【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第094話】偶然の会衆、押し寄せる障壁

「そこまでだッ!やめっ……やめっ!」

一触即発のダフとお嬢らを遮ったのは、聞き覚えのある声だった。

彼らが振り向くと、そこにいたのは……

 

 

 

「す、スモックおじさま!?」

スモック博士だ。

つい1時間ほど前にこの迷路に突入してきたスモック……そして同伴者のボアとセラだ。

「ど、どうしてここに……!?」

「君たちこそ……いや、そうか。マネネの件か。」

博士はお嬢の顔を見ると、煮え切らないため息をついた。

 

 

 

「……よォ、スモックさん。コイツらは一体どうすれば良いんだ?」

「この子達が私の敵に見えるか……!?」

問いかけるダフを、スモック博士は比較的低めの声で脅しつける。

どうやら彼らには何かしらの関係性があるようだが……

 

 

 

「あの……えっと……」

お嬢は左右を見回しながら、急な状況の変化に困惑する。

ダフ率いる暴力団が立ちはだかってきたと思ったら、今度はスモック博士やジムリーダー達まで現れたのだ。

見かねたスモック博士は、お嬢の元へと歩み寄る。

「……わかった。手短に話そう。」

そう言うと博士はダフ含む暴力団の組員たちに「待った」のサインを送る。

各々がその場で座り込み形で、彼を囲むこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーー「なるほど。君たちの事情は把握した。まさかジャックさんまでいるとはね。」

お嬢らがここに来るまでの経緯を聞き終え、博士はため息とともに頭を抱える。

「……本当に碌でなしだ。僕の姪が申し訳ない。」

「え……テイラーが、おじさまの姪!?」

さらっと博士の口から、衝撃の情報が零れる。

しかしスエットの話の中でも、彼らは同じ地下施設に居たことは明言されていた。

それにサンドの心臓にも、この両名は間接的に関わっている。

……よく考えれば、何の関係もないわけがないのだ。

 

 

 

「……まぁ、そんなわけだ。ウチの身内が君たちに物凄い迷惑をかけている……改めて申し訳ない。」

博士は頭を下げる。

だがお嬢は、あくまで冷静に答えた。

「……おじさまが謝ることじゃないわ。」

そう、責めるべきはバベル教団やテイラー達であって、彼ではない。

 

 

 

「それより、おじさま達はいったい何故ここに?」

「おっと……それは俺から説明するぜ。」

ここで割って入ってきたのがノロポートのジムリーダーであるボアだ。

彼はポケットからスマホを取り出しつつ、説明を始める。

 

 

 

「……まず、お前らは『扉』と『秘鍵』、『器』の関係については知ってるな?3対のセットが揃うと、理想郷『イデア』に行ける扉が開くっていう話だ。」

スネムリタウンでお嬢が散々聞いた話だ。

彼女は軽く頷いて返事をする。

 

 

 

「……オーケイ。だが、おかしいんだ。……異世界については数々の観測例があるが、この『イデア』については明白な記録が残っていねぇ。」

「え……じゃあ、あの図書館にあった資料って……!?」

「……事実として裏付けるものはないわね。」

クールな声が、驚くお嬢の声を遮った。

ロメロシティのジムリーダー、セラだ。

 

 

 

「……私も行ってみたけど。あそこ、バベル教団にとって都合の良い書物しか置いていないもの。」

「……ッ」

以前にジムで見たセラと大きく印象が変わっていたため、お嬢はそこにも驚嘆の表情を浮かべている。

しかし今そこは重要ではない。

彼女の話を、お嬢は続けて聞き入れる。

「それに、『創世神』なら既に『アルセウス』というポケモンの観測例があるわ。

アルセウス……無から世界を作り出したとされる『最初のポケモン』だ。

実際、このポケモンはシンオウ地方にて観測例が僅かに報告されているため、『伝承』ではなくほぼ『事実』に近い。

 

 

 

 が、バベル教団の言う『イデア』はどうだろう。

書物で語られるのみで、直近の時代に信憑性のある記録はない。

「……『創世神』が別に2柱以上もいるなんて、おかしくないかしら?」

「じゃあ、『扉』の向こうには何があるっていうのよ!?」

 

 

 

「……そう、そこなんだよトレンチちゃん。」

再び、スモック博士が語りだす。

「……少なくとも、あの『扉』の先がイデアなんかじゃないことは確かだ。」

「……何故言い切れる?」

間に割って入ったエンビが疑問を投げかける。

 

 

 

「……なんせ僕は、この『扉』の向こうを覗き見たからね。」

「!?」

「……まぁ、この話はまた後でだ。とにかく、あの『扉』は絶対に開けちゃあいけない。だからこそ、奴らからマネネとピカチュウを取り戻す必要があるんだ。」

博士の口から告げられた目標は、お嬢らと同じものだった。

そう、マネネだけではない。

レインのピカチュウもまた、テイラーの手元に渡っているのだ。

「………。」

そのことを思い出したレインは、改めて息を呑む。

自分が今ここにいる意味を、じわじわと理解して震えだしたのだ。

 

 

 

「……まぁ、アレだ。そういうわけで俺たちジムリーダー連合はスモック博士に協力しているっつーわけよ。」

「そうね。明らかにスエットとMA-Ⅰに不審な動きがありすぎたわ。……まぁ、一応イジョウナ地方の公認トレーナーなわけだし……。」

セラは途中で気恥ずかしくなったのか、語尾が妙に下がりつつある。

その様子をみたお嬢は、彼女が以前から大きく成長したことを知ったのだった。

 

 

 

 

 

 しかしここでエンビが、再度疑問を投げかける。

「なるほど、スモック博士たちがここにいる理由は分かった。俺たちとは協力関係が築けそうだ。だが……」

そう言いつつ、待ちかねているダフたちの方向を見た。

「こいつらが博士と親しげなのはどういう事だ?ダフはテイラーの仲間だったはずだ。」

 

 

 

 エンビの質問に答えたのは、ダフ張本人であった。

「あー、それなァ。買われたんだよ、俺達。」

「か、買われた!?」

「……そうだ、僕が金で買収した。彼らは元々バベル教団に金で雇われただけの組織だ。」

博士の手回しは、以外なほどに単純で打算的なものであった。

しかし、それほどのリソースを割かなくてはいけないほどこの問題は深刻なのかもしれない。

……少なくとも、彼にとっては一大事だったのだ。

 

 

 

「彼らがこの『扉』を開くことに、金以外の理由はない。そうだろ?ダフくん。」

「へへっ、まァな。俺らは金さえ稼げりゃそれでいいんだよ。」

実に現金な話である……が、結果的にそのことはお嬢たちにプラスに働いている。

なので結果オーライなのだ。

 

 

 

 お嬢は未だ訝しげな表情でダフを睨む。

しかし、スネムリタウンの一件も含めると、味方になった際に彼が頼れることもまた確かなのである。

一時的であれば信用しても構わない……それがお嬢の導き出した結論だった。

 

 

 

「……ひとまず案内してやるよォ。『扉』の場所になァ。」

そう言いつつ、ダフは親指を立てる。

実際、お嬢らは小一時間ほどこのサイケデリックな迷宮で迷い尽くしていたのだ。

もしダフが地形を把握しているのであれば、それほどありがたいことはない。

彼らは皆、合流したダフの後ろへついていくことにした。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー「しかしダフくん。この目に悪い迷路は一体どういう仕組みで動いているんだい?」

広々とした通路を進みつつ、先頭にいる博士とダフが会話をする。

「……スエットとMA-Ⅰについてはお前も知ってるだろォ?昏睡しているアイツの身体に、人工知能のMA-Ⅰの精神を融合させているんだ。そんでもって『MA-Ⅰ』の記憶を参照にしながらこの精神世界……いや、人工知能なら電脳空間?……とにかくソレを開いているっつーワケらしいぜェ。」

ここまでの説明は、大方エンビらの想像通りだ。

やはりスエット……そしてMA-Ⅰが関わっていることは正解だったようである。

 

 

 

「そ……そんなの乗っ取りと変わらないじゃない……!」

スエットの身に起こっていたお嬢は、声を震わせる。

知らぬ仲ではない彼女が酷い目に遭ってる……その事を考えるだけで気が動転しそうになる。

しかし……そんな中でも、エンビの言葉を思い出す。

彼女は必死に、冷静に振る舞った。

 

 

 

 そんなお嬢に、ダフは同意の目を向ける。

「クランガも酷ェことしやがるよな。……まぁ、そんでこの空間では、アイツの記憶にあるものを何でも具現化して召喚できる。」

召喚……つまり先程のコイルのような存在だ。

この空間の主たるMA-Ⅰは、迎撃用のポケモンを呼ぶことが出来るというわけだ。

「まァ電脳空間で呼ぶ関係上、どうしても画素が粗くなるらしいがなァ。」

「なるほど……妙にポリゴンじみた身体はそれが原因か。」

 

 

 

 

 

 この世界についての話題を展開しているうちに、一行は壁の色が薄くなった地点までたどり着いた。

そう、もうじき目的地の『扉』の目の前だ。

一行は歩みを進めていく。

 

 

 

 ……その時だった。

何処からともなく地鳴りが聞こえてくる。

まるで液体が押し寄せるような、そんな音が……

「……ん?なんだこれ……?津波か!?」

水にしては音があまりにも鈍く重々しい。

 

 

 

 やがて正面から、大量の液体……否、白いクリームが迫ってくる。

「なっ……く、クリーム!?」

「違う!よく見ろ……これ、全部マホイップだ!」

そう、押し寄せてきたのはマホイップの大群だ。

先程のコイルと同じように、一匹一匹はポリゴンのような粗い身体をしている。

 

 

 

 1匹1匹は大した大きさではない……が、如何せん数が多すぎるのだ。

あっという間に、生身の彼らはマホイップの波に揉まれて押し戻される。

「がっ……ちょ……ッ!」

溺れかけながらも、お嬢は近くの手を取り上げる。

自分よりも小さな手……そう、レインの手を掴んだのだ。

「ッ……と、トレンチ……!」

彼もまた、なんとかお嬢の手を掴み返す。

 

 

 

「エンビ!あなたは大丈……え、エンビ?」

彼女が声を掛けた時、そこにエンビの姿はなかった。

「エンビ!?どこなのよ!?だ、だれか……返事をッ!」

いや、彼だけじゃない。

スモック博士も、ダフも、ボアもセラも暴力団員も……皆、別々の方向に流されていってしまったのだ。

そうこうしているうちに、お嬢はマホイップに完全に攫われる。

溺れかけた彼女に、言葉を紡ぐ余裕は最早なかったのであった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーマホイップの襲撃から十数分。

ボアとセラは、全くと言っていいほど見知らぬ空間に投げ出されていた。

「ふぅ……これだから液体は怖ぇんだ。おいセラ、大丈夫か!?」

「はい、なんとか……。」

セラはよろめきながらも、ボアの手を取りゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

 流されたジムリーダー2人は、ある違和感を覚えていた。

「しかしあのマホイップ、どこかで見覚えがあるとは思わねぇか……?」

「……えぇ。まるでアレはステ……」

セラがそう言いかけた……その直後であった。

 

 

 

 近くの壁が、妙な形にせり上がってきたのだ。

サイケデリックなポリゴンの壁は、徐々に形を成し……遂には人型へと完成した。

しかもそのシルエットは……

「す、ステビアさん!?」

「ど、どういうことだよ!?なんでお前がここに……!?」

 

 

 

 2人は動揺し、目の前に現れたステビアに話しかける。

……が、しかし。

「………。」

いつも饒舌だったステビアは、一言も喋らない。

否、喋らないどころか表情筋がピクリとも動いていないのだ。

しかもその身体は……

 

 

 

「が、画素が粗い……!」

「そうかコイツ……MA-Ⅰがコピーした偽物だな!?」

ボアは真実に迫る。

彼の言葉の直後、ステビアは沈黙を保ったまま腰元に手を伸ばす。

 

 

 

 それはボールの投擲……開戦の合図である。

中から飛び出してきたのは、2匹のマホイップ。

ピンクの個体と黒の個体……それもMA-Ⅰによって生み出された偽物のポケモンだ。

 

 

 

「チッ……やるしかねぇか……!」

「えぇ……何よりステビアさんを勝手に真似されるのは腹立たしいですからね……!」

 

 

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