【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第010話】瓦解する城壁、再会する悪友(vsステビア)

『とける』によって液化し、そこから『デコレーション』で20匹以上に無限増殖をしたマホイップ。

おまけにマネネが攻撃に夢中になっているうちに液化し、スニーキングをする技術を獲得してしまったのである。

本体がどれだかもわからない状況下で、果たしてマネネはどのように立ち回るべきなのか。

 

 

 

「くっ……マネネ!そこ、『10まんボルト』よ!」

「まーーーねねっ!」

マネネの『10まんボルト』の精度は数を撃ち続けるたびに上がっていく。

弾速も上昇しており、実際に何発かはマホイップの個体にヒットし、その度にマホイップは数を減らす。

総合的に、ダメージは確実に入っているはずなのだ。

 

 

 

「みみっ!」

「みみみ!」

「みーーー!」

だが、いかんせん数が多い……多すぎる。

数が増えているということは、マホイップ全体の総合的な体積もまた同様に増えている。

ということは、それだけ1発の攻撃で喰らうダメージは低下することになるのだ。

それ故に群れのうちの1匹を攻撃したところで、マホイップ全体にはほとんどダメージが通らない状況だ。

 

 

 

「ハハハ、いいねいいね。実に鮮やかなトッピングだ!だが……」

「!?」

マネネは殺気を感じ、すぐに後ろを振り向く。

そこには液化スニーキングで忍び寄っていたマホイップが居たのだ。

「!……よけッ」

「もう遅い。『ドレインキッス』だ。」

「みみっ!」

マネネは再び、ほぼゼロ距離からの『ドレインキッス』を喰らってしまう。

 

 

 

「まねっ……!」

「くっ………」

マネネはさらなる攻撃によろめく。

そしてマネネが飛ばされた先には再び別のマホイップが待ち構える。

攻撃を受けてノックバックをしたマネネに、更に畳み掛けるように『ドレインキッス』を仕掛けてくるのである。

「みーーーっ」

「みみみっ」

「みみーーー!」

マホイップの群れへと放り込まれたマネネはタライ回しされるかのように次々と攻撃を受ける。

「マネネ、そこの左の奴には攻撃できるわ!『サイケこうせん』よ!」

「まっ……まねねっ!」

マネネはなんとか隙を見出すと、至近距離で虹色のビームを放つ。

流石にこの攻撃を避けることは『とける』を使おうと難しいだろう。

 

 

 

 マホイップにヒットしたビームは、付近の個体数体を巻き込んで突き進んでいく。

「みみっ……!」

「みみぃ……!」

ビームに触れたマホイップたちは突如自分自身を殴って攻撃し始める。

そう、先程のペロリーム戦同様、至近距離で『サイケこうせん』がヒットすると高確率で『こんらん』状態を誘発するのだ。

数体のマホイップは機能停止に陥り、その隙を突いてマネネは群れの中心部から脱出する。

 

 

 

 だが……

「ハハハ、逃がすわけがないだろう?『デコレーション』だ。」

「みみーーっ!」

マネネが群れをかいくぐろうとしたその瞬間、前方から新たなマホイップが2匹、床の液体から生成される。

「みみっ!」

「みみーー!」

「まねっ!?」

すかさず追撃の『ドレインキッス』が2つ、正面からマネネに襲いかかる。

マネネは再び群れ中央の危険地帯へと押し戻されたしまったのだ。

「マネネッ!?」

まさに鬼のようなコンボ……マネネに抵抗する術は最早残されていない。

ただただ無数のマホイップ達に貪り尽くされ、枯れ果てるのを待つのみとなった。

「まっ……!ねねっ……!」

マネネはじわじわと『ドレインキッス』のダメージを受け続け、苦悶の声を上げる。

 

 

 

「さて、楽しいデザートタイムもそろそろ終わりだ。」

「ッ……!」

まさにチェックメイト。

お嬢とマネネの完全敗北と言っていい。

ここから挽回をするすべは彼らには残されていない。

お嬢もジャックも、ついぞダメかと諦めかける。

 

 

 

 ……その時であった。

「まっ……ねねーーーっ!」

マネネが突如大きな声を上げる。

その瞬間、マホイップたちの動きが一斉に止まる。

固まったマホイップたちはキョトンとした顔で状況を飲み込めずに居た。

そして数秒の間隙の後……

 

 

 

「みっ……」

「みみっ……!?」

なんとマホイップの群れがみな、一瞬のうちにドロドロと溶けだしたのだ。

「なっ……おいマホイップ!『とける』の指示は出してないぞ!」

だがマホイップはステビアの静止も聞かずに次々と瓦解していく。

全てのマホイップが同時に、跡形もなく消え去る様子はまさに一つの城が崩れるかの如き光景だ。

やがて全ての個体が液体へと戻ると、液体は一箇所に集まり元の1匹のマホイップとなったのである。

 

 

 

「みみっ!?」

「そんな……!」

その場に居合わせた誰もが驚く。

突如としてマホイップが不可解な行動に出たためだ。

数の有利を自ら捨てるなど、到底常識では考えられない。

「マネネ、何かしたの!?」

「まねっ……!」

マネネはお嬢の問いかけに対して小さく返事をする。

マネネの腕は前方のマホイップに対して向けられた状態になっており、それを内側に仰ぐように動かしている。

 

 

 

「……そうか、『ちょうはつ』か!」

ジャックは気づく。

そう、マネネはこの窮地において新わざ『ちょうはつ』を取得したのである。

『ちょうはつ』とは相手の補助技を一切無効化するわざ。

つまりこの『ちょうはつ』を受けたマホイップは『とける』および『デコレーション』を全てなかったことにされてしまったのである。

 

 

 

「凄いじゃないマネネ!こんな所で新しいわざを覚えるなんて!」

「まっ……ねねっ……!」

お嬢は形成の逆転に喜ぶが、マネネの方は息を切らしている。

先程からの連続攻撃で既に身体は満身創痍……得意のモノマネを披露する余裕すら失われてしまっているのだ。

体力的に持ってあと1発というところだ。

 

 

 

「ハハハ……君はつくづく幸運なようだ!」

ステビアは追い込まれてなお、高々と笑い声を上げる。

「だが数が減ったからなんだ!こいつは私の相棒だ!そう簡単に倒せると思うなよッ!」

 

 

 

 そういった直後、マホイップはマネネの方に迫り、『ドレインキッス』の構えを見せる。

スニーキングに依る死角からの攻撃ならともかく、正面切っての攻撃ではどうしても隙ができやすい。

しかももう既に何発も同じ攻撃を食らったマネネにとって、この攻撃を避けることは容易いことだろう。

「……ま……ねっ!」

だが残念。

マネネの方も既に体力が限界に近い。

マホイップの攻撃を避ける選択肢は事実上消えているのだ。

であれば出来ることはもう1つしか残っていない。

そう、正面から攻撃をぶつけて打ち勝つことだ。

 

 

 

「行くわよマネネッ、『サイケこうせん』ッ!」

「負けるなマホイップ、『ドレインキッス』だ!」

両トレーナーの渾身の指示が、フィールド中に響く。

「まねねーーーっ!」

「みみーーーっ!」

両者は最後の攻撃に、持てる全ての力を込めた。

投げキッスで放たれた光と虹色のビームは空中でぶつかり合う。

両者は数秒の鍔迫り合いをお越し、互いのエネルギーをぶつけて火花を散らす。

そしてついに、決着がつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 押し勝ったのは『サイケこうせん』の方だ。

虹色のビームは『ドレインキッス』を貫通し、マホイップの顔面を直撃。

本体の、しかも急所への渾身の一撃であった。

誰がどう見てもこの攻撃が決定打と成ったことは明らかだっただろう。

「みーーーーっ!?」

マホイップは大ダメージを受けると、その場で倒れて動かなくなった。

 

 

 

「……マホイップの戦闘不能です。よってこの勝負、挑戦者・トレンチ様の勝利となります。」

審判のジャッジが下される。

その直後、数秒の沈黙が走る。

そしてその言葉を理解したお嬢とマネネは、互いに駆け寄り大きなハイタッチを交わした。

 

 

 

「やったやったーーーーーっ!凄いわ!私達、勝ったのよ!」

「まーーねまねーーーっ!」

彼女たちはトレーナーとして初の勝利に、そして初めてのジムチャレンジクリアに、生まれてはじめての喜悦に浸る。

それを観戦していたジャックは壁側を向きつつ、ハンカチで目尻を覆う。

「ちょっとジャック!何泣いてるのよ!」

「ッ……お嬢様ッ……!」

彼はこの喜びを、まるで自分の事のように噛み締めていたのであった。

お嬢はこの勝利を糧に、また一歩成長したのだ。

 

 

 

「ふぅ……いやぁ、上手くいくと思ったんだけどなぁ。失敗はつきもののようだ。」

ステビアはそんなお嬢たちへ祝福の拍手を贈りつつ、ゆっくりと歩み寄る。

その顔は負けたというのにも関わらず、とてもにこやかなものであった。

「ほら、私に勝った証のバッジだ。受け取りたまえ。」

彼女の腕から差し出されたのは2つのアイテム。

1つは薄ピンク色の扇形をした物体。

そしてもう1つは五芒星をかたどったブローチであった。

「これは……?」

「バッジケースだ。穴が丁度5つあるだろう?そこにこれを嵌めるのさ。」

お嬢は言われるがまま、一番上の穴にバッジを嵌める。

これにて正式に、リーグへ行く資格の1つを手に入れたことになった。

 

 

 

「……さて、ここから先は多くの強敵が待ち構えるだろう。だがまぁ、私に勝てたキミなら大丈夫だろう。キミたちの健闘を祈ってるよ。」

「えぇ、こちらこそ!楽しい勝負と美味しいケーキをありがとう!」

2人は熱い握手を交わす。

昨日の敵は今日の戦友……というやつだ。

ジム戦を終えたトレンチ嬢とジャックはスタジアムを出ると、エレベーターに乗ってこのパティスリー・ガトーを後にしようとする。

そこをステビアが呼び止める。

「あ、ジャックくんだっけか。君は少々残りたまえ。」

「え……あ。」

ジャックは忘れていた心当たりに気づき、そのままステビアとともに別室へ連れて行かれる。

そう、お嬢の失言に対しての謝罪と弁解を行う時間が待っていたのである。

まさに尻拭いだ。

う○こだけに。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー「はぁ………生きた心地がしない………」

ジャックはこってりと2時間、ステビアに絞られることに成った。

最終的にはステビアには笑って許してもらえたものの、ジャックの胃は既に痛みのせいで凄まじいことになっていた。

彼は腹部を抱えつつ、エレベーターのある方へと向かう。

早くお嬢の待つポケモンセンターへ帰らないと、何をしでかすかわからないからだ。

 

 

 

「………」

「………ッ」

廊下の途中、ジャックはある人物とすれ違う。

ブロンドヘアに黒のワンピースを着た女性だ。

彼はその顔を一瞬だけ見ると、何事もなかったかのように通り過ぎようとする。

 

 

 

「……おやおや、素通りとは酷いなぁ。久々の再会なのに挨拶も無いんかアンタ。」

女性はコガネ弁混じりの半笑いで声をかけるが、ジャックはあくまでも無視を決め込む。

「……さぁ。僕はアナタのような人は知りません。」

「しっかしエラいピシッとしたスーツ着てはるなぁ。アンタそないなキャラやっけ?」

「………。」

ジャックは面倒くさそうに無視を決め込み、そのまま速歩きでこの場を立ち去る。

 

 

 

「なぁ、アンタ財閥んとこの社長令嬢連れてるやろ?なんや、後輩トレーナーの育成のつもりか?」

その言葉を耳にすると、ジャックは一瞬だけ足を止める。

「……アナタには関係のないことです。」

「いやぁ、アンタにしごかれてはるんならそりゃあ将来有望ですわ。」

女性はニヤニヤと笑いながら続ける。

 

 

 

 

 

「……元チャンピオンのアンタと旅をしてはるんなら、なぁ?」

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