【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第060話】たどり着いた答え、軋み始める歯車

 殺意に満ち、乾いた眼でジャックはテイラーを睨む。

「 い つ 『 俺 』 の サ ン ド の 墓 を 荒 ら し た ?」

その喉から発せられる声は、憤怒でドス黒く汚れた色の声であった。

普段のジャックとはあまりにかけ離れたものだ。

テイラーですら、その気迫には一瞬の恐怖心を覚えた。

 

 

 

「……なんや、よりにもよって『そっち』が出てきて聞くほどの事かいな?」

「……質問に答えろテイラー。返答次第では、『俺』は貴様をどうするかわからない。」

ジャック……否、『彼』の表情は大きく歪む。

触れてはいけない真実が指先にまで迫り、逸る気持ちが彼の憎悪を後押しするのだ。

「……『秘鍵』持ちのポケモンが生まれる確率は数億分の1。そこまで高頻度で『凍雪の秘鍵』が生まれるとも思えない。加えてあのマネネと『俺』の古傷が共鳴し、部分的なSDが発生したのが何よりの証拠だ。」

「……」

「更に貴様はマネネに対して『あの子』と言った。つまりテイラー、貴様はあのマネネの正体を知っている。」

「……ほう、んで何が言いたいんや?」

『彼』は息を吸い込み、最も核心に近い事実をテイラーへ投げかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様……『俺』のサンドの心臓を、あのマネネに移植したな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジャックの中で繋がった点と点は、今テイラーの前と突き出された。

たどり着いてしまったその答えを聞き、テイラーは笑う。

救われることがないと知りながら真理を導き出したジャックへ、テイラーはこれ以上無いほどの称賛と嘲笑を贈る。

「ハッハッハッハッハ、いやぁこりゃ傑作やわ。お見事、アンタの言うとおりや。あのマネネの中にはアンタのサンドの心臓が埋まってる。当の心臓を提供したのもウチや。」

涙目を交えた笑顔で、テイラーは事実を次々と話し出す。

 

 

 

「アレを生かしてくれそうな研究員の知り合いがおったからな、アンタの実家にある墓からちょいと頂いてもうたわ。凄いよな、あの心臓。死んでもまだ動いと……」

テイラーがすべてを言い終えぬうちに、『彼』の拳は動いていた。

溢れ出る憎悪に、身体が耐えきれなかったのだ。

人目を一切気にすることなく、『彼』は怒りに任せて渾身の一撃をテイラーに見舞う。

 

 

 

 ……だが、その拳が彼女へと届く直前。

『彼』の腕はピタリと止まる。

後ろ側から、何者かが腕ずくで制止したのだ。

ゆっくりと彼が振り返ると、そこに居たのは気色の悪い笑みを浮かべるオレンジ髪の男……クランガであった。

「ッ……!」

「いやいやジャックさん。それは流石にマズいッスよ。一旦冷静になりま……しょっ!」

強めの語尾と同時に、クランガはジャックの首裏へスタンガンを食らわせる。

「がっ………き……貴様ッ……!?」

「まだ『そっち』に出てこられると困るんスよ。暫くおやすみー、ってことでヨロシク!」

お嬢がフウジジムで喰らったものの3倍は強い電流が、ジャックの首裏へと流れる。

あっという間に彼の意識は遠のき、その場で客席へ座り込む。

そしてそのまま気絶してしまったのだった。

 

 

 

「ふぅ……危ないとこやったわ。流石のウチでもコイツに殴られたらひとたまりもないわ。」

「ったく。どうせアンタから挑発したクチっしょ?あんまり直接的に虐めたら可哀想ッスよ。」

「知らんがな。アイツが勝手に気づいたんやから。」

そんな会話を交わしつつ、テイラーは席を立ち上がる。

荷物をまとめ、別の場所へと移る準備をしながら言う。

 

 

 

「……しかしスモックの奴、コイツにちゃんと説明してなかったんやな。」

「まぁ、雰囲気完全に変わってるし……しょうがないッスよ。」

彼らの口から、聞き覚えのある名前が上がる。

少なくとも、当該の人物がマネネやジャックのサンドに関して一枚噛んでいることは間違いないだろう。

しかしその事実が明らかになるのはもう少し先である。

やがてテイラーとクランガは、気を失ったジャックを尻目にそれぞれ別の場所へと去ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 客席エリアを歩んで抜けた先、クランガは再度見知った人間の顔を見る。

先程試合を終えたばかりのエンビだ。

彼らは互いの存在に気づくと、軽い会釈と共に歩み寄る。

 

 

 

「お疲れ様ッス。結構派手にやりましたね、あの子。」

「あぁ、本当にいつ負けてもおかしくなかった。」

エンビは非常に満ち足りた顔で、先のバトルの余韻に浸る。

彼をあれほどまで高揚させた試合はそうそうなかったからだ。

その表情は、教団のメンバーは誰ひとりとしてみたことがないものであった。

「……もしかしてエンビさん、今すごく機嫌が良かったりするんスか?」

「まぁな。」

エンビの満足げな顔を見たクランガの反応はというと……

 

 

 

 酷く不満げなものであった。

エンビとは対照的に、彼の心には言いようのない不快感が在ったのだ。

まるでゴミでも見下ろすかのような蔑む眼差しで、エンビの方を一瞥した。

「……エンビさん。まさか例の計画、『降りる』とか言わないッスよね。」

「……さぁな。」

そう言うと、エンビは振り返って別の場所へと消えていってしまった。

その背中を見届けつつ、クランガは呟く。

「……なんだよ。その程度かよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーさて、1回戦はいよいよ最終試合へ突入する。

そんな中、座席にて爆睡……もとい気絶を決め込んでいる男が1名。

先程スタンガンを喰らったジャックである。

 

 

 

 その隣に、試合を終えて戻ってきたお嬢が座り込む。

マネネは近接のポケモンセンターに預けてきたため、今はお嬢ひとりだけだ。

「あら……疲れてるのかしら?」

彼女はジャックの腕を引いたり、頬を軽く叩いたりして意識の有無を確認する。

「ちょっとジャック、そんな姿勢で寝てたら首を痛めるわ。」

軽く声をかけると、ジャックはゆっくりと目を開く。

 

 

 

「……あれ、此処は?」

「おはよ。一応勝ったわよ、アタシ。」

目覚めたジャックに、彼女は笑いかける。

彼を普段から振り回していることには多少の負い目があったため、決して強くは言わなかったのだ。

 

 

 

 一方のジャックは、頭の中で先程知った出来事がゆっくりと渦巻いていた。

知ってはいけなかった事実の断片を、自ら手にしてしまったからだ。

寝起きの頭も相まって、彼は混乱していた。

だからこそ、その一件は一度頭の隅に留めておくことにしたのだ。

仕切り直し、彼はお嬢に賞賛の言葉を贈る。

 

 

 

「……そうだ。おめでとうございます。あのエンビを相手にあれほどの健闘をするとは。」

「ふふん、当然よ。……まぁ、ホンッッットに厳しかったけどね。」

引き分けの判定勝ちとは言え、お嬢の顔はとても嬉しそうだ。

ジャックの期待に応えて得る勝利は、彼女にとって何より大切なものだったからである。

 

 

 

 しかしそんな彼女の興味は、すぐに次の試合に向けられる。

なぜならその対戦カードは、彼女としては絶対に目を離せない人選だったためだ。

 

 

 

 西側のフィールドに立ったのはハオリ、そして東側に立っていたのはレインだ。

どちらもお嬢の同期のトレーナーにして、圧倒的なほどの実力者だ。

そんな上位のトレーナー同士がどのような試合を展開するのか、彼女にとってそれを見る機会は滅多に無い。

 

 

 

 フィールド上のハオリとレインは、勝負の前の会話を交わす。

「はじめまして……かな。キミ、随分と顔色が悪いけど大丈夫かい?」

ハオリは、目に見えて体調の悪化しているレインを案じて声をかける。

普通であれば、この状態ではバトルどころではないのは確実だ。

 

 

 

 だが、そんなハオリの心配をレインは一蹴する。

「はっ、余計な心配だな。僕にはトレーナーの頂点に立つ義務がある。何を理由にしても、試合の舞台を降りるなんてあり得ないんだよ。」

レインは啖呵を切ってそう言い終えるが、言葉尻で耐えきれなくなったのか口を覆って小さく咳をする。

やはりまだ万全の状態ではないようだ。

外野のお嬢ですら、目を背けたくなるほどの痛々しさであった。

 

 

 

 自身の良心を突っぱねられたハオリは、これ以上は介入するべきではないと判ずる。

そしてひとつの瞬きの後……眼前のレインを標的として定め、睨みつける。

「ふーん、後悔しても知らないよ。………じゃ、やろっか。」

「ふっ、君は少しは出来そうだ。せいぜい楽しませろ……ッ!」

 

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