【ポケモン二次創作】ポケットモンスター Soul Divide   作:伊崎つりざお

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【第097話】思考の共鳴、適解の限界(vsテイラー)

 テイラーに対し、秘めたる想いをぶつけたレインとお嬢。

その前に現れたのは、テイラーがMA-Ⅰの記憶デバイスから召喚した英雄『盾の王・ザマゼンタ』。

厳密にはMA-Ⅰの操る偽物だが、それでも真偽の如何にさしたる相違点はない。

『GRRRRRRR………』

低い唸り声とともに、お嬢たちを威嚇する。

 

 

 

 その様子をひと目見て、到底一筋縄では行かない敵であることを彼らは悟る。

2人で束になってやっと勝負になるか否か……そのレベルの相手だ。

 

 

 

 こうなっては戦力を惜しんでなど居られない。

レインも覚悟を決め、お嬢とともにボールを投げる。

「行けっ……ジメレオンッ!」

「みゅる……っ!」

飛び出してきたのはジメレオン……唯一、彼がテイラーから取り上げられなかったポケモンだ。

 

 

 

 そして遅れて、お嬢もボールを投げる。

「アンタも行きなさいッ、ラビフット!」

「みっ……!」

相手がはがねタイプのポケモンであると踏んでの選択……現状では最適解だ。

 

 

 

「……まぁ、ウチの指示はいらんやろ。ザマゼンタ、痛い目見してやり。」

『GRRRRRRRR!!』

ザマゼンタは開戦の狼煙、とでも言わんばかりに咆哮する。

その一声のみでこちらの戦意を削ぎ落とすほどの威圧感……恐ろしいものだ。

 

 

 

 しかしお嬢とレインは怯まない。

彼らの矜持に賭けて、何が何でもこの敵は倒さなくてはいけない。

何より……

「行くわよレイン。あんな奴に、アンタの限界なんか決めさせるものかッ……!」

「………ッ!」

レインは何も言わず頷き、すぐに戦場の方へと目をやる。

 

 

 

 

 

 瞬間……彼は左手をかざして指示を出す。

「ジメレオンッ、『みずでっぽう』だ!」

「みゅるっ……!」

レインの定石は先手必勝……瞬きよりも速い狙撃が、ザマゼンタの顔面を襲う。

 

 

 

『GRRRRRRRRR!』

しかしザマゼンタはそれを正面の盾で受けてしまう。

『みずでっぽう』はその場で弾け飛び、ただの飛沫と砕け散る。

本体にはダメージが入らない。

 

 

 

 ……が、ジメレオンの狙いはそこではなかった。

水飛沫が散ったその瞬間、ジメレオンは既にザマゼンタのすぐ下を陣取っていたのである。

そう、その姿を一つ前の攻撃で消して這い寄る……彼の得意戦術だ。

「『ふいうち』ッ!」

「みゅるっ……!」

ジメレオンの目にも留まらぬのアッパーパンチが、ザマゼンタの下顎を殴りつける。

 

 

 

「はっ、その程度で足りるわけがあらへんやろ!」

テイラーの言う通り、ザマゼンタは『ふいうち』程度でダメージを与えられる敵ではない。

しかしその程度、お嬢たちとて把握している。

本命の攻撃はそこではなく……

 

 

 

「ラビフット、『ブレイズキック』よ!」

「みみっ!」

そう、ジメレオンとほぼ同時に上を取っていたラビフットの攻撃だ。

彼は上空からの『ブレイズキック』で、ザマゼンタの脳天を撃ち抜いたのである。

つまるところ、ジメレオンとラビフット……上下からの挟撃というわけだ。

力の逃げ場がない上に効果は抜群……普通のポケモンであれば大ダメージは必至である。

 

 

 

 ……が、しかし。

『GRRRRRRRR!』

「なっ……効いてない!?」

ザマゼンタは特に耐久力に優れたポケモンだ。

それもそのはず……彼は昔、数十メートル級の超巨大ポケモンたちを身一つで倒してきたほどのポケモン。

正面からの攻撃は、如何に強力なものであれ受け付けない……誇張でもなんでも無く、事実として『正面からの攻撃は通らない』のだ。

 

 

 

 だが、彼の恐ろしさはそこにとどまらない。

『GRRRRRRRRRRRR!!』

ザマゼンタは表情ひとつ変えずに咆哮すると、そのまま事前動作の一つもなく前進してきたのである。

あまりに唐突な加速に、ジメレオンもラビフットも対応しきれずに弾き飛ばされる。

「みっ……!」

「みゅるっ……!」

小柄で身軽な分、衝撃の影響は大きい。

彼らにはかなりのダメージが入る。

「なっ……!」

「速すぎるだろ……!」

その動きに、彼らはただただ言葉を失うしかなかった。

 

 

 

「ははっ、最初から『きょじゅうだん』をぶっ放すとは……キッツいなアンタ!」

テイラーは高笑いをしながら、戦況を見守っている。

『きょじゅうだん』……本来ならば巨大なポケモンを倒すための特別な奥義だ。

それを普通のポケモンである彼らに使うというのだから、あまりに大人げないのだ。

 

 

 

 だが、それでも。

ラビフットもジメレオンも、脚力と機動力は上位クラスのポケモンだ。

吹き飛ばされてもなお、受け身を取ってダメージを最小限に抑えたのである。

しかもラビフットに至っては、しっかりと足を下に向けて着地をしていたのだ。

 

 

 

「よし……ラビフット!『あなをほる』で身を潜めてッ!」

「みみっ!」

着地と同時に、ラビフットは足をドリルのごとく地面にめり込ませる。

まもなく、彼の姿は地中深くへと消えたのだ。

 

 

 

 そして残されたザマゼンタとジメレオンはにらみ合う。

『GRRRRRR……!』

「みゅい………!」

「動くなよジメレオン……」

両者の膠着状態が続く。

しかしこれは彼らの狙い通りだ。

 

 

 

 ジメレオンが気を引いている時間……あるいはジメレオンに『きょじゅうだん』が飛んできた隙に、背後からラビフットが奇襲を仕掛ける……という算段である。

言葉にせずとも、お嬢とレインは互いの使いそうな手を読んでいる。

何度か戦った者同士……その戦いを見た者同士。

まさにライバルだからこそたどり着ける境地だろう。

 

 

 

 だがザマゼンタとて、ラビフットの身体が消えた時点で奇襲のひとつふたつは警戒している。

それに彼には、攻撃を焦る理由がない。

つまり、この盤面はザマゼンタからは絶対に動かないのである。

正面のジメレオンが使える攻撃などたかが知れている。

つまり、後ろからの攻撃にさえ気をつけていれば問題はないわけだ。

 

 

 

 ……その時。

ラビフットが突撃した穴から、一縷の光が漏れる。

と思うや否や、そこから繰り出されたのは電気を帯びた豪速球『エレキボール』だ。

『GRRRRR……!』

そう、ノロジムでお嬢が使った「地下からのエレキボール」である。

完全に予想外の方向から、ラビフットは攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

 

 

『エレキボール』は壁……天井……また壁……と反射していき、その弾道を誰にも捉えさせない。

着弾のタイミングを見計らうべくザマゼンタは目を泳がせる……が、あまりに不規則な光弾の挙動は、彼の脳では処理が追いついていない。

おまけに気づくと、その弾数は2つ……3つと次々に数を増やしている。

ラビフットが次から次へと、攻撃の補充を行っているのだ。

やがてザマゼンタの周囲には、文字通り『エレキボールの弾幕』が完成する。

 

 

 

 そう、お嬢とラビフットの狙いは地下からの奇襲ではない。

その更に裏を読んだ行動……正面からの撹乱だったのだ。

 

 

 

 そしてこの攻撃は、ただの撹乱のみに非ず。

「レインッ、決めなさい!」

「行くぞジメレオン!『みずでっぽう』で全て狙撃しろッ!」

「みゅるるッ……!」

レインの指示の後、ジメレオンはクイックドロウで5発の『みずでっぽう』を発射する。

 

 

 

 それらは全て、無駄なく隙なく『エレキボール』の本体を撃ち抜いて破裂した。

当然、周囲には多量の水飛沫が上がるわけだ。

空気中の水飛沫と電気……もうおわかりだろう。

 

 

 

 そう、ザマゼンタは『全身』で電気を浴びたのである。

『みずでっぽう』の相乗効果で範囲が拡大した電気を……!

『GRRRRRRRR……!』

「よし……!効いてる……ッ!」

誰がどう見てもクリティカルヒット……明らかに大ダメージを受けている。

お嬢とレインの策が功を奏し、格上を打ち負かしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んなわけあらへんやろ。よう見てみ。」

「…………!」

テイラーの言葉の後、彼らは電撃を食らったザマゼンタを見る。

確かに彼は攻撃を受けていた……が、しかし。

 

 

 

 その身には傷一つ付いていない。

ダメージらしいダメージが全く入っていないのだ。

「なっ……じゃあさっきのは……!?」

「電気を受けてちょっと痺れとっただけやろ。……少なくとも、ダメージなんか通っとらんわ。」

 

 

 

 彼女の言う通り。

確かにお嬢とレインの立てた作戦自体は、非の打ち所がないものだった。

ラビフットとジメレオンに出来ることを最大限に活かし、最大手の攻撃を加えた。

では何がダメだったのか。

 

 

 

 ……能力の差だ。

絶対に越えられない、数字の差……実力の差だ。

いくら作戦が完璧でも、用いる武器そのものの力が及ばなくては、効果が現れないのである。

あまりに残酷で無骨な理論……しかしこれが現実だ。

 

 

 

 皮肉にもテイラーの言う通り……彼らは真の意味で『限界』を突きつけられたのだ。

 

 

 

「そ……そんな……!」

「もう分かったやろ?この世にはな、出来ることと出来ないことがあるんや。……アンタらも現実を知れ。」

テイラーのその言葉の後、ザマゼンタは隙を計ったように咆哮する。

 

 

 

『GRRRRRRRRRRRRRR!』

直後、彼の口から吐き出されたのは数発の『きあいだま』だ。

「ふ、ふたりとも避けてッ!」

「みみっ!」

「みゅい!」

ラビフットもジメレオンも、飛んできた光弾を回避しようと空中へ跳躍する。

彼らのスピードを持ってすればその程度は不可能ではない。

 

 

 

 しかし……その直後に飛んできた『きょじゅうだん』を回避することは流石に不可能だった。

2匹はザマゼンタの突進に弾き飛ばされ、無残にも壁際に叩きつけられたのだ。

 

 

 

「ら、ラビフット!ジメレオン!」

「クソッ……ダメか……!」

レインの表情が、徐々に諦めの色に変わっていく。

彼には見えかけている……テイラーの言う「限界」が!

「何言ってんのよ!まだ……まだ……!」

お嬢はレインを叱責しつつ、なんとか策を模索するべく思考を巡らす。

 

 

 

 ……が、何も出てこない。

この期に及んで何も……彼女の脳裏には浮かばないのだ。

「『まだ』……?何寝ぼけたこと言うとるんや。もうアンタらに出来ることはあらへんッ!ザマゼンタ、さっさといてこましたれッ!」

『GRRRRRRRRRRRRR!』

ザマゼンタは更に攻撃の構えに出る。

次の『きょじゅうだん』でトドメを刺しに来るつもりだろう。

万事休す……これにてチェックメイトだ。

 

 

 

 

 

 しかし……だ。

「っ……みみっ……!」

「みゅい………!」

ラビフットとジメレオンは、そこで自らの敗北を受け入れなかった。

倒れ伏したまま攻撃を受けることを忌避し、立ち上がってザマゼンタの方を向く。

 

 

 

 

 

 彼らは今、己の「限界」を超えようと手を伸ばす。

既に戦うだけの気力も体力もない。

それでも……それでもだ。

飽くなき克己心が、強い執念が……彼らの後押しをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて彼らの身体は、七色に輝き始めた。

 

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