【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第065話】盗んだ大業、裁きの大槍(&ダフ、vsハオリ&ジャック)

 オニシズクモとサダイジャに与えられたタイムリミットは残りわずか。

そしてハオリのラプラスは氷の防壁にて籠城状態。

さらには周囲の気温が低下しているせいで、両者は敏捷性が低下している。

普通に考えれば絶望的な状況だ。

 

 

 

「……ッ!」

だが、それでもお嬢はいまだ諦めない。

安全地帯で決着を待つハオリを、是が非でも引きずり下ろすつもりだ。

……何より、自分の仲間を平気で切り捨てるようなやり方に彼女は納得がいかなかった。

だからこそ、自身の方が正しいと証明しなくてはならない。

合理ではなく、実力で勝利せねばならないのだ。

 

 

 

「行くわよサダイジャッ、『巻【自主規制】ソの構え』からの『がんせきふうじ』ッ!」

「みしゃーーり!」

サダイジャはとぐろを短く縮め、次に正面へ岩石の粒を集めていく。

岩石はゆっくり、ゆっくりと集結して一つの形を形成する。

「シールド展開……とはまた違う形状?」

ジャックですらそのわざは初見のものであった。

『一【自主規制】ソの構え』から出される『がんせきふうじ』なら岩のシールドで間違いない。

が、この流れは前代未聞だ。

一体、お嬢は何を考えているのだろうか。

 

 

 

 そう考えていたのも束の間であった。

「みしゃーーーーーっ!」

サダイジャは縮めた身を一気に引き伸ばし、上空へ跳んでいく。

すると正面に携えていた岩の粒は、次々とその身体に引っ付いていった。

それはまるで、鎧を身に纏うかのよう……であった。

「鎧……!そうか、セキタンザンの……!」

ここに来てジャックとハオリは思い出す。

 

 

 

 そう、お嬢がここで使用したコンボは、レインが使っていた『アーマード・セキタンザン』のオマージュだ。

だが唯の模倣に非ず。

岩石は隙間なく敷き詰められ、正面には鋭いエッジが付いている。

これはサダイジャの機動力を生かした軽量モデル……すなわち、『守りの鎧』ではなく『攻めの鎧』。

自身の強度を上げつつ、相手に素早く特攻するためのものだ。

お嬢は2回戦から準々決勝までの間の試合で、レインの使っていたこの達人芸をなんとかモノにしようと、サダイジャと模索していたのだ。

そしてそれは己の持ち味を活かしつつ、今ここで最高の形に完成した。

恐るべしお嬢。

恐るべしサダイジャ。

 

 

 

「これは……なんという業!」

ジャックはあまりの精彩さに息を呑んだ。

敵ながら思わず見惚れるほどの大技なのは間違いなかったからだ。

 

 

 

 だが、一方のハオリは至極冷静だった。

「落ち着いて、お兄さん。たしかにすごい技だけど、あの鎧……セキタンザンのモノに比べたら圧倒的に強度が足りないよ。」

彼女の言う通り。

いくらお嬢とサダイジャの学習が早いとは言え、流石にその精度は完璧とまではいかない。

加えて鎧の強度そのものはセキタンザン以下……つまり、ラプラスにとっては容易に砕けるハリボテにすぎなかったのだ。

 

 

 

 ……まぁ、それもサダイジャ一匹ならの話だ。

お忘れだろうか、これはマルチバトル。

つまり、複数同士のバトルだ。

 

 

 

「おっし、そこだァ……!オニシズクモ、『ワイドガード』ォ!」

「ずももーーーーっ!」

オニシズクモは上空に水泡を投擲し、3度目の防壁を展開する。

攻撃をしてくる敵も居ないのに、なぜこんな防壁を貼ったのだろうか。

その理由はすぐに分かった。

 

 

 

 なんとサダイジャは、水の防壁に自ら突っ込んでいったのだ。

空高く飛んでいった岩の塊は、大きな水しぶきを上げる。

「なっ………!?」

その行動は、あまりにも不可解だった。

水は本来であれば岩石の強度を下げ、侵食するものに他ならないからだ。

今ここでサダイジャが水面に突撃することは、それすなわち自らのアドバンテージを捨てる事に等しい。

ジャックはついにお嬢のご乱心か、と驚く。

 

 

 

 

 

 だが、ここでハオリの表情が一変した。

「………違う!『してやられた』……!」

彼女は気づいてしまったのだ。

自らの敷いた布石に、足を掬われかけていることに。

 

 

 

 ラプラスの築いた氷の要塞が強固で居られる理由はなにか。

それは周囲の気温が極端に低いからだ。

その気温は正に氷点下……水もが凍る低音の状態だ。

水もが凍る気温………おわかりいただけただろうか。

 

 

 

 サダイジャが飛び込んだのは防壁の『内側』……つまり打ち破ることが可能だ。

そして当然、その際に岩石の鎧は水に濡れる。

濡れた水は氷点下の環境にてどうなるか……そう、凍結する。

そうして完成したものは何か。

 

 

 

 ……氷の鎧だ。

鎧を濡らした水は瞬時に氷と化し、やがて凄まじい硬度と化す。

鋭く尖ったその様子は鎧、と呼ぶには幾らかふさわしくない。

まるで槍……天より来たりて貫かんとする氷の大槍であった。

 

 

 

「へへっ……なんとか凍り切る前くぐれた見てェだなァ……あとは頼んだぜェ!」

「ナイスアシスト!行くわよサダイジャ………!」

舞台の整ったお嬢は、サダイジャに攻撃の指示を送る。

「『ぶんまわす』攻撃ッ!」

「みしゃーーーーーり!」

氷の大槍は空中にてドリルのごとく回転し、甲高い音と共に氷の要塞に激突する。

唯の岩であれば木っ端微塵に砕け散るところだったが、氷同士のぶつかり合いなら話は別だ。

「みしゃ…………!」

サダイジャは力を振り絞り、渾身の回転力を発揮する。

『ほろびのうた』にて近づく死の焦燥感が、彼の意志を更に確固たるものとしていた。

皮肉なものだ。

ハオリを追い詰めていたのは、全て彼女自身が撒いたタネだったのだから。

 

 

 

 やがて小さな音とともに、要塞に僅かなヒビが入る。

そこから先は早かった。

蒼白の氷塊は白い気泡が広がり、僅か数秒の間にバラバラと砕け散ったのであった。

「らる!?」

まさか要塞が破られると思っていなかったラプラスは驚愕する。

「みしゃーーーーーーーーり!」

「らるるっ……!」

直後……眼前に迫りくる大槍の裁きを、その場で受ける羽目になったのだ。

 

 

 

 

 

 サダイジャの渾身の一撃は、重量級のラプラスを大きくノックバックさせた。

物理的な事象のみから伺えてしまうほど、そのダメージは甚大なものであった。

……が、それでもラプラスの体力は多い。

彼女はこれほどの攻撃を受けても尚、まだ倒れないのである。

 

 

 

「チッ……マズいなァ。これ以上は流石に持たねェ……!」

この攻撃の反動は大変大きいものであった。

故に、サダイジャは反動で暫く動けない。

先の攻撃のために水泡を失ったオニシズクモも、やはり裸同然の状態だ。

彼らはまな板の上のなんとやら……ラプラスに反撃の機会を与えたが最後、ピンチに逆戻りなのだ。

『うたかたのアリア』で一掃されてジ・エンドである。

 

 

 

「まだ……まだだよラプラス!『うたかたの………』」

だが、ここに来てハオリは気づいた。

先程サダイジャの攻撃がヒットした場所はどこか……ということに。

「……喉が……潰れてる!?」

そう、サダイジャが攻撃したのはラプラスの喉。

音波攻撃を使用するラプラスにとって、喉は最も大切な生命線だ。

そこを強く攻撃されてしまえば、ラプラスにとっては手詰まりも同然なのである。

 

 

 

「まさか……トレちん、アンタそこまで狙って!?」

「ふん、どうかしら。褒めるならサダイジャを褒めなさい!」

 

 

 

 無抵抗なラプラスを前に、息を整えたサダイジャとオニシズクモが歩み寄る。

残り5秒でダウンすることを除けば、両者ともに万全の状態だ。

「時間がねェ……今すぐ決めるぞォ!」

「言われなくてもッ……!」

お嬢とダフは全くの同時、一斉に最後の指示を送る。

 

 

 

「『とびかかる』だァ!」

「ずももーーーーーっ!」

「『はいよるいちげき』ッ!」

「みしゃーーーーーーり!」

2匹は正に一瞬、一瞬の同時攻撃でラプラスを貫く。

それは丁度、彼らの『ほろびのうた』のタイムリミットと重なる時間であった。

3匹は同時に倒れ伏す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて高台のスエットから、直々に審判が下される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そこまでです。この勝負、オニシズクモとサダイジャ側の勝利とします。」

彼らの鮮烈なマルチバトルは、今ここに決着した。

お嬢は見事、絶対強者・ハオリとジャックのコンビを討ち倒したのだ。

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