この世界を生き抜く為に出来ることは……。   作:コクーン√

12 / 46

単独で売り込みの話です。でも対して売り込みはしてなかったり……。




第十二話

 

「さてと、それじゃあ始めましょうかね……。」

 

1人でクミル村の一角で腰を下ろす。今日はアヴァロとフィアとは別行動である。どうやら村人から以前造った井戸の近くに怪しい岩場があったという話を聞き様子を見に行くとのことだ。わざわざ全員で行く必要も無いと話し合い俺は村での宣伝を引き受けた。

 

「それにしても……フィアさんが持っていたあの像は何だったのだろう……?」

 

多分アヴァロに作って貰ったんだと思うが、大事そうに持っていたので結構気に入っている様に見えた。

 

「まぁいいか。それより売り込みをしよう。」

 

なるべく平坦な場所を探し、風呂敷を広げそこに売るための商品を並べていく。物は様々で、アヴァロが村に役に立つと言って造ったものから家庭的な小道具まで、中には木の盾や小さな弓まであった。村人が狩猟などに使うのだろうか?

 

俺の方ではいつも通りに治癒の水を適当に並べて置いた。前回ここに訪れてから城砦では主に素材集めと水精達の世話をしていた。エネがボス役をしており俺が特に何かしなくてもエネに指示を出すだけで動いてくれる。お陰で素材集めは捗るし探索の範囲を広げることが出来た。今日は水精達はお留守番をしてもらい、エネだけに付いて来てもらった。しかし足元には居ない。

 

「出て来てもいいが、目の見える範囲に居てくれよ?」

 

腰に掛けてある手袋を触りながら声をかける。以前湿地森で手に入れたよくわからないグローブだが、何かの作業に使えるかもと腰に掛けていたのだが気が付くとエネが入り込んでいた。質量的に無理だろと思ったが、なぜだかあの水量が綺麗に収まっている。試しに手に装備してみたが特におかしなところは無かった。強いていうならヒヤッとする程度。これもファンタジーとして考えるのを放棄した。そうなっているのだから仕方がないという事で。

 

商品を並べ、行き交う村人に挨拶と商会の宣伝をしていく。俺も顔も覚えられていたようですれ違う人から心地いい挨拶が返ってくる。すっかりこの村ではグアラクーナ商会は周知されている様で噂を聞いて尋ねる人も居た。

 

「アヴァロのが人気あるなぁ。」

 

以前にも商会から購入した人から便利とか物持ちが良いとお礼を言われる。特に主婦勢からは小道具の人気が高い。流石は鍛梁師だと思う。それに対して俺のは一つも売れはしない。……まぁ?必要に無いって事は良い事だし?買われない事が一番だから……。

 

多分村などでは求められている品はアヴァロが正解なんだと見てて分かる。そこはほんと流石としか言えない。

 

その後も売りを続け、昼を過ぎた辺りで一旦飯を食べることにした。と言っても変わらずのラインアップだけど。

 

それもどうにかしないとなぁ……と前も同じことを思っていたと考えながら口に運んでいると親子と思われる二人がこちらに来る。飯中だが対応する為に中断する。

 

「いらっしゃいグアラクーナ商会へ、何かお求めで?」

 

顔を上げてみると、見覚えのある顔に出会う。特に親御さんの方は……。

 

「以前に娘を助けて頂いた者ですが、覚えていますか……?」

 

「ああ、あの時の方ですか。勿論覚えていますよ?という事はお隣に居る娘さんは無事元気になったんですね!」

 

「……はい、あの時は……ありがとうございましたっ!ほら、この人が話していた貴方の恩人よ?」

 

泣きそうな母親と、隣に居る女の子が俺に元気そうな声で感謝を伝えてくる。

 

「あれから特に問題はありませんでしたか?」

 

「はい。寧ろ以前より元気になっています。なんとお礼を言えば良いのか……。」

 

「いえいえ、それより、一応大丈夫か念のため確認しておきますね。」

 

母親から許可を取り、娘さんの髪を上げ、顔の皮膚部分を見ていく。

 

……マジで完治してんな。まるで怪我がなかったかのようだ。

 

俺がまじまじと見ているのを恥ずかしそうにとくすぐったい顔をしながら黙っていた。

 

「腕の方も大丈夫そうですし、経過後に問題は無さそうですね。」

 

「あの……娘に使って下さった薬のお代なのですが……。」

 

「いえ、お代は特に受け取る気はありません。そのつもりで使いましたから。」

 

ここでお代は……とか言ってもあれの価値を知らない俺が値段指定するのは恰好悪いし、今更要求するのもなんか嫌なんだよなぁ。しかもアヴァロのあの言い方的に結構お高い奴だし、多分払えないと思う。

 

「そういうわけにはいきません……娘を助けていただいたのです。」

 

「では、今回は初回限定で無料とかどうでしょう?商会を宣伝する為に使ったという事にします。」

 

とは言ってもあのレベルはもう無いけどな。

 

「せめて、何かお返しが出来れば良いのですが……。」

 

いやいや、そんな縋るような顔でこっちを見ないでくれ。逆に困る。

 

「あー……そうですね。実は困った事がありまして……。」

 

「何でしょうか!?私に出来ることであれば……!」

 

おお、こわっ。そんなグイっと来ないでくれ。

 

「実はですね、城砦の方で何か栽培でもしようかと考えているのですが、どれにしようか迷っていまして、この村で何かおすすめはあったりしますか?」

 

「食料……という意味で、でしょうか?」

 

「そうですね、野菜でも果物でも何でも良いのですが。」

 

「野菜であれば村でも多少は……。」

 

そういえばちらほら搬送しているのを何度か見かけたな。

 

「私の家にもあるので、もし宜しければ来ますか?」

 

「良いのですか?」

 

「はい。是非来てください。」

 

適当に言ったつもりだが、思わぬところで食の改善が出来そうだ。

 

置いていた商品らを片付け、親子らの後を付いていき家へとお邪魔する。

 

「こちらが村で扱っている物です。恐らく大体はあるかと……。」

 

言われてそちらを見ると多分……芋類と思われる物と、白いこれは……大根か?いや、カブかもしれない。という微妙な根菜類があった。他には見た事もない野菜が幾つかある。

 

一つ一つ解説を頼んで見ると喜んで生き生きと解説を始めた。野菜が好きなんだろうか?

 

その間、娘さんが暇そうだったのでエネに遊び相手をして貰った。

 

どうやら、イモ類はそのまんまで良いらしい、白い奴はカブよりであった。まぁどちらも大差はないかもしれないが。

 

他のは野菜で合っている。料理や漬物にも使うらしいが……如何せん見た事も無いから味の予想が付かない。

 

「こちらの物たちは、どの様な味がするのですか?」

 

「どの様な味ですか?えっと、そうですね……あ、もし良ければ実際に食べてみてはどうでしょうか?」

 

「実際にですか?こちらとしてはありがたいのですが……良いのですか?」

 

「はいっ、お返しには程遠いですがこの程度で良いのなら。」

 

「それなら是非お願いします。」

 

「分かりましたっ、早速作って来るので待っていてください。」

 

そう言って、台所?と思われる場所に向かって行く。客に振る舞えるほど余裕があるのか不安だが、相手の気落ちが少しでも楽になるなら甘えるのが正解なんだろうな。

 

待っているのも暇なので、エネと一緒に娘さんと戯れようと外に出た。

 

三人で遊んでいると、家から声をかけられる。疲れ初めて居たので丁度良かった……子供って無尽蔵の体力なんだなと改めて思う。

 

「お待たせしました。大したものでは無いのですが……。」

 

食卓には幾つかのレパートリーが並んでいた。炒め物?と汁系の物。後は輪切りにされた状態で出されている。……そのまんまの味をってことか?

 

取りあえず、近くにあった炒め物から食べる。触感は……少し固めだな。いうならば人参に近いのかもしれない。味自体は塩でさっぱりとしている。が、野菜自体のえぐみが残っている。

 

汁物を飲んでみる。……こちらは少しの塩?味と何だかよく分からない野菜から出ている出汁の味がする。

 

最後に輪切りにされた状態の物を食べる。……ん?これが意外にイケるかもしれない。漬物に近いのだろう。雑味はあるが全然食べれる味だ。

 

前から分かっていたが、やはり現代の食事事情はかなり発展し尽している段階だったんだと思う。野菜一つでこれだもんな。舌に肥えるのは仕方が無いのだろう。

 

「三つ目のこれですが、作り方など教わっても良いですか?それと、可能ならそれぞれの種などを頂けると……あ、勿論お代は払いますので。」

 

「お代なんてとんでもございません!お礼ですのでお気になさらず!作り方ですねっ、私で良ければ喜んで教えます。」

 

そうして、三つ目の漬物モドキとそれぞれの種や現物を頂いた。その後はそれらの育て方や収穫方法などの豆知識を教えて貰った辺りで、外も暗くなって来たのでそろそろ帰ることにする。

 

「本日はありがとうございました。」

 

「いえ!少しでもお役に立てたなら嬉しいです。またいらしてください。」

 

「またねっ!えねちゃんっ。」

 

娘さんの方はすっかりとエネを気に入ったらしく仲良く手を振っていた。俺も親子二人に手を振り、帰ることにする。

 

「いやー、まさか野菜を頂けるとはなぁ……。味に関しては問題はあるけど幅が増えるかもしれないと思えば胸が高鳴るな。」

 

まずは栽培する場所を作り育てなければいけない。そこはアヴァロとフィアと相談して何とかしよう。

 

「そう考えると、肉とか調味料も欲しくなってくるな……。」

 

肉は村の人がちょくちょく狩ってくるみたいだが交渉して手に入らないだろうか?調味料は基本塩しかなかったので希望は薄そうだ。リックベルの街では塩以外にもあったな……どれがどれかさっぱりだったが。

 

「それは今後に期待しよう。まずは今ある物から色々試してみよう。」

 

城砦生活に楽しみを見出してウキウキで帰路に着く。

 

「うわああああぁっ!!」

 

そんな帰路の途中で人の悲鳴が響き渡った。

 

 

 





異世界の食材は美味しくない(偏見)現代が美味しすぎるんだ。


次回はあの太った坑夫が初登場!?ご期待を……。多分二度目の戦闘シーン……かも?


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。