【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第064話】無情な合理、孤独の常理(&ダフ、vsハオリ&ジャック)

「おいスエット。これはどういうつもりだ。」

「………。」

エンビの問いかけに、スエットは無言で振り返る。

そしてこう続けた。

「……エンビ。あなたはあの娘の心が強いと言った。じゃあ、あの状況に置かれても同じことが言える?」

あの状況……つまりは仇敵・ダフと組み、己の味方であるはずのジャックと戦う構図のことだろう。

すなわち、この対戦カードはスエットの意地の悪さで仕組まれたものなのだ。

 

 

 

「関係ないな。確かにあのハオリとかいう奴は強いし、ジャックは言うまでもない。……が、アイツらには致命的な弱点がある。」

「……弱点?」

「まぁ、見ていろ。それが分からぬお前ではあるまい。」

彼らはそう言いつつ、波乱巻き起こるフィールドへと目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーお嬢は神妙な面持ちでフィールドに立つ。

息もやや荒く、どうにも落ち着かない様子だ。

それは相手として立ちはだかったのがジャックとハオリだからだろうか。

それとも隣に立っているのが暴力団の長・ダフだからだろうか。

恐らくどちらも正しい理由だろう。

彼女の決意は揺らがぬものだが、それでも拭えぬ不安はある。

 

 

 

「……よォ。随分な強敵と当たっちまったなァ。」

「………。」

お嬢は隣のダフを睨みつける。

過去にマネネを攫われた恨みがあるのだから、良好な印象など抱けるわけもない。

……無論、これが共闘者に対して抱く感情として正しいかは別問題だが。

「まァそう睨むな。俺はもうお前のマネネを取って喰おうなんざ思ってねェよ。」

「フン、アンタが何か言ったとこで信用できるわけ無いじゃない。」

「おぉ怖ェ。ま、お前のことは信頼してるからよォ……一緒に勝とうぜェ。」

ダフは笑顔で語りかけるが、お嬢は一切気を許すことはない。

早くも彼らの間には険悪なムードが漂う。

 

 

 

 一方で、その様子を眺めるのが対岸の2名。

ジャックとハオリだ。

彼らが遠目に見ても、ダフとお嬢がギスギスとしているのはよく分かる。

お嬢の状況を案じたジャックの胃痛が微かに強まる。

「……大丈夫ですかね、アレ。全く協調性みたいなものが見えないんですけど。」

「さぁね。トレちんならどうにかするっしょ。……それよりお兄さん、他人の心配なんかしてる場合?」

ハオリはジャックの顔を覗き込む。

彼の顔もまた、お嬢と同じく神妙な様子であった。

 

 

 

 それは前述の通り、お嬢に対しての心配からか。

否、それだけではない。

彼はまだ迷っていたのだ。

お嬢の敵としてここに立つことに。

自分でもその理由はわかっていない。

……わかってはいるが、納得はできていない。

だからこそ、本気で目の前の彼女を叩く覚悟がなかった。

その癖、負けるのが怖かった。

どう転んでも、彼女に背負われるに値する名は消えてしまう気がしていたからだ。

 

 

 

 そして、その迷いはハオリにも見透かされていた。

「……一応言っとくけど、『手加減してやろう』なんて考えなら捨てたほうが良いと思うよ。恐らくあの娘は、アタシ達が束になっても勝てるかどうかわからないくらい強い。」

「……わかってますとも。」

そう、わかっている。

結果がどうあれ不満が残るなら、せめてトレーナーとして全力で戦ってやらなくてはいけない。

正しく彼女の憧れと在るならば、腹をくくるべき時だ。

 

 

 

 

 

 間もなく、高台にスエットが姿を表す。

そして天高く旗を掲げた。

試合開始直前の合図である。

ルールは1匹×4人のサドンデス式マルチバトル。

3カウントの後、旗が振り下ろされる。

4つのボールが天高く投げ飛ばされた。

 

 

 

「行きなさい、サダイジャッ!」

「オラ出てこいッ、オニシズクモッ!」

 

 

 

「出番です、イエッサン!」

「行ってきな、ラプラスッ!」

 

 

 

 フィールドに登場したのはお嬢&ダフ陣営がサダイジャとオニシズクモ。

一方のジャック&ハオリ陣営がイエッサンとラプラスだ。

お嬢の選択は無難なポケモンを選んだ……といった感じだろう。

ジャックも似たような思考だ。

だがハオリは違う。

理由は後述するが、この選択はかなり大胆なものだ。

これは果たして吉と出るか凶と出るか。

 

 

 

 

 

「先手必勝!サダイジャ、『はいよるいちげき』!」

「みしゃーーり!」

先に仕掛けたのはお嬢のサダイジャ。

数回の蛇行で姿を晦まし、相手の間合いに突撃しようと試みる。

だがそう来ることは、ジャックとて既知だ。

「させませんッ、イエッサン『ワイドフォース』ッ!」

「みわわーーーーっ!」

イエッサンは腕を大きく振ると、念動力を実体化して横方向に広大な刃を形成する。

そしてこれを地面スレスレの硬度で真一文字に切り、正面へ飛ばす。

当たり判定が大きなこの攻撃は、いくらサダイジャと言えども避けられない。

『はいよるいちげき』はあくまで瞬間移動ではなく、起点から終点の間には実体があるのだ。

 

 

 

 だがこれはマルチバトル。

サダイジャは1人ではない。

「シールド展開だオニシズクモォ……『ワイドガード』ッ!」

「ずもももっ!」

ダフの指示の直後、オニシズクモは自らの水泡を空中に投げとばす。

すると水の塊はあっという間に大きく広がり、1つの透明な壁を形成した。

『ワイドガード』とぶつかった『ワイドフォース』は対消滅し、その場で霧散する。

 

 

 

 つまり、サダイジャを妨害する物はこれで何一つなくなった。

「みしゃーーーーり!」

「みわっ……!」

サダイジャのヘッドショットが、イエッサンを貫く。

狙うべきは大型のラプラスよりも小型のイエッサン……非常に正しい判断と言えよう。

むしタイプの攻撃ゆえ、効果は抜群だ。

 

 

 

 更に、攻撃直後で硬直するイエッサンへの追撃にも成功した。

サダイジャは尻尾でイエッサンを締め上げ、その場で拘束することに成功したのだ。

「み……わっ……!」

「みしゃっ!」

イエッサンは必死に抵抗する。

彼も近接戦闘は得意ではあった……が、それでもサダイジャから逃れることは敵わない。

 

 

 

 最初の二手で、お嬢&ダフ陣営は大きなアドバンテージを取れたのである。

「へっ……どうだァ、俺のサポートは。」

「な……中々やるじゃない。感謝するわ。」

事実、ダフの防護壁はお嬢の奇襲に大変重要なファクターとなった。

これがなければ今頃『ワイドフォース』の餌食となっていただろう。

元よりダフはダブルバトルを得意とするトレーナーだ。

故に、こういったマルチバトルもまた得意分野なのである。

 

 

 

「み……みわっ……!」

「お、お兄さん!?」

ハオリは完全に出遅れた。

だがこれは仕方のないことだ。

ラプラスはその体格が仇となり、機動力ではどうしても劣る。

故に、小柄でスピーディーな残り3匹のやり取りについて行けなかったのだ。

 

 

 

 しかしそんなディスアドバンテージが見過ごされるわけもない。

「おいおい、よそ見してる場合かァ……?オニシズクモ、『とびかかる』攻撃だァ!」

「ずもももーーーーっ!」

オニシズクモは天高く飛んで水泡を回収すると、そのまま上空からラプラスを目掛けてドロップキックをかまそうとする。

だがラプラスとて無抵抗ではない。

真上からの攻撃であれば対抗手段があるだろう。

「ッ……『スマートホーン』ッ!」

「らるるっ!」

ラプラスは角を突き出し、オニシズクモへ突き刺すように攻撃する。

脚と角は大きな音を立ててぶつかりあい、鋭く火花を散らした。

 

 

 

 だが上からの攻撃と下からの攻撃でよりエネルギーが在るのはどちらか。

……答えは上だ。

「ずもーーーーーっ!」

「らる……!」

惜しくもラプラスは、オニシズクモの力に押しきられてしまう。

しかもラプラスは体重故にほとんどノックバックをしない。

そのため、オニシズクモの足場として体よく使われ、相手と距離を取られてしまったのである。

 

 

 

 ここまでの状況は、ダフがやや優勢でハオリがやや劣勢。

イエッサンはサダイジャに縛り上げられて完全な拘束状態。

詰まるとこ、ジャック&ハオリ陣営が大きく出遅れたことになる。

加えてイエッサンが行動不能……ということは、一時的に2対1の状況が完成している。

マルチにおいてこの状況が致命的であることは、想像に難くないだろう。

 

 

 

「……うーん、なるほどね。これがマルチか。」

ハオリは顎の下に手を置いて唸る。

彼女は才能があるとは言え、デビューはお嬢とほぼ同期でマルチはこれが初。

一方のお嬢はコンテナ船で、既に複数戦を経験済みだ。

つまり、この点に置いてのみ、お嬢のほうが優勢なのである。

 

 

 

 だが、そんな経験の差など天才たるハオリの前には僅かな段差でしか無い。

彼女の脳裏には、既にこの状況に対する打開策が思い浮かんでいたのだ。

……そう、あまりに合理的で無粋な打開策が。

 

 

 

 ハオリはラプラスにわざの指示を出す。

「行きなラプラス、『うたかたのアリア』ッ!」

「らるるーーーーーっ!」

ラプラスを中心として、質量を含んだ衝撃波が広がっていく。

『うたかたのアリア』は自身に機動力を必要とせず、広範囲を攻撃できるわざだ。

 

 

 

 だが、それは同時に欠点にもなりうる。

それは何か。

そう、攻撃範囲の制御が効かないのである。

つまりどういうことか。

……この攻撃は敵も味方も区別なく巻き込んでしまうのだ。

 

 

 

「ずももっ……!」

「みしゃっ……!」

攻撃を受けてしまうのはオニシズクモにサダイジャ……

「みわっ……!」

そして味方であるはずのイエッサンもであった。

 

 

 

「っ………!」

ジャックは渋い顔をする……が、すぐに冷静に考え直す。

もとよりイエッサンは、サダイジャの拘束によって足手まといとなっていたのだ。

であれば多少の犠牲を払ってでも状況の打開を考えるのは、急務にして必然だろう。

事実、『うたかたのアリア』によって大きなダメージを受けたサダイジャの拘束は解かれ、2対1の現状は脱却できたのだ。

 

 

 

 ジャックはすぐにイエッサンに指示を出す。

ラプラスの攻撃でよろめいているのは相手も同じ……であれば今のうちに攻撃を加えておく必要がある。

「イエッサン、『ワイドフォース』で追撃ですッ!」

「み……わわーーーっ!」

立ち上がるやいなや、イエッサンは右手に念動力で生成した剣を携える。

そして前方にダッシュをすると、眼前直下のサダイジャの頭部を斬り伏せた。

「みしゃっ……!」

「さ、サダイジャッ!」

お嬢はシールド展開の指示を出そうとした……が、間に合わない。

イエッサンの復帰が少しばかり早かったのだ。

 

 

 

 加えてイエッサンの動きには一切のムダがない。

サダイジャを斬り伏せたばかりでなく、更にその脚で目の前のオニシズクモへと飛びかかって行ったのだ。

だが残念。

サダイジャを攻撃した時点で、ダフにはその軌道が見え透いていた。

「へっ……流石に丸見えだッ!『ワイドガード』ッ!」

「ずもーーーっ!」

オニシズクモは水泡を再度正面に投げ捨て、広大なバリアを展開する。

振り下ろされた念動力の剣は、水の壁に叩きつけられてそのまま砕け散っていった。

「みわっ……!」

「『ワイドガード』……なんて厄介な!」

この絶対的な防壁は、イエッサンでは砕くことは敵わないのだ。

 

 

 

 ……が、それ以外の妨害方法ならば存在する。

「ラプラスそこっ、『こごえるかぜ』ッ!」

「らるるるっ!」

ラプラスの口から冷気が吐き出され、周囲の気温が急速に低下する。

すると水の防壁はどうなるか。

そう、凍結して氷塊と化す。

本来あるべきでない形にさせられた防壁は、途端にその強度を消失させるのだ。

 

 

 

「チッ、まずいなァ。」

「凍結……よし、イエッサン!『マジカルフレイム』ッ!」

「みわわっ!」

左手をかざし、触れた氷の防壁を熱で溶かす。

そして僅かに空いた穴から、一直線に炎を吹き出す。

「ずももっ……!?」

水泡を失ったオニシズクモは最早裸同然……イエッサンの炎熱攻撃を直に食らってしまうのだ。

 

 

 

「っし、良いねお兄さん。……おや?」

ハオリはふとラプラスの方に目をやる。

すると、彼女の足元にはサダイジャの影があったのだ。

2匹がオニシズクモへ注目している間に、お嬢がラプラスの懐へ忍び込むよう指示を出していたのである。

「余所見してんじゃないわよっ!行きなさいサダイジャ!」

「みしゃーーーり!」

そうして転じたのは『巻【自主規制】ソの構え』……ここから出される攻撃は『ぶんまわす』攻撃。

急速に解かれたとぐろから、尻尾の一撃がラプラスを襲う。

喉元を締め、音技を封じて無力化を狙う作戦だ。

 

 

 

 だが残念。

ラプラスとハオリの反応はあまりに早かった。

「遅いッ、『うたかたのアリア』ッ!」

「らるるーーーーっ!」

ラプラスの口から打ち出された衝撃波が、サダイジャを一瞬にして打ち捨てる。

「み………!」

「よ、読まれた……!?」

彼女は既に、フウジジムのMA-Ⅰ戦にてサダイジャの戦いを1度見ている。

だからこそ、次の手を勘で読んでいたのだ。

サダイジャの奇襲は虚しくも失敗に終わったのであった。

 

 

 

 しかし効果はそこだけにとどまらない。

『うたかたのアリア』の効果を覚えているだろうか。

これはフィールド全体に届く攻撃だ。

……つまり、遠方のオニシズクモ、そしてイエッサンまでもを巻き込む攻撃だったのだ。

「みわ………!」

既に多くの攻撃を受けたイエッサンは、片膝を突きボロボロの状態でよろめいている。

寧ろ彼にとって、この戦いの中で受けたダメージの大半がラプラスによる攻撃ですらあった。

彼女は味方で在るにも関わらず……だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの、ハオリ様。」

ジャックは隣のハオリをちらりと見つめ、怪訝そうに呟く。

1度なら仕方ないかもしれない。

が、流石に何度も躊躇なく全体攻撃をぶっ放すハオリのやり方に、ジャックも疑問を呈し始めたのである。

「……お兄さん。これはチーム戦だよ。最終的に1匹でも多く残っていた方の勝ち。だったら全体攻撃を出せるアタシが積極的に仕掛けたほうが良くない?」

その言葉を聞き、ジャックは戦慄する。

彼女の理論はあまりに横暴で、そしてあまりに合理的であった。

「まぁ、極論言えばアタシさえ生き残っていればいいって事。お兄さんには悪いけど、アタシは勝ちたいんだ。」

 

 

 

 なるほど、これが彼女の真の恐ろしさか。

確かに、迷いのなさや合理的な論理構築・思考は彼女の武器でもある。

が、それはあくまでも彼女単独のバトルに限った話だ。

彼女の頭には、『味方に配慮する』『協力して何かを成し遂げる』という発想が一切欠けているのである。

ただリーグの優勝を目指すだけなら、それでも良いかもしれない。

協力のスキルは必ずしも必要ではない。

それでも……それでもだ。

彼女の在り方はあまりにも……

 

 

 

「……まぁ、相手もそろそろ限界みたいだしね。ここらが仕掛け時かな。」

ハオリはニヤリと笑う。

そして次に出された指示は、他の3人を恐怖で震え上がらせるものであった。

「行くよラプラス……『ほろびのうた』ッ!」

「らる……」

「なっ!?」

ラプラスは大きく息を吸い込み、その様子を見たトレーナーたちはみな表情をこわばらせる。

次の瞬間……ラプラスの喉から歌声が発せられる。

 

 

 

 

 

「ら゛  あ゛  ああーーー ああ  ああ゛ あーーー♪ う゛ううーーーう゛ うう゛う  う゛ーーー♪」

 

 

 

 

 

 その声は喉を無理やり締めて絞り出すかのような、とても聞くに堪えない音であった。

音程も音色もノイズが大きく混ざり、鼓膜を舐め回すかのように悍ましく共鳴する。

聴いたものは皆耳を塞ぎ、得も言われぬ不快感に悶絶した。

「っ………!」

「ひ……酷ェ声だ……!」

人間ですらこの容態だ。

ではポケモンたちの方はどうか……

 

 

 

「み……みしゃ……!」

「ずも………!」

彼らもまたこの歌声に苦悶し、その場でのたうち回る。

少なくとも、彼らの身体の中になにか変化が起こっていることは間違いない。

「らるっ………!」

しかもこの『ほろびのうた』の影響を受けているのはラプラス自身すら例外ではない。

この『ほろびのうた』は、歌声を聴かせた対象(自身含む)の体力を徐々に削り取り、最終的に気絶してしまう……という効果のわざだ。

バトルにおいては、最早禁じ手に近い。

 

 

 

「ハオリ様、このタイミングで『ほろびのうた』など……!」

通常であればこんなわざを使うなど、正気の沙汰ではない。

しかしこの判断は、彼女の論理的思考の末に導き出された解答であった。

「……このバトルに置いてサダイジャとオニシズクモはかなりの傷を負った。一方でアタシのラプラスはさほどダメージを受けていない。だったら後は、全員が同じだけのダメージを受けても、生き残るのはアタシだけ……!」

「ッ………!」

 

 

 

 なんという暴論……!

だが筋は通っている。

それが仁義の通った戦い方かどうかは疑問が残る。

だが、正しいのはいつだって勝者が示した結果のみだ。

 

 

 

「み……わ……」

「い、イエッサン!」

傷が最も深かったイエッサンが、その場でうつ伏せになって倒れ込む。

彼は『ほろびのうた』の消磨に耐えきれず、最初にノックアウトしたのだ。

だが、それでもハオリはイエッサンには一瞥もくれない。

ただ目の前の戦場を見据えているのだ。

 

 

 

 さて、一方のダフとお嬢は焦り始める。

それも当然だろう。

死の時限爆弾をセットされたも同然なのだ。

モタモタしていれば彼らの負けは確定する。

「クソ……オニシズクモォ、『とびかかる』だ!」

「ずももーーーー!」

「援護しなさいサダイジャ!『はいよるいちげき』ッ!」

「みしゃーーーーり!」

2匹は急速な接近で攻撃を仕掛けようとする。

近接攻撃に対してそこまで強くないことは、先のやり取りで証明済みだ。

 

 

 

 だが、それも彼らの焦りがなければの話だ。

ハオリが見ても、彼ら2匹の攻撃はあまりに精彩さを欠いていた。

「ラプラス!『こごえるかぜ』!」

「らるるるっ!」

ラプラスは真下に冷風を吹き付け、瞬間的に氷の防壁を築き上げる。

気温の低下により動きが鈍くなったオニシズクモとサダイジャは失速し、目の前の防壁に弾き飛ばされてしまった。

 

 

 

「ずも……!」

「みしゃ……!」

彼らが怯んでも尚、ラプラスは冷気を吐き続けるのを辞めない。

そして正面の防壁は徐々にその大きさを増していき、やがてドーム状の完全な要塞が完成してしまった。

これでもう、ラプラスは完全な不可侵……手を出せる者は誰ひとり居なくなったのだ。

 

 

 

「さて、後は時間切れ待ちかな……。悪いねトレちん。アタシは何としても勝ちたいんだ……!」

「ッ………!」

ハオリの顔は本気だった。

決して意地の悪さで貶めよう、というものではなかった。

そんなことは分かっていた。

分かっていたからこそ、そのやり方を越えられなかったお嬢はより悔しかったのだ。

 

 

 

「おい嬢ちゃん。これはダメだ、詰みじゃねェか?」

ダフは半ば諦めモードでお嬢に問いかける。

だが仕方のないことだ。

こうなれば彼らに残されたのは、ただ敗北を待つ選択のみである。

 

 

 

「そんなこと………ハッ!」

その時、お嬢の脳裏にある考えが浮かぶ。

今この場において最も適した記憶が、猛スピードで引き上げられる。

そのピースは、案外近くにあるものだった。

「……ちょっとダフ、耳を貸しなさい。」

そうしてお嬢は、ダフにこっそりと耳打ちする。

 

 

 

「……出来るのか?お前。」

「フン、やらなきゃどうせ負けるのよ。アンタも黙って協力しなさい。」

そう言うとお嬢は、正面を向き直す。

そして殺気立つハオリに向かい、さらなる覇気と共に睨み返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……悪いけど、アンタの勝ち逃げなんか許さない!」

「ほう……いいね。やれるもんならやってみな……!」

 

 

 

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