【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

93 / 134
【第093話】遠ざける考察、即発の仇敵達

『……Mgg』

MA-Ⅰの操る巨人を倒した後……その場には何匹かのコイルが倒れ伏していた。

ダメージを受けて気絶した個体だ。

そんな彼らのうち1匹を、エンビは両手で拾い上げる。

「………!」

瞬間、彼は違和感を覚えた。

まるで空気でも掴んでいるかのような……そんな違和感を。

 

 

 

 するとそのコイルは、一瞬にしてその姿を消したのだ。

「!?」

まるでホログラムの残像が消え去るかのように……

「え……!?ど、どういうことなのよ!?」

元々、ポリゴン体のような不自然な身体ではあった。

だがコレで、この存在が生身のポケモンではないことが半ば確定したのだ。

 

 

 

「……なぁ、エンビ。さっきMA-Ⅰの声が聞こえてきただろ?これってさ……この精神世界の主がMA-Ⅰってことなんじゃないのか?」

「……あぁ、そうだ。流石だレイン。」

エンビはやや気まずそうに、低めの声で答えた。

まるで、その返答を躊躇うかのように。

 

 

 

「でも……おかしいわ!ジャックの精神世界に行った時は、ある程度の場所で場面転換が起こった……こんな広大な世界が再読み込みも挟まずに続くなんて事あるの?」

「………。」

「……確かに、トレンチの言う通りだ。ましてやアイツは所詮は機械。物事を記憶できる量なんて人の足元にも及ばない。ってことはただMA-Ⅰの精神ってだけじゃなくて、もっと他の……」

「………ッ!」

様々な推論を展開するレインやトレンチらを他所に、エンビは黙りこくる。

 

 

 

 そしてそのままゆっくりと立ち上がると、何処かへと歩み始めてしまったのだ。

「……行くぞ。時間が惜しい。」

彼にしてはあまりにも強引な話の切り方であった。

明らかに、何かを隠していることは明らかだ。

 

 

 

「……もしかして何か、気に障ることを言ったかしら?」

「……これ以上あの人に色々聞くのは、マズいかも知れないな。」

お嬢とレインはコソコソとそんな事を話しながら、遠ざかるエンビの背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーー時を同じくして。

フウジジムのフロント……エレベーター前の剥がれたタイルの前にて、3名の人物が佇んでいた。

「……ここから向かったんだな。そして数時間前に音信不通……と。」

ステビアが通ったその道を見つめつつ、ジムリーダー仲間のボアは呟く。

「えぇ。『1時間以上私からの定期連絡が途絶えたら、その時は死んだものと思え』って言ってましたから……。」

その背後……不安げな顔で俯くのは、同じくジムリーダー仲間のセラであった。

彼らはステビアの消息が途絶えた後、彼女が消えた現場まで駆けつけてきたのである。

 

 

 

「……ひとまず目標はステビアの奪還だ。後は……」

「……マネネとピカチュウの回収ですよ。」

ボアの背後に控えていた中年の男性が声をかける。

白髪交じりの七三分けの彼は、お嬢も見知った人物……そう、スモックであった。

 

 

 

「あぁ、そうだった。……ってかアンタ、ここに来てよかったのか?一応参考人として色々聞きには行ったけどさ……何も着いてこなくても。」

「……いやいやボア君。流石に放っておけないですよ。……自分の甥と姪がいるのですから。」

「……そうだな。悪ィ。」

スモックの言葉に、ボアは少し表情を暗くする。

 

 

 

 そんな彼らを差し置き、スモックはジムの裏手の方へと歩き出した。

「確かこのビルの裏手に抜け道があります。そこから入りましょう。」

その足取りは、何処と無くこなれた様子であった。

そんな彼の挙動に不信感を抱きつつ、ボアとセラはその後を追う。

「……大丈夫です。中には私の頼もしい味方がいます。」

「………。」

 

 

 

 彼らはやがて、スモックの言う『ビルの裏手』へとたどり着く。

「……ちょっと、禍々しい雰囲気出てません?」

異様な雰囲気を感じ取ったセラが、尻込みながら言う。

実際彼女の言う通り、ここから先はクランガ達が展開した異空間が敷かれている。

一度迷い込めば簡単には戻れない。

 

 

 

 しかしそんな事、スモックは構わない。

彼はズカズカと奥へ踏み入っていったのであった。

「あ、ちょっと……!」

セラは焦り気味に追いかけた。

ボアもそこから、ゆっくりと後をつける。

 

 

 

 3人は長い階段を降りていく。

そこから入れるのは、地下鉄の廃線……なのだが、明らかな不審点がある。

何故か閉められているべきシャッターが、開きっぱなしになっていたのだ。

明らかに誰かが通った後だ。

「オイオイ、これって誰かが来たってことだよな?」

不審がるボアと、しゃがんで地面を眺めるセラ。

彼女は、ホコリを被った場所に何かを見つけたのだ。

「……靴の後が3つ。男性1人と、子供が2人……ですね。」

 

 

 

 その足跡を見た3人は、背筋に悪寒を走らせる。

どことなく、その足跡の主は他人な気がしなかったのだ。

「……ひとまず急ぎましょう。大丈夫、脱出手段は用意してあります。」

「……あぁ、なんだか嫌な予感がするぜ。」

 

 

 

 

 

 ーーーーー極彩色に輝く気味の悪い異空間を、縦横法則を無視しながら幾度となく進んでいくお嬢たち一行。

既に何度も浮揚と回転を繰り返しつつ、半ばグロッキー状態になりながら進行する。

「なぁ……流石に長くないか?」

「長いな。だが、相手側は恐らく性格にこの迷宮を制御できていない。隙を付けば、恐らく突破口が見えるはずだ。」

奥へ奥へ……進んでいるのかはわからないが、それでも立ち止まるよりはマシだ。

彼らはエンビの勘を頼りにしながら、ジャックらの居場所を探すのである。

 

 

 

 3人は早足で駆けていたが、突如前を走っていたエンビが静止する。

彼は腕を横に掲げ、後ろの2人を止まらせた。

「……!人の気配がする……!」

「ひ、人!?」

そう、人だ。

遠くに目を凝らすと、1人、2人……否、数十人の人影が見える。

放射状に立ち並んだ彼らの真ん中に立つのは、筋骨隆々な禿頭の色黒男……

 

 

 

「だ……ダフッ!」

「よォお前ら。悪いなァ……テイラーの奴に足止めを任されているもんでよォ……」

彼らは狙ったように、そこで待ち構えていたのだ。

しかも背後には、暴力団員が共に立ち塞がっているのである。

 

 

 

「けっ……このトレンチとかいう奴には煮え湯を飲まされてるからな。」

「ムショに飛んだ兄貴のためにも、今ここでケリをつける……!」

暴力団の組員たちは、指を鳴らしながらお嬢たちを威嚇する。

中にはボールを構えている組員もおり、完全に臨戦態勢になっているのだ。

 

 

 

「チッ、またしても数の暴力か……!」

エンビは舌打ちをする。

だが、四の五の言ってはいられない。

立ちはだかるなら斬り捨てる……それ以外に選択肢はないのだ。

お嬢とエンビはすぐさまボールを構える。

正に一触即発……戦いの火蓋が切って落とされようとする。

 

 

 

 その時だった。

「そこまでだッ!やめっ……やめっ!」

何処からともなく、叫び声が聞こえてきた。

 

 

 

 その声を聞いた暴力団員やお嬢らは固まる。

なぜならその声は、彼らにとって聞き覚えのあるものだったからだ。

皆は一斉に声のする方へと顔を向ける。

そこにいたのは……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。