この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

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結騎解放の杖作成の為の素材集めのお話です。


第十話

 

この日、俺たちは以前に訪れた、湿地森にやって来た。

 

「今回はフィアの杖に必要な素材を集めるために来たわけだが……。」

 

今日の目的をアヴァロから再度説明が入る。今回はフィアが以前に取り逃がした結騎を捕まえるための杖を造るために素材を集めに来た。必要な素材は、『しなる枝』『水精魂片』『水草』である。

 

「水草は前回で既に揃っている。今回はしなる枝と水精魂片を集める必要がある。これらはそれぞれ水精と木精から採れることが分かっている。」

 

「それじゃあ今回はその二つを倒せば良いってこと?」

 

「そう言う事になるな。」

 

「分かった、私とアヴァロなら余裕だねっ!」

 

俺には不可能だけどな。()()()

 

「一応、現地点から南に向かえば木精、北に向かえば水精が居るはずだ。」

 

「どっちから行こうかー?」

 

「それなら二手に分かれないか?俺はこいつと北の水精に、アヴァロとフィアさんは二人で南にって感じで。」

 

「効率を考えればそうなんだけどな、そっち一人だと危険かもしれないぞ?」

 

「大丈夫、俺は戦わなければ基本安全だし、戦闘はこいつに任せるつもり。」

 

足元に居る水精を指さす。以前より水の面積が大きくなってきているのが分かる位には成長を遂げている。

 

「その子が居れば戦うってことになっても任せれるから大丈夫だと思うよ、アヴァロ?」

 

「それもそうだな。もし想定外の事や危ないと判断したら即座に撤退してきてくれ。」

 

「了解、安全第一で行くよ。」

 

「それじゃあ、お互い頑張ろうねっ。」

 

二人と一時別行動となり、足元の相棒と北へ向かい始める。ここ最近は専ら回復薬……治癒の水・小を造るのをひたすら繰り返している。

 

一日の初めに準備をし、水精を連れて探索しに潜る。目的地に着いたら周囲の安全を確保してからプテテットと対峙する。

 

一匹だけの場合は分裂するのを待ち、数匹に増えた辺りで一匹を残して他を狩る。そして残った一匹が分裂するのをまた待つ。ただそれを繰り返し、素材がある程度確保出来れば一匹残し帰還。

 

それを工房へ持ち帰り治癒の水を造る。初めはアヴァロに頼んでいたが、わざわざその都度頼むのは手間だと考え、制作方法を学び自力で作れるようにまでこぎ着けた。練習台は幾らでもあったので恐れず何回も造りまくった。今では工房へ持ち帰り一人で造るという所まで成長出来た。

 

更にお得なのが、足元で俺と一緒に歩いている水精。こいつが毎回プテテットを狩り、たまに他に湧いた小鬼や精霊を狩ったりを続けた結果、なんかでかくなってきている。形も以前の丸っこいままでは無く、型を作れるようになった。何の役に立つかは分からないが成長しているのは間違いない。その内他の個体同様に人型を模倣出来る様になってくれるだろう。

 

「お、着いた。」

 

そうこう考えている内に、目的の水源地に辿り着いた。見た感じ以前みたいにおかしくはなっておらず、あちこちに人型の水精が居るのが見える。……見える範囲では四匹辺りか。

 

その前に採取と思い、周囲を探索する。水辺から少し離れた場所で二か所程採取可能な素材があったため回収しておく。採取を終え立ち上がると、水源地に居た水精がこっちに気づいたのか、水辺まで寄って来ていた。

 

戦闘が始めるのか?と考えていると、俺では無く足元の水精をみている様子。それに気づいたのか足元の水精も前を向き、水辺の水精へ近づいていく。

 

お互いがお互いを見つめ合う距離まで近づくと俺の方の水精が急に蠢くように体を伸ばしたり縮めたりしている。その様子を目の前の水精は見守っている。

 

……これは、何か種族間のコミュニケーション?をしているのか?

 

体を伸ばしていく内に、どんどん人に似た形を作ろうとしているのが分かった。多分目の前の水精をお手本に自ら同じ状態にしようとしている。それを理解しているからか、目の前の水精も黙って見守っている。

 

なるほど、次のステージに上がるための儀式みたいなもんか。

 

ここにきて精霊の生態を目の当たりにしたことに驚きを感じる。頑張れ、俺もちゃんと見てるぞ。

 

何度か人型になろうと試みるが、上手くできずに失敗する。今回は駄目だったのか、元の丸っこい見た目に戻った。

 

それを見て目の前の水精もくるりと背を向けて他の水精の方へと帰ろうとする。……まぁ、今回は駄目だったが、次もあるからまたその時だな。

 

そう考えながら、歩み寄ろうとした時、体を大きく広げ油断している水精を背後から襲い掛かる。油断していた水精は抵抗する間もなく取り込まれてしまった。

 

「………。」

 

……お前って奴は……。確かに今回はそいつから採れる素材を集めに来たから倒すのは間違っていない。ああ、間違ってないとも、でもさぁ……今のは反則だろ。駄目だって人……じゃない、精霊として。

 

何処でそんな子になってしまったのかと遠い目をしてる視界の端で、次から次へと水源地に居る水精へ喰らい付いていく姿が映る。ああ、前回も似た光景を見た気が……。

 

気が付くと、人型の水精は全て消えており、満足気な水精がこちらに戻って来ていた。俺の足元まで来て何かを吐き出す。

 

「ああ、回収ありがとな。」

 

恐らくアヴァロ達が求めている素材であろうのが三つ、あと一つは手袋と思われる物が一つ。

 

「よく分からんから取りあえず持ち帰ろうか。」

 

何とも言えない気持ちのまま素材を袋の中にぶち込み、一旦戻ることにした。

 

別行動をした地点まで帰ってきたが、まだ二人は来ていなかった。時間もある事なので休憩を挟む。

 

「そろそろ食べ物もどうにかしたいなぁ……。」

 

携帯可能な物を基本的に持っているが、袋の中に入れられるのなら日持ちなど考えなくて済む。後で考えておくか。

 

食べ終わり、口直しに瓶から水を出し飲んでいると、腕を冷たい何かが突いてくる。

 

「……?おおっ、それか。」

 

下を見ると、足元の水精が器用に体の一部を伸ばして触れて来ていた。

 

「水が欲しいってことか。」

 

持っている腕をわざわざ触って来たという事はそう言う事なんだろうと思い、瓶を開け注ぐ。

 

「ほーら、今日も素材集め頑張ったしな、好きなだけ飲みな。」

 

求めて来るのでどんどん足していく。今日はいつもより飲んでいる量が多いな。水精を取り込んだからか?

 

暫くして満足気に体を離してので袋に戻す。アヴァロたちが戻るまでどうしようかと考えていると、足元の水精がまた体を伸ばしたり縮めたりし始める。

 

失敗したさっきとは違い、少しずつだが確実に人の形を成していく。その様子を何気なく見ていた。

 

「お、おおお……。」

 

次第に綺麗な人型を作り保ち始めた。崩れる気配も見えないので完全に安定したと思われる。

 

自分の変わった姿をくるくる回りながら確認している。……うん、完全に人にしか見えないわ。

 

頭から、足首辺りまで完全に人の見た目になっている。顔を髪もあるし、ワンピースらしき服装も纏っている。水源地で見た水精を同じ見た目である。

 

「おめでとう。これは進化した……で良いのか?まぁ、何はともあれ良かったな。」

 

大きさはさっき見た個体よりは少しだけ小さく見えるが関係なさそうだな。大体……一メートルぐらいかな。今後は肩などに乗る事は無さそうだ。

 

こちらを見て嬉しそうに口を開く。目などのパーツは無く口だけであるが表情は何となく理解できる。

 

両手を広げて俺に抱き着いてくる。また溺れるのかと思ったが、体に沈まずに表面にぶつかり止まる。

 

「制御可能になったのか……?」

 

不思議に思い体を触っている。感触は冷たい水の様だが触れる。体としてきちんと構成しているみたいだ。進化したんだな……。

 

新しく進化した水精を観察しながら二人を待ったが、帰ってくる気配がない。

 

「素材集めが難航しているのか?」

 

待っていても仕方が無いので迎えに行くことにした。

 

「二人が帰って来ないから迎えに行こうかと思う。」

 

水精にそう告げると、首を大きく頷かせ俺の横に付いてくる。反応が分かりやすくて楽だわ……。

 

南に向かい、くねくねと曲がる道を歩いていると、道のど真ん中に大きな木が動いていた。

 

「多分、あれが木精だよな……?」

 

自信は無いが、そうとしか思えない。しかも嬉しくない事にこっちに気づくや否や敵意満々である。

 

「水精よ、やってしまいなさいっ。」

 

正面の敵を指す。水精もそれに反応するように指を指す。すると、水精から水の塊が浮かび上がり木精へ目掛けて高速で飛んでいく。

 

高速で飛来する水の塊が木精の頭に直撃する。ぶつかった衝撃で弾ける音が鳴り響く。立て続けに幾つか同じような水の塊を飛ばしていく。音にビックリしながらも木精を見ると、体のあちこちが削れており、頭が消し飛んでいた。

 

頭が潰されたからか力なくその場に崩れ落ちる。

 

「……もう終わったのか?随分と早かったが……。てか、威力化け物かよ。今の奴を瞬殺って。」

 

弱い相手には見えなかったが、目の前のこいつが進化してかなり強くなったのか?

 

疑問に思いつつも倒した木精から枝を幾つか拾う。綺麗に倒してくれたおかげで楽に素材が手に入ったようだ。木精を倒してくれたことを褒めながら頭を撫でると、両手を広げてこちらに抱き着いてくる。仕方なく満足するまでそのままにしておいた。

 

水精が俺から離れたのを確認し、再度南へと歩き出す。暫く歩くと少し開けた場所に出る。広場の中央でアヴァロとフィアが座っており何やらお喋りをしているご様子、多分休憩中なんだろう。

 

近づいて声をかけると向こうも気づいた様でこちらに大きく手を振りながら返事をする。

 

「こっちは多分終わったと思うが、そっちはどんな感じ?」

 

「私達の方も無事終わったよ。必要な物も揃ったと思う。」

 

「一応今日集めようとしていた数は達成できたし大丈夫だ。サイトウの方は?」

 

「多分足りてる。ドロップしたのがあるから確認して欲しい。」

 

アヴァロに確認してもらうため本日の成果を袋から出して渡す。

 

「うん、これで間違いない。ていうか一つで大丈夫だったのに三つも出たのか……。しかもこれはグローブ?」

 

謎の手袋を観察している。三つなのはうちの子が色々ね?

 

「それよりサイトウさん!その子、大きくなってない!?」

 

「あ、それは俺も気になった。何があったんだ?」

 

「多分進化かなんかしたんだと思う。北に居た水精とかを喰らってたらこうなった。」

 

「見た目が完全に『ティエネー』だもんな。取り込んだ事で成れたのか?」

 

「前のも可愛かったけど、こっちも可愛いいぃ。」

 

不思議そうに考え込むアヴァロだが、フィアは水精と楽しく戯れている。

 

「そういえば、この子に名前とか付けないの?」

 

水精に抱き着きながらこちらに聞いてくる。

 

「あー、名前か……。名付けた方が良いか。」

 

見た目も人になっているのだから識別の為にそこら辺もちゃんとしていた方が良いか。

 

「因みに何かおすすめはあったりするか?」

 

「駄目だよサイトウさん。そこはちゃんと育ての親が決めないと。」

 

「そうなのか?」

 

「そうなのですっ!そのほうがこの子も嬉しいに決まってるよ。」

 

ビシッと言うフィアに押されながらも名前を考える。種族名が水精ティエネーだから……ティー…エネー……。

 

「エネ、とかにしておく。」

 

種族名から採用するのは安直だが分かりやすい方が良いだろう。

 

「エネちゃんね!よろしくね。」

 

「これからはエネって呼ぶから、反応してくれよ?」

 

フィアと遊んでいるエネに向かって握手として手を出す。自分の事だと認識出来たのか俺に向かって手を出してペタペタと触ってくる。……握手って言われても文化が無いか。

 

「よし、素材も集まった事だし、そろそろ城砦に帰ろうか。」

 

「これで私専用の杖が作れるねっ、はやくあの子とも仲良くなりたいよぉ~。」

 

無事に素材集めも完了し、三人と一匹は城砦へと帰った。





無事水精ティエネーと成れました。戦闘能力も上がったのでますます主人公が要らない存在に……。
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