【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide 作:伊崎つりざお
『……Mgg』
MA-Ⅰの操る巨人を倒した後……その場には何匹かのコイルが倒れ伏していた。
ダメージを受けて気絶した個体だ。
そんな彼らのうち1匹を、エンビは両手で拾い上げる。
「………!」
瞬間、彼は違和感を覚えた。
まるで空気でも掴んでいるかのような……そんな違和感を。
するとそのコイルは、一瞬にしてその姿を消したのだ。
「!?」
まるでホログラムの残像が消え去るかのように……
「え……!?ど、どういうことなのよ!?」
元々、ポリゴン体のような不自然な身体ではあった。
だがコレで、この存在が生身のポケモンではないことが半ば確定したのだ。
「……なぁ、エンビ。さっきMA-Ⅰの声が聞こえてきただろ?これってさ……この精神世界の主がMA-Ⅰってことなんじゃないのか?」
「……あぁ、そうだ。流石だレイン。」
エンビはやや気まずそうに、低めの声で答えた。
まるで、その返答を躊躇うかのように。
「でも……おかしいわ!ジャックの精神世界に行った時は、ある程度の場所で場面転換が起こった……こんな広大な世界が再読み込みも挟まずに続くなんて事あるの?」
「………。」
「……確かに、トレンチの言う通りだ。ましてやアイツは所詮は機械。物事を記憶できる量なんて人の足元にも及ばない。ってことはただMA-Ⅰの精神ってだけじゃなくて、もっと他の……」
「………ッ!」
様々な推論を展開するレインやトレンチらを他所に、エンビは黙りこくる。
そしてそのままゆっくりと立ち上がると、何処かへと歩み始めてしまったのだ。
「……行くぞ。時間が惜しい。」
彼にしてはあまりにも強引な話の切り方であった。
明らかに、何かを隠していることは明らかだ。
「……もしかして何か、気に障ることを言ったかしら?」
「……これ以上あの人に色々聞くのは、マズいかも知れないな。」
お嬢とレインはコソコソとそんな事を話しながら、遠ざかるエンビの背中を追いかけた。
ーーーーーーー時を同じくして。
フウジジムのフロント……エレベーター前の剥がれたタイルの前にて、3名の人物が佇んでいた。
「……ここから向かったんだな。そして数時間前に音信不通……と。」
ステビアが通ったその道を見つめつつ、ジムリーダー仲間のボアは呟く。
「えぇ。『1時間以上私からの定期連絡が途絶えたら、その時は死んだものと思え』って言ってましたから……。」
その背後……不安げな顔で俯くのは、同じくジムリーダー仲間のセラであった。
彼らはステビアの消息が途絶えた後、彼女が消えた現場まで駆けつけてきたのである。
「……ひとまず目標はステビアの奪還だ。後は……」
「……マネネとピカチュウの回収ですよ。」
ボアの背後に控えていた中年の男性が声をかける。
白髪交じりの七三分けの彼は、お嬢も見知った人物……そう、スモックであった。
「あぁ、そうだった。……ってかアンタ、ここに来てよかったのか?一応参考人として色々聞きには行ったけどさ……何も着いてこなくても。」
「……いやいやボア君。流石に放っておけないですよ。……自分の甥と姪がいるのですから。」
「……そうだな。悪ィ。」
スモックの言葉に、ボアは少し表情を暗くする。
そんな彼らを差し置き、スモックはジムの裏手の方へと歩き出した。
「確かこのビルの裏手に抜け道があります。そこから入りましょう。」
その足取りは、何処と無くこなれた様子であった。
そんな彼の挙動に不信感を抱きつつ、ボアとセラはその後を追う。
「……大丈夫です。中には私の頼もしい味方がいます。」
「………。」
彼らはやがて、スモックの言う『ビルの裏手』へとたどり着く。
「……ちょっと、禍々しい雰囲気出てません?」
異様な雰囲気を感じ取ったセラが、尻込みながら言う。
実際彼女の言う通り、ここから先はクランガ達が展開した異空間が敷かれている。
一度迷い込めば簡単には戻れない。
しかしそんな事、スモックは構わない。
彼はズカズカと奥へ踏み入っていったのであった。
「あ、ちょっと……!」
セラは焦り気味に追いかけた。
ボアもそこから、ゆっくりと後をつける。
3人は長い階段を降りていく。
そこから入れるのは、地下鉄の廃線……なのだが、明らかな不審点がある。
何故か閉められているべきシャッターが、開きっぱなしになっていたのだ。
明らかに誰かが通った後だ。
「オイオイ、これって誰かが来たってことだよな?」
不審がるボアと、しゃがんで地面を眺めるセラ。
彼女は、ホコリを被った場所に何かを見つけたのだ。
「……靴の後が3つ。男性1人と、子供が2人……ですね。」
その足跡を見た3人は、背筋に悪寒を走らせる。
どことなく、その足跡の主は他人な気がしなかったのだ。
「……ひとまず急ぎましょう。大丈夫、脱出手段は用意してあります。」
「……あぁ、なんだか嫌な予感がするぜ。」
ーーーーー極彩色に輝く気味の悪い異空間を、縦横法則を無視しながら幾度となく進んでいくお嬢たち一行。
既に何度も浮揚と回転を繰り返しつつ、半ばグロッキー状態になりながら進行する。
「なぁ……流石に長くないか?」
「長いな。だが、相手側は恐らく性格にこの迷宮を制御できていない。隙を付けば、恐らく突破口が見えるはずだ。」
奥へ奥へ……進んでいるのかはわからないが、それでも立ち止まるよりはマシだ。
彼らはエンビの勘を頼りにしながら、ジャックらの居場所を探すのである。
3人は早足で駆けていたが、突如前を走っていたエンビが静止する。
彼は腕を横に掲げ、後ろの2人を止まらせた。
「……!人の気配がする……!」
「ひ、人!?」
そう、人だ。
遠くに目を凝らすと、1人、2人……否、数十人の人影が見える。
放射状に立ち並んだ彼らの真ん中に立つのは、筋骨隆々な禿頭の色黒男……
「だ……ダフッ!」
「よォお前ら。悪いなァ……テイラーの奴に足止めを任されているもんでよォ……」
彼らは狙ったように、そこで待ち構えていたのだ。
しかも背後には、暴力団員が共に立ち塞がっているのである。
「けっ……このトレンチとかいう奴には煮え湯を飲まされてるからな。」
「ムショに飛んだ兄貴のためにも、今ここでケリをつける……!」
暴力団の組員たちは、指を鳴らしながらお嬢たちを威嚇する。
中にはボールを構えている組員もおり、完全に臨戦態勢になっているのだ。
「チッ、またしても数の暴力か……!」
エンビは舌打ちをする。
だが、四の五の言ってはいられない。
立ちはだかるなら斬り捨てる……それ以外に選択肢はないのだ。
お嬢とエンビはすぐさまボールを構える。
正に一触即発……戦いの火蓋が切って落とされようとする。
その時だった。
「そこまでだッ!やめっ……やめっ!」
何処からともなく、叫び声が聞こえてきた。
その声を聞いた暴力団員やお嬢らは固まる。
なぜならその声は、彼らにとって聞き覚えのあるものだったからだ。
皆は一斉に声のする方へと顔を向ける。
そこにいたのは……