【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第011話】望まぬ再会、望まぬ会合

「なんや、何か言ったらどうなん?元チャンピオンさんや。」

「………。」

女性の一言の後、ジャックは再び沈黙を貫く。

まるで嫌なことを思い出したかのような、苦虫を噛み潰した顔を隠しつつ。

 

 

「………だから何なんです?私は仕事なんで帰ります。」

「えぇ、なんや釣れないなぁ。これからポケモンリーグを目指すトレーナーの付添い同士、仲良くしようやぁ。」

女性はジャックの方に歩み寄り、彼の肩にポンと手を乗せる。

ジャックは少しだけ振り向くと、彼女の方を睨む。

「あれやで、今丁度ジムチャレンジの予約に来たとこなんやわ。」

「……聞いてませんよ、そんな事。」

ジャックは煙たそうにしているが、女性は構わず聞いても居ないことをべらべらと喋りだす。

 

 

「それになぁ。ウチの子はアレや。多分近々アンタの後輩になるさかい。せや、後で紹介したろか?」

 

 その一言を聞いた瞬間、ジャックの顔は更に険しくなり、遂には肩に乗せられている彼女の腕を振り払ってしまった。

「……お言葉ですが、テイラーさん。次のリーグのチャンピオンの席に座るのは我が社の令嬢・トレンチ様の予定です。」

その言葉とともにテイラーをきつく睨みつけたジャックは、今度こそと足早にその場を去っていった。

 

 

 遠ざかっていく背中を見送りつつ、取り残されたテイラーは不気味な笑顔を浮かべる。

「……ふふっ、『さん』付けとは。ジャックの奴にはエラく嫌われたもんやなぁ。」

そして振り返り、数歩を歩くとまた独白に耽りだす。

「でもまぁ、あの様子じゃあウチの子には勝てんさかい。ふふっ。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーさて、一方その頃。

ポケモンセンターにてポケモンたちの治療を終えたトレンチ嬢とその他ポケモンたちは、祝勝会と称して街中のケーキビュッフェにて至福のひとときを過ごしていた。

「うーん、実に美味ね!勝利の後にいただくケーキは格別に美味しいわ!」

「まねね!」

「みしゃっ!」

お嬢及びマネネとスナヘビは、無限の食い意地により店中のありとあらゆるケーキを貪り尽くす。

そのあまりに凄まじい食いっぷりは、他の客や従業員の目を全て奪ってしまうほどのものであった。

……ちなみに費用は、先程お嬢がジャックのポケットからくすねたクレジットカードより支払われているそうな。

 

 哀れジャック。

「あなた達ホントに凄いわよ!あのパティシエールに勝つなんて!」

お嬢は高々と笑い声を上げつつ、スナヘビやマネネと共にティーカップで小さくカップを鳴らし合う。

 

 

 

 さて、そんな異様な空気の中、ただひとり黙々とケーキを食べ続ける少年が一人いた。

青髪と銀髪の混ざったパーマの彼は、すぐ後ろ側の席にて大きな声を上げるお嬢たち一同に苛立ちを覚えていた。

やがて痺れを切らした彼は、フォークを手元に置いてお嬢へと話しかける。

 

 

「……あのねぇ。キミたち、もう少し静かに食事をすることは出来ないのかい?」

彼はお嬢に軽く軽蔑するような眼差しを向けると、呆れ返った声でそう言った。

お嬢よりも身長が低いのだが、まさに『下から見下している』といった感じであった。

「あら、アナタにはわからないかしら?勝利の喜悦は何者にも代えがたいのよ!」

そう言うとお嬢はスナヘビから受け取ったティーポットを持ち上げ、少年のカップに紅茶を注ぐ。

 

 

『一杯どうぞ?』くらいのつもりだったのだろうが、少年はその意図が全く読めなかったのか、まだ呆れた表情を浮かべている。

「それにアナタ、年上に対しての態度がなって無いんじゃないかしら?」

「ハッ、真っ先に年齢で優劣を測るほうが人として浅いと思うけどね。」

一触触発、ふたりの間には早くも険悪なムードが生まれつつあった。

まさに最悪の出会い、デルビルとヒコザルの仲である。

 

 

 そして彼らの間の亀裂は、少年の一言によって決定的に広がることとなる。

「……それに1回程度の勝利で一喜一憂しているようじゃあ、トレーナーとしては二流……いや、三流だ。」

この言葉はお嬢の逆鱗をアッパーパンチで逆撫でした。

自らの誉れを真正面から踏みにじられたトレンチ嬢は我慢の限界を迎えたのだった。

「ふ……ふぅん。上等じゃない。いいわ、すぐそこの公園で勝負よ!」

「まねね!」

「え、嫌だよ。普通に時間の無駄だし。」

そう言って少年は紅茶を飲み干すと、すぐに店を後にしていった。

 

 

 完全に頭に血が登ってしまったトレンチ嬢は、ケーキそっちのけで少年を追いかける。

「ちょっと待ちなさいよ!アンタ、さんざん偉そうなこと言っておいて逃げる気なのかしら?」

「まねね?」

お嬢は敢えて煽るような口調で少年をけしかける。

鬱陶しそうな顔をしつつも少年は振り返り、お嬢に対して返答を返す。

「別に君がどう思おうと勝手だけど……そう思われているのも癪だな。」

 

 少年はそう言うとため息を交えつつ、踵を返して公園の方角へと歩み始めた。

 

 

 やがて2人は例の公園に立ち、芝生の上にて対峙する。

空は既に綺麗なオレンジ色に染まっており、暑苦しい空気の中をビル風が駆け抜けていく。

ボールを構えた少年はトレンチ嬢を指差すと、気だるそうに言う。

 

 

「僕が嫌いなものは2つ。馬鹿な奴と煩い奴だ。キミはその両方……テイラーの奴よりタチが悪い。」

「ちょっとバカって何よ。」

「まね。」

お嬢のツッコミに無視を決め込みつつ、少熱は更に続ける。

「この勝負で負かしてやれば、君は二度とこのレインに口を聞けなくなるだろう。」

そうして少年はボールを構えた。

「……まぁいい。サクッと終わらせよう。」

「上等ッ……!」

夕闇の中での勝負が、今始まる。

 

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