投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
コロナの自粛期間が終わり、リアルの方が忙しくなっていたので、なかなか執筆時間を確保できなかったのです(言い訳)。
今後も投稿を続けていきますので、気長に待っていただけると幸いです。
今回も、楽しんで読んでいただけると幸いです。
(どうして、こうなった……!)
達也は内心で、現在自分が置かれている状況を恨む。
場所は実演所区域。実技棟の中の模擬戦ブース。
生徒たちが魔法戦の訓練をするために作られた、校内でトップクラスに危険な空間には、そうそうたる面々が集まっていた。
生徒会会長、七草真由美。
生徒会副会長、服部刑部。
生徒会会計、市原鈴音。
生徒会書記、中条あずさ。
風紀委員委員長、渡辺摩利。
新入生主席、司波深雪。
そして、この面子の中ではどこか場違いな、二人の二科生。
司波達也と、遠塚一。
彼ら彼女らがここにいる理由は、至極単純だ。
今朝、真由美に生徒会で昼食をとらないかと誘われた達也・深雪・ハジメの三人は、それを渋々受け入れた。
その後、達也とハジメを風紀委員に入れないかという方向に話が進む。面倒なやっかみを避けたい達也と、放課後の時間を奪われたくないハジメは、それをやんわりを拒否するものの、生徒会長・風紀委員長の勧誘がしつこく、放課後にもう一度、生徒会室に訪れることとなった。
そこで問題が起こる。生徒会副会長である服部が、二科生であることを理由に、達也・ハジメの風紀委員入りに反対したのだ。
その後、なんやかんや口論があり、実力を示すために達也・服部の間で模擬戦が行われることになったのだ。
そのような理由で、現在模擬戦ブースの中心では、二人の生徒が対面していた。
一方は、服部刑部。正式名は、服部刑部少丞範蔵。第一高校二年生にして、生徒会副会長を務める秀才。血が重要になってくる魔法師において、特殊な家系の出でないにもかかわらず、三巨頭に次ぐ実力を誇る。そんな彼は、左手首にはめた腕輪状の汎用型CADに手を添え、真剣な面持ちで相対する生徒を見つめていた。しかし、どこか余裕が垣間見えている。
他方は、司波達也。入学試験の筆記において首位をとりながらも、その実技の成績によって二科生へと落とされた異端児。その異常性は、入学から三日目だというのに、隠しきることができていない。彼もまたCAD、それも処理性能に長けた特化型を、その手に携えていた。
相対する二名に向けて、風紀委員委員長、渡辺摩利が声をかける。
「それではルールを説明するぞ。直接・間接にかかわらず、相手を死に至らしめる可能性のある術式は禁止。障碍を与えてしまう術式も禁止だ。また、肉体を損壊させてしまうものも禁止する。ただし、捻挫未満の負傷を与える攻撃ならば使用可能だ。武器の使用は禁止し、素手による攻撃は可能とする。蹴り技を使用したい場合は、ソフトシューズに履き替えてくれ」
つまるところ、相手に試合後も影響が残るような攻撃は禁止する、ということである。
「勝敗は一方が負けを認める、もしくは審判である私が続行不能だと判断した場合に決する。また、ルール違反をした際も、敗北とみなす。続行しようとした場合は、私が力ずくで取り押さえるから、覚悟しろよ?」
ルールの説明が終わり、二人が開始線まで下がる。その間合いはかなり離れており、たとえ並々ならぬ俊敏性を持っていたとしても、接触する前に魔法が発動するだろう。魔法重視の模擬戦なのだから、魔法が有利なルールになっているのも当然だ。
となると、やはり有利なのは一科生の服部だろう。魔法能力の差が如実に出るこのルールにおいて、二科生が一科生に勝てる可能性は極めて低い。
さらに言えば、達也は筆記の試験でずば抜けた点数をたたき出したにもかかわらず、実技の成績によって二科生に落とされるほど、一般的な魔法能力が低い。両者の差は、偶然や調子などではどうしようもないほどに、大きなものなのだ。
だというのに、達也の表情に焦燥は見えない。この圧倒的不利な状況に、勝機を見出しているのだろうか。
達也が勝つとなると、正攻法はまずありえないだろう。先ほども言った通り、地力に差がありすぎる。何らかの奇策を打つ必要があるだろう。しかし、武器もフライングもできない早打ち勝負となると、それもなかなか難しい。
「始め!」
摩利の合図とともに、両者が動く。服部はCADを操作し、達也は高校生離れした瞬発力でもってその距離を詰めにかかった。
達也の素早さには目を見張るものがあるものの、さすがに魔法の発動の方が早い。服部は達也を対象に、正確には達也がいる座標を対象に、後方へと吹き飛ばす単純な移動魔法を行使し……
その魔法はエラーを起こし、事象を改変することなく消えた。
服部が失態を犯したわけではない。ただ、魔法と見まがうほどの急加速をなした達也を、捉えられなかったのだ。
服部の背後をとった達也は、拳銃の形を模した特化型CAD、その銃口を相手へと向ける。銃口部分に取り付けられた照準補助システムが、服部の位置を座標へと変換し、起動式に組み込む。
発動するのは、サイオン波発生の魔法。魔法師は皆、サイオンへの感受性が高い。それは服部も例外ではなく、サイオン波を浴びせられた服部は、自身が『揺さぶられた』と錯覚し、意識を手放した。
「……しょ、勝者、司波達也」
摩利の声が、静かにこの試合の勝敗を告げた。その声は張りのあるものではなく、むしろ控えめなものだった。
それも致し方ないだろう。この試合には、5秒もかかっていないのだ。これで勝者が服部ならば、さしておかしなことでもない。だが、実際の勝者は達也だ。一介の二科生が、一校内で五指に入る実力者を、真正面からの魔法戦で打倒、秒殺してみせたのだ。
観戦していた者は、兄の勝利を確信していた深雪を除いて、皆少なからず驚愕していた。
「……今の動き。あれは、自己加速術式をあらかじめ展開していたのか?」
「そんなことがないのは、渡辺先輩が一番わかっているはずですよ。あれは、純粋な体術によるものです」
「私も証言します。兄はかの忍術使い、九重八雲氏の指導を受けているのです」
摩利の質問を皮切りに、生徒会役員からも、次々に質問を投げかけられる。達也はその質問に、一つ一つ答えていった。
達也が行ったことは、文字にすると単純なものだ。
まずは八雲に仕込まれた体術、その中に含まれる歩法を用いて、急加速によって服部の視線を振り切る。
次に魔法が不発し、なおかつ対戦相手を見失った服部の、動揺によって生まれた隙を突き、背後で魔法を構築。
背後からサイオン波を、それも複数の波を合成し振幅を増加させたものを浴びせ、服部を気絶させたのだ。
達也は自分がなしたことを先輩たちに伝えながらも、一人の生徒に意識を向けていた。
(……遠塚。あいつ、俺の動きを目で追っていなかったか?)
それは、試合中に感じた違和感だった。
八雲直伝の体術、それによって急加速した達也は、相対していた服部は当然のことながら、観戦していた面々の視線すらも振り切っていた。彼の動きを視認できていたのは、達也の実力を知っている深雪のみ。……そのはずだった。
しかし達也の
それは、遠塚一。自分と同じく、二科生ながら風紀委員に誘われたクラスメイト。高校生離れした体躯を持つ彼の目は、確かに達也の動きを追っていたのだ。
異常だ。確かにハジメには、武術経験者のような素振りがみられる。先日の入学式での体捌きからしても、何らかの体術を収めているのは、確実と言ってもいいだろう。
しかし、それだけでは達也の動きを追えたことに説明がつかない。達也の体術は、八雲に長い間仕込まれてきたことも相まって、相当なものになっている。観戦者としての立場だったとはいえ、それを正確に捉えるなど、生半可な実力では不可能だ。
考えられる可能性は二つ。一つは、ハジメがその相当な実力者だったという場合。これならば、特に問題は起こらない。クラスメイトが偶然、油断ならない強者だったというだけだ。
もう一つは、達也の実力を
そういえば、妹の口から九重八雲の名前が出たとき、遠塚が反応していなかったか?
サイオン波に関する質問には興味を示していなかった……、見抜いていたのか?
そもそも、なぜあいつは今、傍観しているんだ? 自分の事情を知っているなら、この状況は探りを入れるのに最適なはず。
疑い始めると止まらない。
混乱する思考の中で、達也はハジメに探りを入れるために、手を打ちにかかった。
「俺だけ模擬戦をするのもなんですし、遠塚も模擬戦をしてみてはどうでしょう? 相手は、渡辺先輩などで」
*****
はいどーも。俺です。
俺は今、模擬戦ブースってところに来ています。……生徒会の人たちと一緒に。
いや、どうしてこうなった?
俺何もしてないよ? 風紀委員に誘われただけだよ? なんなら断ったからね?
だと言うのに、副会長さんが訳分からんこと抜かしてさ。司波兄妹もどこが琴線に触れたか分からんけど、食ってかかっちゃうし。
それで決闘だー、って流れになっちゃって。
しかも俺、司波たちとは違って一言も発していないのに、強制的に連れて行かれたからね? 理不尽ここに極まれりだよ。
あー、副会長さんと司波はヤる気満々だし。それで、これが終わったら俺も模擬戦するんでしょ? 副会長さんと。
嫌だよー。痛いの嫌だよー。そもそも、副会長さんって一科生でしょ? 二科生の俺や司波が、魔法で勝てるわけないじゃん。普通に考えればわかるでしょ? もしかして馬鹿なの? 生徒会の皆さんは、勉強だけできるお馬鹿さんなの?
あれかな? これもしかして、二科生がボコされてるのを鑑賞して楽しむ、上流階級のお遊びみたいな感じなのかな? 実は、生徒会のメンバーが裏で繋がってる的なやつなのかな? そうだって言われた方が、まだ信じられるよ、この決闘。そんぐらいのことだよ、これ。
そろそろ始まりそう。これが終わったら、次は俺の番だ。勘弁して欲しい。ストレスで、この段階から胃が痛くなってきた。ちくしょう、俺の胃腸は貧弱なんだぞ。
もうこうなったら、美少女たちを眺めて精神を安定させるしかない。幸い、目の前には沢山の、それも様々な系統の美少女の方々がいる。目の保養には困らないどころか、俺みたいなオタクには過剰すぎるほどだ。
少々小柄な体躯に、たわわな果実を実らせた生徒会長。その仕草も相まって、男子たちを手玉に取る小悪魔系の魅力がある。
すらりとした長身に、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んだ良いスタイルを持つ会計さん。その鋭い目つきと硬い口調から、クール系の綺麗さを持っている。
小学生と見紛うほどの体躯に、凹凸の少ない寸胴体型の書記さん。どこか不安げな彼女は、小動物的な可愛さが魅力だ。ちなみに俺は、彼女みたいな子もいけるクチである。
そして、まるで西洋人形のような完璧な美しさをもつ司波妹さん。その容姿はここにいる美少女の中でもトップに立てるものだろう。だが、何故か俺の心は惹かれない。なんというか、高級フィギュアを見ているような気分だ。
彼女たちの後ろ姿を眺めるだけでも、荒んだ心が多少は癒される。いつだったか、『尊みは万病に効く』と言った先人がいたそうだが、あながち間違いでもないのかもしれない。
にしても、こうも美少女が多いと誰を注視するか悩みどころだな。
やはり、交流もありロリ巨乳という男のロマンまで搭載している生徒会長か? 後ろ姿もやはり素晴らしい。是非あの黒髪ロングに顔をうずめて、クンカクンカしたい所存である。彼女の向こうで司波が模擬戦に挑もうとしているが、まるで気にならない。
「始め!」
あぁ、でも書記さんもかわいいんだよなぁ。あの体躯といい仕草といい、俺の庇護欲と嗜虐心をくすぐってくる。保護したいし、怖がらせて反応を見て可愛がりたい。初対面の時に見せてくれた涙目の表情とか、もはや国宝、いや無形文化遺産である。あ、別にロリコンとか、そんなんじゃないよ?(汗) ただちょっと、彼女ぐらいの容姿の女の子全般が好きなだけで。
「……しょ、勝者、司波達也」
ん? あぁ、試合が終わったのか。副会長さんが突っ伏してて、司波がそれを見下ろして……、え?
は?
んぇ?
どゆこと?
見間違いじゃないよな? 副会長さんの方が、地面に倒れているよな? なんで? 司波、勝っちゃったの? 一科生の、それも生徒会に入れるくらい優秀な副会長さん相手に、勝っちゃったの? お前二科生だよね?
……マジかぁ。えーっと、この場合俺の模擬戦はどうなるんだ? 相手するはずの副会長が気絶してるし、起きるまで待つにしても時間がかかるよな……。無理やりたたき起こすわけにもいかないし。
となると、…………もしかして模擬戦無し!? ありえるのか? いやでも、対戦相手の副会長が模擬戦不可能の状態にあるとなれば、模擬戦のしようがない。不戦勝が現実味を帯びてきたぞ。
ありがとう司波。お前のおかげで、俺は醜態をさらさずに済みそうだ。お前なんで二科生してるの、とか聞きたいことは山ほどあるが、不問とさせてもらうぜ。
とかなんとか思っているうちに、他の先輩方も気を取り直したのか、司波に向かって質問責めをしている。司波のやろう、美少女たちに囲まれやがって。なるべく苦しんでからくたばればいいのに。
「……今の動き。あれは、自己加速術式をあらかじめ展開していたのか?」
「そんなことがないのは、渡辺先輩が一番わかっているはずですよ。あれは、純粋な体術によるものです」
「私も証言します。兄はかの忍術使い、九重八雲氏の指導を受けているのです」
忍術使い!? よくわかんないけど、めちゃくちゃ格好いいな! 男たるもの一度や二度は、忍術や妖術にあこがれるものなのだ。
にしても、そんなものを習得している奴がいるとは。確かに体術は、模擬戦には関係するけど成績には反映されないもんな~。
先輩たちはまだ質問を続けているけど、俺は一歩引いて聞いてるふりだけしておこう。ぶっちゃけ美少女を見るのに夢中になっていて、ろくに模擬戦見てなかったから、なに質問すればいいのか分かんないんだよな。
「俺だけ模擬戦をするのもなんですし、遠塚も模擬戦をしてみてはどうでしょう? 相手は、渡辺先輩などで」
……………………は?
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