いきなりインフルース王国に飛ばされます。
位置的には……王国首都とリックベルの街の間辺りに飛ばそうかと思います。草原ですし。
第一話
俺は今、自分が居た世界とは違う世界……異世界の草原を一人歩いている。舗装はされておらず、かろうじて馬車か何かが通ったであろう跡があり、それが唯一の道しるべとなっている。
何故、ここが異世界かと思い当たった根拠を言うと……。
「間違いなく背後のあれなんだよなぁ……。」
立ち止まり後ろを見ると、距離が分からないがここからかなりの距離があるはずなのに見え、天を突き抜けるような白い渦状の何か……、竜巻が一番しっくりくると思われるのが背後に見える。今いる場所は草原なのだが、右を見れば地平の先には火山と思われる山脈地帯が見える。逆の左側には大分向こう側に森が見える。
そんな右も左も分からない場所に一人で歩いているか?そこから振り返ろう。
目を覚ますと、周囲一帯が真っ白の部屋に居た。
「あ、起きられましたか?」
声がする方を見ると、そこには白いベールの様な衣を身に纏っている人が居た。よく見る女神像のそれである。
「どこか身体に異常とか違和感を感じるとか不具合は無いですかね?」
「あ、えっと……貴方は……?それにここは?」
「ここは私の部屋で、私は女神です。」
「女神……?」
目の前にいる彼女?が微笑みながらこちらを見る。いや女神って……確かに神秘的な美しさではあるが……。それに部屋って白一色で何も無いじゃないか。
「はい。そして、貴方はその女神に選ばれしもの……。」
「俺が……?何に?」
「私の暇つぶしの相手に……ですかね?」
「え?暇つぶし……?」
「と、言うのは冗談です。実は貴方にはこれから異世界に行ってもらいます。」
「はい?異世界に?えーっと何かのなりきりとかでしょうか?」
「それは
何やら急ぐように腰辺りをまさぐり始める。
「あったあった。簡単に説明しますっ。まず現地に降り立ったら……なんて名前だっけ?えっと、そうそう。『リックベル』と言う街を目指しなさい。そこまでの道筋は……この中に入れておくので後で読むように。」
混乱のまま渡される皮の袋?を受け取る。ナニコレ。
「その中には最初に必要なセットが色々入っているので貴方の旅の助けになると思うわ。」
「あの、何ですかこれ……?」
「後で一人で確認してね?そろそろ飛ばさないと時期がズレる可能性があるから。」
天使の子が遺跡の調査から戻ってくる頃だと思うから。と独り言呟きながら、いそいそと何かを準備し始める。
「それじゃあ、また後でね?ちゃんと生き残ってね。」
「いえっ、何の話ですか!?それに生き残るって……!」
不穏な台詞で我に返るが、その瞬間自分の周囲一帯に光が浮かび上がる。
「うっ!なんだこれ。」
目も開けられない程の光に包まれている事だけが辛うじて分かる中、光が収まるのを待つ。
暫くしてから光が収まった事を確認し目を開ける。
「な……なんだ?どこなんだ此処は……?」
目に飛び込んできたのは、見渡す限り緑一色。草原……何だろうか。吹き抜ける風が夢とかでは無いと思わせる。
「さっきまで居た白い部屋は……?」
それにあの女性は……。
「此処は……別の世界って言っていたな。」
自分で言っているが、現実味がない。
「しかし……。」
辺りを見れば見る程、ここが元の居た世界では無いと分かる。特に……。
「あの竜巻みたいな渦は……?」
天を突き抜けるかのような巨大な竜巻。ここから見ても暴風で吹き荒れているのが良く分かるほど巨大。
「俺は一体どこに来てしまったんだ。」
現在地すら分からない草原のど真ん中に居るのだけは確かだが。
「そういえば……。」
革袋の中に色々入れたと言っていたな。助けになるとか。
封を開け、中身を逆さにして揺らす。すると中から、丸い金属やら、液体が入っている小瓶、恐らく水と思われる瓶。燻製らしき食べ物が入っていた。
「なんだこれは。」
一つ一つ確認していく。金属……見た感じだと硬貨に見えるが、お金と思われる。次に小瓶だが、緑やら青やら黄色やらとカラフルな中身をしている。………多分だけど、ポーションなんだろう。
残り二つは単純に食料である。
「ていうか、こんな小さな皮の袋によく入ったな。」
見るからに容量オーバーである。詰め込み過ぎなのでは?
袋の中を漁ると、一つの紙が出てくる。多分これが言っていた指標となる物の筈。
開いて中身を読むと……。
No1.新天地に降り立とう ★COMPLETE★
new!.リックベルの街を目指そう!
と書いてある。これは……進捗状況なんだろうか?
他を見ていると、『リックベルはここから南に歩けば到着可能!』と記載されてる。多分詳細的な何かなんだろうな。
「てか、南ってどこ方向だよ……。」
何が何だか未だに理解は出来ていないが、目指す先だけでも分かったのは安心した。
「取り敢えず、動いた方が良いよな?留まっても意味なさそうだし。」
袋の中の食料はそこまで多くは無かった。つまりそれまでに着くことが可能……で良いんだよな?
袋を腰に掛け、歩き出す。方向はあの巨大な竜巻とは逆方向にした。理由は何となくあれに近づくのは怖いからである。あんな大災害があるのによく無事でいるもんだ。
そんなこんなで旅が始まったのが、一時間前ぐらい?いや、そんなに経っては無いかもしれない。
「運よく道と思われるのを見つけられたのは幸先が良さそうだな。」
右手には川が遠くに見えており、その向こう側には火山地帯が広がっている。
「この先を抜けないといけないのか。」
歩いていると、草原地帯から、山岳……とまでは行かないが草が消え、砂などが多くなってきている。
「ここらへんで少し休むか。」
そこら辺に丁度座れる岩に座りながら水分を摂る。ついでに燻製みたいなやつ……干し肉であろう物を食べてみるが、硬くて噛み切るのに時間が掛かった。これは異世界あるあるなんだろうか……。
その後、足の疲れが無くなった辺りで再度歩を進める。
そこら辺に石や岩などが転がっており、明らかに落石したような痕跡が残っている。上を見れば崖が広がっており、そこから落ちてきたことが分かる。危険なのでなるべく川沿いに寄りながら歩いて行く。
足場に気を付けながら進んでいくと、前方に人影が見える。
「お、人が居る。」
自分以外にも徒歩で向かっている人が居た事と初めて自分以外の人見つけたという事もあり、嬉しくなって少し急いで向かう。
「すみませーんっ。」
こちらの声が届いていないのか、反応が見えない。どうやら、岩場に座って休憩をしているみたいである。
「んん?子供?」
近づいて気づいたが、背丈が自分より小さかった。それに、衣服を着ておらず腰回りだけに青い布を巻いているだけだった。え……?もしかしてこの世界の文化レベルって……。
不安が募って行きながらも近づいていく。十数メートルあたりになって嫌な予感がしてくる。まず、肌の色が人と思えないのと、耳が鋭利な三角をしている。しかも髪が無く禿げている。
もしかしたら、そんなわけ、と淡い希望を持ちながら数メートル付近まで歩きながら近づく。まだこちらに気づいていない。
目の前の人物から声が漏れる。『キキキッ』と人から発する音では無いと知り、歩みを止める。
多分……俺の予想が正しければ、目の前の人型の生き物は……人では無い。しかもこちらに害を成す方の生き物だと思われる。
そう思ってしまったからか、自然と足が下がろうとする。バレない様にと……。
しかし、後ろに下がろうと足を下げたのが良くなかったからか、砂利を引きずるような音を立ててしまう。
「………キキ?」
音を聞き、何かとこちらを振り返る顔がスローモーションに見える。ゆっくりとこちらを見る顔が視界に入る。耳近くまで大きく裂けた口元、獣の様な目。無意識に喉が閉まるのが分かる。
向こうは此方を視界に収めると、まるで獲物を見つけた様に大きく口を開き、笑った。
はい。さっそくのエンカウントです。色合い的に敵キャラは『迷い入った小鬼』のはぐれ辺りになるかと……。