【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第082話】突き破る殻、閉じこもる英雄(vs???)

「……行きましょう、フリーザー。アイツは、私達が倒すッ……!」

「ろるるッ!」

スエットは前を向く。

その表情に、最早迷いはない。

自分の不始末に、自分で落とし前をつけるため。

……そして何より、自分の『才能』を認めてくれたお嬢に恥じぬため。

彼女はここで戦うのだ。

 

 

 

 

 

『オレカラ………デテイケェエエエエエエエッ!』

レイスポスは怒りに身を任せ、『アストラルビット』を装填する。

そしてエネルギー弾を四方八方に放ち、満身創痍のフリーザーへとどめを刺そうとしたのだ。

速度も数も、先より増えている。

 

 

 

「……落ち着け私……こういう時は……!」

スエットは呼吸を挟み、冷静になった上で指示を出す。

「まずは『ひかりのかべ』を2枚展開……側面の攻撃を防いで!」

「ろるるるッ!」

フリーザーは折りたたんだ翼を更にきつく締める。

すると彼の両脇には、虹色に輝く障壁が展開された。

枚数を増やしたことで、防御範囲が格段に広がったのである。

スエットの目論見通り、側面からカーブを描いて飛んできたものは障壁の前に霧散した。

 

 

 

 だが……

「ま、まだ正面からの攻撃が残っているわよ!」

お嬢の言う通り。

真正面は無防備なので、エネルギー弾も弾くことは出来ないのだ。

このままでは頭部に弾を喰らってしまうだろう。

 

 

 

 しかしその対処法を、スエットは見定めていた。

「そこ!正面に『いてつくしせん』ッ!」

「ろるるるーーーーーーッ!」

フリーザーの眼が妖しく光る。

瞬間、彼の眼からは紫の怪光線が放たれた。

 

 

 

 怪光線はレイスポスの放った『アストラルビット』に直撃する。

その直後、フリーザーの正面に迫っていたエネルギー弾はというと……

「と、止まったッ……!?」

そう、空中でピタリと静止してしまったのだ。

 

 

 

「続けてッ、『ぼうふう』ッ!」

「ろるるるるーーーーーッ!」

フリーザーがその場で大きく羽ばたく。

すると固まっていたエネルギー弾が、一斉に前方へ向かう気流へ乗って飛んでいった。

前方、つまりその先に居るのは……

 

 

 

『ウッ……!』

レイスポス本体だ。

まさか彼も、自分の攻撃を逆に撃ち返されるなど夢にも思わなかっただろう。

「効いてるッ!」

「……!よくやったわフリーザー!」

スエットは僅かに、本当に僅かにだが……

 

 

 

 笑った。

笑えたのだ。

自分の意思で初めて戦うこの時間に、確かな喜びを感じていた。

 

 

 

 

 

『チィッ……ジャマヲ……スルナァアアアアアアアアアアアアアッ!』

攻撃を受けたレイスポスは、更に怒り狂う。

そして全速力で走り出し、フリーザーのもとまで突っ込んできたのである。

だが、ただの疾走ではない。

 

 

 

「身体が……ブレている……!?」

レイスポスの身体が消えたり現れたりするせいで、上手く軌道が見切れないのだ。

それもそうだろう。

彼は自らの身を異次元と行き来させながら走行するわざ『ゴーストダイブ』を使っているのだから……!

 

 

 

 コース取りを的確にブラしつつ、フリーザーの元へと接近してくる。

その距離、わずかに数メートル……接触まで1秒未満だ。

「危なッ………」

だがフリーザーとスエットは至って冷静であった。

彼女らは同時に瞬いた後、言葉を交わす。

 

 

 

「………フリーザー、避けて!」

「ろるるるッ!」

フリーザーは右方向へ僅かに……本当に僅かに身を移動させる。

だが、その移動はレイスポスの攻撃を避けるには十分であった。

 

 

 

 レイスポスは、フリーザーが元いた場所を駆け抜けていったのだ。

そう、つまりフリーザーの回避は成功したのである。

あの超速・異次元のダッシュを、まるで全て見切っていたかのように避けきったのだ。

 

 

 

『クソッ……ナゼダッ……!?』

そして差し返し……フリーザーは無駄なく首を傾け『いてつくしせん』をお見舞いする。

足首に光線を喰らったレイスポスは、筋硬直により途端に動きが鈍くなる。

『ッ……ウゴケナイッ……!』

脚が動かなくては、レイスポスは殆どの攻撃が出せない。

これにて相手の大幅な無力化に成功したのである。

 

 

 

 

 

 一連の行動には、一切の無駄がなかった。

それはなぜか。

「……『こころのめ』のおかげね。よくやったわフリーザー。」

「ろるるっ!」

『こころのめ』……数十秒間、凄まじい集中で動体視力を底上げし、相手の動きを完全に把握するわざだ。

 

 

 

 しかしそう何度も使用できる攻撃ではないし、ポケモンが得た情報はトレーナーとは共有できない。

結局、このわざもトレーナーの使い方と勘次第……ということだ。

つまり必然的に、スエットは図らずも超絶技巧を見せつけた事となる。

実力のあるトレーナーにしか出来ない技術を発揮し、レイスポスを追い詰めたのだ。

 

 

 

「す、凄いじゃない……!アンタ、やっぱり………!」

「………私……私がやったの?」

「そうよ、アンタとフリーザーがやったのよ!」

お嬢はスエットの背中を軽く叩く。

彼女は今、自らのレッテルを剥がしたのだ。

スエット自身が、戦ったのである。

彼女の成長を……否、「成長の結果」をお嬢は喜んだ。

 

 

 

 

 

『クソッ……クソォオオオオオオオオッ!』

身動きの取れなくなったレイスポスは、怒り狂った声で叫ぶ。

表情は全く無いが、その狂気・感情はひしひしとお嬢らに伝わってきたのであった。

「………。」

お嬢は倒れ伏したマネネを担ぎ上げると、スエットの方へと手渡した。

「……と、トレンチ?」

「ちょっと待ってて。」

すると彼女は、神妙な面持ちで、レイスポスの方へと歩み寄っていった。

 

 

 

「……!トレンチ、今ソイツに近づくのは……!」

「大丈夫よ。今はアンタのフリーザーが睨みつけている。しばらく彼は身動きは取れないわ。」

少しだけ微笑み、お嬢は鼻息を荒げるレイスポスの前へと立ちはだかる。

その身振りに迷いの色はない。

 

 

 

『クソッ……クルナ、クルナッ…………!』

「………。」

そして必死の抵抗を見せるレイスポスの頬に、お嬢は優しく触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、ジャック。」

「………!!」

レイスポスは驚いた様子を見せる。

まるで不意を突かれたかのように、顔色を変えた。

 

 

 

『ジャック……ダト……!?』

「……声が同じだもの。今まで見てきた昔のアナタも、今のアナタも……そして夢で話したアナタも。」

『……!!』

お嬢には分かっていた。

目の前のレイスポスも、夢で会った『彼』も……全て『ジャック』と呼ぶに相応しい存在であることに。

 

 

 

「……無理に起こしてごめんなさい。アナタの事も全部覗いてしまったわ。」

『………カエレ……カエレッ!』

レイスポスは目の前のお嬢を振り払おうと首を振る。

……が、その勢いはどことなく弱々しい。

彼女の存在が近づいたことで、僅かに理性を取り戻しつつあるのだろうか。

呼吸を荒げつつも、決してお嬢を傷つけようと言う素振りはない。

可動しないのは脚だけなので、攻撃しようと思えば頭突くことは容易なはずなのに……だ。

 

 

 

「そうね、アタシも帰りたい。だけどアタシたちは、最後までアナタを知らないと帰れない。」

『……ダメダ………ダメダ、ダメダッ!』

「……お願い。この続きを見せて。」

『ダメダッ、ダメダ!ダメダッ!ココカラサキハ………!』

お嬢はレイスポスに何度も語りかける。

しかし彼は決して首を縦に振ろうとはしない。

 

 

 

 次第にレイスポスの額に、汗のようなものが浮かび上がる。

心做しか、怯えているようにすら感じ取れる。

 

 

 

 その時点で、お嬢らは正解にたどり着いていた。

レイスポス……否、ジャックが何故スエットを襲うのか。

何故こんな空間に足止めをしているのか。

 

 

 

 ……見られたくないのだ。

此処から先、綴られるのは過ちを犯した者の物語。

自身の恥ずべき、汚れた記憶なのだ。

 

 

 

 しかし……だからこそ。

だからこそお嬢は、その目で見なくてはいけなかった。

ジャックのその先を。

『彼』の辿った道を。

 

 

 

「お願いジャック……アナタは辛かったと思う……でも……」

『ダマレダマレッ……オマエニ……ナニガッ……!』

「分からないわよ!……だから……お願い……!」

彼女は懇願するが、ジャックは一向に譲らない。

お嬢の声に悲痛な震えが混ざろうとも、彼は聞こえないふりを貫き続けるのだ。

 

 

 

 やがて、レイスポスの前脚がわずかに動き出した。

ハッとしたお嬢は、後ろを振り返る。

「ろ……るるっ………!」

「……マズい。フリーザーのサイコパワーが底を尽きかけてる……!」

いくら伝説のポケモンでも、いつまでも無尽蔵に拘束を出来るわけではない。

レイスポスを押さえつけるのも、いよいよ限界に達し始めていたのだ。

 

 

 

 そして遂に、フリーザーの意識は途切れてしまう。

直後、レイスポスが動き出す。

『ココカラ……デテイケェエエエエエエエエッ!』

怒りに身を任せ、ついに理性の弾けた彼は苦し紛れに暴れだす。

 

 

 

 本当に制御が効いていないのだろう。

その証拠に……

「痛ッ……!」

お嬢がレイスポスの頭突きで、真横に弾き飛ばされたのである。

先程までお嬢だけは攻撃しないようにと、必死で堪えていたのに……だ。

「と、トレンチ……!」

そしてレイスポスが向かった先は、この世界の元凶……

 

 

 

 

 

 

 

 スエットだ。

『オレカラ………デテイケェエエエエエエエエエエエエエエエエッ!』

「ッ………!」

フリーザーは防御に回ろうとする……が、先程からサイコパワーを酷使しすぎたせいで思うように動かない。

絶体絶命だ。

スエットは本能的に、瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………?」

スエットは突如、全身に寒気を感じた。

加えて、レイスポスが襲ってこないのだ。

恐る恐る、彼女は目を開く。

 

 

 

 すると目の前には、なんと足元を氷漬けにされたレイスポスがいたのであった。

物理的に、全身を氷で拘束されていたのだ。

『クソッ……クソッ!ナンダ………ナンナンダッ!』

レイスポスは暴れまわるが、氷塊はびくともしない。

 

 

 

 

 

 やがて遠くから、重々しい足音が聞こえてくる。

足音の主は、低く響く声を発した。

『……やれやれ。そんな姿になって突如暴れだしたと思ったら……どこまで無様を晒すのです?この臆病者。』

 

 

 

 

 

 

 

 スエットとお嬢はその存在を目の当たりにする。

そこに居たのは、レイスポスとそっくりの白いポケモンであった。

 

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