【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第131話】絶対の法則、捨て身の干渉

 ーーーーー夜、フウジシティ。

CCの存在が認識下から消滅し、そこには静かな街のみが残ることとなった。

そんな中、お嬢らの存在を証明し続けるべくダイマックス状態を維持し続けるポケモン達。

その様子を遠くの大学内から見守るのは、パーカー率いるトレーナーたちだ。

「今は静かですが、この後に何が起こってもおかしくありません。各自、今のうちにポケモン達の回復をお願いします。」

「えぇ、わかっているっす。」

「僕は観測に戻ります。何か以上があれば通信機で。」

一度同じ場所へと集合した彼らは、厳粛な体勢のもと警戒を続ける。

 

 

 

「一応、ダイマックスポケモン達の補助はイオルブとアーマーガアに任せとる。この後、追加の戦力が要らんとも限らんからな……オーロンゲは特に最優先で回復するで。」

そしてその中で、最も激しく奔走していたのはテイラーであった。

「そういえば伺うのが遅れましたが……アナタは……」

彼女の顔を初めて見たパーカーは、片手間で問いかける。

「この騒動を起こした張本人や。バベル教団の影の首領、とでも言えばええか?」

「……な、なるほど。アナタがテイラーさんですか。」

当然、彼女らとてバベル教団を追っていた身だ。

その名前を知らないはずがない。

 

 

 

「まぁ、色々言いたい気持ちはわかる。ウチは取り返しの付かんことをしていた人間や、。せやけど……だからこそ、ウチは今できることを全力でこなす。ジャックやトレンチの嬢ちゃんにばかり負債を押し付けるわけにもいかんからな。」

手を動かしつつ、テイラーは答える。

かつては敵対していたが、今は同じく窮地に立たされた人類同士なのだ。

 

 

 

 しかし……そんな彼女の言葉に、パーカーは疑問符を浮かべる。

「あの……ジャックとトレンチとは……一体誰のことです?」

「……は?」

何を言っているのか、テイラーには理解できなかった。

彼らとパーカーは先程会ったばかりじゃないか。

何を頓珍漢な事を……と思った束の間。

その意味の重大さに、彼女は遅れて気づく事となる。

 

 

 

 テイラーは慌ててパーカーから通信機を取り上げ、スモック博士に通信を入れる。

「お、おいおっちゃん!!今そっからサダイジャ・エースバーン・アップリューは見えとるか!!?」

『あ、ああ……!今そのことについて伝えようとしていたんだ……!件のポケモン達だが、「一瞬の内に縮んでしまった」んだ!!』

「な、なんやて!?」

その報せの直後、彼女は窓の方へと駆け寄って外を視る。

すると博士の報告通り、外にはお嬢のダイマックスポケモン達の姿はなかった。

彼女の予感は的中していたのだ。

「マズい……!CCの奴め、やりよったな……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーCC体内。

「ば……バドレックス……!」

心臓を破壊したお嬢たちの目の前に現れたのは、バドレックス……否、バドレックスの姿をしたCCだ。

姿を借りて、彼女たちと会話をしているのである。

『わざわざ余の体内に侵入するとは、なんたる無礼。しかしその苦労だけは賞賛してやらんこともない。』

CCは、わざとらしい口調で拍手を送る。

 

 

 

『余計な御託は良い。俺たちは世界の侵食を止めるためにお前を倒さなくてはいけない。』

CCの言葉を遮るように、レイスポスが前足を鳴らして攻撃の構えへと移る。

『まぁ、その点に関しては私も彼と同意見ですね。さっさと終わらせましょう。』

「まねねっ……!」

ブリザポスとマネネも引き続き、攻撃の体勢へと移行する。

 

 

 

『行くぞッ……!!』

瞬間……『アストラルビット』の攻撃が一瞬にして凍りつき、何百本単位の黒いナイフへと早変わりする。

そこに合わせるように、ブリザポスも『クロスサンダー』と『クロスフレイム』の同時装填で応戦を試みる。

 

 

 

『……手荒いな。それが余への挨拶か?』

『うるさい……!喰らえッ!!』

CCの返事を待つことも無く、彼らは怒涛の攻撃を放つ。

着弾と同時に、様々な高エネルギーが混雑した爆発が発生する。

決して大きいとは言えないバドレックスの身体に、この猛攻……普通であれば耐えることは出来ないだろう。

 

 

 

『や……やったか……!?』

「ダメ……まだよ……!」

しかし……だ。

これだけの攻撃を喰らっても尚、CCは傷一つ付いていないのである。

 

 

 

『これでダメなら追撃ですッ……!』

ブリザポスは更に間髪入れず、『ブリザードランス』で巨大な氷の槍を1本生成する。

その一撃を、真正面からCCに向かって叩き込んだ。

だがその攻撃すらも、標的の目前で粉々に砕け散ってしまったのだ。

 

 

 

『なっ……!?』

「そんな……!SDの力があれば、CCに対抗出来るんじゃないの!?」

糠に釘な状況を目の当たりにして、彼らは慌てる。

それもそのはず……彼らはこの世の理から外れた者同士。

であれば攻撃は効くはずなのである。

 

 

 

『……何を言っておる?それは「貴様らの世界での話」だろう?』

「……は?」

『此処は既に貴様らの世界から隔絶された場所。時空の干渉が一切働かない、「余の世界」だ。』

CCが言っている事の意味……それを最初に理解したのは、ブリザポスであった。

『そうか……!CCの基本的特性は「あらゆるものを喰らい、無に還すこと」……!!ここが奴の体内だとすれば……!』

「……!世界に『存在しないもの』として認識される場所!この世ならざる幽世……!」

 

 

 

 そう……既にお嬢達が居るこの場所は、元いた現世とは全く別の場所なのだ。

ここはCCによって切り離された、完全に孤立した世界。

だからこそ、外界からお嬢らの存在は忘れられていたのである。

 

 

 

 そしてここを支配するのは『この世の法則』ではない。

『CCの定めた法則』だ。

「そんな……!」

『貴様らは余の奥深くに踏み込みすぎたのだ。此処では余が世界の絶対法則そのもの……貴様らはその法則の支配下に存在する事象に過ぎぬのだ。余の世界に於いて、法則を覆すことは出来ぬ!』

「くっ……!!」

『何、案ずるな。すぐに貴様らの元いた世界も、余と同化する。全て等しく、余の支配下となる。』

 

 

 

 万事休す……これでは打つ手がない。

既に世界の侵食は止まらないのだ。

CCの存在を忘れている外の世界は、誰ひとり気づかないまま虚無へと堕とされるのである。

 

 

 

『そして此処は余の世界である。……貴様らのSDとやらも、総て等しく余のものだ。』

そう言うと、CCは腕を軽く上へと掲げる。

すると次の瞬間、ブリザポス達の身体が輝き始める。

『なっ……!?』

『ま……ねねっ……!』

『マネネとの繋がりが……解けていく……ッ!!』

彼らは、徐々に融合した意識が乖離していくのを感じていた。

 

 

 

 そうして間もなく、そこに投げ出されたのは元通りの姿をした3匹のポケモンであった。

「そ……そんな……!」

『クソッ……!SDが解除された……!!』

なんとCCは、彼らの繋がりを無理矢理断ち切ってしまったのである。

CCの世界に於いて、SDの発動権限を持つのは彼らポケモンではない。

CC自身なのだ。

 

 

 

『貴様らは余に対抗することは出来ぬ。この特等席で、大人しく世界が呑まれていくのを見ていれば良い。』

『くっ……』

『特にそこの白いの。貴様に至っては既に風前の灯ではないか。そこまでして戦う理由など在るのか?』

『……!』

CCが指を差したのは、ブリザポスの方だ。

無理矢理なSDをした上に、ただでさえ不安定な存在だった彼。

ここで無理矢理な解除を強制されたことも相まって、既に満身創痍となっていたのであった。

 

 

 

『黙れッ……!』

『元々あそこは貴様のいるべき世界でもないだろうに。何をそこまで躍起になる?』

『黙りなさいッ……!』

挑発するCCに、ブリザポスは身体を起こして抵抗しようとする。

だが、それを制止する者が居た。

 

 

 

「……駄目よ。」

そう、お嬢だった。

彼女は立ち上がろうとするブリザポスを、上から押さえつける。

脆弱な彼女の力に屈するほど、彼は既に弱っていたのだ。

『しかし、お嬢様……!』

「待ってて。ここはアタシが行く。」

 

 

 

 そう言うとお嬢は、目の前のCCの方へと歩んでいった。

『ほう……後ろの奴らと違って戦う力もないのに、余の前に立ちはだかるとは。貴様、よほど肝が座っているようだな。』

「別に。アタシ達はアンタの支配下なんでしょ?だったらすぐに手を上げることも無いかなって思っただけよ。」

お嬢のこの判断は、相手の絶対的優位を知っているがゆえのものであった。

それでも並みの勇気では行える行動ではない……が。

 

 

 

 しかしお嬢がそこまでしてCCと話したがる理由は別にあった。

 

「話を聞きなさい、CC。」

 

『………。』

「……アタシにはアンタの悲しみがわかる。」

『何を言う……ふざけるな!貴様ごときにどうして余の事が理解できる?』

「……同じだからよ。」

『どこがだ……!!』

 

 

 

 声を荒げるCC。

そこにお嬢は続ける。

「アタシはアナタと同じ、『生きたいように生きられなかった』人間だった。『社長令嬢』なんて役目を背負う苦しみも、誰にも知られなかった。一人ぼっちで仲間外れのアンタと同じよ。」

『ふざけるな……!お前には……』

「そうね。アタシにはジャックやマネネがいる。アタシの苦しみを知ってくれる人がいる。」

そう言うと、お嬢は後ろのポケモン達を見つめる。

 

 

 

「アンタだって、別に最初から皆を傷つけたかったわけじゃない。結果的にそうなってしまったとしても、今みたいな悪意はなかったはずよ。」

『黙れッ……!』

「アンタだって、きっと苦しみを分け合う仲間がいれば変われるはず。」

『黙れッ……何を証拠にそんなこと……!』

CCの言葉の後、お嬢は手のひらに握りしめられた桃色の花弁を差し出す。

先程、スエットに託されたものだ。

 

 

 

『それは……!』

「アンタに繋がる全ての情報が入ったものよ。悪いけど、アタシはアンタの今まで見てきたものや感じてきたものを全て知っている。」

『なっ……!』

「その上でアタシは断言するわ。アンタはまだ変われる。誰かと寄り添い合える関係になれる………!」

そう言って、手の上の花弁をより強調して見せつける。

 

 

 

 その花の名前はアスター……花言葉は『変化』。

この言葉こそが、スエットらの込めた思い。

CCの在り方を指し示すものであった。

 

 

 

「アタシは……アンタを受け入れるッ……!」

そう言うと、次の瞬間……

 

 

 

お嬢は花弁を口に含んだ。

『は……!?』

あまりに突飛な行動に、その場に居たものは皆息を呑む。

しかしその行動の重大性に、彼らは気づいてしまったのだ。

 

 

 

『お、おいお嬢様……!お前、自分が何をしたのかわかっているのか!?その花弁はいわばCCの全てだ……飲み込めば、膨大な情報を身体の中に宿すことになるんだぞッ!!』

「えぇ、知ってるわ。つまりこの場では、アタシはCCと同等の存在……『法則そのもの』になれるッ……!!」

『い……今すぐ吐き出して下さい……!』

「嫌よ!アタシが……アイツと同じ目線に立たなきゃ、言いたいことも言えなくなるじゃないッ……!」

決意の固まったお嬢に、彼らの制止は届かない。

『やめろ……!貴様、余の懐に入るつもりか……!!』

「そうだって……言ってるでしょッ!!」

慌て始めたCCの言葉を、お嬢は尚も遮る。

そして彼女は、喉の奥へと花弁を押し込んだ。

 

 

 

 瞬間、お嬢の全身が黒く染まる。

「っ……ぐああ……あああっ………!!」

全身が泥のようになって崩れ始める。

『がっ……き……さまァ……ああああああ……ッ!!』

彼女は秩序の枠組みから大きく外れ始めた。

故に元あった身体を維持できなくなっていったのだ。

 

 

 

『貴様ッ……余の中に……入って来るなァアアアアアアッ!!』

次の瞬間、お嬢の身体から溢れた泥が再び人の貌を成していく。

徐々に完成される形状……そこに立っていたのは、間違いなくお嬢であった。

 

 

 

 桃色だった髪の色は灰白色に抜け落ちた。

目の色も赤と黄色が混ざり、安定していない。

纏う雰囲気は完全に別人のものであったが……確かにお嬢であった。

 

 

 

彼女は花弁を飲み込むことで、CCと完全に同一の存在と化したのである。

「……どう?今アタシとアンタは同じく『世界の法則』。対等な存在よ。」

『そんなわけがあるかッ……!』

「……ねぇCC。こんなことは辞めて、アタシと一緒に元の世界で生きましょう?きっとそのほうがアナタにとっても幸せなはずよ。」

『うるさいッ……!余は断じて貴様らとの共存なんかッ……!』

 

 

 

 お嬢の説得も虚しく、CCは交渉を拒み続ける。

「……そう。じゃあ少し、痛い目を見せるしか無いわね。」

お嬢はそう言って、後ろを振り向きマネネに手招きをする。

「……まね。」

「行くわよ、マネネ。この聞かん坊に言い聞かせてやりましょう。」

そしてお嬢は、自身の指を軽く噛む。

 

 

 

 するとそれに呼応して、マネネの身体が青く輝き始める。

外見も先程までと同じく、大魔道士の姿に変わっていったのである。

その現象はまさに……

『なっ……SDだと……!?』

そう、間違いなくSDであった。

『そうか……お嬢様は今やCCの世界の法則そのもの!つまりSDの起動権も接続権も、全て彼女に内包されているッ……!』

ブリザポスの言う通り。

今やここでのお嬢は、絶対的最高位の存在だ。

CCと対等に戦えるのである。

 

 

 

「さぁ……これが最後よマネネッ!!」

「まねねっ……!」

『無礼者ッ……!貴様は最早、殺す事すら生ぬるい!この場で磨り潰し、飼い殺しにしてくれるッ……!!』

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