【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第009話】見出す隙間、築かれる城壁(vsステビア)

「行くわよマネネ!こっから逆転してやるんだから!」

「まーーねねっ!」

フィールドに飛び出たマネネは腰に手を当て、標的のペロリームを指差し宣戦布告をする。

逆境でもまさに自信満々、といった感じである。

「よし……ペロリーム。全力で相手をしたまえ。」

「わむむっ!」

 

 

 

 だがその一方で、真後ろのジャックは別のことを案じていた。

そう、マネネが『ものまね』でコピーできるわざについてだ。

相手のペロリームの技の中で判明しているのは『いとをはく』と『じゃれつく』。

前者は純粋な攻撃技では無いゆえ、使用者の熟練度が大きく依存する。

あの歴戦のペロリームならまだしも、こちらのマネネが糸を巧みに扱えるはずがない。

後者の『じゃれつく』はたしかにフェアリータイプのわざであり、「ただただ殴りつけるだけ」という仕様上、ポケモン本人の熟練度にもそこまで依存しない。

しかし肝心なパワーがマネネ自身にはそこまで存在しないというのがネックになってくる。

……ジャックは最悪の可能性に気づく。

まさかステビアはマネネのコピーのリスクを見越して自らの手札を伏せているのではないか、と。

 

 

 

「……どうせキミは先手は取らないだろう?ペロリーム、先に仕掛けろ。『じゃれつく』だ。」

「わむむむっ!」

ペロリームはマネネを目掛けて一直線に駆け寄り、大きくジャンプをして飛びかかる。

拳を振り上げ、正面からのストレートパンチを仕掛けてきた。

「正面からの攻撃ね!マネネ、横に避けなさいッ!」

「まねねっ!」

お嬢はジャックに教わった基礎知識を活かし、マネネに回避の指示を出す。

飛びかかった場所にマネネがいなくなったため、ペロリームはその場で肩透かしを喰らう。

 

 

 

「よし、横がガラ空きよ!『サイケこうせん』!」

「まねねーーーッ!」

着地を決めた直後、マネネは虹色のビームを発する。

『じゃれつく』を繰り出した直後のペロリームにとって、これを回避することは容易ではない。

大きな音と共にペロリームはダメージを食らってしまう。

「わむむっ!?」

「ほう……素直なカウンターだ。とはいえ中々やるじゃないか。」

 

 

 

 ダメージは入ったものの、『サイケこうせん』はあくまでサブのわざだ。

ダメージソースとしての決定打にはなりえない。

攻撃を受けたペロリームはすぐに体勢を立て直し、次のわざの構えにはいる。

「まずは動きを封じてしまおう。ペロリーム、『いとをはく』だ。」

「わむむーーーっ!」

ペロリームは粘り気を纏った糸を吐き出す。

糸はまたたく間に何本にも増えてゆき、マネネを捉えようと四方八方から迫ってくる。

まるで糸の1本1本に意思が宿っているかの如き正確な挙動だ。

 

 

 

「ま……まねねっ!?」

さすがの攻撃の激しさに、マネネも動揺をしてしまう。

だがトレンチ嬢は決して焦らない。

一呼吸を挟んだ後に、マネネに指示を飛ばす。

「……マネネ!まずは右上前方、そのあと着地して左にダッシュ!」

「ま!?」

お嬢は具体的な指示を飛ばす。

マネネはその指示に一瞬驚くも、すぐにお嬢の言うとおりに行動する。

右上前方にジャンプ、そして着地と同時に左横へ飛び去る。

その軌道に遅れるように糸が着弾していくが、決してマネネの身体をかすめることはない。

 

 

 

「左ッ!……上ッ!……そこで止まって!」

「まねッ……まねッ……まねねっ!」

ペロリームは追加の糸を何本も何本も増やしてゆく。

しかしそれをさらに先読みするかのように、お嬢とマネネはそれを正確に避けているのだ。

「わむむっ……!?」

「……なんだこの違和感……あの子に先が読まれている!?」

 

 

 

 その正確過ぎる回避術に、ステビアもジャックも驚かずには居られない。

まるで未来が見えているかのような……そうでも言わないと説明がつかないほどの現象であった。

トレーナーとして初心者のお嬢にここまでの事ができるわけがない。

誰もが目を疑う。

 

 

 

 そして誰もがマネネの動きに気を取られているうちに、盤面は既に終局を迎えようとしていた。

気づくとマネネはペロリームの右横2m以内を陣取っていたのだ。

「ふふふっ、そこよマネネ!『サイケこうせん』!」

「……しまっ!」

「まーーねねーーーーーっ!」

至近距離から放たれる光線……当然だがこの攻撃は不可避だ。

ペロリームの至近距離……マネネの虹色の光線がまたたく間に対象を狙撃する。

流石にペロリームとは言え、これだけの頻度で攻撃を耐えることは難しいだろう。

 

 

 

 だが此処はジムリーダーのポケモン。

タダでは折れないのである。

「わ……わむむっ!!」

ペロリームは傷だらけの身体を起こすと、再びその場に立ち上がったのであった。

「なっ……!?」

「よし、それでこそ私のポケモンだ。さぁ、反撃の『じゃれつく』だ!」

ステビアの指示の直後、ペロリームはマネネの方を向き再び殴りかかろうとしてくる。

「わ……わむむッ!」

しかも先程よりも殺意を帯びた目でこちらに迫ってきている。

「は……速いッ!」

 

 

 

 先程も述べたとおり、わざを出した直後のポケモンが攻撃をすぐに回避することは難しい。

ましてやそれが猛スピードで迫ってくるペロリームであればなおさらだ。

「まっ……まねっ!?」

「わむーーーーっ!」

時既に遅し。

マネネは既にペロリームの間合いである。

これにて勝負は決着……

 

 

 

 ……誰もがそう思った。

しかしペロリームの攻撃はマネネには届かない。

直後、怒った出来事に誰もが驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

「わむっ!!わむむむっ!!」

なんと、ペロリームは自分自身を殴りつけ始めたのだ。

「なっ……!?」

「お、おいペロリーム!何をしている!」

ペロリームは殺意に満ちた目で自分の顔を殴りつけ続ける。

その行動はまさに異常そのものであった。

そしてその異変の原因にいち早く気づいたのはジャックであった。

「……そうか!『こんらん』状態!」

そう、ペロリームは『サイケこうせん』を至近距離で喰らってしまった影響でこんらん状態を誘発されてしまったのだ。

ペロリームは現在半狂乱……もはや自身と敵の区別すらついていなのだ。

 

 

 

 そして最後、ペロリームは自身の口元にプラズマを帯びた光弾を集め始める。

そう、でんきタイプのわざ『10まんボルト』を発射しようとしているのだ。

「わっ……わむむっ……!」

「お、おい待てそれは……!」

ステビアは『10まんボルト』の発動を必死に止めようとする。

しかしその隙をお嬢は見逃さなかった。

 

 

 

「……!そこよマネネ!『ものまね』で『10まんボルト』をコピーして!」

「まーねねーーーっ!」

マネネはペロリームと同じく両手に電気の光弾を生成していく。

 

 

 

 そう、『10まんボルト』はペロリームの中でも大技の一つ。

先程からこれを見せていなかったのは、マネネにコピーされることを防ぐためだったのだ。

しかし『こんらん』に陥ったペロリームにはこの指示を守るほどの理性は残っていなかった。

偶然とは言え、垂らされた救いの手……お嬢とマネネはこれを逃すことなく捕まえたのだ。

 

 

 

 やがてマネネは大きくなった光弾をペロリームの口に向かって一直線に発射する。

口内はまさに最大の弱点……いかなる攻撃であれ喰らってしまえばひとたまりもない。

「わ……わむーーーーーっ!」

「ぺ、ペロリームッ!」

この攻撃はペロリームにとっての致命傷となった。

体力が尽きたペロリームはその場に倒れ、審判によって戦闘不能の判定を受けた。

 

 

 

「よっしゃ!勝った勝った!!!やったわよマネネ!」

「まーーねね!」

お嬢にとっては初の白星、初のノックダウンである。

彼女はマネネとともに喜びはしゃぎまわる。

それを横から見ていたジャックは勝利の味を知ったお嬢のことを喜びつつ、第一の強敵の突破に安堵していた。

 

 

 

「……なるほどな。『こんらん』を引くラッキーがあったとは言え、ペロリームを倒すとはやるじゃないか。私はキミを侮っていたようだ。」

そしてペロリームをボールをしまうと、すぐに次のボールを取り出す。

「行きたまえ、マホイップ!」

中から飛び出たのは森でトレンチ嬢一向を助けたポケモン、マホイップであった。

「みみぃーーーっ!」

可愛らしい声を上げ、小さな体躯のそのポケモンはフィールドに降り立つ。

 

 

 

 瞬間、ジャックは背筋に寒気を覚えた。

しかし残念、その悪い予感は的中し、逃れることは出来ない。

お嬢はマホイップを指差すと、大声で禁句を叫んでしまう。

「あ、ジャック!見てよホラ、やっぱりあの髪型、完全にう○こよ!」

その言葉が流れた瞬間、フィールドは完全に凍りつく。

ジャックはうなだれ、全てが終わったと絶望し、脳内で謝罪文の推敲を始めていた。

 

これにて我らが財閥の信用は一気にガタ落ちだ。

 

 

「みみっ!?」

「うっ……う○こ……だとっ!?」

ステビアは思いもよらぬ暴言を喰らい、その場で茫然自失となる。

 

 

 

 そしてゆっくりと顔を上げると、大声で高笑いを始めたのであった。

「……ハハハッ、まさか私のマホイップを、事もあろうかそんなあだ名で呼ぶやつがいるとは……ハハハハハ!」

「………ッ!」

気でも狂ったかのようなその様子に、ジャックは見るに絶えず目を覆う。

彼の胃痛は今まさに最高潮に達していた。

「よし、そんなお嬢様には、私のフルコースを心ゆくまで楽しんでもらおう!……………二度とそんな失礼なことを口にできないほどにねッ!!」

 

 

 

 そう叫んだステビアは、すぐにマホイップにわざの指示を飛ばす。

「マホイップ、『とける』だ。」

「みみみーーーーっ!」

マホイップはステビアの指示の直後、みるみるうちにドロドロと溶け落ちていく。

そして数秒後には完全に白い液体となり、元の貌はそこには一切残っていなかった。

 

少しばかりグロテスクだったのか、お嬢は驚いてしまう。

 

「そんな……マホイップ!?」

「心配しなくともいいさ。……本番はここからだからね。」

 

 

 

 やがて白い液体はフィールドの床全体に広がっていき、半面を覆い尽くすほどに引き伸ばされたのであった。

「さて、仕上げだ。……『デコレーション』!」

「みみーーーーーっ!」

ステビアの最後の指示の直後、お嬢の目の前に広がる光景はあまりに衝撃的なものであった。

「なっ……!?」

「まねっ……!?」

 

 

 

 なんと、広がった液体から音を立てて無数のマホイップが発生したのだ。

そう、まるで分裂をするかのように増殖したのであった。

「みみっ!」

「みみぃーーーっ!」

「みみみみっ!」

マホイップはそれぞれ声を上げる。

その数は10……否、20を軽く超えている。

この異様な光景は、もはや鮮やかを通り越して軽いホラーである。

 

 

 

「そんな!多勢に無勢なんて卑怯よ!」

「まねね!」

「おや?何を言っているのだね。このマホイップは全部が同じ1匹。これは正真正銘の一騎打ちさ。」

「みみーーっ!」

「みーーーー!」

「みみみっ!」

マホイップはステビアに続いてそれぞれが声を上げる。

 

 

 

「えーーい、とにかく殴るわよ!マネネ、『10まんボルト』ッ!」

「まーーねねっ!」

マネネは手元に光弾を生成し、マホイップの数匹に向かって構える。

そしてすぐに電気を帯びた弾を数発、マホイップの群れへと撃ち込んだ。

「……『とける』だ。」

「みみっ!」

「みみみっ!」

狙いをつけられたマホイップたちは自身の身体を溶かし、地面に伏せるようにして『10まんボルト』を回避する。

マネネは続け様に何発も『10まんボルト』を撃ち続けるが、どこに撃っても同じように回避されてしまう。

やはり大技とは言え覚えたて……相手を正確に狙撃することはまだまだ難しいのである。

 

 

 

 そしてマネネが攻撃を撃った直後……

「……!マネネ後ろ!」

「まねっ!?」

なんとマネネの真後ろには、いつの間にか別のマホイップが居たのである。

「遅いッ!『ドレインキッス』!」

「みみーーーっ!」

いつの間にか背後を取られたマネネは、至近距離で投げキッスの攻撃を食らう。

「まねーーーっ!」

「ま、マネネ!」

マネネは大きなダメージを受け、数メートルの距離で吹き飛ばされる。

 

 

 

「そんな……!」

一体いつマホイップはマネネの背後を取ったのだろうか。

そこに気づいていたのはまたもジャックであった。

「なるほど……『とける』を使ってスニーキングをしたのか……!」

そう、マネネが『10まんボルト』でマホイップの群れを狙撃している隙に、群れの1匹がマネネの背後に回り込んでいたのであった。

相手の懐への奇襲……先程スナヘビが使っていた戦法をそのまま取り入れたのだ。

このステビアというトレーナー、戦いの中でさらに新たな戦法を確立しているのだ……!

さすがはジムリーダー、恐ろしいことこの上ない。

 

 

 

「ふふっ……さて、私達のデザートは楽んでいただけてるかい?即席にしては結構上出来だと思うのだがね……!」

「くっ……!」

果たして、このマホイップ軍団を倒す術はあるのだろうか。

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