と頑固だし、そういう手段取ると思ったよ」
黄龍がそう呟いた瞬間、俺の身体が弾け飛んだ。黄龍の謎圧によって、吹き飛ばされたらしい。
「仕方ないなぁ…お兄さんがその気なら、あたしも全力で愛をぶつけてあげるね♡」
黄龍の身体が輝き出す。獣人体から獣神体へと、その姿を変える。
身体は蛇のような長い胴体に変化し、みるみるうちに皮膚は硬い鱗に覆われた。
胴体からは鋭い爪をもった手足が、頭からは長い角が、口辺からは長髭がそれぞれ生えてきた。この辺は青龍と同じだな。
だが、青龍との最大の違いは、青龍の鱗が蒼であるのに対し、黄龍の鱗は黄金であった。
黄龍完全体ーー煌びやかで神々しいという表現が最もふさわしい神獣であった。人間体の時とは別の意味で直視できないほどだ。
「さぁ、始めよっか?今度はあたしがお兄さんを攻略してあげる♡」
…やれやれ。攻略されるのだけは勘弁願いたいね…
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ーー
そこからは黄龍による一方的な蹂躙だった。
麒麟と違って戦意が低いわけでもなく、しかも宙に浮いている…というか泳いでるから、単純に攻撃が当てにくい。
黄龍というのは、言ってしまえば青龍の上位互換。青龍単体の力で戦っても勝ち目はない。
そこで俺は四神の力を単体で使うのではなく、複数を組み合わせて使うことにした。
例えば朱雀の火炎放射と青龍の竜巻。この二つを両方繰り出すことで、より強力なエネルギーを相手にぶつけることができる…はずなんだが…
「あははっ♪ やるね、お兄さん♪ ほら、もっと遊ぼうよー!」
俺の攻撃を易々と見切り、スーパー余裕な黄龍さん。そんなに余裕があるなら、こっちにも分けてもらえませんかねぇ…こちとら、もういっぱいいっぱいなんですけど。
つーか黄龍の奴、明らかに遊んでやがる。龍の息吹(ドラゴンブレス)を出せば、俺なんか一発で消し炭にできるだろ。なんて悪趣味な…!
「ふふふ…お兄さんと二人きりで遊ぶなんて久しぶりだから楽しい♪」
羨ましいな、人生ならぬ龍生楽しそうで。脱走するために毎日ヒーコラ言ってる俺とはえらい違いだ。あまりの落差に普通に泣きそうなんだが。
「さーて…それじゃ、あたしからの愛の抱擁、受け取ってよね♪」
「あががが!ギブギブ!骨が!骨が砕ける!」
悲報:俺、黄龍の巨体に巻きつかれ、絶体絶命
ぐおおっ!比喩抜きで身体がミシミシ言ってる!こんなん、人間スクラップ確定やぞ!何考えてんだコイツは!
愛の抱擁なんて生やさしいもんじゃねーよ!絞め殺す気満々じゃねーか!仮にこれが愛の抱擁だとしたら、重すぎるわ!受け止め切れるか!
そして目と鼻の先には黄龍の顔が。頭を簡単に噛み砕きそうな巨大な顎が怖い。極め付けに、黄龍の吐息が俺の顔に思っきしかかる。めっちゃ熱い。
「お兄さんさぁ…ここでの暮らしは不満?なんか要望があるなら言ってみてよ。何でも応えてあげるからさ」
暮らしそのものに不満はないが、やっぱりずっと屋敷に閉じこもってるっていうのも息がつまる。どれだけだだっ広くても、屋敷は屋敷だ。閉鎖空間であることに変わりはない。
人間の女性と付き合いたいというのも、まごうことなき俺の本音だ。流石に人外相手は色々キツすぎる。普通の女とヤりたi……あががっ!締め付けがキツくなった!なんで⁉︎
「今、余計なこと考えたでしょ?普通の女とヤりたい〜、とか」
心読めんの⁉︎ エスパーかよ!心の中で本音をぶちまけることすらできんのか、俺は。
ヤッベ…意識が遠のいてきた。これはいよいよまずい。ここで意識を手放せば俺は間違いなく、一生監禁コース確定である。それだけは阻止せねば…!
こうなったら…一か八か、やってみるしかない!
「こ、黄龍…俺さ、お前らのことが嫌いで出ていこうってわけじゃない。ただ…」
「分かってるよ。あたしたちのこと、ちゃんと考えた上での行動だよね?だけど、お兄さんの正しさとあたしたちの望みは違うんだよ。言ってること、分かるよね?」
分かってる。コイツらが本気で俺のことを好いてることぐらい。それに気づかないほど、鈍くなったつもりはない。だから、だからこそ俺は…
「お兄さんの方が正しいのは分かってる。神としての本来の在り方を考えるなら、あたしたちが一人の男の人に固執するのは間違ってる。でもね…」
黄龍は完全体から人間体に戻り、俺を真正面から見据えて言った。
「あたしはお兄さんが好き。たとえ四神のみんなから影響されたものであっても、この気持ちに嘘はつけないから」
…思わず抱き寄せてしまった俺は悪くない。彼女の笑顔は一点の曇りもない、完璧なものだったから。そう、これは俺なんかに心からの笑顔を見せた彼女が悪いんだ。
「…ね、お兄さん。最後の勝負しない?負けても恨みっこなしの一発勝負」
「あー、えっと、それはどういう…?」
どんな勝負を提案してくるんだろうか…それより今は彼女の顔をまともに見られないというのに…
「愛してるゲームって知ってる?愛してるって片方が言って、照れた方の負け。簡単でしょ?」
あぁ…俺の生まれ故郷でも一時期流行ってたっけ。俺も気になる女の子に一回やってみないかって提案したけど、遠回しに断られたアレ。
「あー、まぁいいけど。俺もこれ以上は身体が保たんし」
「オッケー、決まりね。じゃああたしが言う方で、お兄さんは言われる側ね」
ふぅ…とりあえずこれ以上の荒事は避けられそうだ。あとは俺がコイツの愛の囁きに耐えられたら勝ち…
「大好きだよ…愛してる。鉄之助君」
超至近距離での名前呼びは卑怯じゃないですかね…
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黄龍side
はぁ…すっっっっっっごく、ドキドキしたー!
顔に出そうになった!ホント危なかった!
でもそれ以上にお兄さんが動揺してたから、無事愛してるゲームで勝利を収めることができた。
前々から『ご主人様』とか『お兄さん』とかじゃなくて、ちゃんと名前で呼んでみたかった。
そうしたら、本当の恋人気分が味わえるんじゃないかって、ずっと思ってた。
本当は勝負自体はどうでもよかった。ただ、大好きな人の名前を呼んでみたかった。
もし勝負に負けたとしても、改めて下界に降りてお兄さんにプロポーズすればいいだけだし。
あの後、あたしは抑えが効かなくなって、お兄さんにキスをしまくった。それこそ精気を根こそぎ吸い取るんじゃないかってくらいに。
とっくに身体の限界を迎えたお兄さんは今、あたしの膝の上で寝てる。多分、二日三日は目を覚さないと思う。
「でもいいよね…ゆっくり休ませてあげても。お兄さんなりにたくさん頑張ったんだし」
あたしは知ってる。お兄さんのここ数日頑張りを。
まさか四門全部に挑むなんて思わなかった。見た目は線の細い、ちょっと頼りなさげな印象だからね。ここまでガッツのある人だとは思わなかった。
あたしたちから離れようとしたのは悲しいけど…でも、それも全てあたしたちを想ってのことだから。
口では人間の女性と付き合いたいって言ってるけど…ホントはみんなに迫られてドキドキしてるのも知ってるんだからね?
「素直じゃないなぁ、お兄さんは…」
ちょっとした悪戯心でほっぺをつついてみる。が、起きる気配は全くない。それだけ身体を酷使したということだろう。
あ、ということは今なら…
「おでこにチュー、してもいいかな…?」
よし、シちゃおう。激しいキスはたくさんシたから、今度は優しく…
彼の前髪をかき分け、おでこにそっと唇を重ねる。この人を守ってあげたいという気持ちを込めて。
「ここまで夢中にさせたんだから、責任取ってよね…鉄之助君♡」
愛しの彼の名前を愛情たっぷり込めて呼び、彼の身体に抱きつくのだった。
四門攻略編は次の後日談で最後になります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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※ここまでの主人公の戦績
1.vs青龍→ドラゴンブレスを食らって塵と化した。敗北
2.vs朱雀→火炎ブレスで消し炭になった。敗北
3.vs白虎→捕食され肉片と化した。敗北
4.vs玄武→地面に生き埋めにされた。敗北
5.vs麒麟→麒麟のツノをぶん殴る。勝利
6.vs黄龍→愛してるゲームで照れた。敗北
現在、一勝五敗。余裕の負け越し