【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

33 / 134
【第033話】封ぜられる技、見出される盲点(vsMA-Ⅰ)

 試合はいよいよ折り返し地点。

MA-Ⅰ側もお嬢側も数の上ではイーブンだが、実際の戦況はお嬢のほうが大幅に不利だと言えるだろう。

果たして、これをどう巻き返していくのか。

 

 

『……ソレデハ次ノポケモンデス。オ願イシマス、メタング。』

「Mettt!」

「行きなさいッ、マネネ!」

「まーーねねっ!」

 

 

 MA-Ⅰの3匹目の刺客はメタング……空中浮遊能力を持つ剛力のポケモンだ。

攻守ともに隙がない。

一方でお嬢が選んだのはマネネ。

事実上まともに戦える最後のポケモンなので、当然といえば当然の選択である。

はがねとフェアリー……言うまでもなく相性は最悪だ。

一撃でも喰らえばその時点でゲームオーバーと言って差し支えないだろう。

如何にして相手の攻撃を避けつつダメージを重ねていくか、というのが鍵となる。

 

 

「行くわよマネネッ、まずは『サイケこうせん』!」

『まーーーねねっ!』

マネネはまずメタングの正面を狙ってビームを放つ。

『……ヤハリ攻勢デスカ。メタング、「ひかりのかべ」。』

「Metttt!」

メタングは周囲に虹色の壁を生成し、全域に展開した。

即席の障壁は『サイケこうせん』を弾きかえす。

 

 

「……ッ!」

お嬢には見覚えがあった。

これはレインのジメレオンが使用していたのと同じわざだ。

だがここで焦るようなお嬢ではない。

彼女はこういった時の対処法を既に知っているからだ。

 

お嬢はマネネに次のわざの指示を出……

 

 

 ……そうとしたその時だった。

またもMA-Ⅰから無情なクエスチョンが飛んでくる。

『デハココデ質問デス。……マネネガ次二取ロウトシテイル行動ハ?』

「……ッ!?」

大事な局面での回答の強制だ。

お嬢は回答を拒否しようとするが、瞬時に痛みの記憶が自身の背筋を這い上がる。

 

 

 そして思わず……

「……『ちょうはつ』よ!」

と正直に次に使おうとしているわざをバラしてしまったのだ。

 

 

『……ナルホド。』

電撃は流れない。

しかしマネネ側の次の行動はMA-Ⅰ側に知られてしまうこととなった。

「まーーーねっ!」

マネネは宣言通りメタングに対して『ちょうはつ』を繰り出そうとする。

 

 

 しかし『ちょうはつ』は完全なメタ用の補助わざ……攻撃や防御の手段として用いるわざではない。

それ故に、基本的にはバレないように使用しなくてはいけない。

そうでなくては大きな隙が生まれるからだ。

 

 

 実際、マネネが『ちょうはつ』を繰り出そうとした間際、メタングはものすごいスピードでマネネの眼前に迫ってきたのである。

「Metttt!」

大きく腕を振りかぶり、わざを撃とうとするマネネに攻撃を加えようとする。

『……ソコデス、「コメットパンチ」。』

「Mettttt!」

 

 

「よっ……避けてッ!」

「まねっ!」

マネネはすぐにわざの使用を取りやめ、自身の身を投げ出すようにして『コメットパンチ』を回避する。

なんとかギリギリの所で、メタングの拳は床を大きく叩きつけた。

「Mett……!」

わざを一度外したメタングは次の行動までに少しのラグが発生する。

だがお嬢側からすれば全くもって生きた心地がしない。

『ちょうはつ』を撃った直後のマネネも、メタング同様次の行動を取るまでに復帰の時間が必要だからだ。

逃げる選択は事実上取れない……この次の行動で、彼らは近距離で盤面をひっくり返さなくてはいけないのだ。

 

 

 その難しさは、外野の2人も大いに理解していた。

「マズいですね……『サイケこうせん』を撃とうにも相手には『ひかりのかべ』が張られている。」

「物理系の攻撃ならそれを気にしなくても良いんだけど……『ものまね』で相手の『コメットパンチ』をコピーするのはどうかな?」

ハオリが問う。

しかしジャックは首を横に振った。

「難しいでしょう。元々マネネは物理系の、しかも相手の体型に依存する武器系やパンチ系のわざはそこまで大きな効果を発揮しません。」

 

 

 そう、ジャックの言う通り。

マネネが『ものまね』を使って効果的に働くのは『10まんボルト』などの技量に依存しないビーム系攻撃や『アクアジェット』などの機動力として利用できるものだ。

一方で『えだづき』や『コメットパンチ』など、使用者の体格や技量に依存するわざはどうしても精度が落ちるのである。

つまりマネネは自力のみでこのメタングを突破する必要があるのだ。

お嬢はそれを理解しているがゆえに、『ものまね』の使用を渋っているのである。

 

 

『……コレデワカリマシタ。マネネ二対抗策ハ有リマセン。躊躇ノ必要ナシ……仕掛ケマス、「コメットパンチ」。』

「Mettttt!」

メタングは復帰するやいなや、すぐさまマネネに対して接近して腕の攻撃を喰らわせる。

 

 

「避けてッ!」

「ま……まねっ!」

だが一方のマネネ側には『ちょうはつ』による反撃の余地も許されず、唯一の攻撃手段『サイケこうせん』すらも『ひかりのかべ』で封じられてしまっている。

当然、ここから取れる手段は逃げと回避に専念することのみである。

「右ッ……次に上ッ……そこは止まって!」

マネネは右にローリングし、起き上がった勢いで上へと飛び上がり、最後に一度動きを止める。

その軌道は見事にメタングの猛攻をギリギリの所で掻い潜っていった。

 

 

 しかしこれはあくまでも逃げの一手であり、状況が好転するわけではない。

寧ろマネネのスタミナは徐々に削れていく一方だ。

『……勝負ハイズレ付キマス。メタング、攻撃ヲ続ケナサイ。』

「Mettttt!Metttt!」

MA-Ⅰの言う通り、この勝負は既に決着が付いたようなものだ。

マネネ側に何も手段がない。

メタングに対して有効なわざが何一つ無いからだ。

 

 

 ……そう、有効な『わざ』は一つもない。

だがポケモンバトルはわざのみですべてが決まるものでもない。

お嬢は気づく。

メタングにとってのリーチ外……デッドゾーンとなる場所があることに。

 

 

 メタングの『コメットパンチ』が再び床を叩きつけたその直後であった。

「マネネそこっ、メタングの脇!」

「ま……まねね!」

マネネはなんとメタングに向かって飛びかかっていったのだ。

そしてメタングのちょうど左脇にある突起へぶら下がるようにしがみついたのである。

 

 

「Metttt!?」

「なっ……自ら相手の間合いに!?」

「違うよお兄さん……あそこはメタングの腕が届かない場所、つまり完全な盲点!」

ハオリの言う通り。

メタングにとって側面は腕も届かず視界にも入らない完全なデッドゾーン……文字通りの盲点なのである。

 

 

「よしっ!マネネ、離さないで!」

『……ソノ行動ハ予想外デスガ、状況ハ変ワリマセン。メタング、「ジャイロボール」デ振リ落トシナサイ。』

「Me……Metttttt!」

メタングは遠心力にてマネネを振り落とそうと、コマのように全身を回転させ始める。

マネネも振り落とされまいと必死にしがみついている。

「まっ……まねねッ……!」

 

 

 そこでお嬢は気づいた。

メタングを取り巻く虹色の光がなくなっていることに。

それは先程まで貼られていた『ひかりのかべ』がなくなったことを意味する。

『ジャイロボール』は動きの激しい攻撃であるため、他の障壁と同時に展開し続けるのは非常に難しいわざなのだ。

 

 

 図らずもお嬢は、メタングの『ひかりのかべ』を剥がすことに成功したのである。

「Me……Metttt……」

やがて長時間回転し続けたメタングは徐々に疲弊の色を見せ始める。

回転速度が少しずつ落ち始めたのだ。

障壁もなくなり攻撃の隙が生まれた……攻めるのであればここしか無い。

 

 

 それを見逃さなかったお嬢はすかさずマネネに指示を飛ばす。

「行きなさいマネネッ、ゼロ距離で『サイケこうせん』!」

「まーーーーーねねーーーーーっ!」

マネネはメタングの側面にしがみついたまま、接射で『サイケこうせん』をヒットさせる。

相性の関係でダメージはあまり入らないが、それ以上にこの攻撃の接射はメタングには絶大なある効果が働く。

 

 

 ……そう、『こんらん』状態だ。

「Me……Meeeeeettt!?」

ただでさえ目が回り始めていたメタングは『サイケこうせん』を至近距離で浴びてしまったせいで、重篤な『こんらん』状態に陥ってしまう。

わけが分からず錯乱したメタングは、ものすごい勢いで自身の顔を殴りつけ始める。

『異常事態発生……メタング、落チ着キナサイ……!』

だがMA-Ⅰの言葉も虚しく、メタングは更に水平回転で自身の全身を壁へと何度も叩きつけ出す始末だ。

 

 

 こうなってしまえばもうメタングは止まらない。

やがて自傷ダメージによる消耗で体力の限界を迎えたメタングは、自然とその場で動きを止めたのである。

 

 

 メタングはこれにて戦闘不能だ。

「よしっ……よくやったわマネネ!」

「まねっ!」

この勝負、危ないところであったがマネネはなんとか無傷でメタングを葬ることが出来たのだ。

 

 

『……完全二予想外デス。コレガ驕リ……ナント疎マシイ!』

MA-Ⅰはまさかの逆転に自身を責める。

お嬢の不屈の精神と。マネネの捨て身の特攻が視野に入っていなかったのである。

彼女はボールにメタングを戻すと、次のボールを取り出した。

 

 

『……アナタノ事ガ更二知リタクナリマシタ。コノ勝負、是非有益ナモノニシマショウ。』

MA-Ⅰの腕からボールが投げられ、最後のポケモンが呼び出される。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。