【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第006話】思わぬ収穫、予期せぬハプニング

 先程まで激闘が繰り広げられていた公園にて、トレンチ嬢とジャックの2人はトレーニングを行っていた。

主にマネネの持つ能力をバトルで最大限活かす事に重点を置いて行われるものだ。

「………以上です。このように、『ものまね』の使用タイミングには十分気をつけて下さい。」

「グアアアアッ!」

ジャックとアーマーガアによる熱血指導により、この数時間でお嬢はバトルの基本動作と『ものまね』の仕様を理解するまでに至った。

やはり瞬間的な学習能力は人より優れているのである。

しかし……

 

 

 

「うぇえ……ジャック……休憩……」

「まねね……」

長時間の訓練によってすっかりバテ気味のお嬢とマネネはその場で膝をついて倒れ込む。

既に日も落ちかけており、彼らのトレーニングのハードさを物語っている。

「……後もう少しです。頑張って下さい。」

「だいたいジャックのアーマーガアになんか勝てるワケ無いじゃないの!さっきから『ぼうふう』も上手く行かないし!!」

「まねね!」

お嬢とマネネは大の字で横たわり、すっかり音を上げる。

 

 

 

「威力の高いわざをコピーするのはある程度の練度が必要です。ですのでコピーするわざはしっかり見定め……うっ」

瞬間、ジャックは頭にかすかな痛みを感じる。

針で突き刺されたような、電流が走ったかのような。

彼にとって、この痛みには覚えがある。

「……や、やりすぎたか。」

そう小さく呟いたジャックは少しだけよろめくが、アーマーガアの翼に支えられてすぐに体勢を立て直す。

「……しっ、失礼。すまないアーマーガア。」

「グアッ!」

 

 

 

「ほーーーら、ジャックももう限界じゃない!今日は終わりよ!終わり!ポケモンセンターで寝ましょう!」

「まねね!」

お嬢とマネネはそう言ってジャックの手を取ると、それを引っ張ってポケモンセンターの方へと歩みだした。

目の前でふらついてしまった手前、ジャックに反論の余地は残っていない。

彼はアーマーガアをボールに戻すと、仕方なくその日の宿へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 ーーーーー翌朝。

ポケモンセンターの宿泊用ベッドからトレンチ嬢が起き上がって部屋の外へ出ると、そこには顔面の腫れ上がったジャックがいた。

彼は手鏡で己の顔を見ながら、必死にテーピングを施している最中であった。

「……おはようございます。よく眠れましたか?」

「あら、ジャッ……プッ、何よその面白い顔!」

「まねねね!」

ジャックは顔の痛みと眠気を引きずった不機嫌な声で答える。

「……そうですね。どっかの誰かさんが私の寝床に勝手に忍び込んだ挙げ句、寝相でトリプルアクセル&とびひざげりコンボをかまして来なければこんな顔にはなってないんですけどね。」

「あら、それは随分と失礼な輩ね!災難だこと……プッ!」

「まっ!」

お嬢は笑いを堪えきれずに吹き出し、それに続くようにマネネも吹き出す。

ジャックはこのとき、『一回くらい殴り飛ばしても良いんじゃないかな』とか思ったそうな。

 

 

 

「……それで、今日の予定の把握は?」

「えぇ、バッチリよ!ズバリ、2匹目のポケモンの捕獲ね!」

お嬢は洗面所から扉越しに答える。

「そうです。この街から西に向かった場所に『アンコルの森』と呼ばれる森があります。そちらに野生ポケモンが多く生息しておりますので、お嬢様の仲間を探しに行きましょう。」

そう、ポケモンリーグへ向かうための条件であるジムバッジの獲得。

そのバッジを獲得するためのジムに挑戦するには、2匹以上のポケモンの所持が条件なのである。

つまり、マネネに加えて別のポケモンを仲間にする必要がある。

そこで今日はまる1日を使って、新たなポケモンを捕まえに行こうというわけである。

 

 

 

「よーーし、早速行くわよ!すっごい大物捕まえてやるんだから!」

「まねね!」

そう言ってお嬢は荷物を整えると、すぐに走って部屋を飛び出してしまった。

ジャックは腫れた顔へぶつかる向かい風の痛みに耐えつつ、急ぎ足でそれを追いかける。

 

 

 

 ーーーーーここはアンコルシティの郊外にある森、『アンコルの森』。

きのみの成った広葉樹が鬱蒼と生い茂る、都市部にあるしては少しばかり広大な森林である。

この森とアンコルシティが隣接しているおかげで、この一体はポケモンの多様性に富んでいるのだ。

しかしながらまだ真昼だと言うのに木漏れ日がほとんど差し込んでおらず、時計がなくては時間を錯覚してしまうほどである。

 

 

 

 そんな森へと突っ込んでいくアホ……否、向こう見ずが1名。

「よーーーし待ってなさい私のポケモン!今すぐ捕まえてあげるわ!」

「まねね!」

お嬢はそう意気込んで森へ足を踏み入れると、一直線に茂みを突き抜けて奥の方へと進んでいく。

「お嬢様ーーーーッ、せめて獣道の方を通って下さい!」

ジャックもまたそれを追いかけて茂みの中へと入る。

が、小柄なお嬢と異なりジャックはそれなりに体格がいいせいで、茂みをくぐり抜けるのに時間がかかる。

息絶え絶えになりつつ、彼は目線だけはお嬢を見失わないようにと奮闘していた。

 

 

 

 さて、そんなジャックの苦労を知らぬお嬢だが、早速ポケモンを発見する。

「むちゃっ!」

樹上にて優雅に朝食を食べる長い尻尾のポケモン、そう、ホシガリスだ。

お嬢はホシガリスを視界の中心に捉えると、豪速球のボールを投げる。

「うぉおりゃあああああああああ、いっけーーーーッ!」

「まっねーーーー!」

「むちゃちゃ!?」

あまりの剣幕に、ホシガリスは大事なご飯を地べたに落として震え上がる。

軽快な音を立ててボールが当たると、ホシガリスは一瞬のうちにボールの中に捉えられる。

そしてボールはゆっくりと2回、ブザー音を立ててスイングをする。

「よしッ、ほか……」

 

 

 

 しかしその直後、ボールは粉々に砕け散り、中からホシガリスが飛び出した。

「むちゃーーっ……!」

間一髪で逃げ出したホシガリスは、茂みの奥へと逃げ去ってしまったのであった。

「えー-!?なんでよ!ボールはちゃんと当てたじゃない!」

「まーーねね!」

がっかりした動作をする2人のもとへ、全身が落ち葉と木屑に塗れたジャックがゆっくりと現れる。

 

 

 

「……お嬢様。ポケモンはまず戦って弱らせてからでないとボールには入りません。」

ジャックはお嬢の服の汚れを払い、続けて自身の服の汚れを取り払う。

「えー、ちゃんと言ってよ!」

「まね!」

「教える前に飛び出ていったのはアナタでしょう……とにかく、まずは戦って下さい。捕獲はそれからです。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーそれからお嬢とマネネはそれからポケモンを捕まえるために森のあちらこちらを走りまわった。

しかしまぁお察しの通り結果は散々たるものであった。

バトルを挑もうとしたら即座に逃げられてしまったり、挑んだ相手がその一帯のぬしポケモンであったり、果てにはボールを食べられてしまったり……。

お嬢のそそっかしさもあったが、単純に運が悪かったのもあるだろう。

とにかく彼らは約5時間弱の奔走をしたが、いまだに収穫ゼロなのである。

 

 

 

 そしてボールや回復薬は底を尽きかけている。

これ以上の探索は不可能と言えるだろう。

ジャックはため息を吐く。

明日の午後にジム戦を予約してしまったことを若干ではあるが後悔していた。

お嬢は本当に今日中にポケモンを捕まえられるのだろうか。

 

 

 そんな事を考えながら、ジャックは荷物を整えつつ帰還の準備をしていた。

「ひとまず帰りますよ、おじょ……」

振り返ると、そこには道の脇でしゃがみこんで何かを枝でつつくお嬢とマネネの姿があった。

その先を見ると、黄土色の細長い物体が転がっている。

デジャヴを感じたジャックは、嫌な予感とともにお嬢に尋ねる。

 

 

「あの……お嬢様、道端のう○こを触るなと何度………」

 

 そこまで言いかけてジャックは違和感を覚える。

 

 そう、う○こにしては異様に白いし大きいし、何よりピクピクと痙攣している。ジャックが目を凝らしてその物体へと近づくと……

 

 

「……!これ、ポケモンですお嬢様!」

正体に気づいたジャックはそのポケモンに触れ、横ばいにしてひっくり返す。

 

 

 

 するとそこにいたのは、ぐったりとした様子のスナヘビであった。

「スナ……ヘビ……?」

ジャックは首をかしげる。

スナヘビは本来であれば砂漠や岩場に住むポケモンなのだ。

こんな森の中にいることはまずありえない。

加えてこんなに弱っているのはどういうことだろうか。

「大変ジャック、この子ひどい怪我よ!」

お嬢はスナヘビを抱きかかえる。

だがスナヘビは一切の抵抗を見せない。

 

 

 

「ひとまずポケモンセンターに連れてきま……」

ジャックがそう言いかけた途端、森の奥からかすかな声が聞こえてくる。

「………ーーッ!」

その声は段々とこちらに近づいてくる。

声の元は1つじゃない。

「……ァッ、ガーーーーッ!」

「グワー-----ッ!」

そう、こちらに近づいてきたのは大量のアオガラスの群れだったのだ。

 

 

 

 その数は10や20では済まない。

軽く100匹を超えている。

しかも1匹1匹が怒り狂った様子でお嬢とジャックの元へと迫ってきているのである。

「ぎゃーーーーっ!ちょ、ちょっとジャック!!『ぼうふう』でなんとかならないの!?」

「数が多すぎますッ!ひとまず逃げましょう!」

「まねね!」

2人は己の危機を悟ると、森の出口を目指して一目散に逃げ出した。

 

 

 

 茂みを飛び越え、低木の枝をかいくぐり、2人は全運動神経を総動員させてアオガラスから逃げ惑う。

しかし残念かな。

この森は彼らの住処でありテリトリーである。

おまけに彼らは空を飛べる関係上、ただの人に追いつくのは容易なのだ。

あっという間にジャックとお嬢は、四方八方上下左右をアオガラス達に取り囲まれてしまったのであった。

 

 

 

「アーーーーーッ!」

「グアーーーーーーッ!!」

怒りを顕にしたアオガラスたちは、羽ばたき、唸り、そして咆哮する。

縄張りに踏み入ったジャックたちを許そうとはしなかったのである。

「たっ、たたた食べるならジャックからにしたほうが良いわよ!?」

「私を売らないで下さい!」

完全にお手上げ状態となった2人は両手を上げ、降参の意思を表明する。

だがその行為は弱点を晒すのと同義だ。

アオガラスは鉤爪を立て、上空から襲いかかる。

万事休す……2人は腕で頭を覆う。

 

 

 

 

 

 

 

「…………マホイップ、『メロメロ』だ。」

「みみぃーーーっ!」

突然、アオガラス達の動きが止まる。

「ガッ……ガアアアッ……」

「グワッ……アァア……」

そして、まるで何かに取り憑かれてしまったかのようにうわ言を繰り返し始めたのだ。

先程まで敵意を剥き出しにしてジャックたちに襲いかかってきていたのがウソのようである。

 

 

 

 ジャックとお嬢がゆっくりと目を見開くと、そこにはエプロンを巻いた低身長の女性がいた。

白い服にバンダナ、という見るからに料理人……もといパティシエールといった感じの外見だ。

「……あー、キミたち。逃げるなら今のうちだ。こうもいっぱい居ては足止めの時間も有限だからね。」

「……!あ、ありがとうございます!」

ジャックは深々と頭を下げる。

こうして謎のパティシエールによって助けられた2人は、なんとか無傷でこの森を後にすることに成功したのである。

 

 

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