【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第038話】切り込む数撃、飛ぶは図体(vsレイン)

 ひょんなことから戦うことになってしまったSD適合者レインと元適合者ジャック。

会場内の歓声はほとんどがジャックに対してのコールであった。

そんな中でお嬢の心は更に複雑にうごめいていく。

「そんな……ジャックが……レインと……」

彼女にはこの勝負の結果がどうなるのか全く予想ができなかった。

ただ、どう終わったとしても自分の心は晴れないであろうと、それだけは確かに確信していたのだ。

それでも彼女は目の前のジャックから目が離せなかった。

 

 

 

 彼らは互いにボールを投げ、1匹目のポケモンを呼び出す。

「行きなさい、イエッサン!」

「みわわっ……!」

「行けっ、ダイオウドウ!」

「ずももーーーッ!」

ジャック側から出たのはイエッサン。

対してレイン側から出てきたのはダイオウドウ……圧倒的な重量と怪力を持つ大型のポケモンだ。

 

 

 

『白コーナーからはダイオウドウ、赤コーナーからはイエッサンの登場ッ!!それぞれ得意分野の全く違うポケモンです!コレは展開が予測できないッ!』

実況の言う通り、サイズも戦闘スタイルも大きく違うため、一概に有利不利ははっきりしないのがこの対面だ。

果たしてこの勝負の序盤はどのように転んでいくのか。

 

 

 

 先手を仕掛けたのはイエッサンの方だ。

「行きますよイエッサン、『マジカルフレイム』ッ!」

「みわわっ!」

イエッサンは腕を前に突き出し、炎をダイオウドウへ向けて照射する。

狙ったのは真正面……ダイオウドウの鼻のあたりだ。

 

 

 

 しかし残念。

ダイオウドウの鼻は全身の中でも主力武器として活用される部位である。

故に弱点とは正反対の位置であり、攻撃をしてもさほど大きな効果は現れない。

「ふむ……案外単刀直入に来るんだな。ダイオウドウ、弾き飛ばせ!」

「ずももーーーーッ!」

ダイオウドウは大きく鼻を振りかぶり、飛んできた炎を風圧で薙ぎ払う。

先程も述べたが、ダイオウドウに対しての正面突破は完全な悪手だ。

 

 

 

 だがその程度のことはジャックもとっくに把握済みだ。

ダイオウドウが鼻を使って攻撃を防ぐことさえも……。

大きな鼻を目の前にかざしてしまえば待ち受けるものは何か。

そう、視界が大きく制限されてしまうのだ。

特に大型ポケモンのダイオウドウにとっては下側の視界はほぼ死角になると言っていい。

 

 

 

 故にこの短時間で、イエッサンはダイオウドウの足元に滑り込んだのである。

「ッ……!」

そう、デコイの攻撃と同時に相手の懐に忍び込む戦法……普段のレインがよく使う戦法だ。

「そこですイエッサン、『マジカルフレイム』ッ!」

「みわわっ……!」

ダイオウドウの真下に潜り込んだイエッサンは、至近距離かダイオウドウの腹部に炎をぶち当てる。

この攻撃は防げない……加えてはがねタイプにほのおわざなので効果は抜群だ。

 

 

 

「ほぉ……中々やるじゃないか。だがそこはダイオウドウの領域でもあるッ……!」

そうしてレインは次の指示をダイオウドウへ送る。

「そこだッ、『ヘビーボンバー』!」

「ずもーーーーッ!」

ダイオウドウは大きく足を畳み、その場に伏せるようにして潰れる。

完全な至近距離での攻撃……流石にコレはイエッサンでも避けきれない。

 

 

 

 ……と思ったその直後であった。

ダイオウドウは違和感を感じる。

確かにイエッサンを潰したはずなのに、腹部には一切の手応えがないのだ。

「ッ………!ダイオウドウ上ッ!」

「ずもっ!?」

ダイオウドウが気づいた頃には既に遅かった。

なんと背後の上空にイエッサンが回り込んでいたのである。

そのギミックに、レインはいち早く気づく。

「チッ……『みがわり』かッ!」

そう、イエッサンはダイオウドウに『マジカルフレイム』を炸裂させると同時にスライディングでダイオウドウの直下を脱出し、その際に自身の分身を身代わりにして逃げたのである。

 

 

 

「行きなさいイエッサン!『ワイドフォース』ッ!」

「みわわっ……!」

飛び上がったイエッサンは念動力の刃を生成し、斬撃を叩きつけるようにダイオウドウへぶつける。

「させるか……『パワーウィップ』で受け止めろッ!」

「ずももーーーッ!」

負けじとダイオウドウも鼻を振り回し、真正面から『ワイドフォース』を防御しようとする。

しかし単純なパワーの競り合いですら、不意打ちを食らったダイオウドウ側には劣勢になる。

 

 鼻による防御は押し切られ、ダイオウドウは攻撃を受けてしまったのだ。

「ずもっ……!」

 

 

 

『おーーーっとレイン選手!押されています!やはりジャック選手、圧倒的過ぎるッ!』

ここまでの勝負はジャックが圧倒的に有利である。

随所随所で進退の是非を見極め、丁度いい塩梅で攻撃と防御を使い分けて相手を翻弄する。

まさにエスパータイプの理想的な戦い方と言えるだろう。

 

 

 

「ッ……やはり強い……!他のトレーナーとは段違いだ……!」

レインは珍しく目の前の相手を素直に称賛する。

実際、彼を相手にここまで健闘できるトレーナーは片手で数えるほどもいないだろう。

「………。」

しかし一方のジャックは言葉を交わすほどの余裕もない。

優勢ではあるが、レインが油断して勝てる相手でないことを十分に理解しているからだ。

ジャックの顔は緊張で固まったまま動くことはないのだ。

「(……間違いない、あのダイオウドウはまだなにか隠しているッ!)」

 

 

 

「……さて、僕からも仕掛けるか。ダイオウドウ、『ころがる』だ。」

「ずももーーーーッ!」

ダイオウドウは鼻を丸め、身体を前方に傾け始める。

そして次の瞬間……ダイオウドウは凄まじい速度で回転し、前へと進みだしたのだ。

その勢いはさながら本体から取り外された二輪車のホイールのようである。

重量級のポケモンからは到底出て良いスピードではない。

 

 

 

「イエッサン、避けなさいッ!」

「みわわっ……!」

この勢いには流石のイエッサンも回避行動を取らざるを得ない。

フィールド中を縦横無尽に加速して転がっていくダイオウドウから、ジャンプとローリングを全力で駆使して回避する。

「ッ……しかし速いッ!」

「フフフ……驚くのはまだ早いよ。コイツの凄さは速さだけじゃない。」

そう言うとレインは指を鳴らし、ダイオウドウに次の指示を飛ばす。

 

 

 

「ずもももーーーーッ!」

加速を続け、速度が最高潮に達したダイオウドウは……

なんと飛行機が離陸するかのごとく空中へと飛び上がっていったのである。

「なっ……!」

「みわっ……!?」

『ダイオウドウ飛んだーーーーーッ!あり得ないッ、あの図体が空を飛ぶなど誰が予想できましょうッ!』

そう、あり得ないのだ。

いくらダイオウドウが『ころがる』の勢いで加速し続けていたとはいえ、650キロ超えの図体が空を飛ぶなどあってはならないことなのだ。

 

 

 

 だが現実にそれは起こっている。

然しそこに複雑なギミックやインチキがあるわけではない。

正真正銘の力技……

「……なるほど、『ちからずく』!」

「ご名答。わざに掛かる運動エネルギーを飛躍的に底上げする特性だ……!」

そう、これがダイオウドウが空を飛んだ理由だ。

彼は推進力を特性によって大幅に底上げし、その勢いで空中に上がったのである。

 

 

 

「さて……攻勢に出るぞダイオウドウッ、『ヘビーボンバー』!」

「ずもーーーーッ!」

空中に高く飛び上がったダイオウドウは、そこからイエッサンへと狙いを定めて隕石のごとく落下する。

「イエッサン、避けっ……」

しかし間に合わない。

ダイオウドウは重力加速度を大きく超える速度でイエッサンへと直撃してきたのである。

「みわっ……!」

「イエッサンッ……!」

 

 

 

 そう、ここまで一連の行動はお嬢が昨日フウジジムで食らったジュラルドンの『ボディプレス』に酷似している。

だがダイオウドウの『ころがる』からの『ヘビーボンバー』コンボはその比じゃなく大きなダメージを叩き出す……体重があまりにも違いすぎるのだ。

 

 

 

「ッ……みわっ……!」

だがそれでもイエッサンは立ち上がる。

『ヘビーボンバー』の回避が困難だと判断したイエッサンは、とっさに身体の一部にのみ『みがわり』を出し、ダメージを軽減したのである。

満身創痍であることに変わりはないが、致命傷を免れただけマシと言った所だろう。

 

 

 

「これを耐えるとは……流石、そこらのポケモンとは格が違う。」

「ッ……!」

なんとか首の皮一枚繋がってはいるが、イエッサンは既に戦闘不能の一歩手前。

次に攻撃を食らってしまえばダウンは必至である。

故に序盤のような攻めの姿勢に転ずることは残念ながら不可能だ。

 

 

 

 ジャックとイエッサンが攻めあぐねていると、今度はダイオウドウ側から再び仕掛けてきた。

「終わりだ……『パワーウィップ』!」

「ずももーーーーッ!」

ダイオウドウは鼻を大きく振り上げ、鞭のようにしてイエッサンを攻撃しようとする。

しかも今度は真上ではなく右斜め方向……そう、視界を遮らないように配慮した攻撃だ。

最初のようなカウンターは通用しない。

 

 

 

「正面から行くしか無いッ……イエッサン、『ワイドフォース』ッ!」

「みわわーーっ……!」

イエッサンは前腕に念動力を込めて刃を生成する。

そしてそれをそのまま前方に掲げると、なんとそれを盾のようにして正面からダイオウドウの攻撃を受け止めたのである。

「なっ……!?」

「ずもっ……!?」

本来であれば特殊技である『ワイドフォース』をこんなシールドに転用するなど前代未聞である。

レイン側からしてみればまさに予想外と言った感じだろう。

 

 

 

「っ……だがイエッサンとダイオウドウで力比べをすれば、優位に働くのはどちらか……わからないアナタでは無いはずだ!」

「みわっ……!」

そう、レインの言うとおりだ。

当然だが単純なパワーで言えばイエッサンのほうが圧倒的に劣る。

このまま鍔迫り合いを続けても負けるのはイエッサンの方だ。

 

 

 

 だがそんなことはジャックだって分かっていた。

「……ダイオウドウの鼻は1つですが、イエッサンの腕は2つあります。」

「それが何………ま、まさかッ!?」

イエッサンは鼻を受け止めていない方の腕をそっと真後ろへと振りかぶる。

そして力を込めるのをジャックが確認すると、彼は攻撃の指示を出した。

 

 

 

「そうですイエッサン!もう一回、『ワイドフォース』ですッ!」

「みわーーーっ!」

そしてイエッサンは2つめの『ワイドフォース』を、剣を突き刺すように突き出したのであった。

「ずももーーーーーーーッ!?」

攻防を繰り広げているダイオウドウにこの刺撃は不可避……大ダメージだ。

 

 

 

 激しい戦いの末、ついにダイオウドウは力尽きる。

これにて戦闘不能だ。

『敗れましたダイオウドーーーーーウ!まさかの不意打ちで勝利したのはイエッサンッ!凄すぎるぞチャンピオンッ!』

会場には再び大きな歓声が上がる。

チャンピオンの戦いぶりに、見るもの全てが魅了されていたのである。

 

 

 

「フフフ……流石だジャック。やはり僕を楽しませるトレーナーはこうでなくちゃ!」

レインは勝算の言葉を送るが、それでもジャックからは冷や汗が止まらない。

このトレーナーは間違いなく、お嬢やハオリの比ではないほど強い……互角、いや、もしかしたらそれ以上の相手屋もしれぬと。

ジャックの全身がそう告げていたのだ。

「……さて、ここまで本気になった勝負は初めてだ。次で絶対にアナタを追い詰める……!」

レインは指をさして高らかに宣戦布告をする。

 

 ダイオウドウをボールに戻すと、彼次のボールを構えたのだった。

 

 

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