【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第123話】伝わらない悲しみ、預ける己(vsCC)

 

「わ……私………いま……い、生きて……」

お嬢の膝と声が、ブリザポスの背中の上で震えている。

彼女の中では様々な感情がうごめいていた。

命の危機に瀕した恐怖心と緊張感。

ブリザポスがここに居ることへの疑問。

……そして何より、一番の隣人が駆けつけてくれた安心感。

それらが混在した結果、彼女は言行の整理がつかなくなっていたのだ。

『………。』

その表情を、ブリザポスは黙って見つめている。

 

 

 

 丁度その時、上空から声が聞こえてくる。

『おーい……!お嬢様!!生きてるか!?』

「まねねっ!?」

急速に高度を下げて降り立ってきたのは、翼獣(ペガサス)とレジ達であった。

 

お嬢を取りこぼしてしまった後で、彼女の安否を確認するために寄ってきたのだ。

 

 

 

『あっ……』

その時、レイスポスはブリザポスと再会する。

彼の顔を見たブリザポスは、軽蔑の眼差しと共に言う。

『……随分とやらかしましたね。私が来たから良かったものの……そうでなかったらどう落とし前をつけるつもりだったんです?』

『す……すまない。』

「まね……」

レイスポスとマネネは、バツが悪そうに項垂れる。

実際、彼らは不慮の事故とは言えお嬢を守りきれなかったのだ。

その事をいくら糾弾されても、弁明する余地はない。

 

 

 

 しかし……だ。

叱責を続けるブリザポスを、お嬢はじっと見つめる。

彼女の目はまるで「許してやれ」と、諭しているかのようであった。

『ッ………!』

その視線に気づいた彼は、レイスポスを叱るのを止めた。

 

 

 

『……全く、しっかりして下さい。貴方は無敗の「ジャック」なのですから。』

『ッ………。』

彼の言葉に含まれていた意図は、きっと本人しか知り得ない。

皮肉かも知れないし、嫉妬かも知れない。

だが、その言葉はとても重たかった。

受け取る方にとっても、受け渡す方にとっても。

 

 

 

 

 

 その時、お嬢のインカムからノイズが走る。

スモック博士から、安否確認の通信が来たのだ。

『ザザッ……だ、大丈夫かトレンチちゃん!?すごい状況になっているが……!』

彼の声は、通信機越しにも取り乱している事がわかる。

そんな通信機越しの博士に返答をしたのは、ブリザポスであった。

 

 

 

『割り込み失礼します。安心して下さい。お嬢様は無事です。』

『ザッ……そ、その声はまさか……!』

『……それより、CCの攻撃が徐々に苛烈になってきています。今はダイマックスしたポケモン達が応戦してますが、速く攻勢に出ないと前線が持ちません。』

実際、状況はブリザポスの言う通りであった。

上空ではお嬢のポケモン3匹とオーロンゲ、それに援軍のイオルブとアーマーガアが必死にCCと奮闘していた。

 

 

 

 しかし、だ。

CCの喉元からはブリムオンの『キョダイテンバツ』の雨が撒き散らされ、更には随所随所でジュラルドンの『キョダイゲンスイ』やマホイップの『キョダイダンエン』の追加攻撃までもが飛んできている状況だ。

CC側も、先の<ruby>翼獣<rt>ペガサス</rt></ruby>達の特攻でいよいよ危機感を感じはじめたのだろう。

 

 彼らですら押され始め、体力も徐々に減ってきている。

状況は刻一刻と悪くなっていく。

 

 

 

『……今から作戦の案を手短に伝達します。1度しか言いませんので、全員よく聞いて下さい。』

ブリザポスの口から、対CCの策が告げられる。

『なっ………!』

それを聞いた全員が、思わず息を呑んだ。

作戦の内容が、あまりに突飛でハイリスクなものであったからだ。

「ちょ……本当にそんなことが出来るの!?」

『えぇ。過程は省きますが、私にも可能です。それに、手段を選ぶ余裕など無いはずですよ。』

 

 

 

 しかし、彼の言う通りだ。

既に迷っていられる時間は残っていない。

一転攻勢を仕掛けなければ、この街にいる者もろともCCに食われて全てが終わるのだから。

 

 

 

『……ザザッ……わかりました。ブリザポスさん、あなたの作戦の実行を許可しましょう。移行私からは通信を入れませんので、現場の判断でお願いします。』

パーカーのこの一言で、ブリザポスの策は決行されることとなった。

『恩に着ます、パーカー様。』

彼のその一言を最後に、通信機が遮断される。

そして各員は、配置へと着くことになった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーフウジシティ南東の廃ビルにて。

通信機を切ったミチユキは、ゆっくりとその場で振り返る。

「……だってさ。流石に無茶を言うっすね……あの白馬。」

「まぁな。でもヤツならやりかねんわ。」

「……随分と心配そうにしてますけど、何かあったんですか?」

「……いや、何もないわ。」

 

 

 

 ミチユキの後ろで会話に応対していたのは、腕に2つのダイマックスバンドを巻いたテイラーであった。

見晴らしのいい場所に陣取った結果、ミチユキと偶然同じ場所に立つことになったのである。

「しかしアンタ、どっかで見たことある顔しとるな。ウチら、知り合いだったか?」

「……いや、俺はあなたとは初対面っすよ。」

彼は平然と、そう返事をする。

しかしテイラーは、彼の存在にどこか違和感が残るのを感じていた。

なにか根本的なことを忘れているような……そんな違和感を。

 

 

 

「……そうか。いや、悪いな。……作戦に集中せな。」

そう言いつつ、テイラーはダイマックスバンドに手を翳して臨戦形態に移行する。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーー『いいですかジャック。まずお嬢様を貴方に返します。貴方が背負うのです。』

『し、しかし……本当に俺で良いのか?』

レイスポスは提案を受け入れるのに、多少なりとも抵抗があった。

一度とは言え、お嬢を落としてしまった自分に彼女を背負う資格が在るのか……という抵抗が。

しかしそれをブリザポスは押し通す。

 

 

 

『文句は言わせません。わかったらさっさと背中を差し出しなさい。』

そう言いつつ、ブリザポスはお嬢が降りやすいようにレイスポスの側面に歩み寄る。

 

 

 

「……ほ、本当に良いのね?」

不安げに見つめてくるお嬢に、ブリザポスは答えた。

『……心配いりませんよ、お嬢様。その男は、きっと私より頼りになります。』

その声のトーンは柔和であったが、どこか悲しげであった。

 

 

 

「……。」

お嬢の表情に、不安の色が僅かに浮かぶ。

彼女の心の内面を、ブリザポスは残念ながら知り得ない。

だがお嬢はそれでも、彼を信じるしか無かったのだ。

ゆっくりと脚を上げ、彼女は隣のレイスポスに再度乗り移る。

 

 

 

 

 

『……では、私が特攻します。合図を出しますので、ちゃんと続いて下さいね。』

そう言うとブリザポスは、南の方角へと急速に発進する。

「あっ!待って、ジャ……」

お嬢の声は、届くことはなかった。

既にブリザポスは、駆け出してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 フウジのメインストリートを爆走するブリザポス。

覚悟を決めた彼は、全身に力を込めて叫び始める。

『さて、我が人生最大の勝負です。私の全てを、今この場で賭けましょう。……呼応しろッ、CCッ!』

その声と共に、ブリザポスの周囲の空間が歪み始める。

彼の走った軌跡に電光が走り、続くように火柱が上がっていった。

そして彼の全身は、絶対零度に凍てついた空気に包まれた。

 

 

 

 その現象は、まさにSDそのものであった。

彼は今、CCを器に……自身を擬似的な秘鍵にしてSDを起動させようとしているのだ。

『我が使命を果たすべく、貴様をこの身で貫いてやるッ!』

最後、その言葉が引き金となる。

 

 

 

 そこに駆けていたのは、大きく姿の変わったブリザポスであった。

脚の蹄も色が変わり、右端を紅色の炎が、左端を金色の雷が覆っている。

透明だった氷のマスクも右半分が紅に、左半分が金色に変わる。

そして何より、両耳が大きく伸びて角のようになっていた。

それは、翼獣(ペガサス)と共に語られる空想上の生き物……そう、双角獣(バイコーン)の如き姿であった。

 

 

 

 

 

『私は双角獣(バイコーン)……決死の覚悟とともに駆ける、「決死の双角獣(デスパレイト・バイコーン)」だッ!!!!』

 

 

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