【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide 作:伊崎つりざお
不本意ながら迎えた3ラウンド目のバトル。
舞台は一寸先すら霞む吹雪の雪山。
当然、人の生身が耐えきれるような環境では無い。
ましてやそれが虚弱で矮小な少女……スエットであれば尚更だ。
しかし下がっていく体温と反比例し、彼女の冷静さは失われていく。
であればそこで敵対するお嬢がやるべきことは、たったひとつしかあるまい。
最速でスエットを叩き潰し、洞の中に彼女を引き戻すことだ。
その目的に沿う、短期決戦向きのポケモンと言えば……
「行くわよアップリューッ!」
「ふりゅーーーーーッ!」
お嬢の3匹目の人選はアップリュー……火力・機動力が高い特攻要員だ。
反面、耐久力に関してはあまり優れていない。
全体的に尖ったステータスなのである。
つまりお嬢は思い切った勝負に出た、ということだ。
だが悲しいかな。
スエットの繰り出したポケモンは、アップリューにとって最悪の天敵であった。
「……行きなさい、バリコオル。」
「ばるるっ!」
ボールから飛び出してきたのは、口ひげとハットを携えた老紳士のようなポケモン……バリコオルだ。
お腹に書かれた顔がなんとも不気味である。
しかし彼の最大の特徴は身体そのものではない。
手に持っている氷の杖だ。
「あ……あれって……!?」
「まね……!?」
彼女らは驚く。
まぁ無理もないだろう。
その杖の形状は、お嬢にとって……否、マネネも含めて直近で見覚えのあるものであった。
エンビ戦の終盤で起こった出来事を覚えているだろうか。
マネネが一時的に、謎の力に目覚めたあのことを。
その時、彼の手に握られていたもの……それこそがあのバリコオルが持っている杖なのだ。
ーーーーーさて、ここで閑話休題。
ちょっとしたヒントを提示しよう。
バリコオルとマネネの関係性……ポケモンに詳しい読者諸兄はご存知だろうか。
……答えは直系の『進化系』だ。
マネネは進化するとバリコオルとなる。
では、マネネの腕にバリコオルの杖が握られていたことは全くの無関係とは言えまい。
また、バリコオルはマネネから進化すると『こおり』タイプを獲得する。
こうなれば『凍雪の秘鍵』とマネネが呼ばれる要員に、バリコオルが一切関係が無いとはとても判断できない。
……話が長くなりすぎた。
具体的な解答に関してはまた後ほど、誰かの口から語られるだろう。
ーーーーー視点をフィールドに戻そう。
対面しているのはアップリューとバリコオル。
くさ・ドラゴンに対してこおりタイプ……言うまでもなく、お嬢側が大きく不利である。
当然だが攻撃を喰らえば一貫の終わり。
いつものことだが、一発喰らえば即死のデスマッチだ。
だが相性の不利など今更である。
それ以外のアドを見出し、突破するしかあるまい。
お嬢は唾を飲み、攻防の選択を熟考する。
そんな中、再びスエットの様子が豹変する。
「……ふぉっふぉっふぉ!お嬢さん、何やら表情が硬いのぉ。」
「ッ……またッ!?」
次は老父のようなである。
声は相変わらず彼女のものだが、喋り方がまるで違う。
「バリコオルと老父、ドータクンとオタク、エルレイドと格闘家……そうか、これって!」
ここでお嬢は、スエットの豹変の法則に気づく。
目の前の並びがわかりやすかったからだろう。
……しかしその答えを出すべきタイミングは今ではなかった。
「ふぉっふぉっ、油断大敵……じゃぞ。」
スエットがそう言い終えるや否や、バリコオルに動きがあった。
杖が振り上げられたその瞬間……一縷の光線がアップリューを目掛けて飛んでくる。
先攻の『れいとうビーム』だ。
「ふりゅっ……!?」
アップリューはすぐさま身を真横へ翻す。
光線は彼女の右翼を掠めて飛んでいき、そのまま空の彼方へと消えていった。
「っぶな……!」
お嬢は正気に戻り、再度フィールドへ目線を戻す。
そうだ、今は戦いの最中だ。
他のことを考える余裕なんて無い。
「速いのぉ、速いのぉ。だがここは吹雪の中……有利なのは此方側じゃ。」
「ばるるるっ!」
バリコオルの杖は更に激しく揺すられる。
更に3筋、氷点下の光線が高速で駆け抜けていく。
初撃はまぐれで避けられたが、流石にこの視界と気流の悪さで何度も攻撃は避けられない。
だがここは冷静なお嬢。
こういう時の対処は既に知っている。
「行くわよアップリュー!『りゅうのまい』ッ!」
「ふりゅーーー!」
アップリューはS字の起動を描き、縦横無尽に飛び回る。
さながら龍が空を駆け上るかのように壮大な舞だ。
そして遅れるように、『れいとうビーム』はアップリューの居た場所をすり抜けていく。
まるで光線の包囲網を掻い潜るような、華麗な演舞であった。
しかしこの『りゅうのまい』の目的はただの回避のみに非ず。
「ほぉ、スピードを上げよったか。」
「そうよ!これで悪天候なんてへっちゃらなんだから!」
お嬢は息巻く。
彼女は『バフを盛る』という動作の重要性を、既に理解していた。
兎も角、これにてアップリューはバリコオルと対等な戦場に立った。
悪天候という足枷を、取り外すことに成功したのだ。
だが、これだけでアップリューの猛攻は止まらない。
『りゅうのまい』での加速を活かし、さらなる攻勢に出る。
「そこッ、続けて『げきりん』ッ!」
「ふりゅーーーーーーーーッ!」
身を丸め、アップリューは彗星の如き勢いでバリコオルまで突撃していく。
その軌道には、空気との摩擦で発生した火花が僅かに走る。
「……バリコオル、『リフレクター』じゃ。」
「ばるるっ!」
バリコオルは杖を横に構え、障壁を展開する。
これで相手の攻撃を軽減させる算段だ。
……が、覚えているだろうか。
『げきりん』の効果は、「あらゆる防御障壁を無視する」というものだ。
故に即席の壁など、アップリューの前には障子に等しい脆さなのである。
全力のタックルにより、『リフレクター』は粉々に砕け散った。
否、最早「超熱量で溶け落ちた」のほうが正しい表現だろう。
「行っけぇええええええええええ!」
「ふりゅーーーーーーーッ!」
そして『げきりん』の一撃が、バリコオルの腹部中央を貫く。
音速の壁が破れ、吹雪の中に凄まじい衝撃が走る。
「ばるッ……!」
「バリコオルッ……!」
あのデスバーンすらも葬り去った超火力の攻撃だ。
しかも『りゅうのまい』で加速している……ダメージは尋常ではないだろう。
お嬢の策略通り、短期決戦で勝負は決着……
……したはずであった。
しかし目の前の現実はそうはなっていない。
「なっ……なんで!?」
「ふりゅ……!?」
バリコオルは、なんと片膝で立っていたのだ。
大ダメージを受けて全身がボロボロに焦げている……が、それでも致命傷には至っていなかった。
「ば……ばるッ……!」
「ふぉふぉふぉ、手加減のない攻撃じゃった……が、残念。」
スエットはニヤリと笑う。
彼女の表情から察するに、どうにもこれはただの幸運ではないようだ。
そしてお嬢は、バリコオルの異変に気づく。
彼の身体が僅かに白い光を発しているのだ。
更には光った場所から……
「き、傷が……再生してるッ!?」
「おやおや、流石にバレたかのぉ。」
そう、バリコオルはパッシブで体力を回復し続けていたのだ。
これは彼のわざ『なまける』によるものだ。
本来であればパッシブの使用は不可能だが、出力を抑えることで常時使用が可能となる。
「……なるほど、だから『げきりん』食らってもピンピンしてるワケね。いくら防御を無視できようと、体力そのものを増加させ続ければ……攻撃を受けきれるッ!」
お嬢は唾を飲み、敵の戦術に戦慄する。
彼女が導き出した理論は、おおよそ正解であった。
「さて、早めに落とさないと不味いのぉ……バリコオル、『れいとうビーム』じゃ。」
「ばるるるッ!」
バリコオルの杖が大きく振られ、再度光線が飛んでくる。
……しかし今度は1本しかない上に、速度も偉く遅い。
これであればアップリューの回避も容易いだろう。
「避けなさいッ!」
「ふりゅッ!」
アップリューはすかさず滞空高度を上げ、『れいとうビーム』を回避する。
造作もない。
……その直後であった。
「……甘いッ!」
「ばるるッ!」
バリコオルの杖が30度ほど手前へ傾く。
それはまるで何かを招き寄せる動作であった。
そう、『招き寄せる』動作……
「……あ、アップリュー!後ろッ!」
「ふりゅっ!?」
お嬢の言葉の直後……なんと彼女の背後から、再度『れいとうビーム』が襲ってきたのだ。
アップリューは慌てて『げきりん』を起動し、勢いに任せて光線を掻い潜る。
しかしそれでも、『れいとうビーム』の光線はしつこくアップリューを付け狙う。
信じがたい事に、『れいとうビーム』はまるで操り糸のような挙動を見せているのだ。
普通であれば絶対にありえない。
光線系の攻撃がここまで器用な曲線を描くことは。
まるで何者かの意志がはたらいて、光線を直接操っているかのようだ。
それこそ超能力のような何かが……
「なるほど……『サイコキネシス』ッ!」
そう、これこそが模範解答だ。
敢えて『れいとうビーム』を遅めのスピードで発射し、後から『サイコキネシス』で軌道修正を加える……エスパータイプならではの器用な戦い方だったのである。
「御名答。だが無意味じゃ。タネが割れたとて……貴様はいずれ追いつかれるッ!」
スエットの言葉は正しかった。
よく見ると、アップリューの目線が定まっていない。
それにどうも飛翔の軌道が、フラフラとして覚束なくなっている。
その原因なら、彼女のトレーナーであるお嬢が一番わかっていた。
「くっ……『げきりん』の反動……!」
まさにその通り。
『げきりん』は超火力・超速度を叩き出す凄まじいわざだが、当然その高エネルギーには代償が伴う。
それはアップリューの理性だ。
『げきりん』を使えば使うたび、アップリューは冷静さを欠いていくのだ。
「そこ右ッ……違うわ、左じゃなくて右よッ!」
「ふりゅ……!」
徐々に移動がふらつき始め、視界がぼやけ、正確な挙動を取れなくなっていく。
「ふぉふぉふぉ、スピードは落ちていないが既に軌道は滅茶苦茶……『アレ』の完成も時間の問題かのぉ。」
「あ……アレ!?」
「お主、気づいとらんのか?まぁこの吹雪の中じゃ仕方ないかもしれぬが……」
スエットはほくそ笑むが、お嬢はアップリューに目線を奪われていてそれどころではない。
兎に角、喰らえば即死の『れいとうビーム』の回避で必死であった。
……が、それが命取りであった。
「ふぉふぉ……完成じゃ。」
「ッ………!?あ、あれって……!?」
お嬢は目を見開き、眼前の異形に慄く。
そこにあったのはなんと、氷の金網で編み上げられた天然の鳥籠であった。
幾重にも曲線を描いた『れいとうビーム』は空気中の水滴を凍らせ、巨大な鳥籠を作り上げていたのである。
アップリューは攻撃から逃れていたのではない……正確なコントロールが取れないうちに、確実に罠へといざなわれていたのだ。
いくらアップリューの身体が小さいとはいえ、理性のない今の状態では脱出は困難である。
チェックメイトだ。
「終わりじゃ……砕け散れ、『サイコキネシス』ッ!」
「ばるるるるッ!」
バリコオルの杖が大きく傾く。
次の瞬間……氷の鳥籠は砕け、破片が一斉にアップリュー目掛けて襲ってくる。
四方八方から襲ってくる氷の針は、最早逃れる術はない。
「くっ……!」
さすがのお嬢もここまでか。
しかしヤケだ。
最後の最後で、お嬢は足掻くことを選ぶ。
「ええいダメ元……アップリュー、『Gのちから』ッ!」
「無駄じゃ無駄じゃ!今のコイツはまともな指示を……」
「ふ……ふりゅ!」
アップリューは瞬間的に翼を畳む。
そして真下……美しいほど垂直に地面へと落下していった。
氷の礫が丁度爆散した瞬間であったため、アップリューの安否は分かりづらい……が、間一髪で全弾直撃を免れたようだ。
地面の雪に埋もれる形で、攻撃を回避したのである。
「そんな……何故そこまで上手くいく!?」
『Gのちから』は落下に優れた攻撃だ。
アップリューなら目を瞑ってでも撃てる。
……そして何より、真下は鳥籠がない。
つまりお嬢は、理性の低下したアップリューに最も単純な指示を出すことで、結果的に最善の択を導き出したのだ。
「ふぉ……だがそれきりだ!アップリューの埋もれた場所はわかっとる!バリコオル、『れいとうビーム』ッ!」
「ばるるるッ!」
バリコオルの杖から3本、氷点下の光線がアップリューの居る地面へと発射される。
今度は本気の攻撃……最速・最大火力の猛攻だ。
喰らえば耐えきれるわけがない。
しかし手応えがない。
仮に移動していればすぐに分かるし、そもそも寒さに弱いアップリューは雪の中を動けない。
故に不可避……普通であれば、この『れいとうビーム』で彼女は既にダウンしている。
「……のぉトレンチ。もう勝負は着いたと思うのじゃ。アップリューをボールに戻してやっても……」
「いいえ、まだよッ……!」
お嬢はスエットを睨みつける。
彼女の目はまだ諦めていない……否、まだ勝利への執念さえ宿っていた。
「ふぉふぉふぉ……じゃがそんな体勢でどうなるというんじゃ?」
「こうなるの………よッ!」
お嬢が息巻いた……直後。
アップリューの居た地面の雪が一斉に溶け落ちる。
それが何を指し示すか……スエットとバリコオルが気づくには少し時間がかかった。
「ふりゅーーーーーーーッ!」
『げきりん』の一撃が一縷の輝きとともに、バリコオルを再び貫いたのである。
まさに文字通り、目にも留まらぬ速さであった。
「ばるるッ!?」
「なっ………嘘じゃ!あやつは理性が飛んでいたはず……!」
狼狽するスエットに、お嬢は逆にニヤリと笑い返す。
「いつまでもピヨってるワケないでしょ。雪の中に埋もれている間、『からにこもる』で消耗した理性を回復していたのよ……!」
そう、これはお嬢とアップリューが生み出した、消耗対策の呼吸法だ。
『からにこもる』で息を整え、もしもの時の予防策を練り上げていたのである。
幸いにも雪の障壁が後押しし、この戦術は上手く行った。
そして不意打ちの『げきりん』で、アップリューはバリコオルに反撃の一手を加えたのである。
「ば……ばる……ッ!」
「くっ……まだ倒れない……!」
流石の回復力だ。
ここまでお嬢が策を講じても、なおバリコオルは膝を折らないのである。
杖にしがみつき、生命線の『なまける』によって戦線に復帰してくる。
互いが互いに、回復と攻撃の進退を繰り返しているのだ。
状況の硬直に耐えかねたスエットは、右手を高く掲げて次の指示の準備に移行する。
「ふぉふぉ……どうやら最終手段に出るしか無いようじゃな。」
「さ、最終手段!?」
そして彼女は腕を振り下ろす。
「ばるるるるるるッ!」
バリコオルは杖を目の前に掲げると、それを中央で支えて回転させる。
その挙動は見覚えがあった。
「あれって……マネネの……!?」
「そうじゃ。マネネに出来たのだから、此奴に出来ぬわけがあるまい!あの怪鳥を召喚する……!」
「ッ……!?」
なんという無茶……しかしやられてしまえばひとたまりもない。
あの力の凄まじさはお嬢が身を持って理解している。
SDの力を持つエンビのカラカラとさえ互角に戦える力……アップリューでは消し炭になること間違いなしだ。
「ばるるるるッ!」
やがてバリコオルの周囲には冷気が集まり、その冷気は彼のサイコパワーで具体的な形を形成していく。
その間わずか10秒足らず……バリコオルの背後には見るも巨大な怪鳥の首が形成され始めたのだ。
「早く止めないと……アップリュー、『げきりん』ッ!」
「ふりゅーーーーーーッ!」
お嬢はすぐに指示を出す。
……が、残念。
既に怪鳥は完成し、攻撃の構えに突入していた。
「もう遅いッ、最大火力の『れいとうビーム』じゃッ!」
「ばるるるるるッ!」
怪鳥が首をもたげ、超エネルギーの冷気を装填する。
その力はあまりに巨大で広大だ。
周囲一体が凍てついてしまうことは間違いないだろう……当然、アップリューが喰らえばダウンは必至だ。
スエットの言う通り、まさに全てがもう遅かった。
………しかし残念。
バリコオルが念を送った直後……怪鳥は固まって動かなくなる。
「ばるっ!?」
「な、何をしておるバリコオル!?早く攻撃を……」
その言葉とほぼ同時であった。
怪鳥の頭に亀裂が入る。
やがてそれは深く大きく広がり……
最後は粉々に砕け散った。
「なっ………!?」
そして前方へ倒れ込むように、怪鳥はボロボロと崩れていく。
マネネのときみたいに綺麗に消えるわけではなく、実体を持って倒壊してきたのである。
バリコオルは不幸にも、怪鳥の圧に押しつぶされた。
「ば……バリコオルッ!?」
「ば………ばる………」
流石の彼も、このアクシデントで体力が尽きてしまったのだろう。
元々『げきりん』でかなりのダメージを受けていたのだ。
しかしまさか自刃で倒れ伏すなど、夢にも思うまい。
……だがこれは当然の結果であった。
元々マネネの怪鳥召喚自体、偶然発生した事象なのだ。
しかも彼は『凍雪の秘鍵』と呼ばれる特殊な個体である。
それを並のポケモンであるバリコオルが、しかも付け焼き刃で模倣すれば失敗は必然なのだ。
兎に角、3戦目はお嬢とアップリューの勝利で幕を閉じた。
「くっ……ワシにだって……で……きる……」
「す、スエット!」
スエットがその場で倒れ込む。
お嬢が駆け寄って抱えるが……顔色が酷いことになっている。
「こんな寒さで無茶するからよ……ああもうッ!」
お嬢はすぐにスエットを背負うと、元いた木の洞まで戻っていった。
ーーーーー「ッ!?」
スエットは再び、同じ木の洞の中で目を覚ます。
彼女の目の前に居たのは、物凄い形相で睨みつけてくるお嬢であった。
「………目は覚めて?」
「………」
スエットは目線をそらす。
「一体何だってのよ。何がそこまでアンタを駆り立てたワケ?」
お嬢には理解が出来なかった。
だからこそ知りたかった。
彼女のこの行動……異常とも言える行動の理由が。
「……あなたに話すことじゃない。」
「ッ……あのねぇ……!」
「……でも……」
スエットがお嬢の言葉を遮る。
「……2度助けられておいて、何もしないわけにも行かないわね。」
そう言うとスエットは寝袋を少しだけ脱ぎ、お嬢の方へと顔を向けた。
「……雪が止むまで話してあげる。私のこと、バベル教団のこと。」