【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第062話】破滅の大樹、強まる雨脚(ハオリvsレイン)

『祭典』の1回戦、ハオリとレインの勝負にてリードを取ったのはハオリ側である。

ラプラスの歌声とセキタンザンの突進のぶつかり合いにて、勝負を制したのは前者の方だ。

技量ではレイン側に軍配が上がっていたが、そのギミックを見抜かれてしまったことが大きく戦況に影響したと言えるだろう。

 

 

 

「や……やっぱり、相性の壁は大きかったのかしら?」

「……どうでしょう。私はそうは思いません。」

ジャックはラプラスの周囲の床へ目を向ける。

そして自らの指を走らせながら言った。

「確かに気温が下がった環境はセキタンザンには不利かもしれません。が、彼のスピードと体温を持って遠回りの助走をすれば、フィールドの冷気源を払拭することは難しくない。それさえあれば間違いなくレイン様の勝ちだったと思われます。」

「……つまり、どういうことよ?」

「レイン様は挟むべき大事な一手を飛ばしています。おそらく相当に焦っているのでしょう。」

ジャックの考察は大方間違っていない。

事実、冷静さを失ったレインの挙動は、彼自身がロメロシティで一度目にしている。

 

 

 

 

 

 しかし、レインの逸りを見透かしていたのは外野のジャックのみにあらず。

対峙しているハオリ自身もまた、彼の奥底に渦巻く感情を感じ取っていたのだ。

「なぁレインくん。どうして最後に突っ込んできたんだい?」

ハオリはレインに問う。

彼女にとって、彼の焦燥は甚だ疑問であった。

だが、そんなものに答えるほどの度量はレインにはない。

それでも平静を装いつつ、そっけなく突っぱねる。

「……別に、僕が正しいと思ったからやっただけだ。………ゴホッ」

しかし彼の語尾には、おもわず湧き上がってきた咳が交じる。

「ふーん………。」

 

 

 

 この当たりから、フィールドには徐々に不穏な空気が漂い始める。

ハオリの背筋を、一筋の悪寒が走り抜けた。

レインの中の暴走する感情に、火が付いたのを感じ取ったからだ。

焦りはやがて彼を迷わせる。

 

 

 

「……さて、本当なら易々と使うもんじゃないんだが。」

そう言ってレインが手を伸ばしたのは、彼の手持ちの中でも最も古いボールだ。

中から出てきたのは、文字通りレインの右腕にして切り札……ピカチュウだ。

「じじーーーーーーっ!」

ピカチュウは登壇するや否や、頬からスパークを飛ばしてラプラスを威嚇する。

 

 

 

 

 

 SDポケモンの存在感は、やはり遠目に見ても大きなものなのだろう。

外野のお嬢やジャックですら、既知のはずなのに僅かな恐怖を覚えたのだ。

だが、彼らが真に震撼したのはそこではない。

「ま、まさかあの体でSDを使う気じゃ……!?」

「もしそうだとしたらかなり、否……着実にマズいです!」

そう、レインは数日前まで感覚共有の発作で吐血をしていた。

加えて、今現在もなお咳が収まっていない。

それほどまでに体調が悪化しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし彼らの心配も虚しく、レインはシャツの腕をまくって右手を差し出す。

「……」

レインは、右腕に自らの犬歯を強く突き立てた。

傷口からは赤黒い血液が、噴水のごとき吹き出る。

やがて飛び散った血は青白いスパークへと変わり、レインの姿、更にはピカチュウの姿は大きく変わっていったのだ。

ご存知、SDの発現だ。

 

 

 

「…………ッ!?」

お嬢からしてみれば3回目のSDである。

本来なら既に、特段驚くものでもなくなっている。

が、そのSDが指し示す意味は最初のものとは全く違う。

いわばこれはデスマッチも良いところなのだ。

この勝負がどう転ぶにせよ、まともな顛末を迎えるとは到底思えない。

故に、彼女もジャックも気が気でないのだ。

勝負の結果ではなく、レインの行く末が。

 

 

 

「ふーん……よくわからないけど凄い切り札じゃん。」

「ハッ、目に焼き付けておけよ。本当ならアンタなんかに使うもんじゃないんだから………さっ!」

火花が散る右手を抑えると、レインは首を軽く右側にひねる。

 

 

 

 するとその直後。

ラプラスの首筋を、一筋の電流が通過していった。

「………?」

やがて何が起こったのか本人が知覚せぬまま、ラプラスはその場で倒れ伏す。

重量級の体格に加えて手負いの状態……対ピカチュウとしてはあまりに不適合な条件が揃っていた。

が、それにしてもやはりこのスピードはさすがと言わざるを得ない。

 

 

 

 この攻撃は読者諸兄の目線では既出だろう。

そう、意識のシンクロによる超高速射撃『10まんボルト』だ。

過去にタネを知らぬラビフットが倒れ、アーマーガアやパルスワンすらも苦戦させたアレである。

 

 

 

「……マジかーー。速いじゃん、アンタの攻撃。」

ハオリはラプラスを戻しつつ、目の前のピカチュウを称賛した。

その賞賛は多少の恐怖心が混じりつつも、至極純粋なものであった。

彼女はこの状況においても尚、余裕を失うことがない。

身を焦がすほどの使命感に燃えるレインとは、どこか対照的にすら見えた。

 

 

 

「ホラ、早く次のポケモンを出しなよ。さっさと蹴りを……ゴホゴホゴホッ!」

レインの咳が更に悪化していく。

加えて彼の視界が揺らいだのだろうか。

上半身がありえないほど大きく傾いた。

彼の身に異常が起こっていることは、誰の目から見ても明らかであった。

そこから更に加速するように、レインの焦りはより強くなっていく。

 

 

 

 あまりの痛ましい様子に、ハオリも最後の情けをかけることにした。

「………もう一回だけ聞くよ。キミ、勝負を降りる気はないのかい?」

「ゴホッ……何度も言わせるなッ……僕は敵前逃亡なんかしない……ッ!」

当然、彼女の情けは無為に終わる。

 

 

 

 ここでハオリの迷いは消えた。

彼を正面から完膚なきまでに叩き潰してやることこそが、最大の慈悲であると覚悟したのだ。

「そっか……じゃ、望み通りさっさと終わらせるよ。行きなッ、バチンキー!」

「うきゃきゃーーーっ!」

ハオリのボールから呼ばれた最後のポケモンはバチンキーだ。

彼女の中では最も最初から居るメンバーだ。

故に、その実力も恐らくはトップクラスだろう。

 

 

 

 だが、バチンキーだって所詮は普通のポケモンだ。

残念ながら、そのポテンシャルはピカチュウには劣る。

であれば後はトレーナーの実力、ないしは時の運が試合を左右するだろう。

 

 

 

「………ゲホゲホッ!……今更言うことなんかない。行くぞピカチュウ……!」

「じじっ!」

咳とともに啖呵を切ったレインは、再度首筋を軽く捻る。

ピカチュウに思念で合図を送っているのだ。

 

 

 

 直後、ピカチュウのふたつの尻尾から、電撃が2筋飛んでくる。

『10まんボルト』により、最短でバチンキーを仕留めるつもりなのだろう。

レイン側にも余裕がない、当然だ。

 

 

 

 だがいくら超高速の攻撃であるとは言え、ハオリにとっては2回目の奇襲だ。

故に、それは初見殺しとしての効力は失っている。

更に、電撃系の攻撃の対策といえば定石が決まっている。

 

 

 

「バチンキー!バチを投げ捨てなッ!」

「うきゃ!」

ハオリの指示の直後、なんとバチンキーは2本のバチを天高く放り投げてしまったのだ。

そして、その直後。

電流はバチンキーに届くことなく、空中に投げ捨てられたバチに吸着されたのであった。

 

 

 

 遠くに位置させたユニットに電気を吸わせる戦法……そう、いわゆる『避雷針』というやつだ。

『電流』はその特性上、動く相手に焦点を当てて攻撃をすることが難しい。

ましてや障害物があれば尚更だ。

 

 

 

 攻撃の失敗したレインは舌打ちをする、。

「チッ……アンタもその手口か。」

レインにとって、その戦法は見覚えがあった。

ジャックのアーマーガアが『はがねのつばさ』を使いながら突進してきた時のものに似ている。

 

 

 

 だが、直後に攻勢へ出たジャックと、その後の展開は大きく異なった。

「よし、次だバチンキー。真下に『やどりぎのタネ』ッ!」

「うきゃきゃーーーっ!」

バチンキーは口からタネを吐き、それを周囲の地面に撒き散らしていく。

やがて彼の周囲には数本のツルが伸び始める。

そしてそのツルは数秒と経たぬうちに太くなっていき、互いが絡み合い上へ上へと螺旋状に伸びていく。

………最後に完成した『ソレ』は、見る者すべてを圧倒した。

 

 

 

 

 

「なっ……!?」

「嘘でしょう……!?」

築かれたのは大樹……それも数十メートル弱に及ぶほどの凄まじい大木だ。

大木は完全にバチンキーを包み込み、天然の要塞を築き上げていたのであった。

「じじっ………!」

フィールドには青々と茂った葉の影が出来、目の前のSDが発現したピカチュウすらも存在感で圧倒する。

こうなってしまえば、中にいるバチンキーに電流を当てることなど夢のまた夢だ。

 

 

 

「や、『やどりぎのタネ』をそんな風に使うやつがあるかッ!?」

「ふふふ……キミのセキタンザンの鎧を、アタシなりにカバーさせてもらったよ。」

そう、これはハオリの彗眼により即席で編み出された大技だ。

しかしその技は、ピカチュウを大いに惑わせることに成功した。

中にいるバチンキーに接近戦を迫るか、大木そのものを破壊するしか選択肢がない。

遠距離戦をメインにするピカチュウにとって、これは非常に度し難い状況だ。

 

 

 

 だが、そこで怯むピカチュウとレインではない。

レインは即断の末、大木のど真ん中へ突っ込んでいくことを選んだ。

「じじーーーーっ!」

ピカチュウは全身を帯電させ、その勢いで正面へ向かって突っ込んでいく。

大技『ボルテッカー』による高速移動だ。

 

 

 

 その助走を活かし、そのままピカチュウは大木を垂直に駆け上っていく。

やがて葉の茂みの中へとその姿を隠した。

が、尾を引いたスパークが描いた軌道のおかげで彼の位置は誰の目にも明らかであった。

残ったスパークは、枝葉に引火し炎を巻き上げる。

築かれた大樹が上層部から燃え始めたのだ。

 

 

 

「なるほど……自然界でも、雷は最もポピュラーな山火事の原因。それを生かした対処法、というわけですね。」

ジャックの言う通り。

少なくともポケモン同士の戦いにおいて、火というのは案外簡単に用意できるエネルギー源だ。

ましてや発火剤たる木材があれば尚更である。

 

 

 

 さて、こうなったら火の手が上がるのは速い。

燃え広がった炎は更にその勢いを増し、大きな熱を発生させる。

 

 

 

 ……もう一度言おう、熱を発生させる。

これがどういう意味を持つか、知らぬレインではなかった。

「そこだッ……!」

大樹の幹のうち、最も火の手が激しい場所を見定めたレインとピカチュウ。

彼らはここで次の一手を撃った。

「じじーーーーっ!」

尻尾のスイングから放たれる水の刃……『なみのり』だ。

『なみのり』が当てられた幹は、急速に冷却されて凄まじい水蒸気を上げる。

 

 

 

 熱せられたものを急激に冷やすと何が起こるか。

そう、膨張率の差からひび割れを起こす。

すなわち、その大樹は綻びを見せるのだ。

そこへピカチュウはさらなる追撃を加える。

 

 

 

尻尾のスイングで生じた回転をそのまま機動力に変換し、『ボルテッカー』を発動。

流れるようにしてひび割れへと突っ込んでいったのだった。

ピカチュウの一撃を喰らった大樹は、縦方向に真っ二つに割れる。

やがて煤と水蒸気を上げながら、ボロボロと崩れていったのだった。

 

 

 

 さて、大樹を割ったということは、その中にいたバチンキーも当然晴天の元に晒されることになる。

……はずだった。

「じ……じじっ!?」

が、ピカチュウが見渡せど、そこにバチンキーはいない。

レインも目を凝らすが、相手の姿は見当たらない。

「クソッ……どこ行きやがった!?」

だがやはり、気配すら感じ取れない。

まるで最初からそこに居なかったかのようだ。

 

 

 

 レインが迷っていたその時だった。

彼の背筋に悪寒が走る。

そう、背筋に……だ。

まさか、と思った彼はゆっくりと後ろを振り返る。

 

 

 

「うきゃーーーーーッ!」

「なっ!?」

「じじっ!?」

なんとバチンキーは、いつの間にかレインの背後に居たのであった。

これではいくら視覚を共有してようが、その存在を捉えることは出来まい。

「『やどりぎのタネ』ッ!」

「うきゃきゃっ!」

バチンキーは大きく飛び上がり、動揺するピカチュウとレインを差し置いて口からタネを吐き出す。

タネはピカチュウに直撃し、即座に地面へと彼を縛り付けた。

「じっ……!」

ピカチュウは藻掻くが、彼の弱点は筋力のなさだ。

彼の自力のみでこの拘束は解けまい。

 

 

 

 形勢は完全にハオリ側の優勢……ピカチュウに為すすべは最早無いと言っていい状況だった。

「い、一体いつから!?」

「ま、『最初から』だね。」

ハオリの言う通り、バチンキーは『最初から』此処に居たのだ。

最初の『やどりぎのタネ』を撃った直後から、彼は死角を縫ってレインの背後まで周り込んでいたのである。

築き上げた大樹はあくまでもデコイ……本当の狙いは、スタミナの切れたピカチュウを安全に拘束することにあった。

 

 

 

「うきゃ!」

「じっ……!」

飛び上がったバチンキーは悶えるピカチュウを踏みつけ、完全に動けないように押さえつける。

更に頬袋にバチをあてがうことで、放電による抵抗すら受け付けない状態となっているのだ。

 

 

 

「よし、バチンキー!『えだづき』連打で仕留めてやりな!」

「うきゃきゃーーーーっ!」

バチンキーは左手で、ピカチュウの頭を真下に押さえつける。

「じっ……!」

そしてもう片方の腕にバチを持つと、無抵抗なピカチュウの背中を何度も殴打したのだ。

 

 

 

 片手であるゆえそこまでの速度は出ない。

が、こうも何度も連打が叩き込まれてしまえば、低耐久のピカチュウが無事で済むわけがない。

「じじっ………!」

大きなダメージが蓄積され、ピカチュウの意識はだんだんと遠のいていく。

勝負は既に決したようなもの……最早ハオリの勝利は確実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ、す、凄すぎる……!」

お嬢は息を呑んだ。

バチンキーは、なんとSDを発現したポケモンを相手に互角……どころか優勢で試合を進めていたのだ。

お嬢対エンビの試合ですら、途中で覚醒した謎の力がなければ敗北は必至だったし、食らいつくのが精一杯ですらあった。

しかしハオリは違う。

純粋な実力で、あのレインの喉元まで喰らいついているのだ。

それはジャックにすら出来なかった偉業であった。

「………強い。」

この時点でジャックは確信する。

あのハオリというトレーナーは、確実に自らの才を大きく上回っている……と。

 

 

 

 だが、彼らの脳裏には加えて別の感情が上乗せされる。

それは彼女に対しての悍ましさ……ないしは恐怖心であった。

ハオリというトレーナーの戦い方には、あまりにも躊躇がない。

まるで頭のネジが数本外れているかのごとく、迷いのない戦い方なのだ。

もっと無骨なことを言えば、結果重視で風情がない。

そこには一種の、乾いた恐ろしさすら垣間見える。

もしかしたら、そこに居たのはとんでもない怪物だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 だがここで傷を追うのはピカチュウだけにあらず。

SDによって意識をリンクさせているトレーナー、レインにもその衝撃は伝達されるのだ。

「うっ……ゴホ……ゴホゴホゴホッ………!」

レインの咳がいよいよ末期レベルで悪化する。

あまりにその頻度も大きさも酷く、彼自身に呼吸をする暇さえ与えない。

やがて口元からは赤黒い血が吐き出され、真下の地面をおどろおどろしく染め上げた。

 

 

 

 

 

「ッ………!」

お嬢はあまりの惨状に、目を背けた。

 

 

 

 もうこれ以上の試合継続は無理だ。

SDの負担が、常人に背負いきれるものではなくなっている。

このままでは、冗談抜きで命に関わりかねない。

 

 

 

 

 

 

 

「………だ」

「………?」

「……ゴホッ、まだだって言ってるんだよッ!僕が!こんな所で!負けるわけには行かないんだッ!……ゴホゴホッ!」

レインは突如、大きな声を上げて立ち上がる。

脚はふらつき、シャツの胸元は吐血でべっとりと濡れている。

既に生命的限界は越えていたが、それを己の意志のみで繋ぎとめている状態だ。

だが彼の狂気はそこにとどまらない。

 

 

 

 なんと、レインは自らの左手の指を差し出すと、それを思いっきり自分の喉へと突っ込んだのだ。

「がはっ………ゴホゴホゴホッ!」

「なっ………!?」

ただでさえダメージを受けていた彼の呼吸器は、ここにきて外部の刺激を受ける。

当然その症状は悪化し、さらなる吐血が彼の口から溢れ出る。

 

 

 

 だが、その衝撃はピカチュウにも伝わった。

故に、意識の遠のきかけていたピカチュウは此処にて覚醒する。

いわばSDを利用した強制的な気つけ……意識復帰の荒療治だ。

「じ……じじーーーーーーっ!」

そしてその衝撃にて、ピカチュウは青白いスパークを吹き上げた。

 

 

 

「うきゃっ……!?」

優勢だったはずのバチンキーは、不意の放電に巻き込まれる。

そして僅かに身が逸れた時、ピカチュウは強度の落ちた『やどりぎのタネ』を切り落としたのだ。

 

 

 

「ま……まだだッ……まだ……僕は……ああああああああああああッ!」

「じじーーーーーーーーーーッ!」

ピカチュウは全方位へ、不可避の凄まじい放電を行った。

自身の生命力をほぼ全て注いだ、捨て身の攻撃だ。

誰にも避けられない攻撃ではあったが、その代償は大きい。

 

 

 

 

 

 ………だからだろう。

その直後、レインとピカチュウは其の場で倒れ伏して一切動かなくなってしまった。

完全に、体力が切れてしまったのだ。

SDの力に耐えきれなかったのだ。

 

 

 

 一方のバチンキーは致命傷ではあったものの、なんとか片膝で立っていた。

つまり、この試合はハオリの判定勝ちだ。

 

 

 

 一方のレインは、教団のスタッフの担架によって病院へと搬送されていった。

彼の状態が危篤状態であることは、誰の目にも明らかでった。

 

 

 

 

 

「ッ………ジャック、これが………。」

「えぇ、SD適合者の末路です。その力はトレーナーを蝕み、ポケモンを蝕み、やがて破滅を招きます。」

遠くへ運ばれていくレインを遠目に眺めながら、お嬢は現実に震撼した。

彼ほどのトレーナーですら、SDの力の制御には至らなかったのだ。

 

 

 

「……怖い。………怖いわよ。」

「…………。」

震えるお嬢の背中を、『彼』は背後………否、どこか遠くから見つめることしかできなかった。

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