【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第126話】行動の正当性、強さの証明(vsMA-Ⅰ)

『GRRRRRRRRRRR!!!』

『GRR……!!』

お嬢が居なくなり、動きが身軽になったブリザポス達。

彼らの行動が機敏になるに連れ、相手のザシアンたちの斬撃も苛烈になっていく。

『さすがいにキツイな……出力上げるぞマネネ!「こごえるせかい」の準備!』

「まねねっ!」

レイスポスに騎乗したマネネの魔杖から、冷気を纏った衝撃波が放たれる。

SDの力で無理矢理出力を向上させたこおりタイプの攻撃『こごえるせかい』だ。

 

 

 

『GRR……!』

風圧によろめくとともに、ザシアンたちの全身はあっという間に氷漬けにされる。

彼らは一瞬の内に、脚の自由を奪われたのだ。

『追撃だッ……「クロスフレイム」ッ!!!』

ブリザポスが足踏みをすると共に、氷の真下から紅炎の柱が上がる。

瞬間、急激な温度差によって氷はひび割れて爆発。

中のザシアンごと粉々に打ち砕いたのだ。

反則級の数と、反則級の力……そのぶつかり合いは凄まじいものであった。

 

 

 

『チッ、もう何匹倒した……!?キリがない!』

『1000を越えたあたりから数えるのが馬鹿らしくなりましたね。っと……また来た……!』

彼らが会話を交わす暇もなく、広間の至る場所からザシアンが生えてくる。

やはりこのザシアンは、中枢のMA-Ⅰが倒れるまでは延々と発生し続けるようだ。

 

 

 

『出力にも限りがあるからな。効率を考えて、さっきのやり方で行くぞ。』

『……。』

しかしレイスポスの言葉に、ブリザポスから返答が返ってくることはない。

不審に思った彼は、僅かに後ろを振り向く。

 

 

 

 そこで目にしたものは、彼にとっても衝撃的なものだった。

『ッ!お、お前……!』

ブリザポスの身体に、まるで液晶のようなノイズが走っている。

フウジのビル群のように、存在が不安定化してきている証拠だ。

『そうか……!お前はSDを発現しているが、その中核になる心臓……「秘鍵」のパーツがない!なんて無茶を……』

 

 

 

 レイスポスの考察通り、ブリザポスのSDはあくまでも外付けのパーツによって行われているものだ。

その半端なSDがもたらすリスクは、既に先刻にサンダーが証明済みである。

加えて彼は正規のポケモンではなく、人の心から発生した人格の一つ……ただでさえ不安定な存在なのだ。

そんな存在が、長くSDの負担に耐えきれるわけもなかった。

 

 

 

『おいブリザポス!一旦戦線を撤退しろ……!』

「まねねっ!」

撤退を促すレイスポスとマネネ。

しかしブリザポスは首を横に振る。

『……ぜぇ……だ、黙りなさい!』

『このままじゃお前、SDの暴走で死ぬぞ!!』

『……それの何が問題なのです?私が死ねば、あなたは晴れて元通りの人間だ。ぜぇ……何も咎めることなど……』

息を切らしつつ答えるブリザポスに、レイスポスは怒鳴り声を上げる。

 

 

 

『いい加減にしろこの馬鹿ッ!お前が消えれば、お嬢様はどうなると思ってるんだ!!お前に救われた存在の背負う悲しみを、お前は考えられないのか!?』

『馬鹿者はアナタの方だ!私などただの影法師に過ぎぬ存在……!一体いつまで自らの人生から逃れ続けるつもりなのです!?』

『今は俺の話じゃないだろ!!』

彼らの口論は過激になろうとしている。

しかしそんな余裕は、急襲してきたザシアンたちによってかき消されることになる。

 

 

 

『GRRRRRRRRRR!!』

『クソッ、コイツらッ!』

『ぜぇっ……喰らいなさいッ「クロスサンダー」ッ!!』

再び背中合わせになった彼らは再度攻撃を繰り出し、迎撃の構えに戻る。

以後彼らが会話を交わすことは無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー一方、広間の中心。

心臓の真下。

そこに対峙するのは敵の本丸・人間体のMA-Ⅰとお嬢。

「行くわよポッタイシッ!」

「ふるるるっ!」

お嬢がボールから呼び出したのはポッタイシ……彼女がここまで連れて来た、唯一のポケモンだ。

しかし土壇場の戦力としては、最適な解にすらなり得る。

 

 

 

 お嬢とポッタイシは、共に目の前の人間体MA-Ⅰを睨みつける。

「……なるほど、本気で私を倒す気のようですね。」

「えぇ。今すぐこのザシアンの群れを片付けてくれるってんなら話は別だけどね……!」

そう言うや否や、お嬢はハンドサインをポッタイシに飛ばす。

 

 

 

「ふるるるるるッ!」

彼は爆速で飛び上がり、全身をスクリューのように回転させて嘴から突っ込んでいく。

渾身の『ドリルくちばし』攻撃だ。

お嬢もポッタイシも肌で感じていたが、相手のMA-Ⅰは只の人間ではない。

故にその不意打ちに躊躇いなどはない。

 

 

 

 だが、残念。

なんとMA-Ⅰは片腕だけで其の攻撃を受け止めてしまったのだ。

「なっ……!?」

「ふるるっ!?」

明らかに華奢な人間の女性から出てくる膂力ではない。

誰もが規格外の力に、あっけにとられてしまう。

しかしそれが隙だった。

そのまま薙ぎ払われるように、ポッタイシはMA-Ⅰに投げ飛ばされた。

 

 

 

「ぽ、ポッタイシ……!」

「ふ……ふるる……!」

今、この攻撃でMA-Ⅰに触れてポッタイシはその身で感じ取った。

目の前に立ちふさがる存在の脅威を。

その奥底に潜んでいる……底なしの虚空を。

 

 

 

 そんな彼らの様子を見て、MA-Ⅰは溜息を吐いた。

「………はぁ。」

「何よ、何か文句でもあんの?」

「……いえ、不思議なのです。一体なぜ、あなた達が戦うのか。」

投げかけられた疑問は実に単純……故に頓珍漢であった。

お嬢は、その単純な疑問に困惑する。

 

 

 

「ッ……そんなの、世界の危機だからじゃない!」

「それの何が問題なのですか?」

「このままCCをのさばらせていたら、罪のない多くの人が飲まれて消えるわ!その存在すら誰にも覚えられることなくね!それが許せないから戦うのよ……!」

心の底から、お嬢は叫ぶ。

その答えに嘘はなければ、迷いもない。

 

 

 

「……では貴方は、CCだけをこの世界から爪弾きにすると。排除すると。」

「ッ……そうよ!それの何が……」

「不思議には思わないのですか?『世界を救う』だなんて言いながら、その実やっていることは『仲間はずれ』を作ること。もっと言えば『弱い者いじめ』なのですよ。」

MA-Ⅰは淡々と、言葉を紡ぐ。

単語の一つ一つが、お嬢の背筋をゆっくりと這い上がっていく。

 

 

 

「違っ……!よ、弱い者いじめなんかじゃ……」

「元より、彼は世界の端に捨てられた存在。この世界へ好奇心を抱くだけの無垢な存在なのです。そう、いうなれば赤子と同じようなものですよ。」

「ッ……!」

「それを虐げることを『弱いものいじめ』と言うことのどこに間違いが?」

語り続けるMA-Ⅰの語気は、一切変動しない。

しかしその鋭さは、加速度的に増していく。

お嬢の精神が、徐々に削り取られていくのだ。

 

 

 

「ふるるるるるっ!!!!!」

その狡猾な手口に、短気なポッタイシは業を煮やす。

今すぐ黙れ、と言わんばかりにMA-Ⅰへ『なみのり』と『ダブルアタック』の併せ技で水の刃を飛ばした。

しかしその攻撃も、彼女の正面で全て弾け飛んで消えてしまったのである。

 

 

 

「ふるっ……!?」

「全くもって傲慢なのですね。アナタ自身、過去にあの執事に救われた身でありながら……CCを『救われるべき存在でない』と考えている。」

「ッ………!!!」

MA-Ⅰのその一言……今のお嬢が在る根源。

それを持ち出されたことで、彼女の心はいよいよ本格的にひび割れ始める。

 

 

 

「結果として『救われるもの』と『救われないもの』が生まれるのは当然のことでしょう。ですが最初から『救うべきもの』と『そうでないもの』を定義として作り出し、後者を排斥する……人間の悪いところです。自らに都合の悪いものを排除することが正当化されるのであれば、一体なぜこのCCの行いだけが否定されるのです?」

「ちがっ……違う違うッ……!」

「違わないでしょう?現に貴方は貫くための正義すら無く、誰かを傷つけようとしている。」

 

 

 

「ふるるるるるるーーーーッ!」

MA-Ⅰの言葉を遮らんと、再びポッタイシが『ドリルくちばし』で攻撃を仕掛ける。

怒りに身を任せたその攻撃に、最早理性などは残っていない。

その攻撃がMA-Ⅰに届かないことを、彼は知っていたのだ。

だが、それでも身体は衝動に抗えなかった。

 

 

 

 全力を込めたポッタイシの攻撃は、またしても片手間でMA-Ⅰにあしらわれる。

「答えてください。アナタの行動の正当性を、私は知りたいのです。」

「そんなっ……違ッ……!」

MA-Ⅰの言葉に返答するほどの余裕は、既にお嬢の中には残っていなかった。

ただ頭を抱え、自らの行いへの罪悪感に戦慄するしかなくなっていたのだ。

 

 

 

 

 

 ーーーーーその様子を、どこか別の場所で眺めるバドレックス。

正確にはその姿を模したCCが、座にふんぞり返って呟く。

『なるほど……相手を「壊す」のに、実に的確な言葉の選択である。やはり貴様からの受け売りか?』

彼が問いを投げかけた先に居たのはクランガ……否、既に形を成していない黒の塊。

「かつてクランガだったもの」であった。

当然、そこから答えが返ってくることはない。

CCは、それを敢えて知って問うたのだ。

『ふん。この程度の手口で折れる者に、余をどうにか出来るわけがなかろう。せいぜい駄馬どもと共に消えるが良い。』

 

 

 

 

 

 ーーーーー「答えて下さい。アナタはなぜ戦うのか。」

「わかんない……わかんないわよ!」

MA-Ⅰの問に、お嬢は答えられず喚く。

……否、実際にはそれは問答ではない。

相手を追い詰めるためにCC側から仕組まれた、残忍なやり口。

ただの言いくるめであった。

しかしその罠に、お嬢はまんまと引っかかったのである。

 

 

 

「ふるるるーーーーーッ!」

お嬢を見かねてポッタイシは何度も攻撃を仕掛けるが、その度に無言のMA-Ⅰに全てが弾かれるのであった。

そんな彼を見ても尚、お嬢は立ち上がろうとしない。

完全にその心は折れ切っていた。

「……もういいです。アナタに何を聞いても無駄なようですから。」

そう言うと、MA-Ⅰは両腕を前に翳して何かを探るような動作を見せる。

 

 

 

 すると瞬く間に、彼女の腕には盾と剣が握られていた。

朽ちかけの盾と剣……ガラルの英雄が所持していた武器の模造品である。

だがその力は一級品。

武具……否、最早「神具」とすら呼べるほど強大なものであった。

「そこに直って下さい。アナタのポケモンごと断ち斬ります。」

そう言いつつ、彼女は一歩……また一歩と座り込むお嬢の方へと近づいていく。

 

 

 

「ふ……るるるるるッ!」

だがそうはさせまいと、ポッタイシは全力の『ダブルアタック』で抵抗を見せる。

既に『まけんき』も発動しており、彼の出せる全力である。

しかし……そんな神の武器に叶うはずもない。

 

 

 

 MA-Ⅰの右手から放たれた斬撃で、ポッタイシはお嬢の方へと吹き飛ばされる。

「……もう無抵抗なのですね。良い判断です。」

「あっ……ああっ……!」

彼女はそう言葉を吐き、お嬢へと徐々に迫る。

だが心の壊れかけたお嬢に、戦う意志は残っていなかったのである。

 

 

 

 そんな彼女の前で倒れるポッタイシ。

「ふ……るる……!」

彼は全身が傷だらけになりながらも、それでも負けを認めず立ち上がる。

「……ポッタイシ、無駄です。アナタ一人では私に勝てません。それ以上苦しむ前に、勝負を諦めることを推奨します。」

「ふるるっ……!」

しかし返答はNo。

彼はあくまで首を横に振ったのだ。

そして次の瞬間、彼はその翼を振りかぶり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お嬢の頬を引っ叩いた。

「ふるるるッ!!!」

「ッ!?」

凄まじい破裂音とともに、彼女の顔を衝撃が駆け抜けていく。

それはポッタイシからの怒りの一撃であった。

「ふるるるッ………!!!!」

「ぽ……ポッタイシ……?」

お嬢は頬を抑えながら、何が起こったのか飲み込めず唖然とする。

 

 

 

 だがポッタイシの怒りは本物であった。

あの時、お嬢と初めて会ったアックビー氷河にて。

彼女は怒る群れのリーダーに、「このポッチャマの強さを証明する」と約束した。

実際、彼はこの旅の中でお嬢とともにその才覚を遺憾なく発揮していた。

それは、彼が才能のあるポケモンだったことも原因の一端だろう。

しかしその強さは、お嬢の存在があったからこそ輝くものなのだ。

その事実は、共に闘ってきたポッタイシ自身が認めはじめていた。

 

 

 

 だが、今のお嬢はどうだ。

曲げないと誓った筈の意志が、いともたやすく少しの言葉で崩れているではないか。

更には自らの債務を放棄しようとさえしている。

戦う気概をなくしている。

自分の「強さを証明する人間」が、ここまで弱々しい存在だったなどと……ポッタイシにとってはこの上なく腹立たしいことであった。

 

 

 

「ふるるるッ!!!!」

怒りに任せ、ポッタイシはお嬢の胸ぐらをつかんで怒鳴りつける。

『目を覚ませ、お前には戦う理由がちゃんとある』

その意図が、ポケモンの言葉が分からぬお嬢にも伝わるよう……言葉にはありったけの感情を乗せた。

 

 

 

「ぽ……ポッタイシ……!アタシ……」

「ふるる……」

彼はお嬢の服を離し、再度MA-Ⅰの方へと顔を向ける。

彼女の瞳に光が宿り始めたのを見たからだ。

 

 

 

「……そうよね。ごめんなさい。目が覚めたわ。」

「ふるっ!」

ポッタイシのビンタによって、彼女はいつものお嬢に戻れたのだ。

再び戦意を宿した彼らは、戦場に舞い戻る。

互いに敵となるMA-Ⅰの方を向く。

 

 

 

「……まだ立ち上がるのですか?己の行いの正当性すら分かっていないのに?」

「黙りなさいッ!アタシにとっては、正当性より何より大切なものがある。今この世界で、誰かと生きること!ジャックも、マネネも、他の人やポケモンも……みんなアタシにとって大切なものよ!それを歪めてまで戦うのをやめる道理なんて……どこにもないわッ!!」

「ふるるッ!!」

彼女らの強い言葉が、己の中の淀みを薙ぎ払う。

そこに答えを見つけた者は、何度でも立ち上がるのだ。

 

 

 

 瞬間、ポッタイシの身体が七色に光り始める。

トレーナーが弱さを越えたとともに、彼もまた己の中の限界を一つ越えた。

即ちそれは、己の強さの証左……進化という形で現れる。

 

 

 

 そこに居たのは、あの氷河で出会ったリーダーと同じ姿のポケモン……そう、エンペルトであった。

「ふぇるるるーーーーッ!」

「アタシにはアンタ達を倒す正当性なんかないかもしれない。でも理由はある!それで十分ッ!」

「………!」

 

 お嬢の言葉が終わると同時に、進化が完全に完了する。

「アタシは迷わない。アンタを倒すことに、迷いなんかするもんですかッ!!……行くわよエンペルト!!」

「ふぇるるっ!!」

「……そうですか。であれば私はそれを阻むだけです。」

 

 

 

 MA-Ⅰが盾と剣を構えた。

その僅かな金属音と共に、戦いの幕が上がる。

 

 

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