【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第119話】近似した在り方、罪過の翼獣

 太陽が沈み始める時刻。

CCを討伐するための作戦が、此処に始動する。

 

 

 

「行くわよ……!サダイジャ!エースバーン!アップリュー!」

「みしゃりっ!」

「にばばっ!」

「ふりゅーーーっ!」

お嬢は3つのボールを同時に投げると、彼女のポケモン達を一斉に呼び出した。

 

 

 

「いい?アンタ達はこの作戦で重要な役を担ってるわ。パーカーのポケモンが誘導してくれるみたいだから、それで所定の位置まで行きなさい。いいわね?」

お嬢の入念な指示に、ポケモン達は軽く頷いて返事をする。

彼らもまた、お嬢の存在を証明し続けるための大切な存在なのだ。

レイスポスの背中にまたがる彼女の事を心配しつつも、信じて送り出す。

「……頼んだわよ。」

そんな彼女も、グーサインで意志を示す。

親指を立てるその左腕には、3つのダイマックスバンドがくくりつけられていた。

 

 

 

『……よし、行くぞお嬢様。振り落とされないようにしがみついておけ。』

「まねっ!」

「えぇ!お願い!」

お嬢が返事をするとすぐ、レイスポスは蹄を鳴らして走り始める。

一瞬にして、そこに居たお嬢のポケモン達は姿が見えなくなった。

 

 

 

 レイスポスはまず、CCを中心として街の外周を走り始めた。

いきなり接近するリスクを考えての様子見……なのだが、それ以外にも彼らは確認したい事柄があった。

 

 

 

〔………………〕

CCの首が、わずかに動く。

目と思われる器官が向けられたその先に……レイスポスたちが居た。

まるで遠方から眺めているかのようだ。

『チッ、やはり俺らの存在には敏感なようだな……!』

 

 

 

 彼が確認したかったのは、この巨人にどれほど関心を向けられているか……という事だ。

その度合の違いによって、取るべき対応や要請する支援形態が変わってくる。

特に、現場からポケモン達に指示を送るお嬢にとってはその情報は大切だ。

そのために必要な様子見だったのだが、どうにも事態は面倒な方に傾いているようだ。

 

 

 

「何、大丈夫よ。どうせ遅かれ早かれ気づかれることを見越しての総力戦なんじゃない!」

『……それもそうだな。』

お嬢の的確な楽観……もとい悲観しないその精神に、ジャックも感心する。

窮地における胆力の強さを、これでもかと鍛えられた故だろう。

 

 

 

 その時であった。

お嬢の耳のインカム型無線機に通信が入る。

『ザザ……ザ……こちらB2ポイントのスモック!各ポケモン配置につきました!オーバー!』

『ザザ……こちら0ポイントのパーカー。了解です、各自一斉にダイマックスを切ってください。アウト。』

どうやら布陣が整ったようだ。

CCに気づかれた以上、あまり時間をかけることは出来ない。

 

 

 

 すぐにお嬢は、3本のダイマックスバンドに手をかざす。

すると3本のバンドは赤紫色に光り出し、それぞれ別方向へと1つの光線のように飛んでいった。

そう、各自対応したポケモンと共鳴が始まったのだ。

 

 

 

 その直後であった。

遠くの地点で、徐々にポケモン達が巨大化していく様子が見えた。

「なっ……何アレッ……!?」

『ダイマックスだ……!いや、それにしてもデカすぎるッ……!』

ガラル粒子の影響でポケモンが巨大化する現象……それがダイマックスだ。

その現象自体は、ジャックも知っていた。

 

 

 

 しかし目の前で起こっているダイマックスは、通常のそれと比べてもあまりに規格外すぎる。

巨大化と言ってもせいぜい20mかそこらが相場なのだが、このダイマックスは……なんとその10倍。

約200mの超大型のポケモンと化しているのである。

 

 

 

『MISYAAAAAAAAAAAAAAA!』

『NIVAAAAAAAAAAAAAAAA!』

『RYUUUUUUUUUUUUUUU!』

ポケモン達の鳴き声がフウジの街中に轟き、わずかな息遣いさえも聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーフウジ大学、キャンパス中庭内。

作戦の司令塔から様子を眺めていたパーカーは、あまりの光景に圧倒されていた。

「これが……この世の理を外れたダイマックス……!」

「おうよォ。すげェだろ。まァ、俺も実物見るのは流石に初めてだけどなァ。」

顕現しているCCもそうだが、その周囲を巨大なポケモン達が闊歩しているその様は……まるで世界の終末とでも言うべきような状態であった。

ダイマックスの影響で上空には赤紫の暗雲が立ち込めており、より鬼気迫るような風景と化している。

 

 

 

「しかしトレンチさんのサダイジャとエースバーンとアップリュー……加えてスモック博士のオーロンゲですか。しかもそのどれもが普通と異なる姿……『キョダイマックス』の形態を取っている……!」

「そうだァ。このバンドは仕様が特殊でなァ。急激な肉体の変化に耐えうるポケモンにじゃないと使えねェ。ま、トレンチのポケモンが思ったより多く条件をクリアしてくれたのが幸いしたっつーワケだァ。」

そう、このダイマックスにはいくつかの特殊な条件があった。

そのため全ポケモンを戦力として参戦させる……というわけにはいかず、更にはトレーナーの負担が偏った。

特に、キョダイマックス出来るポケモンを多く所持していたお嬢にはしわ寄せが来てしまったのだ。

 

 

 

「だけどまァ、アイツなら行けるだろ。なんと言っても、今まで数々の敵に打ち勝ってきたトレンチ・コートだァ。」

「………ッ!」

「……どうした?」

お嬢のフルネームを聞いたパーカーは、若干の動揺を見せる。

が、すぐに平静を装って咳払いをした。

「……いえ。なんでもありません。」

「そうかァ。」

 

 

 

 そんなパーカーの横顔を見つつ、ダフはあることを考えていた。

「(桃色の髪に青い目。それに高いとは言えない身長……いや、まさかなァ。)」

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー『……よし、そこのホテル街なら行ける!あそこから直線で突撃だ。」

「まねっ……!」

接近のためのルートを見出したレイスポスは、お嬢へその旨を伝える。

周囲にサポート用のダイマックスポケモンも配備され、準備は整った。

あとはお嬢がトリガーを引いて、作戦開始となる。

「………。」

しかしそのトリガーというものが、お嬢を悩ませていた。

彼女は自身の手に握られたポケットナイフを見て、生唾を呑む。

それがSDを起動させるための道具……即ち、ジャックを斬りつけるための道具であることは既に知らされていた。

 

 

 

「……ホントに良いのね?」

『良いも何も、此処でやらなくちゃ何も始まらない。』

「………。」

『寧ろ思い切りガッと行ってくれ。中途半端にやられるのが一番キツい。』

レイスポスは長い睫毛に隠れた瞳で、背中のお嬢の方を向く。

既に彼とて覚悟は決まっているようだ。

 

 

 

 その表情を見たお嬢も、再び覚悟を決める。

そうだ、これは彼らと共に在るための戦いだ……と。

自分はもう、無力な傍観者にはなるまい……と。

 

 

 

「ッ………行くわよマネネ!ジャックッ!」

お嬢は叫び声と共に、レイスポスの脇腹にナイフを突き立てる。

『つッ………!』

彼はその刺突に、小さく喘ぎ声を上げる。

「じゃ、ジャッ……」

『構わん……続けろッ!』

「ッ………!」

彼の言葉の後、すぐさまナイフを手前上方向へと引く、

これにてレイスポスの脇腹に、縦長の刺し傷がつくこととなった。

 

 

 

 瞬間、傷口からは冷気が漏れ始める。

SDの発現をする前兆だ。

マネネの身体も、それに共鳴して青白い光を放ち始めた。

『ッ……行くぞマネネッ!』

「まねねっ!」

ふたりが掛け声を発した直後、周囲の温度が著しく下がっていく。

互いの魂が融合を始めたのだ。

 

 

 

 

 

 ーーーー「………やぁ、ジャック。ちゃんとこうして話をするのは初めてかな。」

「ま、マネネ……お前……ッ!」

深い意識の底で、ジャックとマネネは感覚の共有を始めた。

それは即ち、互いの記憶や意識を垣間見ることとも同義となる。

 

 

 

「お前……お前がキルト……!」

マネネの正体を知ったジャックは驚愕する。

そこに人間の魂が存在したこともそうだが……それ以上に、だ。

キルトという人間は、あまりにも自分とよく似すぎていた。

外見の話ではなく……命の在り方が、だ。

「そうだよ。自らの責任から逃げ続けてきた……臆病者のキルトだ。」

「ッ……!」

驚く表情のジャックに、キルトは笑いかける。

 

 

 

「……君も随分と、罪の意識に悩まされていたようだ。大切な存在を死に追いやった、その罪に。」

「……そうだ。俺はサンドを虐げた。更には、その罪の責任からも逃げた。生きることを放棄しかけたんだ。」

「ハハッ……とんでもない奴だ。ま、その点に関しては僕も同じなんだけどさ。」

キルトはジャックの方へと歩み寄っていく。

そして軽く、彼の方へと手を差し伸べた。

 

 

 

「でも、だからこそだ。僕らは罪を償わなくちゃいけない。そのためには何をするべきか……分かるだろう?ジャック。」

「……生きることだ。俺らは今、多くの人間の助力で生きている。」

「そうだ。僕らは生きなくちゃいけない。トレンチを悲しませないためにも、生きなくちゃいけないんだ。」

「……あぁ、そしてそのために、この世界が必要だ。」

彼らは最後、その言葉とともに手を取り合う。

 

 

 

「……準備はいいかジャック。『飛び立つ』ぞ。」

「任せろキルト。俺らは罪を背負いて生きる者……人ならざる身に堕ちた『罪過の翼獣(ギルティ・ペガサス)』だッ……!」

 

 

 

 

 

 ーーーーー周囲の温度の低下が徐々に緩やかになっていき、ふたりを包んでいた光が勢いを落としていく。

あまりの眩しさに目を瞑っていたお嬢がゆっくりと瞼を開くと、そこには……

「なっ……!」

大きく姿の変わったレイスポスとマネネの姿があった。

 

 

 

 マネネの頭の帽子はベールのような形となり、片腕には彼の身長ほどもある魔杖が握られている。

体表は凍りつき、頭からはバリコオルと類似した角も生えていた。

その外見はまさに魔法使い………否、更にその上の「魔導師」とでも言うべき風貌であった。

 

 

 

 しかしより顕著に変化したのは、レイスポスの方であった。

尻尾が大きく伸び、全体的に毛先が青白くなっている。

そして何より、首筋からは黒い霧のような形状の翼が生えていた。

それはまさに、絵本に語られる幻想種……翼獣ペガサスそのものであった。

 

 

 

 今までにない、異例中の異例……ポケモン同士のSD。

加えて彼らの存在の近似性が、より強固に魂を結びつける。

ある意味では邪道だが……ある意味では最も完成された、SDであった。

 

 

 

 

 

〔………〕

その変化を感じ取ったのか、CCの目が更に鋭くレイスポスたちを睨みつけた。

すると……

〔……縺願?縺檎ゥコ縺?◆縺雁燕縺ッ隱ー縺?隗ヲ繧峨○繧埼」溘o縺帙m鄒主袖縺昴≧縺?縺ェ!!!!!!!!!!!!!!!!〕

「ッ!!!うるさッ!?」

CCは初めて、音を発したのである。

けたたましいほどのうめき声を上げたのだ。

その様子は、誰がどう見ても「威嚇行為」だろう。

CCは明白に、翼獣(ペガサス)を敵と見なしたのだ。

 

 

 

 お嬢は手元のインカムのスイッチをつけ、通信を入れる。

「こちらトレンチ!えっと……えー……」

『C1地点!』

「そう!C1地点より突撃を開始するわ!オーバー!」

『ザッ……ザザッ……了解ッ!ダイマックス部隊と共に行動を開始してください。アウト。』

司令塔であるパーカーの声を皮切りに、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

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