【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第092話】巨人の鉄槌、俯瞰の策士(vsMA-Ⅰ)

『Mgggggggggggg!』

立ちはだかるのは超巨大の人型軍隊コイル。

MA-Ⅰの声に従い目の前の敵を排除せんと、今まさに襲いかかる所だ。

 

 

 

 エンビとお嬢はすぐさま判断を下し、手元のボールを投げ飛ばす。

「行きなさいッ、サダイジャ!」

「みしゃーーーり!」

「出番だッ、ゴウカザルッ!」

「らっきゃうッ!」

 

 

 

 お嬢が選んだのはサダイジャ……相手がでんき・はがねタイプのコイルであることを考えれば考えれば当然だ。

そしてエンビが選んだのはゴウカザル……俊敏さと筋力を併せ持つ身軽なほのおタイプのポケモンである。

こちらも相性は良好……少なくともこの2人の選択肢は、現状ほぼ最適なものであることは間違いなかった。

 

 

 

『……装填、「攻撃態勢-004」。』

『Mgggggggg!』

MA-Ⅰの冷徹な音声が流れ、巨人が動き出す。

前方に掲げた左手が、銀色の光沢を強く放ち始める。

何かしらのビーム系攻撃を仕掛けようとしている予兆だろう。

その規模、目に見えて普通のポケモンとは比較にならぬレベルである。

 

 

 

「避けるぞトレンチ!ゴウカザル、『ニトロチャージ』だ!」

この攻撃を正面から受けることは、シールドを持ってしても不可能……回避は賢明な判断だ。

「分かったわ!サダイジャ、『はいよるいちげき』ッ!」

「らきゃーーう!」

「みしゃりっ!」

ゴウカザルは高速の走行で地面を駆け抜け、サダイジャはすぐさま蛇行にて姿を消す。

 

 

 

『……発射。』

『『Mgggggggggg!』』

左手の光が収束し、一筋の光線となって降り注ぐ。

2匹のいた場所には、数秒後……閃光と爆発音を伴い、着弾点が溶け落ちるほどに焼き尽くす。

 

 

 

 傍から見ていたレインは、その威力から今の攻撃の正体を看破する。

「な……『てっていこうせん』だと!?それにしては相手の体力が……!」

彼の言う通り、大規模な反動わざを使用した割に、相手の巨人はびくともしていない。

明らかに、放った攻撃の火力と代償が釣り合っていないのだ。

「恐らく、あいつらは個々で消費する体力を折半している。だから『てっていこうせん』もほぼノーリスクで撃てるんだろう……!」

エンビはすぐさま、この馬鹿げた理論を見抜いた。

そう、相手はこのレベルの攻撃を何度でも放てるのである。

 

 

 

「何ビビってんのよ。要するに、やられる前にさっさとケリとつければ良いってことでしょ!?」

「……あぁ、そうだな!」

隣で意気込むお嬢を見て、エンビはより強く兜の緒を締め直す。

加えてふと冷静になったことで、彼はあることに気づいた。

 

 

 

 

 

「……そうか、頭だ!ゴウカザル、『アクロバット』ッ!」

「らきゃあああうッ!」

ゴウカザルは大きく飛び上がり、足場になりそうな壁を経由しつつ上へ上へと駆け上がっていく。

そして上空へとその身を投げ出すと、拳を構えて次の攻撃態勢へと映る。

狙っているのは……巨人の頭部だ。

 

 

 

「そうか、奴らは高度で組織的に動いている……!ということは、その指揮信号を担う個体が何処かにいるはずだ!そして居場所として可能性が高いのは、この地上から最も遠い『頭部』!」

「あぁ、そういうことだレイン。ブチ抜けゴウカザルッ、『インファイト』!」

「らきゃああああああああああうッ!」

己の全エネルギー、全体重を乗せた数多の拳がコイルに炸裂する。

20m上空にいても聞こえるほどの凄まじい破裂音とともに、コイルたちへ次々とダメージが与えられていく。

 

 

 

『『Mgggggg……!』』

ゴウカザルの『インファイト』はコイルに対して効果抜群……少なくとも、1匹1匹には着実に効いているはずなのだ。

事実、上の方から体力の尽きたコイルがボロボロと崩れ落ちてきているのだから。

しかし巨人全体の体勢が崩れる兆候は、残念ながら見られない。

 

 

 

「くっ……駄目か!?ゴウカザル!?」

「ら……らきゃう……ッ!」

懇親の力でコイルたちを殴り続けるが、一向に埒が明かない。

それどころか、ゴウカザルの決して多くはない耐久力も徐々に削り取られていく。

『インファイト』は威力が高い分、何発も撃てばリスクを伴う攻撃なのだ。

このままでは無駄撃ち……ジリ貧になるのは目に見えているのだ。

 

 

 

 そしてこの状況を、MA-Ⅰが黙って見過ごすわけもない。

『……攻撃態勢-003。』

『『Mgggggggggggg!』』

頭部に集まっていたコイル達が、一斉にエネルギーを装填し始める。

各個体の体表に、多量の電気が帯電し出した。

群体が長距離の交流回路を形成して放つ電撃……やはり大ダメージは免れない一撃となるだろう。

 

 

 

「チッ、ここが限界か……!逃げろゴウカザル、『アクロバット』だ!」

「らきゃっ!」

ゴウカザルはエンビの指示の下すぐにバックジャンプをし、コイルの身体から退避する。

しかしそこは遥か20m上空……経由する足場もわずかに遠い。

つまりしばらくの間、ゴウカザルは上空……無防備な上空へと放り出されることになるのだ。

 

 

 

『……発射。』

『『Mgggggggg!』』

無慈悲にも、守るものがないゴウカザルを『10まんボルト』の一撃が襲う。

こんな上空で電撃を喰らってバランスを崩せばひとたまりもない。

万事休すだ。

「くっ……!」

 

 

 

 そう思われた時……ゴウカザルの眼前を、下から何かが横切っていった。

それも地面へ向け、多量の砂を噴出しながら。

「ま、まさか……!?」

その正体は、『ねっさのだいち』で地面からジェット噴射で駆けつけてきたサダイジャだ。

「みしゃりっ!」

瞬間、サダイジャはゴウカザルの身体へぐるぐると巻き付く。

やがて巨人から放たれた電撃は、サダイジャの身体に当たって霧散する。

じめんタイプのポケモンに、でんきわざは効かない……その事を生かした即席の防護服だ。

 

 

 

 2匹はそのまま落下していき、サダイジャの敷いておいた砂場へと着地する。

「ふぅ……待機しておいて正解だったわね。」

「悪いな、トレンチ。」

お嬢のアシストによって、間一髪……ゴウカザルは攻撃の手から逃れることが出来た。

 

 

 

「だけどアイツの頭部に指揮個体はいなかった……どうするんだよ!?」

レインの言う通り。

少なくともゴウカザルの攻撃は、頭部個体の多くを削り取った。

しかしそれでも、相手の戦力はほとんど削がれていないのだ。

 

 

 

 それを聞いたお嬢は、狙いを切り替える。

一気にコアを貫けないのであれば、まずは足元から削ればいい。

そうすればバランスも崩れるはず……そう考えたのだ。

「下を狙うわよ!サダイジャ、『ねっさのだいち』ッ!」

「みしゃりッ!」

やや頭を低く掲げ、サダイジャは巨人の足首を向く。

そして鼻孔から、高温の砂を一気に噴射したのである。

 

 

 

『Mggggggg……!』

コイルにじめんわざは大ダメージ……足を構成していたコイル達は一撃で致命傷を負う。

そしてその瞬間、巨人の足は散り散りとなる。

 

 

 

 だが……

「く、崩れてない!?」

「そりゃそうだろ!あんなデカブツが重力に従って直立しているワケがない!恐らく足を全部削ったとして、アイツらは電磁力でそのまま浮き続けるぞ!」

レインの考えは最もであった。

お嬢の考えも悪くはなかったが、それは相手が『個体』である時に限る。

加えてコイルは常に電磁浮遊しながら動くポケモン……よって巨人の足元を削ろうが、大した効果は見込めないのである。

 

 

 

 つまるところ、やはり核となる個体を潰さなくてはどうしようもない。

だがその場所はわからないのだ。

コレではやはり埒が明かない。

 

 

 

『……出力ヲ上ゲマス。攻撃態勢-001。』

『Mggggggg!』

巨人の右腕が僅かに持ち上げられ、下方向に拳が向く。

よく見ると、右手を構成するコイル達がわずかながら回転を始めているのが見えた。

「あれは『ジャイロボール』……まさかッ……!?」

次の瞬間、右拳はそのまま巨人の腕を離れて地上へと高速落下してきた。

そう、まさかのロケットパンチ……『ジャイロボール』による回転力を帯びた飛鉄拳である。

 

 

 

「避けなさいサダイジャ!『はいよるいちげき』!」

「みしゃりッ!」

「駄目だトレンチ、間に合わん!……ご、ゴウカザルッ、構えろ!」

「らきゃああうッ!」

両者の指示はここで二分した。

お嬢は回避、エンビは防御……そして結果的に、正しい指示を受け取れたのはゴウカザルのみであった。

 

 

 

 地面へと着弾した拳は、そのまま四方八方に散弾したのである。

つまるところ、『ジャイロボールのクラスター』とでも言うべき攻撃だろうか。

当たり一面にコイル達が散る関係上、回避は絶望的なのだ。

故にお嬢の「回避」の指示は、完全に悪手だったのである。

 

 

 

「み……みしゃっ……!?」

「さ、サダイジャッ!」

サダイジャは全身で、『ジャイロボール』を連続して被弾する。

一発一発の威力はそこまででもないが、如何せん数が暴力的すぎる。

しかも傷を受けたのはサダイジャのみではない。

「らきゃ……ッ!」

「くっ……やはり防ぎきれないかッ……!」

先の『インファイト』で耐久力が切れかけているゴウカザルもまた、この散弾によるダメージを受けてしまったのだ。

 

 

 

『Mggg……』

『Mgggg!』

散り散りになったコイル達は、浮かび上がって巨人の身体へと還っていく。

そして拳の放たれた右手部分は徐々に膨らんでいき、再度その形を成していくのであった。

「さ、再生してるのッ!?」

『……「攻撃態勢-001」、再装填マデ……アト30秒。』

MA-Ⅰの口から、次の攻撃までのインターバルが告げられる。

もう一度こんな攻撃が来ては、2匹とも耐えられない……事実上の余命宣告である。

 

 

 

 

 

「……なぁ、エンビ、トレンチ。」

「?」

レインはそっと、お嬢とエンビに耳打ちをする。

どうやらこの状況を打開する策を思いついたようだ。

「で……出来るの!?」

「……僕の見立てでは五分五分だ。少なくとも実際のバトルでは絶対にやらないが……緊急事態だ、やむを得ない。」

彼の口調から察せるだろうが、だいぶ無理のある作戦なのだ。

 

 

 

 しかしエンビは首を縦に振った。

「俺はレインに賛成だ。サダイジャとゴウカザルの力を信じてみようと思う。」

「……ッ……そうね。……サダイジャ!行ける!?」

「みしゃりっ!」

お嬢の問いかけに、ボロボロのサダイジャは元気よく返答する。

ゴウカザルも遅れて、小さく頷いた。

次の攻撃まで時間がない……2人は早期に作戦を決行する。

 

 

 

 ますサダイジャは頭を下に掲げ、尻尾側を僅かに上へと向けた。

「よし、ゴウカザルッ!サダイジャの尻尾に乗って『アクロバット』だ!」

「らきゃうっ!」

エンビの指示の後、ゴウカザルはサダイジャの尻尾の上に乗る。

直後、サダイジャのバネのような形状の尻尾を活かし、そのまま天高く飛び上がったのである。

これなら壁キックを挟むよりも速く、上へと迫れる。

その高さは25m……巨人すらをも軽く見下ろせる場所を陣取ったのだ。

 

 

 

 しかし上をとっただけでは、コイルを削り切ることは出来ない。

それは先の『インファイト』でも証明済みだ。

また、ゴウカザルには決定的な範囲攻撃がない。

 

 

 

 

 

 ……ではどうするか。

サダイジャの力を更に借りるのだ。

「ここからが本領発揮よ!『がんせきふうじ』で足場を固定しなさい!」

「みしゃりっ!」

お嬢の指示の後、サダイジャは周囲に岩を生成する。

そして自分の足元を、ガッチリと地面に縛り付けたのである。

 

 

 

「そのまま上を向いて……そう。『一【自主規制】ソの構え』ッ!」

「みしゃり!」

バネ状のとぐろを緩め、ゆっくりと上空へ首を掲げていく。

その視界に捉えるのは、上空を飛翔するゴウカザルの姿だ。

 

 

 

「構え解除ッ!……『ねっさのだいち』発射ッ!」

「みしゃーーーーーりッ!」

瞬間、サダイジャの身体が元通りのバネ状へと急速に畳まれる。

するとジェット噴射の勢いで、はるか上空へと大量の砂が放たれたのである。

まるでバネ式の銃の如き理論で、超高速・超重量の噴射砲撃を編み出したのである。

 

 

 

 上空へと飛んでいった砂は、そのままゴウカザルのいる場所まで届く。

「よくやったトレンチッ!ゴウカザル、『かえんほうしゃ』だッ!」

「らきゃああああああああああうッ!」

下側から飛来してきた砂に向かって、ゴウカザルは熱光線を吐きつける。

砂粒はゴウカザルの炎で熱され、やがて融解点を迎えて溶け始める。

砂粒が溶ければ何になるか?

 

 

 

 答えは溶岩……そう、『マグマ』だ。

 

 

 

 巨人の頭上で生成された多量のマグマは見事に飛び散り、頭からゆっくりとコイルたちを襲う。

じわり……じわりと、告死の蜜液は巨人を飲み込んでくのだ。

『『Mggggggggg!?』』

超高温のマグマを受けたコイル達はパニックを起こす。

しかし残念、このマグマは高粘度……振り払うことなど叶わない。

慌てたコイル達はそのまま上半身から順に霧散していき、思い思いの方向に逃げ出してしまったのである。

それは最早、人としての形を成さなくなっていた。

 

 

 

 やがて巨人の下腹部に位置していたであろう特殊なコイル……否、複数体のレアコイルの姿が顕になる。

『Mgggggn!?』

「間違いない……この巨人を司っていた個体だわ!」

「貴様らの正体……見たぞ!ゴウカザル、『インファイト』だッ!」

「らきゃあああああああああああああうッ!」

丁度上空から落下してきたゴウカザルが、重力に任せた全力の百裂拳をお見舞いする。

 

 

 

 回避する間もなく、レアコイルは一瞬にしてその拳に屠られる。

『Mgg………』

中核を失った巨人は、既に巨人の姿を保てない。

残った下半身のコイル達も、次々と逃げていってしまったのだ。

『……異常発生。指揮ノ継続不可ト見ナシ、侵入者ノ排除ヲ一時停止シマス。』

MA-Ⅰの音声が流れ、以降の攻撃は飛んでこなくなった。

 

 

 

「ふぅ……ひ、ひとまず一件落着だな。」

「も、もうダメかと思ったわ……ありがとうサダイジャ。あとゴウカザルも……」

「みしゃり……」

「らきゃう……」

エンビとお嬢……そしてサダイジャとゴウカザルは、その場でため息とともにへたり込む。

流石の彼らでも、骨の折れる相手であったことは間違いない。

 

 

 

 そして座り込みつつ、お嬢はレインの方を向く。

「……でもやるじゃない。まさかあんな作戦を思いつくなんて。」

「……別に。ゴウカザルとサダイジャが今できることを考えればこの程度……」

レインはそっぽを向き、歯切れ悪く答える。

「そうか?少なくとも俺は思いつかなかったぞ。」

「はぁ?嘘だろ?」

エンビの返答に、レインは驚きの表情を見せる。

 

 

 

「……たしかに俺は、自分の知る戦法から策を編みだすことは出来る。しかし、普段知らない味方を踏み台にする発想は俺の中にはなかった。いや、お前にだって無いはずだ。それをお前は編み出した。」

「………。」

「ほら、要はアンタは凄いってことよ。」

お嬢はゆっくりと立ち上がりつつ、レインを称賛した。

 

 

 

「……何だよそれ。てか君に関しては何も分かってないじゃないか。」

「はぁ?ちょっと何よ、喧嘩売ってんの!?」

「あーあー、うるさいのが始まった。」

「何ですってこのう【自主規制】たれ!【自主規制】!【自主規制】!」

 

 

 

 過激な言葉はヒートアップしていき、ついに彼らは口喧嘩を始めたのであった。

しかし、傍から見れば喧嘩する程なんとやら……である。

それに、半日前までこの世全てに絶望してたような顔をしていたレインが、いくらか元気を取り戻していたのだ。

それだけでも前進……幾らかの救いだったのではないだろうか。

 

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